大人が読む児童書「チベットのものいう鳥」3 金沙江(=長江)、河の女神の物語
大人が読む児童書。
「積ん読・解消計画★児童書編」です。
この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
「5.金沙江の女軍」
すばらしいです。
通しで読んだ後にも言えますが、これが筆頭で一番個性的で素敵な物語です。この一篇のためだけにでも、買いたいと思いました。
原始の大河の擬人化です。
金沙江(=長江)のお話です。
大河の擬人化も面白いですが、その擬人化具合が、実際の「河」としての性質とひとりの神格を兼ね備えた女性としての性質とが実に見事にとけあっていて感動的でした。
大河の神たちを産んだ母はパエンカラ山脈。
四人の子供がいます。
長男が黄河(ホワンホオ)
長女が怒江(ヌーチアン・サルウィン川上流)
次女が瀾滄江(ランツァンチアン・メコン川上流)
三女が金沙江(チンシャチアン・長江)
主人公は金沙江、チンシャチアン。かわいい響きです。
いちばん末の女の子です。
河たちは、母のもとを離れ、旅をしながら大陸を巡り、支流を従えながら下っていきます。
それを軍隊の進軍にたとえていて、金沙江は女軍です。
怒江(ヌーチアン・サルウィン川上流)と瀾滄江(ランツァンチアン・メコン川上流)は、こらえ性が無くて軽はずみ、ということになっていますが、これは黄河と長江に比べて短いからのようです。
まあ…確かに…。
黄河と長江、この二つに比べればね…。
河の流れのさざめきが女性の笑い声のようで、山や城壁に何度もぶつかっては打ち壊して先にすすみます。
母パエンカラが命じた一大事業、金色の種を岸辺にまきながら進み、「大地を緑玉黄金のような世界に変える」ために。
金沙江が山や谷にぶつかって壊しながら進むたびに、その周囲を支配している原始の神々が怒り、何者だと呼びかけます。
すると水しぶきと女性の笑い声の中からぱっと(大河の擬人化した)美しい女将軍が姿を現すところなど、とても素敵でした。
チベットに留まらず、中国全体の神話とも言えそうでスケールの大きさを感じさせます。
パエンカラとは、崑崙山脈のひとつ、バヤンカラ山脈のことのようです。
6.金花と銀花
九尾の狐っぽいターマという悪役が登場します。
いかにも中国の狐狸精こりせい(フーリーチン)という感じです。
7.慈善家とカメ
とんち系です。
8.白鳥になった王子
昔話によくある、毎日山羊がいなくなる話と、ギリシャ神話のアモールとプシュケを足したようなお話です
9.竜の目をかく
画竜点睛だ!しかし、画竜点睛の熟語のもと、故事になったお話とはまた違うようです。
10.九色鹿
くしきじかと読みます。人間の欲の深さと醜さを説いています。
しかし、九色の鹿とは、とてもファンタジックで素敵だなと思いました。
ファンタジーを書く人たちにも、とても示唆に富み参考になるなと思います。
昔話はこうして、現代にあわせた形で再話、再話と語られていき、語り継がれていくものですから…。
11.一本の手
12.黄金の夢
これは完全にギリシャ神話の「ミダス王」です。そのまんまです。
「アモールとプシュケ」っぽかった「8.白鳥になった王子」といい、チベットにもギリシャのお話が伝わっていたのだろうか。
それとも、類話と呼ばれるものは世界各地で見られるので、どれが最初だと言うことは出来ないのかもしれません。
子どもの本だな【広告】
王への手紙 (上) | ムギと王さま | ふしぎなオルガン |
たのしい川べ | 小さなスプーンおばさん | しろいうさぎとくろいうさぎ |
ひとすじの道 | とぶ船〈上〉 (岩波少年文庫) (日本語) 単行本 - 2006/1/17 | 魔法のカクテル |
児童文学ランキング |
大人が読む児童書「チベットのものいう鳥」2 沼地、毒龍、ムカデ、そして黙ってしまう
大人が読む児童書。
「積ん読・解消計画★児童書編」です。
この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
ちらっと調べてみると、中国北京のチベット民話研究者のかたがまとめた子供用の物語のようです。
原題は「金玉鳳凰」
「チベットのものいう鳥」はすばらしい訳だと思いました。
今、チベットやウイグルについてわたしの知るところは、文化の破壊に苦しんでいるという事ぐらいでした。
調べてみると、チベット族の人は広く四川のあたりにも分布しており、中国とチベットの深い歴史的な関わりを感じさせました。
読み進めます。
目次の1と2
1.ふたごの王子と魔術師
2.ものいう鳥をたずねて
が導入の部分にあたるようです。
(アラビアンナイトで言うなら、王様がシェハラザードに会うまで一体何が起きたのか、というところです)
賢い王子と愚かな王子が登場します。
弟の愚かな王子を何とかして教育したいと思う両親の王様とお妃さま。
そこに七人の魔術師が…。
ロシアの物語などでは、「イワンのばか」のように「愚かだと思っていた方が賢かった~!どんでん返し~!」という感じのお話がありますが、こちらは愚かな王子は愚かなままです。
賢い王子はよい人なのですが、賢さをちょっと鼻にかけている所があります。
でも、賢い王子と愚かな王子は仲良しです。
魔術師やら二人の王子やらで、てんやわんやの大騒ぎになります。
とりあえず、「ものいう鳥」を賢い王子が捕まえ、連れて帰ることが出来たら万事OK。
すべてが丸くおさまる。
ここまでが割と長い一つの話です。
賢い王子はものすごい苦労をしてものいう鳥の所までたどり着きました。
妖怪はいるしヒルはいる。
72日間歩き続けて沼地にたどり着き、毒龍がいてさらに108日間歩き通してムカデが出て…。
昔話だし、中国ものなので、「三日三晩」の大袈裟な表現なのだ、とわかるのですが、72日+108日で180日です。
一年が365日ですから、これはもうおよそ半年かかっている計算です!
それほどまで苦労してやっとたどりついた金玉鳳凰、これがものいう鳥のようです
(しかし硬派な文体です!)
ものいう鳥「金玉鳳凰」を連れて行く道中で、王子は口をきいたらいけないことになっています。
ここで、長いお話から短いお話まで、実にさまざまなお話をものいう鳥は語ります。
最初に鳥が語ったのは目次の3からでした。
ここから目次は27まであって27の最後が結末なので鳥は24話の物語を語ったことになります。
まずは、「3.不思議な紙切り老人」です。
紙を切って色々なものを見せる、まるで式神を操る道士のようなお話です。
王子がすっかり話に引き込まれ、夢中になったところで、ものいう鳥は、すごくいいところで突然黙ってしまいます。
我慢できずに王子は「それからどうなった」と聞きます。
鳥は、親切にも結末は一応話してくれるのですが、王子の手から逃げて、飛んで帰ってしまいましたー!!
「まて。これもしかして、お話するそのたびに、鳥は帰るの?」
「そう。最悪でしょ」
「あんなに苦労したのに!?」
「そうなのー!」
はー、なるほど。そういうことだったか…。
「でも読んだんだよね」
「読んだよ!あっ、そのお話はすごく良かったよ」
「4.生きた人形」ではなくて、そのあとの「5.金沙江の女軍」です。
これはすごくいいお話でした。
子どもの本だな【広告】
真夜中のパーティー | コッペパンはきつねいろ | 名探偵カッレくん |
グレイ・ラビットのおはなし | ビロードのうさぎ | 闇の左手 |
レ・ミゼラブル | 銀のいす | 旅人タラン |
児童文学ランキング |
大人が読む児童書「チベットのものいう鳥」1 読んだけど最悪だった?
大人が読む児童書。
「積ん読・解消計画★児童書編」です。
この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
自粛明けに図書館が開いたので、本を借りに行きました。
「グリックの冒険」など選んで、カウンターで聞きました。
「残っている本はありませんか?」
「こちらが一冊、残っています」
あれっ!?
以前、娘が借りていたのです!
怖い顔をして横目でにらんで、返却期限を延ばしていただきました。
帰ってから、本棚の中に混じってしまっているこの本を取り出しました。
「チベットのものいう鳥」を、まさか、借りていたなんて。
ずっとずっと、何度も何度も借りよう借りよう、読もう読もうと思っていた本です。
何と子どもの頃からです!!
これだけの年月が過ぎ去ってしまいました。
これは返す前に私が読まねばなるまい。
ついに、本懐を遂げるときがきたのだー!
「それ読むの?」
と娘に聞かれました。
「最悪だったよ」
ええっ!?
「え、最悪なの?面白くなかったの?」
「面白くないというより、最悪だった」
「でも読んだんだよね!?最悪なのに読んだの!?」
「読んだよ。読めばわかるよ」
なんだかすごく気になります。
「鳥が話すんだよ。たくさんのお話をするの」
それは、一応調べたので知っています。
昔話だとよくある形式です。
アラビアンナイトと同じ、と書かれていました。
「アラビアンナイトと同じ感じなのだ。そもそもアラビアンナイトとは」と説明しようとすると「知ってるし!」と遮られてしまいました。
「お姫様が殺されないために、王様に毎晩違う話をするんでしょ?」
…というわけで、読みはじめてみました。
まず、「ものいう鳥がたくさんのお話をする」「チベットの話」という以外はほとんど予備知識なく読み始めたので、その硬質な文体にびっくりします。
かまびすしい声は、一時に梁を振るわせ、殿上のほこりがふっとび、玉座の王の耳にまでひびきわたった。国王ははっと顔色を変え、ほこりの中でぬかずいているそれら烏雀どもを、怒りのまなざしで、にらみわたしてから、警備の兵に叫んだ。
「はやく、うたっている者を、呼んでまいれ」
うたっていたものは飄然と入ってきた。一人また一人と、七人の魔術師が、すうっと入ってきたのだ。彼らは歩くにも地面に足がついていなかった。
かまびすしい声は、一時に梁を振るわせ…
ぬかずいているそれら烏雀ども…
すごいです。
これは、チベットの昔話というよりは、中国の作品の翻訳だな?
伊藤貴麿氏の訳された「西遊記」を読んだ時と同じ感じがします。
花果山の石から生まれた孫悟空は,72通りの変化の術を使って,縦横無尽の大活躍.インドへ経典を取りに行く三蔵法師を助け,数かずの妖魔を退治しながら冒険の旅を続ける.〈改版〉
中国のお話は、修辞が独特で漢詩をそこかしこに盛り込み、歌うような流れがあります。
その雰囲気を壊さないよう、割と忠実に訳しているな!という印象です。
しかし、フラットに読み進められる感じではありません。
娘、難しかったから「最悪」と言っているのだろうか?
魔法使いなどが出てくる昔話のいい所は、たとえ文章が難しくても続きが気になるところです!
どうなるのか、と思って続きを探すうちに、だんだん文を読むことになれていく。
これはとてもありがたいことです。
「地面に足がついていないまま宮殿に入ってきた七人の魔術師」
これはすごく気になります。
大人の自分が面白いです。
(ちょっとキョンシー映画っぽいです)
子どもの本だな【広告】
ちいさいロッタちゃん | オンネリとアンネリのふゆ | はるかな国の兄弟 |
シートン動物記(青い鳥文庫) | ジュニア版ファーブル昆虫記 全8巻セット | 北極のムーシカミーシカ |
ぜったいがっこうにはいかないからね | もこ もこもこ | ひみつの花園 |
児童文学ランキング |
今日の一冊「チロヌップのきつね」
今日、ご紹介するのは絵本です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
北海の孤島で平和に暮らすきつね親子にも戦争の余波が…詩情豊かなロングセラー絵本。
チロヌップの狐の話は、ごんぎつねと同じかそれ以上に号泣してしまうお話です。
全体的には、何となく筋立てのないまま、散漫といえば散漫にお話は進みます。
ちいさな子ぎつねを捕まえた老夫妻は、ちびこと名前をつけ、赤いリボンをつけてやってかわいがります。
しかし、島にも兵隊がやってきました。まずお兄ちゃんぎつねが撃たれ、それからちびこは罠にかかります…。
最後まで読んでみて、一体おじいさんとおばあさんは何だったんだろう?というような、一見つながらないし何の影響も及ぼさないように見えるストーリーでもあります。
このような、淡々とした事実だけを述べていくようなつくりの物語が、不思議な感動をもたらすことがあります。
都合よく上手に話にからんできたり、伏線回収したりしないからこそ、真実味が増すとでもいいますか…。
物語は綺麗に静かにひそやかに終焉を迎えます。
小さな赤い花は、そこにちびこが確かにいたこと、人とのかかわりがあったことを示唆しています。
大きな歴史の流れは変えられない。
ただ、北方の島々がかつてはアイヌの人々のすみかだったこと。
それが普通だったこと。人々のいとなみがあり、動物たちのいとなみもまた、あったこと。
そういう歴史を知らせる意味でもこのチロヌップの狐はとても 何度でも 読んでもらいたいお話だと思います。
子どもの本だな【広告】
てぶくろ | モモ | 星の林に月の船 声で楽しむ和歌・俳句 |
ヒナギク野のマーティン・ピピン | いいおかお | あなたのおへそ |
もう ぬげない | しろいうさぎとくろいうさぎ | クローディアの秘密 |
児童文学ランキング |
今日の一冊「森は生きている」
今日、ご紹介するのは児童書です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
気まぐれな女王が真冬に4月の花マツユキソウをほしいといいだし、国じゅう大さわぎ。継母の言いつけで吹雪の森に分け入った少女は12の月の精たちに出会います。有名な児童劇。
「今どこを読んでるの?」
せかされてしぶしぶ読み始めたうちの子、気が乗らない様子なので聞いてみました。
「え?リスくんウサギくんのおにごっこ?そんなところはいいの!サーッとななめ読みでいいの!女王様だよ。第二(第一幕第二場です)の所に女王様が出て来るから、そこを読んで欲しいの!とっとと先にすすめ!」
ものすごくひどい読ませ方です。
間違いなく、教育的によくないです。
「ちゃちゃっと飛ばして!」
「女王様ぁ~?」
「女王様といっても、女の子なんだよ。14歳の女王様だよ。お父さんもお母さんも死んじゃったから、14歳で女王様になったの。もうこれは絶対読んでみてって思った。最悪だから読んでみて!」
もう、娘の方も慣れていますので、言われたとおりそのリスくんウサギくんのあとの、主人公と老兵士の会話などななめ読みして、第二場の女王様の所を読み始めました…。
少し読んだだけで言いました。
「うん最悪だな。何だこいつ」
えらい勢いで読み始めました。そして言います。
「『しゃくほう』と『しけい』だと死刑の方が書くのが楽だから死刑にするって何こいつ!こんな奴を女王なんかにしちゃいけないって法律を作った方がいいと思う!」
「そうでしょ、でもそれでね…」
「こいつかけざんもできないの!?14さいでしょ!?小学生の私でもできるわ!6×6=36だよ!36だよね?」
「うんそれでね…」
「マツユキソウ!こんなやつにマツユキソウとか渡しちゃだめだわ!こんな奴がマツユキソウをもらえたら、あるじゃん。じゃあいいんだ。次はリンゴ、次はクルミ、次は…って何でもかんでも要求するよ!?渡しちゃダメ!」
「するどいね…」
◇
サムエル・マルシャークの超有名な戯曲です。
子どもを演劇の魅力の世界に運ぶには、実にぴったりの一冊です。
(いや、別にアンパンマンショーでもぜんぜん、良いんですけども)
読めば間違いなく、面白くてどうなる、どうなる、と次々に読んでしまえること、間違いなしです。
冬のさなかに、マツユキソウが欲しいという若い女王のわがままなおふれ。
まま母さんとまま姉さんのいじわるから、冬の森に迷いこんだむすめ。
薪の炎を囲む、擬人化された12の月が彼女を迎えます。
悪役がとても魅力的、といいますか…。
とにかく憎たらしいです。
そこが面白いので、次々に読めてしまいます。
いじわるな継母と義姉はテンプレとしてともかく、この騒ぎを引き起こした元凶の、わがままな14歳の女王さま。
これがまた、ものすごく最悪で、まさに14歳の生意気でわがままでもののわかってない女の子、という感じです。
少しだけ、可愛げはあります。
「そのあとに継母の老婆とその娘、義理のお姉さんが出て来るけど、まあお母さんとしては、まだ女王様の方がいいかな」
「ふーーーーん」
気乗りのしない返事です。
さて継母と義姉の所にさしかかりました…。
「何こいつら、最悪!」
「最悪でしょ」
「うん、どちらかといえば女王のほうがまだいいかな」
「さっきふーんとか言ってたくせに…」
「なめてたわ。こいつらほんと最悪だわ」
こいつらが一体どうなるのか?
物語は本当に、悪役が大事だなと思います。
シンデレラ物語の主人公や悪役たちは、とても良い子ちゃんだったり、ものすごく悪い子ちゃんだったりするので、どれも自分たちとはかけ離れた存在です。
このお話でやっぱり、いちばん身近で、いちばん自分たちに近くて、いちばんあるある!なのは、間違いなく、この女王様です。
◇
また素晴らしいのが「森は生きている」という題名です。
「12の月」という題名を、この題にしたすばらしさはこれはもう、これ以上はないだろうと思われるすばらしさです。
またこの「戯曲を文字を読む」というのが実に良いものです!
ほぼ会話でだけ成り立っているので読みやすいし、劇を実際に見たときの自分の想像との違いに衝撃を受けるのもいい刺激になります。
このすばらしい「森は生きている」という題名で訳された湯浅芳子さんのあとがきを引用したいと思います。
これもまた、「あとがきの教科書」とも言うべきすばらしいあとがきです。
この作品は、ふるくから伝わるスラヴの伝説、すなわち新年を控えた大みそかの晩に1月から12月までの月の精がのこらず森の中で出逢うという伝説をもとにして書かれたもので、境遇の不幸に負けることなく、いつも明るさと他人への思いやりとを失わず、雄々しく勤勉に働く少女が思いもよらぬ幸福を得たという、いわば、ソビエトのシンデレラ物語です。
いわゆる継子いじめがあったり、娘と同じ年頃の両親のいない女王のわがままがあったりして、物語は面白く展開しますけれど、しかしこの作品のねうちは、そうした筋の面白さばかりにあるのではありません。作品の底に流れている高いヒューマニズム、人間なり、人間の生活なり、また社会なりへ向けた、作者の目の鋭さ、深さ、視野の広さなどによって、この作品は普通ありきたりの童話劇でないものになっています、また、その内容を表している形式の美しさによって、高い芸術作品にもなっています。ですからこれがメーテルリンクの有名な「青い鳥」に肩を並べる優れた童話劇と言われているのも、もっともです。
マルシャークはどうぶつたちを描くのが本当に上手です。
お気に入りのマルシャークの絵本を二冊、上げておきます。
はりねずみの父さんと母さんとぼうやが、真夜中に散歩にでかけました。森の動物たちはみんな眠っていますが、2匹のおおかみだけは目を覚ましていました。おおかみははりねずみをつかまえようとしますが…。真夜中の森でおこった静かな静かなお話です。
動物園で生まれたライオンやキリンの赤ちゃんたちを愛らしく描いた「おりのなかのこども」、いさましいメンドリの話「めんどりと十ぱのあひるのこ」、わがままな子ネズミの話「ばかなこねずみ」など。
子どもの本だな【広告】
かこさとし からだの本 全10巻 | こわれた腕環 | おかあさんは魔女 |
ながいながいペンギンの話 | 王への手紙 (上) | 長い長いお医者さんの話 |
スーホの白い馬 | はらぺこのえんそく | はははのはなし |
児童文学ランキング |
今日の一冊「どんなにきみがすきだかあててごらん」
今日、ご紹介するのは絵本です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
チビウサギとデカウサギは大の仲良し。「ぼくはきみのことこーんなに好きだよ」二匹は腕を広げたり、背伸びしたり、飛び上がったり、どんなに相手を好きか言い合うのです。絵もお話の進行も終わり方もほのぼのした本。(「MARC」データベースより)
やさしい、やさしい、絵本です。
だいすきな気持ちがいっぱな本です。
二匹のうさぎは、競い合うように、「相手のことがどれだけすきか」を言い合っているうちに、ちいさなうさぎは眠くなってしまいます。
この本の面白いところは、おたがいに大好きだと言い合う二匹のうさぎ。
その関係性を示す記述がまったくないことです。
チビウサギとデカウサギは親と子なのか、友達なのか、兄弟なのか、お父さんなのかお母さんなのか、全然わかりません。
ここで訳をどれともとれる「きみぼく」にしたのはほんとにすばらしいなと思います。
日本語は一人称の使い方で漠然と関係性が決まってしまいますから。
ただひたすら、デカウサギとチビウサギは、お互いが大・大・大好きなのです。
そこにある
「すき、という気持ちを表現すること」
というただそれだけの描写が、ただひたすらあたたかく、幸せな気持ちになる絵本です。
子どもの本だな【広告】
名前を見てちょうだい | 火曜日のごちそうはヒキガエル | クラバート |
ちいさいモモちゃん | シートン動物記(つばさ文庫) | おおきな木 |
チョコレート・アンダーグラウンド | ライオンと魔女と洋服だんす | エーミールと探偵たち |
児童文学ランキング |
今日の一冊「ちいちゃんのかげおくり」
今日、ご紹介するのは絵本です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
なつの夜の くうしゅうで かぞくと はなれ、 ひとりぼっちで まちを さまよう ちいちゃん。 悲惨な戦争のかげに小さないのちをとじた 女の子のすがたを、静かに描いた絵本。
8月を迎える前、夏休みを前にした時には、読みがたりボランティアさんがたは、みんな一冊か二冊、戦争のお話を入れることが多いです。
まだ6月で8月まで来てませんが、紹介しちゃいます。
暑くなってきて、日差しもつよくなり、かげおくりがうまく出来るようになる季節です。
冒頭は、ちいちゃんを囲む幸せな家族が「かげおくり」という遊びをする所からはじまります。
足元の影をみんなで数秒、目を離すことなくしっかりと見つめ、目をふっと上げると、細孔に残った影の残像がふわっと空に浮き上がるように見える遊びです。
このお話の悲しさは悲しさ、意味は意味として、とても面白い遊びですのでぜひやってみてください。
「ちいちゃんのかげおくり」は戦時中のお話ですが、ちいちゃんという小さな女の子の目線を追いながら語られます。
ちいちゃんは、いったい何が起きてるのか全く分かりません。
体が弱いお父さんがどうして「いくさ」に行かなければならないのかもわからないし、確かに何かが起きて、皆あわてふためき、周囲も火に包まれているのですが、よくわかりません。
だから誰を責めるわけでも何を責めるわけでもなく、ただひたすらちいちゃんの目線で、何か恐ろしいことが周囲に起こり、誰もかれもが死んでいき、最終的にちいちゃんも天に召される(と言うと聞こえはいいのですが戦争で死んでしまう)わけです。
そんなちいちゃんを受け止めたのは、空に向かうかげおくりの影たち。
おとうさんの影、おかあさんの影…。
懐かしいあたたかい記憶に包まれてちいちゃんは一緒にかげとなって空へ一歩一歩足を踏み出して行きます。
なんとなくアンデルセンのマッチ売りの少女を思わせるような描写です。
せめて、あたたかく楽しい家族の遊びの思い出と共に空に迎えられてもらおうという作者の願いがこめられています。
切ないという言葉では語りきれないお話です。
ここにはなぜ、という理由など一切なく、誰を恨みに思うわけでもないので、ただただひたすら悲しいです。
身も蓋もない言い方をすれば、何の罪もない一人の幼い女の子がただ死んでいくというお話です。
ただ、このちいちゃんのかげおくりのお話は、かつてほんとうにあったことだし、今も確かにどこかであることであり、将来、起こるべきことである、ということだけは教えてあげなければならないと思っています。
かげおくりという題名、どことなくさびしい響きです。
ですがちいちゃんにとっては楽しかった日々の思い出とつながる家族の絆でした。
この本を選ぶ方は多いのですが、やはり涙を抑えるのがとても大変だと言っていて、「どうやって泣かないようにするか?」というのを皆で相談しあったりしていました。
「かわいそうなぞう」「チヌロップのきつね」
無理無理無理、です。
慣れた方は
「ただひたすら淡々と読む!」
「もう何も考えずに読む!」
「言葉だけを追いかける、意味を考えてはだめ」
と仰っていました。
しかし私はどうしても自信がないので、残念ながらこの本をまだ読みきかせに使ったことはないのです💦
なんてこった。
しかしブログだと、別に泣かなくても紹介できるので、これはよい取り組みだ!と思いました。
子どもの本だな【広告】
影との戦い | ウルスリのすず | 海のおばけオーリー |
こんとあき | めっきらもっきら どおんどん | ちいさいモモちゃん ルウのおうち |
あめの ひの ピクニック | ももいろのきりん | 床下の小人たち |
児童文学ランキング |
大人が読む児童書「グリックの冒険」2 読了。君は、君自身の戦いを戦え
大人が読む児童書。
「積ん読・解消計画★児童書編」です。
この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
大人が読む児童書
飼いリスのグリックは、野生のリスの住む北の森にあこがれ、カゴから脱走します。町でドブネズミのガンバと親しくなり、動物園で知りあった雌リスののんのんといっしょに、北の森をめざします。
今回読むにあたっては、まずは図書館から借りてきたのですが、このハードカバー...💖
すごく読みやすいです。
本屋さんに置く場所もないし、つくるのにもお金がかかり、高いので買い手もないのかもしれません。
でも、この
「本」を読んだぞ~!感はすごいです。
大人でさえ思いますから、子どもがこうしたしっかりとした装丁の分厚い本を開いて夢中になって読む感覚は、特別なものではないかと思います。
経験です。
字が小さくて、分厚くて、地味そうな(一見つまらなさそうな)重たい物体の中に、素晴らしい世界が広がっているという...。
改めて、このようなしっかりした物語をハードカバーで子どもに与えることの意味の大きさを考えさせられました。
◇
さてグリックは、クマネズミとドブネズミ(ガンバ側)の争いに巻き込まれます。
この戦いをガンバと一緒にこなし、しばらく一緒に過ごしたことで、グリックは胆力もつき、長い旅をこなすだけのスキルを身に付けます。
ガンバは、彼の知っているリスの仲間たちの所に案内するまで、じっとグリックに付き添います。
えさの面倒もみてやり、危険も教えます。
かっこいいです…ガンバ…💖
私情が入りまくりです。
作者が「冒険者たち」のあとがきで、急にグリックのお話に飛び込んできて、動き出したと言っていたのもわかる気がします。
そして、ガンバ、ずっと一緒にいるわけではありません。
どこか、グリックを自分の戦いに巻き込んだことを後悔している様子もあります。
ガンバはグリックを見届け、シマリスたちの群れの手前で別れを告げます…。
ガンバはグリックに何度か、大切なことを伝えます。
「あれは君の戦いではなかったんだよ。あれは、おれたちの戦いだったのさ。いいかい、君の戦いはあれじゃなくて、これからだ。君は、君自身の戦いを戦えばいいんだ。」
上野の公園にはリスがいて、カメラを向けると完璧なキメポーズもしてくれると書いてあるのを、最近ツイッターで見たことがあります。
「グリックの冒険」のwikiページをみていると、これは井の頭公園ではないかとのことでした。
しかし、グリックがきたのは、「北の森」ではなくて、動物園のシマリスのおりの中でした!
グリックはおどろき、ここはぼくのうちじゃない!と叫びます。
たくさんの動物園のリスたちは驚きながらも、グリックを受け入れてくれます。
グリックは次第に、動物園の生活に慣れていきそうになっていきますが…。
グリックがシマリスたちに、ネズミたちの戦いの話を聞かせていると、突然、声が響きます。
「それはもうわかったわ!いつまでも同じことをくりかえしているの!ネズミじゃなくて、あなたの戦いの話がききたいのよ!あなた自身の戦いの話が!いつになったらあなたは...」
あなたの話を聞きたいのよ!
という叫び。
それは、ガンバの「君は、君自身の戦いを戦え」ということばにつながるものでした。
その叫びに突き動かされ、グリックがガンバが教えてくれた入り口をたどって外の世界に出ようとすると、足の悪いのんのんというめすのシマリスがこっそり、ついてきていました…。
二匹は連れ立ってハトのピッポーが言及した「シマリスのいる北の森」目指します。
…というお話です!!
大変読み応えがあり、かつ長編で文章も読みやすく、ワクワクドキドキ、まさに「冒険者たち(ガンバの冒険)」を読み終わるのが待ちきれなかったあの感覚をふたたび味わえます。
ああ、こんな風にして、これが面白かったからこれも…これも、という風に、「本を読むこと」に引き込まれて行ったなあ…と記憶がよみがえりました。
「読書」に対して格段にハードルを低くしたのはこれらの楽しみでしたし、叙述がしっかりしていて見事なため、大人の名作本にもすんなりと入っていける土壌を育てます。
グリックは元気なのでひとりでどんどん行ってしまおうと思えばできたはずでした。
しかし、のんのんの存在にどれだけ助けられたか知れません。
お互いに励ましあい、助け合いながら、北の森を目指し、二匹でなければたどりつけなかったのです。
(そして、のんのんがなぜ、足が悪くなってしまったのか、という理由を知った時には本当にぞっとしました)
グリックは、ガンバの戦いを目にすることで、「生きるための戦い」それも「他人のものではない、自分自身の戦い」を意識するようになります。
とてもとても大事なことだと思いました。
いつまでも語り継いでいきたい一冊です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
イタチと戦う島ネズミを助けに,ガンバと15ひきの仲間は、船で夢見が島に向いました。しかし、白毛のノロイがひきいる、どうもうなイタチの群れに追いつめられ、海岸の岩山で最後の決戦の時をむかえます。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ガンバと15ひきの仲間は、ゆくえ不明のネズミをたずねて、四の島に渡ります。探しあてたネズミのそばにいたのは、死に絶えたはずの2ひきのカワウソでした。凶暴な野犬と戦いながら、カワウソの仲間が生き残っているかもしれない伝説の河「豊かな流れ」をめざして冒険がはじまります。そこには、想像をこえる体験が….
頑張り者のネズミ・ガンバは、相棒のボーボと一緒に、海を一目見ようと港町までやってくる。そこで出会った子ネズミの忠太が、自分たちの島の仲間を助けて欲しいと求めてきた。力自慢のヨイショや博学のガクシャといったネズミ仲間とともに、大海原へ乗り出すことを決意する。だが、目的の島には脅威の白イタチ・ノロイが待ち構える。小さなネズミ7匹が繰り広げる波乱に満ちた大冒険。他に類を見ない表現にドキドキハラハラの連続だ。(C)斎藤惇夫/岩波書店・TMS
子どもの本だな【広告】
飛ぶ教室 | 魔女ファミリー | ぶたたぬききつねねこ |
つみきのいえ | まぼろしの小さい犬 | 完訳 ファーブル昆虫記 |
こんとあき | たべたのだあれ | とこちゃんはどこ |
児童文学ランキング |
大人が読む児童書「グリックの冒険」1 アニメのガンバ、りすのクリークのモデル?
大人が読む児童書。
「積ん読・解消計画★児童書編」です。
この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
大人が読む児童書
飼いリスのグリックは、野生のリスの住む北の森にあこがれ、カゴから脱走します。町でドブネズミのガンバと親しくなり、動物園で知りあった雌リスののんのんといっしょに、北の森をめざします。
「冒険者たち~ガンバと15匹の仲間たち」を読んで、「ガンバの冒険」のアニメシリーズを見て、大変・大変感銘を受けたので、斎藤 惇夫さんの他の作品も読んでみることにしました。
斎藤 惇夫さんの作品は
1、グリックの冒険
ここにガンバがサブの登場人物として登場。
2.冒険者たち ガンバと15ひきの仲間
ノロイとの闘い。
ガンバがグリックに会ったり、15ひきの仲間と出会う以前の物語。
とのことだったので、まずは最初の「グリックの冒険」を読んでみました。
さてどんな感じだろう…と、意気揚々とページを開き、シマリスのねえさんとグリックが現れたとき、なんとなく、感じました。
アニメに登場したリスのクリークは、多分このグリックがモデルなのだろうと思います。
アニメのガンバに登場したリスのクリークはものすごく印象的なキャラクターで、ものすごく強く心に残りました。
原作者の物語を、アニメはさまざま、あちこちに投影させていたのだなあ、と感慨深く思いながら読み進めます。
アニメのクリークはにいさんで、妹がイエナでしたが、こちらの主人公グリックにはねえさんがいて、フラックという名まえです。
◇
子どものときにペットショップからひとのうちに飼われてきたリスのグリックとフラックの姉弟は、人間の家でそれなりに幸せに暮らしていました。
しかしある日グリックは、窓の外のハト、ピッポ―から、自分が「シマリス」であること、北の森にたくさんの仲間たちがいて、自由に暮らしていることを聞いてしまいます。
「こんなところにいるなんておかしい」というピッポ―。
その日から、どうにもグリックは落ち着かなくなってしまいました。
フラックは、そんな弟をみて、外の世界に行くように強くすすめます。
グリックがためらうと、ねえさんは激しく歯を剥き、外の世界へと後押しするのでした…。
シートン動物記などを読んでいると、野生動物の親が子ばなれの時期、子供を外の世界に出すために、殺しかねないような争いをして別れを促す、というシーンがよく出てきます。
子どもはいつか親ばなれしなければなりませんし、そのために親とは戦いを経験しなければならない…。
ねえさんのフラックは、グリックにそれをやっているように思えました。
斎藤 惇夫さんの作品に出てくる女性(女性??)は、「冒険者たち」の潮路もそうでしたし、このあとに出てくるのんのんもそうですが、みんな芯がつよく、きりっとしていてすごくかっこいいです!
めちゃくちゃ良いです。素敵です。
◇
外に出たグリックは右も左もわかりません。
しかし、ひょんなことから道路を渡ろうとして車に轢かれそうになたドブネズミの危うい所を助けます。
そのドブネズミの名前はガンバ。(ガンバだー!)
彼は、リスの群れがいる場所を知っているかもしれないと言います。
命の恩人であるグリックを連れていってあげると約束しますが、ちょうどねずみたちはクマネズミと縄張り争いで戦っているところでした...。
◇
ガンバが、原作もアニメもすばらしく面白かったので、間違いなしだと思って読み始めましたが、これもまたまた、すっごく良いです!!
これまで、この作品を棚に置き続けてきてくれた本屋さん本当にありがとう!という気持ちでいっぱいです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
イタチと戦う島ネズミを助けに,ガンバと15ひきの仲間は、船で夢見が島に向いました。しかし、白毛のノロイがひきいる、どうもうなイタチの群れに追いつめられ、海岸の岩山で最後の決戦の時をむかえます。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ガンバと15ひきの仲間は、ゆくえ不明のネズミをたずねて、四の島に渡ります。探しあてたネズミのそばにいたのは、死に絶えたはずの2ひきのカワウソでした。凶暴な野犬と戦いながら、カワウソの仲間が生き残っているかもしれない伝説の河「豊かな流れ」をめざして冒険がはじまります。そこには、想像をこえる体験が….
頑張り者のネズミ・ガンバは、相棒のボーボと一緒に、海を一目見ようと港町までやってくる。そこで出会った子ネズミの忠太が、自分たちの島の仲間を助けて欲しいと求めてきた。力自慢のヨイショや博学のガクシャといったネズミ仲間とともに、大海原へ乗り出すことを決意する。だが、目的の島には脅威の白イタチ・ノロイが待ち構える。小さなネズミ7匹が繰り広げる波乱に満ちた大冒険。他に類を見ない表現にドキドキハラハラの連続だ。(C)斎藤惇夫/岩波書店・TMS
子どもの本だな【広告】
飛ぶ教室 | 魔女ファミリー | ぶたたぬききつねねこ |
つみきのいえ | まぼろしの小さい犬 | 完訳 ファーブル昆虫記 |
こんとあき | たべたのだあれ | とこちゃんはどこ |
児童文学ランキング |
今日の一冊「おんがくかいのよる 5ひきのすてきなねずみ」
今日、ご紹介するのは絵本です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
あるまんげつのばん、どこからかきこえてくるおんがくにさそわれて、あるきだした5ひきのねずみたち。つきあかりのしたでうたうかえるたちのみごとなうたごえにかんどうした5ひきは、ねずみのおんがくかいをけいかくしますが…。
読み聞かせの中では定番です。
「ああ、『おんがくかいのよる』ね!」
とよく言われます。
わたしも、読み聞かせをする中で知りました。
とてもいい本です。
だいたいにおいて、学校の音楽会のイベント前に読まれる方が多いです。
5ひきのねずみたちは、どこからともなくすてきな音楽が流れてくるのに気がつきました。
カエルの音楽会です。
ねずみたちはこっそりと影で聞いていましたが、おんがくのすばらしさに感動してしまいました...!
しかし、この音楽界はカエル以外はおことわりです。
ねずみたちは入れてもらえませんでした。
でもねずみたちはあのすばらしい音楽のねいろが忘れられません…。
ねずみたちは自分であれこれ工夫して楽器をつくり、演奏を練習はじめました。
じゃあ自分で何とかしよう!という前向きさがあり、工夫があります。
かわいいです。
さて、ねずみたちでいっぱいのホールで、5ひきのねずみのコンサートが開かれようとしています。
中に、こっそりかえるたちが隠れていました。
「さあ、どうぞ、どうぞかえるさん!」
音楽はすべての人に開かれるもの。
すべての人に降り注ぐもの。
言葉でなくても伝わるもの。
いま、コンサートホールであれ、ライブハウスであれ、コロナでたくさんの講演が休演をやむなくされています。
まったく元通りにすることは難しいのかもしれませんが、何らかの工夫を重ねて開演できる日が早く来ますよう祈ります。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
Amazonには「海外秀作絵本」と書かれてるのですが…??
これは間違いです。日本語の日本の絵本です。
輸出しても何ら遜色ないと思う、よい絵本です。
絵も良いですし、中身も良いです。
「5ひきのすてきなねずみ」シリーズは三冊出ているのですが、どれもとてもすばらしいです。
あきかんをりようしたてづくりのじどうしゃで、レースにでることにした5ひきのねずみたち。ゆうしょうしょうひんはなんと、「みたこともないくらいおおきなチーズ」です!さあ、いよいよスタートのあいずがなりますよ!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
おとなりさんがねこをかいはじめて、おちついてくらせなくなった5ひきのねずみたち。あたらしいすみかをさがしますが、ねずみにぴったりのすてきないえはなかなかみつかりません。それならばたててしまおうと、アイディアとくふうがいっぱいのいえづくりにとりかかります…。
子どもの本だな【広告】
森は生きている | 銀のいす | かいじゅうたちのいるところ |
11ぴきのねこ | シンデレラ ミステリー | びりっかすの子ねこ |
じめんのうえと じめんのした | あさになったのでまどをあけますよ | ものいうなべ |
児童文学ランキング |
今日の一冊「ウミネコとヤマネコ」
今日、ご紹介するのは児童書です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
父さんにつれられ、はじめて海へ行ったヤマネコの兄妹ヤンとネネ。友だちになったウミネコからもらった青い扉。カギがかかってしまったふしぎな扉の前で兄妹が毎日遊んでいると……。山と海のいのちが響き合う、奇跡の物語。
2016年発売なので、かなり最近の作品といっても良いです。
きちんと文字で表現したハードカバーの物語、本として発売してくれた児童書。
とても嬉しく読みました。
この本、わたしは大好きです。心に残りました。
包み込まれるようにあたたかく、優しい世界です。
ただ、子どもにはどうか?
大人だから読んでとても好きだと思った本かもしれない…という気はちょっとだけ、しました。
子どもはフーンという感じで1度読んで手に取ろうとせず…。
すすめた子もフーンという感じで…。
しかし、それでもいいじゃないですかねえ!?
大人が読んでいいと思った、おとなのためのやさしい児童文学、それでいいと思います。
そういう枠があっても良いです。
幅があるべきです!
精神性が高く、すべてがやさしい夢の中の出来事のようです。
なので子どもには難しいのかもしれません。
面白くワクワクする、子どもたちを「読書の世界」へと導いてくれる児童書が欲しい...というのにしては、ストーリー性が確かにちょっと足りないのかもしれません。
しかし、そのやさしいふわっとした世界感がわたしはとてもとても好きでしたので自信をもっておとなの方におすすめします!
そして、この美しい海と文章にたゆたう、まるで羊水に漂う子どもたちが見ている夢のような世界を、いいな、と思ってくれるお子さんもきっといるのではないか、と思いました。
子どもの本だな【広告】
ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち | 大きな森の小さな家 | 小さいおばけ |
ふしぎなたいこ | ちいさなあなたへ | おとうさんの庭 |
ミオよわたしのミオ | おしっこちょっぴりもれたろう | 十二支のはじまり |
児童文学ランキング |
今日の一冊「海のおばけオーリー」
今日、ご紹介するのは、かなりしっかりした文字の多い、「絵本」です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
ある町で大さわぎがおこりました。近くの湖におばけが出るというのです。ところがそのおばけの正体は、前世紀の怪獣でも怪魚でもなく、かわいい子アザラシでした…
この本、なかなか装丁が面白く、真っ赤な装丁に真っ黒な海からオーリーがぬっと海から首を突き出しているので、いかにもおばけな感じです。
昔から必ずと言っていいほど、この「海のおばけオーリー」は名作童話・名作絵本の中に入っています。
どうしてもあげなくてはいけないなと思う一冊です。
内容としては可愛らしいアザラシの赤ちゃんがお母さんからはぐれて人間に捕まり、水族館に連れて行かれてしまったお話です。
そこで、お母さんが恋しくて沈んでいる所を可哀相に思った飼育員さんが...。
港に出たオーリ―は、あそんでもらおうとして無邪気に近づいて行くのですが…。
中の絵と台詞のの置き方もちょっと変わっていますので、記憶にもすごく残ります。
1ページ中に絵が3×3こま、左から右へ順番に置かれており、一つ一つの絵に対して、短い文章がついていて、漫画のコマにも少し似ています。
吹き出しで言葉が入る代わりに下に文章がついているといったふうです。
一つ一つの絵についている文章はやさしく、単純でありながら絵は非常に密です。
そして、文章も一つ一つについては少ないながらも、何しろ1ページにつき3×3もありますので、全てを 追っていくとかなりの文章量になります。
読み聞かせしていると、ちょっと口がつらいかもしれません。
そして、「続きはあしたね...」「ダメ!続き読んで!」となる感じです。
海外の絵本を読んでいるとよくあることですが、意識しないといったいどこの話なのかさっぱりわかりません。
このお話も、あざらしの赤ちゃんオーリ―がいったいどこで生まれたのか、連れて行かれた水族館がどこなのか、最初はさっぱりわかりません。
大人目線で見ると、絵本がつくられた時代背景を反映して、「古き良きアメリカ」を感じさせる風景です。
風俗を語る上でも なかなかに興味深い一冊です。
一つ一つの絵は白黒の版画のようです。
この白黒が、怖がられた時のオーリ―のおばけ感をすごく引き立てています。
人はかってな想像で、どんどん怖さを作り上げていくものだな、というのがユーモラスに描かれています。
このひとつひとつの絵を3×3にせず、一枚ごとのページにしていたら相当に分厚い本になることは間違いないです。
しかし、そのまま読み進め、最後のページを見ると!
今まで小さく書いていた視点がぐうっと大きくなります。
Googleアースを見ているかのように…。
地球儀をのぞくように、大きな大型本の中に アメリカの地図がぱっと広がります。
五大湖のあたりです。
そしてオーリーがどういう風にお母さんのところへ帰って行ったのか、具体的な地図と地名ではっきりと示されます。
今まで、「オーリーはどうなるんだろうな?」「お母さんに会えたらいいな」「みんなに驚かれおばけなんて言われてかわいそうだなぁ」などという風な視点で見ていたところに、急にそれはこうだったんだよ!という、現実の地理の知識がわっと現れます。
物語と現実とを見事に融合させた一冊です。
名作です。
何より、オーリーはすごくすごく、可愛いです💖
子どもの本だな【広告】
バレエシューズ | いいおかお | はじめてのおつかい |
ムーミン谷の冬 | ヤマネコとウミネコ | でんでんむしのかなしみ |
あめの ひの ピクニック | おそばのくきはなぜあかい | がんばれヘンリーくん |
児童文学ランキング |
ファンタジーの名作「プリデイン物語」
今日、ご紹介するのは児童書です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
たくさんのファンタジー作品の名作がある中で、子どもに読ませたい、読んで欲しい作品として、私はこのロイド・アレグザンダーの「プリデイン物語」シリーズをあげます。
自分が楽しい!と思って読むファンタジーの作品はたくさんあるのですが、「子どもたちにも伝えていきたい」と思うファンタジーであるかどうかの条件のようなものが(勝手に)あります。
それは
・設定に凝りすぎていないこと
・名称が凝りすぎていないこと
・神話などにもともとあるモチーフが色濃く残っていること
・終わり方が後を引かずきっぱりと終わっていること
・人の生き方としての哲学がこめられているかどうか
・ファンタジーのようでありながら、現実を如実にうつす鏡であること
などなどです。
ファンタジーは「終わり方」「読んだ人がすっと現実世界に戻って来れるようなラストであること」が大切だと思っています。
エンデが「果てしない物語」でファンタージエンを通して、繰り返し警告していたことです。
ファンタジーは、現実世界を豊かにするための心の旅であってほしい。
一つの成長過程であり、その中にずっと閉じ込められてはならないのだという警告です。
この「プリデイン物語」はこれらの条件に完璧に合致していました。
そして、登場人物のテンションが割と軽いです。
ラノベテイストで読みやすいです。かなり安心感があります。
そうでありながら、敵が恐ろしいので、重たい展開にさっと走るときの緩急がものすごく…。
主人公タランは、老魔法使いのダルベンの農場で働く豚飼いの少年でみなしごです。
英雄ギディオンに憧れ、いつか英雄になりたいと願っています。
この世界は、魔王アローンの影響が濃くなっており、戦争の足音が近づいています。
そんな時、タランは厳しい目をしたもしゃもしゃ頭の旅人と出会うのですが…。
ギディオン王子はタランが想像していたような、いかにも「英雄!」というタイプではありませんでした。
(指輪物語のアラゴルンみたいですが、もっと親しみやすいです。)
ヒロインのエイロヌイ王女(プリデイン物語3で登場)が、不思議ちゃんであり、ツンデレであり、お姫様であり、やんちゃ娘であり、妖精の血を引いているという、すべてのライトノベル作品が求める要素を全部つめこんだようなキャラクターです。
主人公の性格が明るく元気で(本人はいたって真面目なのですが…)、軽い掛け合いが多く、指輪物語ほど重たくないしさらっと読めます。
周囲をかためる者たちもコミカルです。
主人公に忠誠を誓う毛むくじゃらのガーギ
吟遊詩人のフルダー・フラム
気難し屋の小人のドーリ
などなど、個性豊かで愉快な登場人物がそろっています。
魔王アローンの手下、角の王との闘いです。タランの最初の冒険となります。
魔女のアクレンのもとで、タランはエイロヌイという少女と出会います。
アローンの最大の力であるのは、「不死身」と呼ばれる死者の軍隊です。
これを作る黒い釜を奪回しようとしたところ、釜は既にアローンの居城アヌーブンから失われていました。
このあたりから、タランはエイロヌイへの気持ちに気付き悩み始めます(ストーリー紹介はどうした!?)→タランたちは、アクレンとの対決に挑みます。
タランはエイロヌイのことが頭から離れず、気持ちを打ち明けたいのですがエイロヌイは王女、自分の出自を確認する旅に出かけます。
ごらんのとおり、タランは割とずっとエイロヌイのことが気になってしかたなく、行動のになっているといってもいいぐらいです。
5.タラン・新しき王者
人間をまとめるドン家の居城が落ち、世界は絶体絶命に陥ります。タランたちは一か八かの勝負をかけて、アヌーブンへ向かい、魔王アローンと最期の決戦に挑みます。
この作品をやはり名作たらしめたのは、ラストの扱いでした。
指輪物語さながら、魔法の力はすべて去ることとなりますが、その時に訪れる、主人公タランの最後の選択──。
登場人物は皆どこかコミカルで、恋愛沙汰もあるというのに、そこかしこに作者が伝えたい、人生への哲学が込められた作品です。
先日、神宮輝夫さんの対談が載っていたので雑誌「飛ぶ教室 第61号(2020年春)」 を購入したのですが、「今、新訳を出すとしたらロイド・アリグザンダーなら面白いだろう」と書かれていて、本当にそうだなと思いました。
ラノベ世代に十分に訴えかける力を持つ、たいへんよい作品だと思います。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
5巻目はAmazonにはなく、e-honにはおいてあるようでしたので、注文は可能なようです。ニューベリー賞を受賞しています。
見てはいないのですが、アニメ化された時には「やはり」と思うほど、展開や軽さがアニメ、漫画に近いです。
(しかし、奥行きは深い!です!)
ウェールズ伝説を題材に、魔法と冒険が交錯するファンタジーアニメが低価格で登場。悪の帝王を封じ込めた壷を探し軍隊を作ろうとするホーンド・キングに、勇敢な戦士に憧れる少年・ターランが仲間たちと共に挑む。(「キネマ旬報社」データベースより)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
子どもの本だな【広告】
小人の冒険シリーズ 全5冊セット | オンネリとアンネリのふゆ | しろねこしろちゃん |
賢者の贈り物 | 十五少年漂流記 ながい夏休み | しょうぼうじどうしゃじぷた |
ロッタちゃんと じてんしゃ | しずくの首飾り | よるくま |
児童文学ランキング |
今日の一冊「みんなうんち」
今日、ご紹介するのは絵本です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
子どもにとって興味のある、そして大事な「うんち」をユーモアいっぱいの絵本にしました。「いきものはたべるから、みんなうんちをするんだね」というお話。
読みきかせのボランティアをしているとき、ちょっと真面目でしんみりしたお話を読んでシーンとなったようなとき…。
空気を換えたい…。
メリハリをつけるために選ぶのが下ネタ本です。
おなら、うんち…下ネタは下級生の子供たちに大人気です!
(残念ながら、と言うべきなのかどうなのか、上級生にも大人気です)
不謹慎かもしれませんが、この下ネタ系が大ウケした時には、昼休みまで引きずってずっと子供たちがうんこの話をしたりしています。
(主に男子です)
かがくいひろしさんのの「だるまさんが」もありますが、これはもっと、幼児向けのような気がします。
ナンセンス絵本の中でも特に秀逸な名作、「ごろごろにゃーん」のように、ちょっと深く考えてしまうようなところはありません。
なので、私はよく「みんなうんち 」を選びます。
これはうんちに特化していてなおかつ、うんちの形状やうんちの種類の多様性を紹介して、個性はそれぞれ…というようなところをふわっと伝えていたりしますので、割と奥が深い一冊です。
(うんちうんちとすみません…)
うわあっと笑ってくれたりしながらも、割とちゃんと見ていて、身近なうさぎのふんあたりから、自分の見たうんちのことを詳細に説明してくれたりします。
うんちは健康のバロメーターですし、先日(2020年5月12日)に亡くなられたジョージ秋山氏の漫画作品「浮浪雲」でもよく、主人公の浪人、浮浪雲が
「いいうんこしてますか?」
と周囲に聞いて回っていたのが、とても記憶に残っています。
こんな記憶も、どこかで、「みんなうんち」の本ととつながったりしますので、色んな読書の経験を積み重ねていってほしいなと思います。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
くじらのような、イルカのような大きな飛行機が海に浮かんでいます。大勢の猫たちがそれに乗り込み、「ごろごろにゃーん」と出発です。「ごろごろにゃーん」と、飛行機は飛んでいきます。魚を釣りながら「ごろごろにゃーん」。くじらにあっても「ごろごろにゃーん」。山を越え、街をながめ、飛行機はにぎやかに「ごろごろにゃーんごろごろにゃーん」と猫たちをのせて飛んでいきます。長新太の真骨頂! 斬新で愉快な絵本です。
「だ・る・ま・さ・ん・が」左右にうごくだるまさん。ページをめくると……あらら、びっくり! 大わらい! さて、おつぎは……? 0歳の赤ちゃんから大人まで、ページをめくるたびわらいの渦に引きこまれる、とびきりゆかいな「だるまさん」シリーズ第1弾です
ものすごくはまるお子さんと、怖いと言って嫌うお子さんと、 評価が別れる本です(笑)
でも、ハマるお子さんにとっておならのシーンはもうそれはもう……大人気です(笑)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ジョージ秋山先生に哀悼の意を表します。
問題作「アシュラ」をはじめどの作品も尖っていて哲学的で、大好きでした。
(100巻を選んだのは、キリが良かったからです)
子どもの本だな【広告】
チムとゆうかんなせんちょうさん | ナルニア国全7冊セット | ぼくは王さま |
白いりゅう黒いりゅう | ともだちは海のにおい | しょうぼうじどうしゃじぷた |
おとうさんの庭 | エルシー・ピドック、ゆめでなわとびをする | 銀のシギ |
児童文学ランキング |
今日の一冊「スザンナのお人形・ビロードうさぎ」
今日、ご紹介するのは、かなりしっかりしたページ数の多い、「本型の絵本」です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
ごうじょうでごめんなさいが言えずだいじなお人形を手放すことになったスザンナのお話と、ほんとうのなみだをながしたビロードの子うさぎの物語。おもちゃと子どもとの愛情をえがいたあたたかい絵本。
この一冊には二つお話が入っていますが。「スザンナのお人形」も、「ビロードうさぎ」もどちらも、単独であってもまったく力を失わない、とても印象的なお話でした。
この二つには共通点があって、どちらも子どものおもちゃを題材にしている、ということです。
子供時代を彩る大切な思い出のおもちゃ、ぬいぐるみ…。
その中にも、「特別な一つ」が必ずあるはずです。
フランスでは、子どもの手放せないおもちゃやぬいぐるみ、毛布のことをDoudou(ドゥドゥ)と言うらしく、最近ちょっとファッションっぽく紹介されたりしています。
このお話で見る限り、意味合いが少し違うような気もします。
というのは、「特別なひとつであるおもちゃ」を大切に思う心に、国境はなく、どこにでもあることと思うからです。
「スザンナのお人形」
きかんきの強い女の子、スザンナはパパ、ママの言うことをききません。
駄目と言われたのに無視して、花瓶をかたむけて花のにおいをかぎはじめました。
しかも返事が生意気です。
「おこづかい持ってるから買って返すわ」
駄目と言われてるのに、ほら言わんこっちゃない…。
ページをめくれば、すでに花瓶は思いっきり粉々です。
しかしスザンナは謝りません。
この主人公スザンナは、反抗期というよりもともとの性格が頑固みたいです。
お父さんは、多分、ここでひとつ徹底的にやらねばと思ったのでしょう。
何とスザンナのおこづかいでは花瓶を弁償するのに足りないので、スザンナのおもちゃを競売にかけることを提案します!!
お父さんはごめんなさいが言えたら(競売なんて)やめる、と言いますが、スザンナはそんな取引には応じません。
言わされてごめんなさいをいうのも違うでしょうし、かといってそのまま許すというのも違う気がします。
お父さんは競売を実行します。
スザンナはすばらしいおもちゃが次々、ご近所の子どもたちの奪い合いにあい、競り落とされていくのを特に何の感情もなくただ見ています。
これはフランスのお話ですが、なんとなくフランスっぽいなあ、と思います。
プライドが高く、めちゃくちゃ頑固で、動かないとなったらてこでも動きません。
(個人的感想です)
そして、競売に大騒ぎをする子どもたちの姿が、やたらとユーモラスです。
しかし、最後に出してきたとても値段のつきそうのない、ぼろぼろにはげた一つのお人形…(「病気のお人形」なんて紹介されています)
(スザンナはそれを隠していたのですが、乳母が見つけて持ってきたのです!)
スザンナはわっと泣き出して…
スザンナにとって、どんなすばらしいおもちゃも、たった一つのはげてボロボロのお人形と比べられないのです。
そして、お父さんも乳母も競売の進行役のおじさんも、そこを区別はしません。
これは大事なのだから、別にしてあげようね、などという配慮はせず、すべて平等に扱います。
非常な厳しさを感じると共に、ここまで追い詰めなければ自分のしたことに反省する事が出来なかったスザンナの強烈な意思に戦慄したりもするのですが…。
このような頑固さは、子どもは誰しもどこかに持っているので、大人は常に試されていると言えるかもしれません。
「ビロードうさぎ」
ちょっとしたきっかけで、ぼうやの「お気に入り」になったうさぎのぬいぐるみ。
ずっと何をするにしてもぼうやと一緒でした。
うさぎは夜の子ども部屋で、年取ったウマに、愛されたおもちゃは「ほんとうのもの」になる、という話を聞きます。
ウマは昔、ぼうやのおじいさんが「ほんとうのもの」にしてくれたのでした。
ぼうやに可愛がられて、ほんもののうさぎになったつもりでいたうさぎが、庭にいたときに本物の生きたリアルうさぎに会って、つくりものだ!と言われたときは、読んでいるこちらもつらいです。
でも、ぼうやとの絆があればいいのではないか?と思います。
しかし、ある日ぼうやが重い猩紅熱にかかります…。
「ばい菌の巣ですよ」というお医者さまの一言でうさぎはぼうやの知らないうちに、ゴミ箱に入れて捨てられてしまいました。
ごみ箱の中で、うさぎは悲しみに震えます…。
このお話は本当に泣けるお話で、こうして書いてる今でもじわ~っと涙が…。
「ビロードうさぎ」の方は、復刊も別訳も出ており、kindle版ですとよい訳が99円で読めたりしますので、内容を確認するには最適です。
しかも英語版のkindleもありますので、この美しい物語をダブルで楽しめることでしょう。
かなり探したのですが、この「岩波の子どもの本」以外で出展が確認できなかった「スザンナのお人形」の方…。
手元の本にも、「フランスのお話」とだけ書いてあり、原典がわかりません。(石井桃子さんの訳です)
「ビロードうさぎ」にあわせてこの「スザンナのお人形」を出版された当時の編集の方の配慮は、本当にすばらしいなと思います。
(どちらも、一冊ずつにしてもかまわないほどの文字の多さです)
実際に子どもに与えてみると、ちょっとした長く綿密な描写がある「小さな小説」である「ビロードうさぎ」よりも、「わがままなスザンナ」の方が話が面白く、競売のてんやわんやの大騒ぎもあって、ぐぐっと話に引き込まれて読んでいきます。
導入として「スザンナ」はたいへんすぐれていますし、この二つを合わせて一つの本にしていた出版社のかたの配慮が実にすばらしいな、と思います。
強情なスザンナの方は、子どもからおもちゃへの愛、ビロードうさぎの方は、おもちゃから子どもへの愛、です。
二つのお話のコラボレーションで、一つの完璧な物語となっています。
わたしもこの一冊、ボロボロになりながらも、ずっと取っておいています。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
The Velveteen Rabbit (Illustrated) (English Edition) Kindle版
Margery Williams (著), Lyudmila Khudiakova (イラスト) 形式: Kindle版
子どもの本だな【広告】
しずくのぼうけん | 火星の王女 | リンゴ畑のマーティン・ピピン |
大雪 | ジャッキーのうんどうかい | 風をつむぐ少年 |
むしばミュータンスのぼうけん | めっきらもっきら どおんどん | おそばのくきはなぜあかい |
児童文学ランキング |