がちキャン△~「ツバメ号とアマゾン号」 再読2 ウィンダミア湖でキャンプ、夢のよう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
夏休み、ウォーカー家の4人きょうだいは、小さな帆船「ツバメ号」に乗って、子どもたちだけで、無人島ですごします。湖を探検したり、アマゾン海賊を名乗るナンシイとペギイの姉妹からの挑戦をうけたり、わくわくするできごとがいっぱい!
舞台になったのはイギリス湖水地帯、ウィンダミア湖と言われています。
画像検索するだけでもものすごいインスタばえしそうな景色です。
最初に一番上のお兄ちゃんジョンがやったのは、船員雇用契約書を作ることでした。
船主:ウォーカー有限会社
こまかい…。
船長(キャプテン)、航海士(メイト)、AB船員(エイブルシーマン)、ボーイ(シップスボーイ)
なりきっています!
この子たちは遊びでありながら遊びでないです。
遊びを極めたとき、リアルを追求するという感じです。
本気で何かになりきって、それが大海原(湖)での大航海(ヨット帆走)なのです。
ロビンソン・クルーソーのように難破してみたり、そこかしこに「ダリエン岬」「リオ湾」など、おのおのの想像に合致する名前をつけています。
大航海時代の夢でしょう。
大航海の遊びをしている子どもたちにとって、おとなはすべて「原住民」「先住民」です。
お母さんの作ったテントはこういう感じです。
二つとも、後部は三角のきれでできていて、それが両側のきれに縫いつけられていた。テントの内側に縫いつけた一本の丈夫なロープが屋根の梁になった。このロープの両はしを二本の木に結びつけると、テントがもちあがり、柱はいらない。
ペグが打てない代わりに、石をつめるポケットがついています。入口には二枚の幕がついていて、縛って結んでおけるようになっています。
実によく出来ています。
このアウトドア描写のリアルさこそが、支持されている理由のひとつです。
しかし、面白いのはこれからです。まだナンシイ、ペギイのブラケット姉妹も現れていません!
「おとうさんと私も、若いときには、よくこんなテントで寝ましたよ」
なんてお母さんが言います。
どうやら、お父さんとお母さんも子供のときからのキャンプ仲間っぽいのです。
ジョンとナンシイも…いずれ…なんて、ちょっと考えてしまうのは下世話な想像です。
見送るお母さんに、ウォーカー四人兄弟姉妹は、「スペインの淑女たち」の歌を歌います。随所にたくさん、船乗りの歌が出てきます!
ヨット帆走のシーンが微に入り細に入り、実に細かいのですが...
ここはキャンプの気持ちの盛り上げのためですので(忘れかけてた)、ななめ読みします。
入江の北側の岬をはなれきってしまうと、風をちょっと強く受けて、船首の波切りの下では、波がザーザーと気もちのよい音をたてはじめ、それといっしょに、船尾で、航跡が長くあわだちはじめた。
う~ん、美しい描写です!
she found a little more wind, and the cheerful lapping noise began under her forefoot, while her wake lengthened out and bubbled astern of her.
内容や子どもたちのアウトドア&冒険については、面白いのでぜひ!という所なのですが...。
◇
やはりイギリス、と思われるのが牛乳の扱いです。
スーザンがやかましく、絶対に欠かさずお茶を飲ませますが(その時間にあわせ完璧に湯を沸かしています)、これには牛乳が絶対必要、必須です。
ミルクティーでなければならないようです。
煎れ方はやかんに直接茶葉を袋からあけていて、茶葉をどうやって取るのか非常に気になりました。
きゅうすのように、内部にフィルター穴がついてるのでしょうか。
そしてこの牛乳、むろん生乳です。
もたないので、お母さんが契約した農場に毎日取りに行くのです。
持ち運びにはミルクかんを使い、涼しいところに保管。
しっかり必ず毎回、洗います。
そうまでして牛乳が必要なのか…。
イギリスとは…。
しかし、食事はすべて直火、しぼりたての牛乳でお茶...。
すごくおいしそうです。
以前から不思議に思っていることがあります。
児童文学の中で見るイギリスの食事は素晴らしいものでした。
どのお菓子も料理もおいしそうで山盛り出てきます。
ここでも、料理の記述は詳細です。
ペミカンと呼ばれるコンビーフっぽい缶づめは、アーサー・ランサムファンであこがれない人はいないでしょう。
ゆでたまご、スクランブルエッグ(かきたまご、と書かれていますが…)
トーストにバター、釣ったパーチやニジマスの焼き魚。
実においしそうです。
長じてから「イギリスの料理=おいしくない」という世界共通認識があることにとてもびっくりしました。
イギリスに行ったことがなく、その料理を食べていないのでわかりませんが、いまだに受け入れられていません。
何でも、アングロサクソン人は舌の味覚のツボ(味蕾)が少ないのだとか…?
しかし、今調べてみたらどうやらフェイクニュースっぽいです。
イギリスの人は料理にこだわらないというのは絶対に間違いです。
本当においしそうだし、ものすごくこだわって几帳面に記述しています。
話のとおり本当にマズいのだとしても、いつか自分の舌で確かめてみることが夢です!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
原書のkindle本です。
「Swallows and Amazons」で検索すると、kindleもたくさんの種類が出てきますが、こちらはアーサー・ランサムのシリーズをすべて網羅していながら199円という安さなので、とてもおすすめです。
つづきます。
がちキャン△~究極のアウトドア体験!「ツバメ号とアマゾン号」 再読1
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がちキャン△~究極のアウトドア体験!「ツバメ号とアマゾン号」 再読1
今日、ご紹介するのは児童書です。
だんなが久しぶりにテントで一泊する計画をいつの間にか立てていました。
しかし、あまりにも急で、しかもコロナがまた再燃しはじめている頃です。
こんな時にキャンプして本当に大丈夫なのだろうか、という疑念が…。
子どもたちも変な顔をしていて、今ひとつ乗り切れていません。
キャンプというと、キャッキャ・ウフフの楽しい散策を想像するかもしれませんが、現実は虫とススと灰と汗との闘いです。
どちらかというと上の子は家でゲームの方が好きなのに無理矢理に連れ出され、下の子は目を離すと大変…。
すでに上の子はテンションが下がっています。
◇
しかし、久しぶりなので何とかして気持ちを盛り上げたい。
こんな時にはイメージトレーニングです。
とりあえずは視覚から。
「ヒロシのひとりキャンプ」
「モリノネ」
などなど、有名YouTubeチャンネルを一とおり見た後に、子どもに言いました。
「『ツバメ号とアマゾン号』持っておいで!」
キャンプするならこれが一番です。
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今日の一冊
夏休み、ウォーカー家の4人きょうだいは、小さな帆船「ツバメ号」に乗って、子どもたちだけで、無人島ですごします。湖を探検したり、アマゾン海賊を名乗るナンシイとペギイの姉妹からの挑戦をうけたり、わくわくするできごとがいっぱい!
アーサー・ランサムのシリーズは、キャンプというより、クルージングというか…ヨット帆走のお話なのですが、私はどちらかというとキャンプの部分が一番頭に残っていました。
伝統あるアウトドアの教科書です。
一緒に続編も持ってきてもらいました。
確か序盤に、入念な準備をしていたはず。
「ツバメ号とアマゾン号」
これは、キャンプ系Youtubeチャンネルの中でも、一番リアルなキャンプらしいキャンプである、ヒロシのひとりキャンプどころの騒ぎではないです。
いっさいのゆるさがないです。
いわばゆるキャン△ならぬガチキャン△です。
そもそも、お母さんはテント手縫いです。
◇
まずは準備のところです。
序盤は、末っ子のロジャーが帆走している気分になりながら走るところなど、とても牧歌的で美しい描写です。
ロジャは7歳。
小学2年生の子どもが、いくらお兄さんお姉さんがいるといっても、子どもたちだけで
ヨットを走らせ、キャンプをする…。
(正確にはスクーナーなのですが)
現代では考えられない価値観と思われそうですが、この親たち、子どもたちの危険に実に気を配っています。
そこが実際に子どもたちだけでキャンプしているようなリアルさに説得力を持たせています。
キャンプのためにはまず準備です。
さきほど言及した手縫いのテントをはじめとした、長いリストがあります。
今回は、再読にこちらの神宮輝夫さんの新訳を使いました。
もともと、持っているのはこちらの灰色の方です。
児童図書館に通っていた記憶のあるかたなら、この本が並んでいたことを見たことがある方もいらっしゃることでしょう。
分厚く、灰色で、ずらっと横並びに本棚を席巻し、存在感を放っていました。
どちらも神宮輝夫さんの訳ですが、新しくもう一度訳しなおされてます。
というのも、灰色の古いほう、装丁もしっかりしていれば訳もすばらしいのですがちょっと問題があります。
「土人」という表記が出て来るのです。
ちなみに新訳では「原住民」となっていました。
いっそう気を使うようになった昨今では、「原住民」すら微妙かもしれません。おそらく「先住民」です。
しかしまあ、そんな事を言っていてもつまらないので先を読み進めます。
◇
キャンプのためにはまず準備。
このウォーカー四兄弟姉妹は、そもそもが最初から子供だけでキャンプしてるのでキャンプにはなれています。今は近くの岬の突端のあたりで子供だけでキャンプをしています。
しかし、夜寝るのは農場。
(この農場はこういう避暑地、キャンプ施設、宿泊施設を兼ねているようです)
四人兄弟姉妹を軽くご紹介すると
(船長) 長兄 ジョン リーダー気質のりっぱなお兄さん。
(航海士)長女 スーザン スーパーカリスマ主婦。
(AB船員)次女 ティティ 読書家。空想癖。未来の作家。
(ボーイ)次男 ロジャ 7歳。
今、お母さんは末子のヴィッキーがいるので、手が離せません。
ジョンとスーザンはもう自分でヨット帆走が上手にできるようになっています。
おそらく読んでいる立場としては、ティティが一番親しみが持てる性格です。
しかし、ウォーカー兄弟姉妹が出る巻において特筆すべきはやはりスーザンで、このスーパーカリスマ主婦は本当にすごいです。
「スーザンの料理帳・子どもだけで楽しむアウトドア料理~キャンプの心得」
などという本があったら間違いなく購入してしまいます。
読みながらいつの間にかスーザンのことをすごく頼りにしてしまいますし、この子がいるからすべての冒険は成り立っているんだと言えるほどの人物です。
料理・洗濯・掃除・下の子の世話すべてパーフェクトです。
リストのほとんどを作るのはもちろんスーザンです。
コンパス、やかん、おなべ、フライパン、旗、テント、毛布、望遠鏡、なべ、マグ、ナイフ、フォーク、皿、お茶、塩、砂糖、パン、ビスケット、コンビーフ、イワシ缶、卵、大きなシードケーキ...
どんどん、キャンプらしくなってきました。
つづきます。
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今日の一冊「あたまにかきの木」
今日、ご紹介するのは絵本です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
日本の民話ということで、柿の季節にぴったりです。 じろべえさんは酒飲みで怠け者、ということで、 る日酔い覚ましに柿を食べた時、うっかり種を飲み込んでしまったのです。 すると、頭に柿の木が生え、柿が豊作、ということで、 じろべえさんはそれを茶店で売って、飲み代にしてしまうのです。
「ああ、昔話系ね」と思って手に取ってみてください。
予想外の字の多さで、しかも字が小さいです。
つまり、絵本の中にみっちりとした物語の展開があります。
酒のみのじろべえさんは、昼間っから酒をかっくらっています。
今日も朝から酒を飲み、柿を食べたのですが、うっかり種までのんじまいました。
じろべえさん、頭から柿の木が生えてきてびっくりするのですが、この木を切ってしまったり、取ろうとあせったりはしません。
そこがさすが昔話の主人公、ものすごいポジティブ&プラス思考です。
この頭から生えた柿の木をビジネスチャンスと捕え、売りさばいて好きな酒をおもいきり飲み暮らそうというのです。
それもこれもおさけがのみたいから!
得意分野かつ個人的嗜好は、エネルギーになります。
しかし新興勢力が起きるとき、そこには必ず既存勢力との軋轢が生まれます。
(これは何の話だったっけ?)
自分たちの商売を脅かすとみて怒る柿売りたち。
抵抗運動は暴力を伴います。
…つまり、じろべえさんの頭の柿の木は切り倒されてしまいます。
ちなみにじろべえさんは酔っ払って寝ているので何にも気がつきません。
起きたじろべえさん、柿の木がなくなっていてびっくりしますが、しかし、その切り株にはきのこが…。
きのこを売って酒をかっくらって寝ていれば、きのこ売りたちが…。
ポジティブ&プラス思考のじろべえさんがやろうとすることをなんでも、じゃまする既存の保守団体です。
切り株を引っこ抜かれればそこには水がたまって鯉が…→鯉売りが…
字は割と小さめですが、昔話というのは要は繰り返しが多いので、決して読みにくくはありません。
昔話の繰り返し展開、これもまた、子どもに何かを読ませるという点ではすばらしい効果があります。
子ども、二度、三度と同じような展開が出て来るたびに、文字を追うことに慣れて安心して読みすすめられます。
最後まで運の良い酒好きなじろべえさん、ついに掴んだ成功への道とは!
なんだか「昔話に学ぶビジネス展開とは。~ポジティブ・マーケティング~好きなことは行動の原動力になる」的な啓発本みたいになってきました。
(この題名、デタラメですけどすごくありそうです)
「あたまにかきの木」
子どもたちに現実の厳しさを教えつつ、成功体験も植えつける。
万事塞翁が馬。
ナンセンスな物語のふところの深さ。
昔話は奥深いのでした。
…という説明はどうでもいいのであって、単純に面白く、楽しく詠める昔話です。
恐ろしい天敵から身を守るため、小さな茂みに隠れすんでいたバッタが決心して、大空に向かって飛んでいった。力強く痛快な絵本。
絵を描かれた田島征三さんの「とべバッタ」です。
またご紹介したいと思います。
名作です!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
じいさんとばあさんが育てている子馬をねらって、泥棒と狼は、それぞれ厩に忍びこんでかくれていました。じいさんとばあさんが「この世で一番怖いのは、泥棒よりも、狼よりも“ふるやのもり"だ」と話しているのを聞いて、泥棒と狼は、どんな化け物だろうと震えていると、そのうち雨が降ってきて古い家のあちこちで雨漏りしてきて……。田島征三のデビュー作となった昔話絵本。
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ロッタちゃんのひっこし | ノンちゃん雲に乗る | ロビンソン・クルーソー |
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今日の一冊「ガンピーさんのふなあそび」
今日、ご紹介するのは絵本です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
読みボラのみなさんだれもが大好きな「ガンピーさんのふなあそび」
大型本も出ています。
ふんわりとした水彩基調の絵に、やさしい内容。
ガンピーさんという名前はしっかりと記憶に残りますが、内容(どのどうぶつが乗り込んだか)を忘れてしまうので、毎回新鮮です。
船をこぐガンピーさん。
それほど大きい感じでもない、普通のボートです。
その船に、ひたすら色々な動物たちが乗り込んでいきます。
こども、うさぎ、ねこ…。
ページをめくるたびに、何か新しい動物が現れます。
やさしい「てぶくろ」といった雰囲気でしょうか?
そんなに大きいイメージでもなかった船の許容範囲がどんどん、どんどん、広がっていきます。
動物が出るたびに、見開きの右側のページを1枚、そのどうぶつの絵に使うのですが、その絵がとても素敵です。
紙から浮き上がっているような存在感のあるどうぶつたち。
(ガンピーさんおよびほかの既に乗っている動物たちはうっすらしています)
今回、これを書くにあたって数えてみましたが、一番最初に乗り込んだ子ども「たち」というのは何人に数えるかは置いても、全部で9種類でした。
ガンピーさんは乗せるときに毎回、念を押します。
「~しないならね」
とびはねないならね、うさぎを追いかけないならね…などなどです。
しかし、9種類ぜんぶを乗せ終わってからそのうち…。
もちろん、全員がだめなことをはじめるので、船は派手にひっくり返ってしまいます!
読みきかせをきいているこどもたちは、だんだん不安な顔になっていきます。
ひっくり返った時には
あーやっぱりね
という感じで笑うなのですが、ちょっと「やっちゃだめ」と言われたことをやっちゃってひっくり返ってしまったので、若干、不安そうになる子もいます。
怒られるんじゃないのかな…?
もう乗せない!と言われるのでは?
しかしそこは、どこまでもおだやかで動じないガンピーさん。
落ち着いた調子で皆を陸に上げてつれていきます。
怒ったりなどまったくありません。
さいごのテーブルを囲んでのお茶がとてもほのぼのとしてすてきです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
てぶくろ (世界傑作絵本シリーズ) (日本語) 大型本 - 1965/11/1 エウゲーニー・M・ラチョフ (イラスト), うちだ りさこ (翻訳)
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ふしぎなかぎばあさん | ぞうのたまごのたまごやき | 小公子 |
りんごかもしれない | ジェイン・エア(上) | 完訳 ファーブル昆虫記 |
小人の冒険シリーズ 全5冊セット | イギリスとアイルランドの昔話 | ルピナスさん―小さなおばあさんのお話 |
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大人が読む児童書「第九軍団のワシ」4 読了です。すばらしかったです
大人が読む児童書。
「積ん読・解消計画★児童書編」です。
この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
ローマ軍団の百人隊長マーカスは、ブリトン人との戦いで足を負傷し、軍人生命を絶たれる。マーカスは親友エスカとともに、行方不明になった父の軍団とその象徴である“ワシ”を求めて、危険に満ちた北の辺境へ旅に出る。(「BOOK」データベースより)
読了です!
あまり深く冒険の細部にはふれず、さらっと感想を語らせてもらいたいと思います。
◇
マーカスとエスカが旅をするブリテン島の北部ですが、ローマ支配地域がイングランドであり、あくまでローマの支配を拒み通した土着のケルト人たちが今のスコットランドであることがよ~くわかります。
壁が築かれていたことも知りました。
ノルマン・コンクエストよりもはるかに早く、この頃に既に、イングランドとスコットランドは二つの国となる基礎はできていたのだなと思いました。
そして(今の)スコットランド地方で大敗した第九軍団の中からも、たくさんのローマ人が土地の民と交わり交配をして交わっていったこと、交易を通じて交流があったことを知りました。
そして、いんちき目医者がこんな所で生きてくるとは…!!!
序盤から、何ひとつ無駄なことはなかったのです。
◇
エスカが奴隷であることを思い知らされて怒るマーカスの場面を読んでいて、「この時代にもそんな考え方をする人間がいたんだな~」、と思ってはっとしました。
これは現代の人間が書いたものじゃないか!
いつのまにか、その緻密な描写と、詩的な目線と好感の持てる人間像とに導かれて、すっかり物語の中に入り込んでいたのです。
マーカスとエスカ、治らない足を持ったことと、奴隷であったこと、二人はともに、種類は違うものの、癒えることのない傷を負っています。
この二人は、この旅をすることによって、何かを乗り越えました。
ローマ人であるマーカスとブリテンの民(ケルト人)であるエスカとの絆は、最初にマーカスが信頼と友情を寄せていた狩人クラドックが示した、決して埋まることはないかと見えたみぞを埋めていきました。
マーカスとエスカの冒険をともにして、息詰まる逃走劇を描ききり、危機を乗り越えて帰った場所に待っていたもの。
終盤にマーカスが言います。
おれたちに出来る唯一のことは、おれも、おまえも、傷があっても、それを気にしないで暮らすことだ。
このひとことの大切さを身に染みて感じる、この感情を伝えるのに、サトクリフ以外の人がふさわしいとは思えません。
サトクリフは女性。体が弱く、病気をわずらい、生涯車椅子生活であったこと。
ぜんぶ関係ないのだ。
そう思いました。
逃走劇の躍動感は、筋肉の動きまで見えるようでした。
誰かがどこかの土地へ行った体験を語るとき、それを聞いたり見たりする私たちの胸にはどこか、その素晴らしさをどんなに熱心に語られても、他人ごとの話…という感覚があります。
また自分の体験することのなかったことを体験した人を目の前にするとき、ある意味羨ましいという気持ちが芽生えることもあるかもしれません。
でもサトクリフがこの物語を描き、わたしがそれを読むことで、サトクリフとわたしは一緒に冒険をしたのです。
まるでその人の中に入り込んだようになり、いつの間にか一体となっていました。
傷を負っても生き続けることの意味。
サトクリフのひとことが重く、そしてこれ以上なく、心にしみいりました。
そして、青少年のためにこの本があるのだということを深く深く理解しました。
みんながオリンピック選手になるわけではなく、成功者と呼ばれる人はひとにぎりです。
こどもたちは夢の挫折に遭うこともあります。いま挫折を知らなくても、やがてぶつかることもあるでしょう。
どこかで現実に向き合わねばならず、そして挫折の傷を負って生きていかなければならないときが来るかもしれない。
若い人々への、励ましともなり、希望の炎ともなる物語です。
すばらしい本でした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
衰退したローマ帝国は、450年にわたるブリテン島支配に終止符をうつ。地方軍団の指揮官アクイラは、悩んだ末に軍を脱走し、故郷のブリテン島にとどまることを決意したが…。意志を貫いて生きることの厳しさ、美しさを描く。中学生以上。(「BOOK」データベースより)
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かたあしだちょうのエルフ | かるいお姫さま | 大どろぼうホッツェンプロッツ(全3巻) |
銀のほのおの国 | チポリーノの冒険 | むしばミュータンスのぼうけん |
ジャッキーのパンやさん | 魔法使いのチョコレート・ケーキ | 名探偵カッレくん |
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大人が読む児童書「第九軍団のワシ」3 面白くて読む手が止められない
大人が読む児童書。
「積ん読・解消計画★児童書編」です。
この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
ローマ軍団の百人隊長マーカスは、ブリトン人との戦いで足を負傷し、軍人生命を絶たれる。マーカスは親友エスカとともに、行方不明になった父の軍団とその象徴である“ワシ”を求めて、危険に満ちた北の辺境へ旅に出る。(「BOOK」データベースより)
ここからは、ネタバレなんて書いてはありますが、読んでのお楽しみとして、 さ~っと紹介をすることにします。
もう夢中になって読む手をまったく止められませんでした。
気になったところを書き連ねていってみようかと思います。
①ローマへ報告してくれた司令官
死線をくぐりぬけた戦いが終わり、救援隊の司令官が来ますが、この人が「態度の冷ややかな、陰鬱な顔つきの男」です。マーカスはすっかり腐った気分になって冷たくあしらうのですが…この司令官、態度が冷ややかですが良識のある人間で、マーカスの功績について最高の報告をしてるのです!
いわゆるギャップ萌えというやつでしょうか。(そんな言葉使うな!)
②バラの花弁
マーカスが軍に入った時にはまだつぼみだったバラが、いつのまにか咲き、そして後継者に引き継ぎをして軍にも別れを告げた時に、最後の花弁が散っていきます。
非常に詩的で美しく、かつ時の流れも効果的に使ったすばらしいシーンでした。
③おじさんの家にいる料理番のおばちゃん
おじさんは独身で館には若者がいないので、この料理番のサスティかはあれこれマーカスを子どものように世話を焼きます。「その当時マーカスは親切というものを恐れていたから──サスティカをほとんど憎むようにさえなってしまった」という一言はとても印象的でした。
まあ、世話焼きのおばちゃんがウザいのは仕方ないですが、でも結局、マーカスはサスティカにも慣れていくのですが。
これもまたギャップ萌えの一つです。(ちがう)
④病床にいるマーカス
サトクリフは病床生活を送っていた人であることを、知識として知っていましたので、感慨深く読みました。そして、その生活でなければ見られなかったであろう視点、たとえば風が吹き抜けるだけのシーンにしても、その物悲しくも印象的な場面が一つひとつ刻まれて、こちらの胸にしみいるようでした。
私はあまり、物語から作者を投影したり読まないようにしているのですが、ここは少しだけ、生涯、車椅子生活だったという作者サトクリフのことに思いを馳せずにはいられませんでした。
⑤マーカスは気の合わない高級官僚の叔父さんから、退役軍人である叔父さんのところに身を寄せたわけですが、お父さんの弟なので漠然と父の面影を追っているわけです。
しかしそれが…
マーカスはもう大分以前から、叔父を誰かに似ている、とか、似ていない、とか考えるのをやめにしていた。叔父はただアクイラ叔父であるだけなのだ。
なんてすばらしい文章なのだろうな、と思いました。
この一文がとても好きでした。
マーカス、おじさんちで「ローマの詩人バージル」の作品を読んでいます。
ヴェルギリウスだ!!
ここではバージルと訳されていますし、Vergiliusは英語の本ではほぼVergilなので、たまに誰…?と思うときがあります。
◇
このように、マーカスは叔父さんの家で傷を癒します。
そして、闘技場で二人の人物に出会います。
おとなりの娘、コティアと、剣闘士として出てきたエスカです。
(実のところをいえば、サーカスの経営者たちは、そうやすやすと剣闘士を殺してしまっては引きあわないのだった)
なるほど、なるほど!
ローマもののお話はとても好きでよく読んでいるつもりなのですが、こういう視点はなかったです。
最近のAmazonプライムのドラマでも、「ROME ローマ」 という良質のドラマがありましたし、クォ・ヴァディス もそうでしたが、剣闘士のシーンには指を上に立てるか下に立てるかで、生か死かを観客が決めるシーンがつきものです。
これを実に効果的に使っていました。
ここからは話すと面白くないので、ぼんやり、あっさりとお話しますが、コティア、エスカ、そしてエスカが捕まえてきたオオカミの子のチビは、マーカスに寄り添い、マーカスを大事に思ってくれて、マーカスにとっても大切な人となっていきます。
ここまでが半分です!!
さて、叔父の友人、参謀将校プラシドスの訪れにより、ついにワシ探しの旅が始まります。
ワシを探すとともに、父親の行方を探す旅でもあります。
もうここからは、本当に面白く…。
ページをめくる時間も惜しいほどの面白さ…。
もう、最高の一冊でした。
しかしこれをここまで面白くしているのが、半分も費やして描かれた冒頭~中盤までの、丁寧なマーカスという人となり、マーカスの傷を負った運命にあることは間違いありません。
どんな都市にも、その裏に隠された独自の歴史がある。HBO制作のドラマ「ローマ」は、古代ローマで繰り広げられた愛と策謀の物語である。共和政ローマが終わり、帝政ローマに移行する激動の時代、将軍と兵士、主人と奴隷、夫と妻、それぞれが絡み合い、男女の愛と欲望、権力をめぐる陰謀の物語が展開する。前編では、カエサルが帝国の礎を築きながらも、志半ばで倒れるまでを描く。エミー賞で8部門にノミネートされ、4部門を受賞した歴史超大作。製作期間も企画から撮影終了まで約8年もの歳月を費やすという破格のものとなった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
衰退したローマ帝国は、450年にわたるブリテン島支配に終止符をうつ。地方軍団の指揮官アクイラは、悩んだ末に軍を脱走し、故郷のブリテン島にとどまることを決意したが…。意志を貫いて生きることの厳しさ、美しさを描く。中学生以上。(「BOOK」データベースより)
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ヒナギク野のマーティン・ピピン | ひさの星 | さすらいのジェニー |
鹿よ おれの兄弟よ | あさになったのでまどをあけますよ | ちいさなきいろいかさ |
日本のむかしばなし | 冒険者たち ガンバと15ひきの仲間 | ムギと王さま |
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今日の一冊「リディアのガーデニング」
今日、ご紹介するのは、かなりしっかりしたページ数の多い、絵本です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
田舎育ちのリディアは家の事情が良くなるまで、町でベーカリーをしているジムおじさんの所に滞在することになりました。ところが、ジムおじさんはにこりともしません。リディアはおじさんを笑わせようと秘密の計画を立てます。コールデコット賞オナー・ブック。アメリカ図書館協会優秀図書。(「MARC」データベースより)
手紙形式で、しかも絵本という珍しさです。
手紙型の子ども向け(?)の本というと、「あしながおじさん」を思い浮かべますが…。
カバーの説明によると、1930年代のアメリカの不況時代を背景にしているとか。
絵本はあとがきがないものですが、このカバーにあとがき的な説明を載せてくれた装丁がグッドです。
大変そうだけど明るい本です。
ものごとの明るさを見る、子どものパワーがあふれています。
そして絵がとてもとても素敵です。
さて最初の手紙からして、大変そうです。
日付からして、なるほど1930年代の夏です。
1935.8.27
ジムおじさんへ
うちの暮らし向きが良くなるまでのあいだ、私を町のおじさんの家によこしたらどうかといってくださったそうですね。(略)
もう長いこと、パパに仕事がなく、ママに仕立物をたのむ人もいなくなったと、おばあちゃんからお聞きになったことでしょう。
く…暗い…。
身につまされる…。
というか、どうなるの!?
1ページ目から不安がつのります。
しかし、めくって最初の1ページで読むのをやめて欲しくはないのですよね~(煽り?)
こんな風に手紙は続きます。
でも、ママが子どものころ、おじさんに木の上まで追いかけられた話をしたので、笑ってしまいました。
どんな時も明るさを忘れない前向きな子供である感じです。
しかし、そのあとも、駅での旅立ち、電車の車内…。暗いです。
絵もリディアの不安を示しているようです。
手紙は見開き1ページにつきだいたい1通ずつ続きます。
おじさんの家に行ってからは手紙を送る相手は逆に家族になります。
おじさんは無愛想でニコリともしません。
気むずかしそうです。
これは…「家によこしたらどうかと言ってくださったそうですね」なんて書いてましたが、おじさん、仕方なく引き取った感満載です。
しかし、この子はおじさんとなじもうと明るく振舞います。
・長い詩を書いて渡したり(詩を書くんだ)
・おじさん読んでから(読むんだ)
・ポケットにしまいます(しまうんだ)
おじさんも怖そうだけど悪い人じゃないみたいです。
おじさんの住む街はごみごみして、暗くて、ちょっとさびれた都会の下町っぽいです。
階下のパンやさんにこの子はパン作りを習います。
おばあちゃんから球根が送られ、パンを作りながら花を育てます。
そして見つけた秘密の場所…。
雰囲気は、「魔法や魔女がない魔女の宅急便」です。
いつのまにか暗い街の片隅に花があふれ、パン屋は繁盛しはじめます。
花!花!花!
花とケーキ!
字がいっぱいで、よく読ませる絵本です。
しかし手紙ではあるので、書いてない部分もたくさんありそうなのですが、その余地の物語を絵が語ります。
想像がふくらむとても素敵な絵本です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
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大人が読む児童書「第九軍団のワシ」2 この作者、ただ者じゃない。
大人が読む児童書。
「積ん読・解消計画★児童書編」です。
この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
ローマ軍団の百人隊長マーカスは、ブリトン人との戦いで足を負傷し、軍人生命を絶たれる。マーカスは親友エスカとともに、行方不明になった父の軍団とその象徴である“ワシ”を求めて、危険に満ちた北の辺境へ旅に出る。(「BOOK」データベースより)
序盤に時間をかけすぎるのもと思うのですが、序盤はとても大事なので大事に読み進めます。
ゆくてには空ばかりがみえる平らな湿地帯のなわて(湿地帯の中に土を盛り上げてつくった道)となり...
(略)兵士たちのまきあげる砂ぼこりが、うしろに従う駄獣隊をつつんでいた。
なわて。
駄獣隊(だじゅうたい)。
注釈もついてるし、意味もわかります。
でもはじめて見ることばばかりです。
ファンタジーを書くかたには、ものすごく勉強になるのではないかと思います。
さて部下たちは、「上ゴール地方から召集されてきた黄色い髪の巨人たち」で、主人公の司令官は生粋のローマ人なのですが、この部下たちの描写にこちらは不安を抱きました。
先に「ともしびをかかげて」を読んでいましたので...。
主人公の百人体調の名前はマーカス・フラビウス・アクイラ。
まだローマ最盛期の頃。
フラヴィアとアクイラの兄妹の描写などからして、どう考えても祖先です。
(このあたりの姻戚関係はちょっとまだ確認できませんでした)
その当時のローマは、女性の名前はフラビウス家ならフラヴィアになると、どこかで読んだことがあります。
ネットのにわか知識です。
上ゴール地方、ゴールとはおそらくガリアのことです。
ざっくり言ってフランスの上の方あたりでしょう。
でもここではあまり関係なさそうなので先を読み進めます。
主人公は、イタリア、トスカナ地方あたりにあった古代エトルリアの出身です。ローマ人だ。
浅黒い肌、オリーブ色の肌、南方系の特徴があります。
父が亡くなった第九ヒスパナ軍団の喪失。
これは重要です。
なぜなら、文庫裏描写の説明文にもそう書いてます。
マーカスは軍人気質、育てられている叔父は財産を鼻にかけているふとった官吏。
制服組と背広組?高級官僚と自衛隊員?
わかりあえない感じなのがわかります。
貧乏はしても誇りだけは高くもっている、という家柄
武士は食わねど高楊枝、でしょうか。
このおじとの確執はこんな感じです。
ふたりとも互いのものの考え方に、髪の毛一筋ほどの理解も示そうとはしなかったから、マーカスが十八歳になり、百人隊長の地位を得ることができる年になった時には、双方ともそれをありがたく思ったのだった。
なんてシンプルにわかりやすい説明でしょうか。
ちょっと感動しました。
くだくだしい会話を入れることもなく、おじがどんなに嫌な人間であるか、という説明描写を入れることもなく、たったこの一行で完璧に二人の確執と過去の背景を描ききっています。
これまで様々な本を読んできましたけど、ここでちょっと襟を正す思いがします。
この作者、只者じゃない。
という気持ちがします。
敷居が高いのはその通りですが、決して難解ではありません。
「ともしびをかかげて」も、途中で面白く手ページをめくる手がやめられないほどでした。
ここでまだこれは450ページ中14ページなので、先にすすみます。
そしてマーカスは、イスカ・ダルオなんとか(おいっ)のブリテン島の兵役についたわけです。
ここで先住民、ブリトン人のの反乱が起き、マーカスは戦いの中で傷をおいます。
この序盤、とても丁寧です。
・狩人クラドックとの交流
・将来への漠然とした夢
・近くに、もうひとり父親の弟であるおじさんが住んでいること
・ローマの軍団の生活
などなどが語られますが、印象的だったのはドルイド僧に対する言及でした。
前任者から、ドルイド僧に対する忠告が語られます。
(あちこちさまよい歩いているドルイド僧が)もしこのあたりにひとりでも姿をあらわしたら、あるいは、姿をあらわしたらしい、という噂を耳にしただけでもですよ、すぐに武器の準備をなさい。
あの連中は昔から外敵に抵抗するブリトン人の精神的支柱でした。
(中略)
ドルイドは聖なる戦いを起こせと説いて回る。なにしろ連中は結果というものを全然意に介さないのだから。
こ...これは...。
連中だってわれわれを悪魔の友だちとばかりは考えていません。地方守備隊をやっつければ、お返しの大征伐がやってくることぐらいはわかっているのです。家や田畑が焼かれ、以前にまして協力な軍隊がやってくることもね。だがドルイドのひとりがかかわると話は別になってしまうのですよ。またたくまに火がつきます。蜂起することで得することがあるかどうか、なんて連中は考えなくなってしまう。考えることを全くやめてしまうんです。連中はやつらの神を信じない者の巣をいぶり出して、自分の信仰を守ろうとするのです。あとで何が起こるか考えやしません。なぜって連中はそうすることで戦士の道を通って太陽の沈む西の方へいく、と信じているんですからね。人びとがそんな状態になれば、もめごとが起こるのは目にみえていますよ。
こんなにも、国際的な紛争についての示唆に富んだ作品があるでしょうか。これは1954年に書かれた作品です。
何らかの宗教により軋轢が起き、紛争が起きたとき、それをわたしたちは理性で何とか受け止めようとします。説明をしようとします。
そして、説明できないことをばかにします。
「神の名のもとに戦争するなんてばかげている…」と。
しかし、なんとなく文化に溶け土に溶けた長年の考え方というものがあり、生死があり、それを見守ってきた我々の神仏があるわけです。
どこかで集団のヒステリー状態になり、それを導く何かの「精神的支柱」があるとき…。
それを守るために、狂ったようになる集団心理を、決して否定できないと思います。
このドルイドに関する記述、観察力、表現力が、すごいなと思いましたし、実際にこの「第九軍団のワシ」は、この「精神的支柱」「シンボル」の戦いの話なのでした。
このような忠告を受けながら、マーカスはブリトンの中のローマ軍の生活をしていくわけですが、相変わらず実に描写がすべて緻密です。
この緻密な描写が、戦いのシーンでも遺憾なく発揮されます。
カメの甲状の陣形を作るシーンがあります。
方円の陣や魚鱗の陣のようなものですが、劣勢をしいられるマーカスの軍は、これで活路を見出します。
ローマ軍のテストゥドという陣形のようです。(敵陣突破の陣形と書かれています)
この激しい戦いの中で、マーカスは一か八かの賭けに出て、戦車の御者を狙います。その御者の顔を見た時の衝撃…。
この戦車の車輪の下敷きになったマーカスは、致命的な傷を負ってしまいました。
軍人としての夢は断たれてしまいます。
あれほどの戦闘を潜り抜けたというのに。
マーカスは叔父さんの家に行き、傷を癒しながら新たな出会いをします。
この傷をマーカスが受け入れることが出来るようになるまでは、長い時間がかかりました。
裏表紙の説明はこうです。
ローマ軍団の百人体調マーカスは、ブリトン人との闘いで足を負傷し、軍人生命を絶たれる。マーカスは親友エスカとともに、行方不明になった父の軍団とその象徴である<ワシ>を求めて、危険に満ちた北の辺境へ旅に出る。
今まで説明してきた中で、まだエスカと出会ってもいません。
親友にもなっていません。
もくじは21あるのですが、出発したのは10です。
およそ半分が経過して、やっと冒険の旅が始まるのです。
どんだけ~!?
しかし、あまりにも描写がすばらしいので、戦闘に対しても、マーカスが傷や運命を受け入れられないことも、うまく動けない苦しみも、すべて痛いほどわかるし感じます。
この序盤あってこその、北の大地への冒険なのです。
さてこうして序盤の展開をかなり詳しく追ってきました。
こうして引用を交えてご紹介しているわけですが…。
本を読んで欲しいと思うにあたって、導入というのはとても大切です!
名作、大作には序盤が敷居が高く、難解なものが多いです。
読み始めて二行で後悔するか、ほおりだしたくなる感じです。
ここの我慢が出来るかどうか...。
する価値がある、という本であるかどうか...。
名作は書き出し、頭だしの一文が良いとよく言われますが、経験上全然そんなことありません。
幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである。(岩波文庫 中村 融訳)
こんなのは、特別中の特別です。
有名な作品なのに序盤これかよ!?ということ、たくさんあります。
ちなみに「第九軍団のワシ」は、2ページ目の描写で好きになりました。
こんなに硬派でありながらも、風景描写には詩情が感じられて、読んでいてとても美しいです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
衰退したローマ帝国は、450年にわたるブリテン島支配に終止符をうつ。地方軍団の指揮官アクイラは、悩んだ末に軍を脱走し、故郷のブリテン島にとどまることを決意したが…。意志を貫いて生きることの厳しさ、美しさを描く。中学生以上。(「BOOK」データベースより)
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大人が読む児童書「第九軍団のワシ」1 ものすごく敷居が高い。誰が読むの?
大人が読む児童書。
「積ん読・解消計画★児童書編」です。
この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
ローマ軍団の百人隊長マーカスは、ブリトン人との戦いで足を負傷し、軍人生命を絶たれる。マーカスは親友エスカとともに、行方不明になった父の軍団とその象徴である“ワシ”を求めて、危険に満ちた北の辺境へ旅に出る。(「BOOK」データベースより)
サトクリフ挑戦、第二弾です。
最初は「ともしびをかかげて」でした。
ものすごく敷居の高いイメージのあるサトクリフですが、「ともしびをかかげて」はとても良かったです。名作です。
伊達に名前が売れているわけではなかったのです。残っているはずです。
これは他の作品も読まないと!と思いました。
名前と作品名だけはずっと知っていたしチェックしていたサトクリフです。
敷居の高さと、子供時代の挫折にも関わらず、どうしてかずっと「第九軍団のワシ」はわたしが好きな作品だろうな、という気がしていました。
不思議です。
本には時々、こんなことが起きます。
人に出会う縁と似たような所があります。
サトクリフは待っていてくれたんだな、と思いながら「第九軍団のワシ」を読みはじめました。
◇
最初にページをめくるとイギリスの地図が出てきます。
古代の共和制ローマ時代のものです。BC117。
さて冒頭。
フォス街道(1)からイスカ・ダルノニオルムへ西下する道は、ローマ人の作った軍用道路ではなく、もともとはブリトン人のゆききするただの道にすぎなかった。
いきなりおそろしいほど難易度が高いです。
3回ぐらい読み返しました。
これぞサトクリフ、という感じがします。
最初の単語から「(1)」がついているのはすごいです。
読み始める前にもう注釈を探さなければなりません。
ここで三択があります。
1.よく調べる。
2.なんとなく、ある程度調べる。
3.スルーする。
私は読むときはたいてい3です。
しかし、今回は「おとなが読む児童書」がコンセプト。
ある程度は調べようと思いました。
まだちょっと早いです。3ページぐらい読んでみてから調べようと思いました。
道幅を広げ、ざっと砂利を敷き、土地のやわらかいところは丸太で補強してあったが、この昔ながらの道は、荒野の丘陵の間をうねりながら先へ先へとのびていた。
道を往来する人々の描写も緻密です。
そのかわり、本当に目の前に浮かぶようです。
証人、土地の人、「西」からの金髪の氏族(明かにケルト人でしょう)、竪琴弾き(吟遊詩人だ!)。いんちき目医者、狩人。
「いんちき目医者」…?
いんちきが前提…。そして目医者限定…。
いやいや、先を続けます。
そしてローマ人の補給部隊の荷馬車とありますが、ここに
この道にはこのように雑多な通行者があったが、通行の優先権はローマ軍にあった。
とのひとことがありました。
ほぉ~~。
しかし、これは大人じゃないとわからなくないか!?
最初から子ども用の本を書こうと思って書いていれば、一般的には省こうと思うのではないでしょうか?
そういう考えがないところが素敵です💖
(サトクリフが最初から子どものためと思って書いていたのかどうかにもよりますが…)
でも、スティーブンソンの宝島だって、すんごく詳細で敷居が高いです。
でも、宝島は抄訳がありますけど、サトクリフを抄訳しようとは誰一人思わない気がします。
そういう雰囲気ではないです。
さて、ローマの一中隊がこの街道を行きます。
イスカ・シルリウムからイスカ・ダムノニオルムへ。
ここで調べることにしました。
先日子どもに読ませた「森は生きている」ならば、読み方アドバイスのようなもの、「悪役が面白いからちゃっちゃとななめよみしろ!」が可能だったのですが…。
サトクリフでは、そのようなアドバイスをする余地がありません。
とりあえず自分がいっぱいいっぱいです。
真剣に取り組まないとだめな本だ、というのがビンビン伝わってきます。
物語には引き込まれてはいるのですが、ここで地図見直しです。
序盤が大事です。
この、理解しようとするひと作業も読書のうちです。
Googleマップさん
お願いしまぁ~~~す!(ぽちっ)
これで見る限り、イスカ・シルリウムはニューポートです。
ニューポート→エクセターへ。
先を読み進めます。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
衰退したローマ帝国は、450年にわたるブリテン島支配に終止符をうつ。地方軍団の指揮官アクイラは、悩んだ末に軍を脱走し、故郷のブリテン島にとどまることを決意したが…。意志を貫いて生きることの厳しさ、美しさを描く。中学生以上。(「BOOK」データベースより)
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今日の一冊「チョコレート戦争」ふたたび
今日、ご紹介するのは児童書です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
おとなはなんでぼくたちのいうことを信じないの? 身におぼえのない、罪をきせられたことから、子どもたちは町一番のケーキ屋さんに戦いをいどみます。日本児童文学のロングセラーをリニューアル。「MARC」データベースより)
最近、子どもがお友達と再読をはじめました。
(お友達は本ずきです!)
その結果、以前よりもハマってしまって、毎日毎日これの話をしてきます。
まるで鬼滅の刃のようです。
子どもは一度ハマるとその話ばかりしてきますが、鬼滅の刃はその筆頭です。
しかし、「ガンバの冒険」と、「チョコレート戦争」は鬼滅並にハマってくれました。
今の鬼滅人気を考えれば、これはすごいことです!
そして、迫られました。
「チョコレート戦争は書いたの!?え!?」
「まあ、書くには書きましたけど…ちょろっとだけです」
「じゃあ、見せて!」
「ええ~…」
しぶしぶ見せたのですが、ダメ出しをくらってしまいました。
・どうしてこんなちょろっとした記事なのか
・もっと書け
・おもしろさを全然、伝えることが出来ていない
と口をそろえて命令されたのでもう一度書くことにしました。
「チョコレート戦争」ふたたびです。
もう毎日毎日、飽きることはないのかというほど言及されてるのですが
「チャッ(テスト用紙を破いた音)」
のところが本当にツボみたいです。
とたんに、ハチどもは、わんわん、うなりはじめた。耳もつぶれるばかりの、大さわぎがはじまった。
「わあーい、百点、百点!」
「しまった!ピシャリ(おでこをたたく音)、やっぱり、前のとおりやればよかったんだ」
「キャーッ、あなた、何点?」
ターン、ターン、ターン(ゆかの上を両足ではねる音)(略)
「いいさ、いいさ。おれたち、算数に弱いんだものな」
「なにくそ、……こんどこそ、みておれ。チャッ(これはテスト用紙をやぶいた音らしい)」この、むちゃくちゃな大さわぎに、先生はしばらくの間、あっけにとられてつっ立っていた。
鬼滅の刃の話題も飽きるほど毎日毎日、ありとあらゆることを結びつけて言及されますが、この「みておれ チャッ」もすごいです。
さて前回のご紹介で説明しましたが、このテスト騒ぎにはじまって、冒頭のケンカのシーンが終わりますと、ケンカをした当人のひとり、明くんと、ケンカをとめた光一くんは連れ立って帰ります。
この街には、(よくテストがおできになり、調子に乗った、ムカつくタイプの)小原くんが言及した「金泉堂」という洋菓子店、ケーキ屋さんがあります。
明くんと光一くん、連れ立って買えもしない金泉堂のショウウインドウを見に出かけます。
明はともかくとして、光一くんは、病気の妹にケーキを食べさせてあげたい気持ちがあるのです!
この子は…、かっこいいいし妹思いだしで、当時小学生で読んでいた私の女子としての評価は爆上がりでした。
さて、このショーウインドウには、大きなチョコレートのお城が飾ってあります。
二人がこの買えるはずもないすばらしいチョコレートのお城を、眺めていたところで、唐突に事件です!
ガシャンと音がしてウィンドウのガラスが割れ…!
びっくりする間もなく、店から飛び出してきた店員にふたりは捕まってしまいました。
「ガラスを割ったろう!」
二人は犯人にされてしまいます!
ただ見ていただけなのに。
二人はあくまで抗弁します。
絶対に、絶対にやってないから!と。
実際にやってないのですからこれは冤罪です。
どうして割れたのか…
冤罪をかぶせられた子どもたちの行方は…!?
続きはぜひ、本編で!
という所なのですが、この金泉堂の社長(悪役)もなかなか苦労人です。
いかに苦労して貧乏生活から叩き上げたかが割と長々と語られます。
子どもたち、もうこの冤罪をかぶせられるあたりでは、喧々囂々、義憤にかられて騒いでいます。
「バカじゃないの?」
「子供があんな分厚いガラス割れると思う?(見てきたようなこと言います)少し考えればわかるよね!?」
「検証ぐらいしなよ!」
この店、二人を自白させるためにまずは先生を呼ぶわけですが、最初のシーンで出てきた頼りない担任の先生はおらず、代わりに理解ある優しい女の先生が来てくれます。
「来てくれたのがこの先生でほんとに良かったわ!」
「危ないよね。あの男の先生だったら何も聞いてくれないよ。犯人にされちゃうわ」
「それで親に話が行くんだよ。弁償だよ弁償」
「ショーウィンドウのガラスなんてきっとすごい高いよ!50万とか100万とか払わされるよ!やってもいないのに!」
「ショーウィンドウのガラスを小学生の力で割れるかって考えてみたらわかるよね!わかれよ!アホだわ」
なかなか、女子はシビアです。
弁償額まで思い及ぶとは…。
実は私の住んでいる地域にも、ものすごく美味しい「地域のケーキ屋さん」があります。
誰もがその味を認めていて地域の名店として自慢にしています。
お祝い、お見舞い、手持ちのおみやげ、何かというとそこのケーキ屋です。
本当に美味しいですが、すごく高いです。まさに金泉堂です。
そして、子どもたち…。
このお店のことを
金泉堂
と呼び始めてしまいました…!!!
これはものすごい風評被害です。
誰もこの店のショーウィンドウのガラスを割っていないし、子供に冤罪をかぶせていないし、そのあとに起きる子どもたちとの戦いもしてないのです。
この子どもたちとの係争事件こそが、「チョコレート戦争」の内容なのですが、ごらんの通り子どもたちも夢中になるほど、とても面白いです!
先日行った本屋さんにもちゃんとハードカバーで置いてありました。
子どもたちにはもちろん、かっこいいよねと光一くんは人気ですが、みどりちゃんがすてきだし人気です。
行動力と拡散力があり、ふたりをちゃんと信じてくれます。
みどりちゃんはクラスでの付き合いで二人のキャラを知ってるでしょうから、二人が嘘を言うような人間でないことをわかってくれたのでしょう。
この子はすごく仕事できる女性になりそうです。
お友達はみどりちゃんにあこがれて、新クラスで新聞係にまでなりました。
すごい影響力です。
チョコレート戦争おそるべしです。
でも、こんな風に自分が面白いなと思っていて夢中になっていた本を今の子どもたちに読んでもらえるのはとても嬉しいことです。
大石真さんの傑作児童書です。
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ともしびをかかげて〈上〉 | はれときどきぶた | ホビットの冒険〈上〉 |
ウエズレーの国 | 山んばあさんとむじな | 若草物語(上) |
しずかなおはなし | カッレくんの冒険 | オズのまほうつかい |
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今日の一冊「もっちゃう もっちゃう もうもっちゃう」
今日、ご紹介するのは絵本です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
ブラティスラヴァ世界絵本原画展入賞 おしっこしたい! とトイレに飛びこんだ男の子。ところがトイレは工事中。あわててほかのトイレを見つけたけれど、こんなのひど~い! 最後の最後まで思いもかけない話の展開にハラハラドキドキ。おしっこを我慢したことのある人みんなにささげます!
低学年、読み聞かせの定番中の定番です。
いつ見ても、誰かがこの本を選んでいるというほどよく読まれています。
下ネタなので子どもは喜びますし(まったく子どもは…)、それにやはり低学年ではおもらししてしまう子は定期的に現れますので、そういう意味でもよい作品です。
「もし、お友達が我慢できなかったりしても、そんなときはこの本を思い出して…。からかったりしないであげてね」とひとこと言い添えるかたもいらっしゃいます。
さて、トイレを我慢できそうもない、ひでくんは、トイレを探してかけまわっていますが、周囲の様子が変です。
どこに行っても、ひで君に合う(!?)トイレがありません。
キリンは高すぎるし、次はこうもりのトイレ!?
キリン→こうもり→がいこつ→妖怪!?
どうもおかしいです。
ひでくんがどんどん切羽詰まっていくごとに、雲行きがあやしくなっていきます。
面白いのが、ここでおとなは(夢だな…)(夢オチだな…)と気付くのですが、子どもは割と気付かないままです。
(気付く子ももちろんいます(笑))
「えーどうすんの」
「どうなっちゃうの!」
「やっばいじゃん」
とそのまま受け取ってくれます。
顔つきまでだんだん、自分がおしっこを我慢しているかのような深刻な顔になっていくのが実に面白くて…。
あの顔が楽しくて読む、なんて言われるかたもおりました。
そしてファンファーレ!
ラストのおちがまた不安をそそる終わり方なのですが、
あー
すっきり!
のページはこっちまでスッキリしてしまう迫力です。
◇
うちの読みきかせボランティアでは、お母さんがお子さんの様子を見たくて学校に行きたくてされるので、自分の子どもがいる学年を選びます。
低学年の方が反応もよく、読みやすいので低学年は人気です(笑)
そして、自分の子どもの学年が上がるにつれて、担当の学年も上がっていき、最後は難しいと敬遠されている高学年をもつことになります。
しかし、学校生活を六年間通してさいごの方になると、クラス替えもあることですし、ほとんどその学年の子どものキャラや名前、友達関係も覚えてしまうことになります。そうなると、自分のもった学年の子どもたちへの愛着はひとしおです。
そして、ボラを続けたいと言われるかたがたも、また1年生から通してある学年の子どもたちに向き合うことが多いです。
そんなとき、「もっちゃう もっちゃう もうもっちゃう」は、
昔読んだことを覚えていてくれるだろうか。
子どもの頃のことを思い出した気持ちを伝えるためにもう一度読もう…。
などという気持ちにさせてくれる本です。
何かのストレスや、成長により、おもらししてしまうお子さんは高学年でもいるので、あえて高学年でもう一度読む、というかたもいらっしゃいます。
おしっこ行きたーい!もらしちゃう~!という気持ちを思い出してもらうために…。
こちらの「おしっこちょっぴりもれたろう」も、おもらしにやさしい絵本です。
もう少し低学年...幼年期のお子さん向けかもしれません。
(前も紹介した気がします。どんだけ好きなんだって感じです)
ぼく、おしっこちょっぴりもれたろう。おしっこをするまえかしたあとに、ちょっぴりもれちゃうから、いつもお母さんにおこられる。でも、いいじゃないか。ちょっぴりなんだから。 ヨシタケシンスケのユーモア絵本。
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ひみつの花園 | 魔女ファミリー | 火曜日のごちそうはヒキガエル |
おしいれのぼうけん | 3びきのかわいいオオカミ | とぶ船〈上〉 (岩波少年文庫) (日本語) 単行本 - 2006/1/17 |
ウィロビー・チェースのオオカミ | てぶくろ | もう ぬげない |
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つるばら村シリーズ「はちみつ屋さん」「パン屋さん」
今日、ご紹介するのは児童書です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
ナオシさんは、つるばら村の笛吹き山のふもとに暮らし、養蜂を営んでいます。毎日ていねいに作業して、おいしいはちみつを作っています。そんなはちみつを求めて、不思議なお客さんがナオシさんのもとへやってきます。「つるばら村」シリーズ第5弾。
つるばら村シリーズ、私は実は「はちみつ」しか読んだことがないのです。
最初に買うとしたら絶対にパン屋さんを選びます。
(パン屋さんがシリーズ第一弾、はちみつは五弾です)
パン屋さんがまだ未読なのですが、でも、つるばら村が大好きです。
はちみつ屋さんの主人公は、養蜂家のナオシさんです。
つるばら村の笛吹き山、そのふもとで、ナオシさんははちみつを作りながら、天狗、イノシシ、ウグイスと、たくさんの不思議なお客さんや登場人物に出会います。
「天の川の白鳥」を待たせている、「銀河亭」の菓子職人…。
七夕のケーキを作ったあの女の子は、もしかして…。
山の染め物屋さんのお話もステキです。
山一面に広がる染め布とは…。
感性の鋭い、繊細な美しい物語です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
くるみさんは、つるばら村で、宅配のパン屋さんをしています。おいしいパンを、村じゅうのひとたちに食べてもらえたらいいな……。そう思っているくるみさんのところに、お客さんからパンの注文がありました。「つるばら村」シリーズ第1弾。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
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火曜日のごちそうはヒキガエル | めのまどあけろ | 黒ねこの王子カーボネル |
点子ちゃん | 王への手紙 (上) | やかまし村の子どもたち |
からすのパンやさん | 魔女ファミリー | はらぺこおなべ |
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閑話 大人が児童書を読む効果絶大
閑話です。
ブログをつけるようになってから、
「読んでないけど絶対おすすめ」
なんてしていた本も、ちゃんと読まなければならないな~と思いなおしました。
それで、読書時間を児童書に全振りしているのですが…。
子どもがかつてないほど、ものすごく読んでくれるようになりました。
こんなブログやっているのですが、うちの子どもたちは、それほど「本が好き!本の虫!」というタイプではありません。
もちろん、親にあれこれ言われて強制的に読まされたり、逆らえない小学生の頃にみっちり読まされたりはしているわけなのですが
「子どもはそれぞれ。好みも違うしタイミングもある」
これは本当に痛感しています。
最近の子どもたちの特徴と言われる、
・家に本棚がない。
・読書するという習慣がそもそもない。
・驚くほど子どもたちが本を読んでいない。
というのは、私だけではなくて読みボラさんがたの共通認識ではありますけれども、そんな家庭に育っても、読むお子さんというのは確実に存在します。
本がない環境で育っているにも関わらず、水を得た魚のように、みるみる、こちらのおススメする本を吸収していって、どんどん読んでくれるというお子さんが存在します。
そんなお子さんは、クラスに一人か二人…。
(でも、こちらにアピールしてくれないだけで、まだ草の根層はいるのかもしれません)
しかし自分の子どもが読まないことを、それほどプレッシャーにしてしまってはいけない。
親にがっかりされている、と感覚を与えてはいけない。
コンプレックスやむしろ垣根にしてはいけない。
そう思って、あまり強く言わないようにしていたのですが…。
しかし、ここのところ、子どもの本を親(わたし)が読むようになったところ、
目に見えて違います!
成長もあるのかもしれませんが、以前よりも格段に読んでくれるようになりました。
そして、児童書はこうして読んでいても、実に面白いし読みやすいです。
おとなの小説は、割と好みが別れるところがあると思うのですが、児童書はもう、本当に、誰が読んでも絶対面白いに違いないと思います!
老若男女、誰に対してでもおすすめです!
何歳で読んでも、どんな人でも面白いです。
自分が面白く、子供も読むようになるとすれば、これは一石二鳥どころか、一石十鳥ぐらいの価値はあると思います。
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ねずみくんのチョッキ | はなのすきなうし | 魔法のカクテル |
ひさの星 | 鉢かづき | いたずらきかんしゃちゅうちゅう |
思い出のマーニー | 強くしなやかなこころを育てる! こども孫子の兵法 | 鹿よ おれの兄弟よ |
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今日の一冊「マチルダは小さな大天才」
今日、ご紹介するのは児童書です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
マチルダは天才少女。三歳になる前に字が読めるようになり、四歳で、有名な文学作品も読みこなす。ところが両親ときたら、そんな娘を「かさぶた」あつかい。「物知らず」だの「ばか」だのと、どなりちらしてばかり。学校にあがると、そこには巨大な女校長がいて、生徒をぎゅうぎゅう痛めつけている。横暴で高圧的な大人たちに頭脳で立ち向かうマチルダの、痛快仕返し物語。
子どもがガッと食い付く本です。
面白い面白いと、次々に先を読んでしまいます。
そして、「読書」にたいするたくさんの導きが入っています。
「本というものをまったく読まないし、読もうとしない子んだけど、マチルダだけはすごい勢いで読んでしまった」というお子さんがいます。
あんな分厚い本を読んだのよ!とお母さん誇らしげで、私も嬉しくなりました😊
「チャーリーとチョコレート工場」はあまりハマらなかった子も、マチルダにははまってくれます。
マチルダの中に、ロアルド・ダールが名前を出しているたくさんの名作たちがあります。
ディケンズ、ブロンテ、スタインベック、老人と海なども入っています。
その名前を覚えて、いつかその名前を本棚の中に見つけたとき、手に取ってぱらぱらめくってくれたり、読書の世界に入って行ってくれればいいなあ…と思います。
チャーリーとチョコレート工場もそうですが、ロアルド・ダールはこの本に限らず、悪い人が悪いです。
どぎつく、ぎらぎらしいほど悪いです。
そしてそのようなものすごい非常識な大人に対して、マチルダは実にかしこく、用心して事(仕返し)にあたりますので、これがまた実に痛快です。
おとな目線からすると、あまりにも悪すぎてちょっとデフォルメしすぎじゃない!?と思ったりするのですが、子どもはたいそう喜んで読んでくれます。
ひどいこと→仕返し
ひどいこと→仕返し
の繰り返しなので、私がおとなとして読む分にはちょっと飽きて食傷してしまいましたが…。
ふと、思いました。
「子どもたちの目からすると、悪い大人は本当にこのぐらい悪いのじゃないだろうか?」
もしかすると、そこまではないのでは?と思っているのは、こちらの目が曇っているのであって、こういうおとなは現実にちゃんと存在するのではないか、というような気がしています。
そして子どもたちは、そのひどさ、理解のなさにすごいフラストレーションを貯めている。
本の中でなら何でも出来る!
スカッとしてもらいたい。
これは本当に、子供たちのための本なのだと思います。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
チャーリーが住んでいる町には、世界一のチョコレート工場がある。だれもそこで働く人を見たことがないナゾの工場だ。そこへ五人の子どもたちが招待されるというので大騒動! さあ、何が起こるのか?!奇抜な発想が楽しい大人気の物語が、新装版で登場。
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ちいちゃんのかげおくり | ともしびをかかげて〈上〉 | すてきな三にんぐみ |
たつのこたろう | 車のいろは空のいろ | 教室はまちがうところだ |
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今日の一冊「三びきのやぎのがらがらどん」「3びきのかわいいオオカミ」
今日、ご紹介するのは絵本です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
橋の向こう側の山で、たくさん草を食べようと考えた3匹のヤギ。小さなヤギ、中ぐらいのヤギ、大きなヤギ、みんな名前は「がらがらどん」。橋をわたっている途中に谷に住むトロル(おに)にでくわしてしまいます。
有名で有名で有名な絵本なので、いまさらではあるのですが紹介してみます。
やっぱりこの本のものすごいのは、むちゃくちゃインパクトのあるトロルの顔です。
それに負けない、大きいやぎのがらがらどんの迫力!
あまりにも独特なので、見ただけで怖い!という子もいます。
水木しげるさんの妖怪にも通じる恐ろしさだと思います。
しかし、これは恐ろしいから良いのです!!
森のかたすみや、には得体の知れない何かが住んでいる。足をとられることがある。
子どもに危険を知らせ、気をつけることを学びます。
たまに怖すぎる!トラウマだ!という無茶ぶりなクレームをこうむることもあるので、読みきかせの時には緩和するために、優しいお話を組み合わせます。
それが、「3びきのかわいいオオカミ」です!
「3びきのこぶた」をすてきにひねった愉快なお話。あちこちで話題になり、幼稚園や小学校でもこどもたちが劇にして楽しんでいます。犯罪学者と人気画家のコンビニよる、極上の絵本です。
これがまた間逆の話で、オオカミさんたたちは食べちゃいたいほどかわいい、ほのぼのとした優しいオオカミです。
そして...ぶたがものすごい凶悪です。
まあ見て頂ければわかると思うのですが、「3びきのこぶた」をひねっているだけに、現代の武器を使いまくりです。
老婆心とは思うのですが、最近のお子さんはそもそも「3びきのこぶた」を知らないこともありますので、あくまで「3びきのこぶた」を知っていて、ちょっとひねりのきいた展開におもしろみを感じてくれる、高学年の子に向けて読んでいました。
ただどちらにも言えるのは
悪役の絵づらがとにかく、ものすごく凶悪
ということです(笑)
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