~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

閑話 「マッチうりの女の子」 P丸様。ビジネス書。錯乱。そして、伝説へ…。

閑話です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

マッチうりの女の子
ハンス・クリスチャン アンデルセン (著),
スベン オットー (イラスト), 乾 侑美子 (翻訳)

身をきられるように寒く、暗い、雪の降りしきる街を一人の女の子が歩いていました。足ははだしで、すりきれたエプロンにはマッチの束を抱えて…。冬のデンマークの街の情感を背景に、格調高く描かれたオットーの絵本。

 

 

妹子「マッチ売りの少女、うちにあったよね」
わたし「うん。そこにあると思うよ」
妹子「あっ!そういえば、このおかあさんごじまんの赤い本にも入ってんじゃないの?入ってないはずないよね!?」
わたし「どうだったかなぁ~?」

 

赤い本とは、世界少年少女文学全集のことです。
割とちゃんとした小説ばかりを載せてるようなイメージがあるけどな?

……しっかり入ってた。

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昭和28年発行です。1953年。

68年前か~。すごいな。

 

この赤い本に入っているアンデルセンの訳は平林広人さん。
初山 滋さんがイラストを担当された、この本の大畑 末吉さんバージョン「野の白鳥」は愛読していますが、こっちの赤本のアンデルセンはまだ読んでいませんでした。

 

「絵のない絵本」も入っているところがさすが!
川端康成大先生をはじめとする編集者のお歴々!(←ごじまん)

 

 

妹子「(開きながら)いやー、今日ね友達が、P丸様の動画でマッチ売りの少女があったっていうから、もとの話はちゃんともう一度読んどこ、と思ったんだよね」

 

P丸様とは、小学生に大人気のYouTuberです。(登録者数218万!)
若干、テンション高めで、兄助は好きではありませんが、妹子はだいすきです。

兄助「チッ!まーたくだらねえもん見やがってよ~小学生が!いいかそんなもん、高校生とかなったら、つまんなすぎて時間のむだなんだよ!」

わたし「まあまあ。マッチ売りの少女のオリジナルを読もうというんだから大目に見てやって」

 

妹子「あかちゃんみたいな子が読むようなみっじかい『マッチ売りの少女』じゃだめよねやっぱり」
わたし「絵本だとまとめられちゃってるよね。まあそれでも知らないよりはいいんだよ…………」

 

と、検索していると、こんなの出てきました。

 

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わたし「………」
妹子「………」

 

「『マッチ売りの少女』はこうすればマッチが売れた!」神経伝達物質ドーパミンを使えば販売は急上昇!

 

妹子、大笑い!

 

妹子「えー読んでみたい!」
わたし「ちょうどkindleアンリミテッドの一カ月おためし期間中なんだよね……」

 

というわけで、kindleアンリミテッドで入手、サラッと読んでみたところ、なかなかよくできたビジネス本でした。

 

よくある「北極で氷を売る」を、マッチ売りの少女をもとにかみ砕いて説明しています。
その人が購入に到るまでの道筋をストーリー化、付随商品として存在するマッチの購買意欲をそそる、というような感じの……。

 

わたし「こんなマッチ売りの少女はいやだの典型例みたいなやつだな!」
妹子(大笑い)

 

 

妹子、世界少年少女文学全集の「マッチ売りの少女」を開いて読み始めました。
こちらでは、「マッチうりの女の子」という題名になっています。

 

物語を読むまでの道筋はどうあれ、P丸様といい、ビジネス書といい、こんなのを見ちゃったら、真面目にお話読んでても、途中で思い出して笑っちゃうじゃないかな?

 

読み終えた妹子、真顔です。
呆然としています。

 

妹子「え……………」
わたし「どうした」
妹子「すごい」
わたし「どうすごい?」
妹子「なんか……、なんか、すごい」
わたし「文章?きれい?」
妹子「すごい。すごいとしか言えない」

 

気になるーーー!!!

 

真顔ですごい、とだけ繰り返し、呆けた顔をしている妹子。
どんな感想よりも、こんな顔して「すごい」しか言わないというほうが、読みたくなるものだな。

 

 

十分後。

 

わたし「すごい」
妹子「だよね。すごい。もうなんか……ことばにならない」

 

P丸様もビジネス書もふっとぶ、「マッチ売りの少女」オリジナルの威力。
本物をナメていた。

 

貧困にあえぐ少女は、大晦日の夜に、新年を迎えることがなかった、そういう話なわけなのですが、そこに到る過程が、美しい文章と、リアルな描写とともに流れ込んで来ます。

 

おいしそうな料理の匂いが漂う通りで、足は裸足で紫色になり、体は冷え切っておなかはぺこぺこの少女。

 

それでも、家に帰ろうとしないのは、今日は誰もマッチを買ってくれなかった上に、帰ってもお父さんに殴られるだけだし、家にかえっても寒いことには変わりがないから。

 

これは、ビジネス書に従って手持ちの在庫が多少売れたからといって、解決する問題だとは思えません。
お父さんに搾取されて終わり、最終的に同じことになる気がします。

 

たった一本だけでも、指さきをあたためることができれば、と願って、路地の片隅に座りこみ、一本のマッチを束から抜き取る少女。

 

最初のマッチは、あたたかいストーブ、次のマッチは、おいしそうなお料理。

 

マッチはぱっともえあがって、あたりが明るくなりました。光がそばの壁を照らすと、みるみるうちに、その壁がすきとおって、ヴェールのようになりました。

 

何千本ものろうそくが、みどり色のもみの木の枝の上で、もえさかっていました。そして、商店の飾り窓に並んでいるような、美しい色とりどりの絵が、まるでおくりもののように、つるしてありました。

 

文章と翻訳の美しさにぶん殴られてる感じがします。

 

少女はおもわずそのほうへ高く両手をのばしました。──と、そのとたんに、ふっとマッチの火がきえてしまいました。たくさんのクリスマスのあかりは、高く高く、空へのぼっていき、とうとう明るい星になりました。そのうちの一つが、長い尾を空にひいて、とんでいくのが見えました。
「あっ!いま、だれかが死んだのだわ」


少女を誰よりもかわいがってくれていたおばあさんが、むかし少女に
「お星さまが落ちると、ひとりの人のたましいが、神さまのところへのぼっていくんだよ」
と教えたのでした。

 

マッチの光が、震える少女の手の中で、まぼろしを映し出す。


小さな炎が、色とりどりのろうそくの光に変わり、マッチの炎が消えると同時に、さっと高く空へ立ち昇って、星々のきらめきになり、その中から流れ星が落ちていく。

それは今まさに燃え尽きようとしている、ひとの命の輝き──。

わたし「す、すごい」
妹子「すごかった。文章が美しいとかいうレベルじゃなかった」

 

最後のマッチによるおばあさんの姿は、美しく、輝きに満ちていて、少女はその姿をひきとめようと残りのマッチをすってしまいます。

おばあさんは、少女を腕にかかえて、だきあげました。そして、ふたりは、よろこびいさんで、高く高く、どこまでも高くまいあがっていきました。もう寒いことも、おなかのすくことも、こわいこともありませんでした。ふたりは神さまのところへ召されていったのです。

 

少女はほほ笑みを浮かべて死んでいました。

 

この少女が、どんな美しいものを見たか、また、どんなに祝福されて、おばあさんといっしょに、楽しい新年を迎えたか、それを知っている人は、だれもいませんでした。

 

わたし「……………」
妹子「……………」

 

わたし「こ、この人は……この人は、何もわかってない!(この人=ビジネス書の作者)」
妹子「う、うん」

 

わたし「マッチを売ることの話をしてるんじゃないんだよ!この!少女は!たとえおおみそかの夜にひとりでこごえ死んでも!マッチ1本の炎の中に、すばらしいものをみたんだよ!」
妹子「…………」

 

わたし「それは!大好きだったおばあさんのやさしさであり!愛であり!たとえ!死んだとしても!そのおばあさんのもとに抱き取られて!今はおばあさんのもとに一つになれたんだよ!幸と不幸なんて、分けられるものじゃないんだよ!生きていれば必ず幸せなのか?金持ちになればそれが豊かなのか?

 

号泣。

 

わたし「こいつは!何もわかってない!そればかりか!マッチ売りの少女を二次利用して、自分がもうけようとしてるだけなんだよ~~~!」

 

突然の兄助「そうだよ、そんな奴らなんて、聞こえのいいことばっか言って、自分がもうけることばっかしか考えてねえんだからよ~(´;ω;`)ウゥゥ

 

妹子「ちょっとちょっと、ふ、二人とも、お、おちついて……(オロオロ)」

 

 

※追記:決してこのビジネス書(およびその作者)を貶める意図はなく、ビジネス書としてはたいへんよく書けている部類のものでしたので、マーケティングに興味のある方はどうぞ一読してもらえばよいと思います。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「マッチ売りの少女」はこうすればマッチが売れた!
山川 裕士 (著)

アンデルセン童話「マッチ売りの少女」はマッチが売れていれば、雪の中で死なずにすんだはずです。本書では「マッチ売りの少女」が神経伝達物質ドーパミンの働きを使って売り込んでいれば、たくさんマッチが売れていたであろう、そしてそれは現代の営業・販売にも共通する手法であることを分かりやすく紹介しています。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

完訳版 アンデルセン童話集 全7冊セット
アンデルセン (著), 大畑 末吉 (翻訳)

アンデルセン(一八〇五―七五)の童話は,決して口あたりよい砂糖菓子のようなものではない.「私が書いたものはほとんどが私自身の映像である」と『自伝』のなかで述べられているように,どんな空想的な話のなかにも,作者の生きた波瀾の人生の一片が封じこめられていて,おとなであれ子どもであれ,読む者の心を強くゆさぶる.

 

 

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アンデルセン童話集〈1〉
H.C. アンデルセン (著), 初山 滋 (イラスト), 大畑 末吉 (翻訳)

グリムの昔話とならんで世界中の子どもたちに親しまれているアンデルセン童話は,人生の縮図であるといわれます.1には,「おやゆび姫」「みにくいアヒルの子」「人魚姫」など,17編を収めます.

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

アンデルセン童話集 (2) 野の白鳥
H.C. アンデルセン (著), 初山 滋 (イラスト), 大畑 末吉 (翻訳)

アンデルセンは,実生活の喜怒哀楽を美しい芸術に昇華させ,人間の真実を伝えます.2は,「野の白鳥」「マッチ売りの少女」「赤いくつ」「さやからとび出た五つのエンドウ豆」「雪の女王」など,16編.

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

カラー版 ママおはなしよんで 幼子に聞かせたいおやすみまえの365話
千葉 幹夫 (著)

人気の画家たちの挿絵とともに、日本と世界の昔話・名作を、一日一話ずつ366話収録した、オールカラーの豪華絵本です。 定番の「桃太郎」「おむすびころりん」「白雪姫」「おおかみと七ひきのこぶた」といった昔話はもちろん、「やまたのおろち」「じゅげむ」などの神話や落語、「ハイジ」「ロビンフッド」などの名作やギリシア神話も多数収録しています。 主な特長は次になります。 ●504頁、オールカラー、上製本という、他書にはない圧倒的に豪華な体裁と内容。 ●毎日3分程度で読み聞かせできるお話を366話掲載。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ママお話きかせて―冬の巻
(小学館のお話シリーズ)

初版と新版は、表紙デザインが異なります。日本昔話、イソップ童話などが90話収録。毎日ちゃんと読み聞かせても三か月分あり、読み応え十分。挿絵はダイナミックかつ個性的で、家族の話題作りにもいかがでしょうか。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

新編 世界むかし話集(1)イギリス編 (現代教養文庫ライブラリー) Kindle版 山室静 (編集) 形式: Kindle版

ムーミン」やアンデルセン童話など、北欧・児童文学の研究・翻訳に生涯携わり、子供たちには夢を、大人にはやすらぎを与え続けた著者・山室静の世界むかし話集第1弾。
<イングランド>ネコの王さま/カメの遠足/最初のバナナ/三びきのクマ/ロンドン橋の上で/ジャックと豆の木/他8編
<コーンウォール>ベッチィ・ストーグの赤ちゃん/頭から下に向かって/他3編
<スコットランド>ヒース酒の秘密/詩人トマスの話/他5編
<ウェールズ>長すねグウィスの嘆き/他3編
<アイルランド>白いマス/笛吹きとプーカ/他9編

 

 

 

 

 

 

 

 

「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492

 

プロジェクト・グーテンベルクについて
Wikiの説明ページ

プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館

 

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ミュウのいるいえ とっときのとっかえっこ 新編 世界むかし話集(4)フランス・南欧編
こんとあき キャベツくんのにちようび マザー・グース
こまったさんのスパゲティ) 花さき山 いちごばたけの ちいさなおばあさん

 

 

今日の一冊「たまごからうま」 ありえないことを指す言葉、展開もありえない。

今日、ご紹介するのは絵本です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

たまごからうま
織茂 恭子 (イラスト), 酒井 公子

ある日、男が市場へうまを買いにいきました。ところが、お金が足りなくてかわりに馬のたまごを買いました。さて、そのたまごから、かえったのは…? 次から次へと動物たちが登場する、奇想天外なベンガル地方の民話。

 

 

むかしばなしは世界のさまざまな地域に分布していて、似ているものから全く聞いたことがないものまで、実に色んなものがあります。

同じようなモチーフでも、やはりそれぞれの地域や文化によって彩りが違っていて、とても興味深いものです。

 

「たまごからうま」
これはベンガルの民話と言うことで珍しいなあと思って開きました。

 

 

「たまごからうま」というのはありえないことを指すらしいです。
あとがきに作者の酒井公子さんが書かれていますが、

 

20数年前、カルカッタ出身のインドの友人が「それはうそだ。ありえない。うまのたまごだよ。」というのを、面白いと思いました。「日本語では、おなじことをなんというのか?」ときかれたので、眉につばをつけてみせると大笑いされた思い出があります。(ベンガル地方では、いまも日常的に「それは、うまのたまごだ!」というそうです。

 

考えてみれば眉に唾をつけるっていうのもとても変わっています。

 

もともとの話ではジャッカルだったのを、きつねに変えたようですね。
こういう風に、文化や風俗を説明してくれているあとがきが大好きです。

 

 

いつも楽がしたいと考えているなまけもののダーという男。
名前もなんだか変わっています。

 

楽をしようと思って市場へうまを買いにきました。

 

市場の様子の絵がとても素敵です。
カラフルな服装の男性や女性が入り混じって、エキゾチックな露天でいろんなものが売られています。

 

うまは高くて買えないなと男が考えていると、なんだか怪しげな男が寄ってきました。
顔も怪しいですし、「特別にお安くしとくよ」なんてことも言ってます。

 

次のページを開けると男が「わたくしが詐欺師のロールモデルぐらいの、いかにも怪しげな顔で、ダーに持たせているのはものすごくでっかいカボチャです。

 

「これは、とくべつにあしのはやいうまのたまごだ」

 

なわけねーだろ
ふざけんな
ぶん殴るぞ

 

とはならず、ダーは喜んでかぼちゃを買って帰りました。
あ~あ。

 

 

ですが重いので、途中で道ばたにねころんで眠りこけてしまいました。

 

そこにやってきたのがきつねです。
うっかりかぼちゃにつまずいて、田んぼの中に蹴落としてしまいました。

 

…………。
ジャッカルならいいのかと言われるとそういうわけでもないですが、

 

絵的にあまりにもでっかいかぼちゃだったので、キツネがかぼちゃを跳ね飛ばすというよりは、かぼちゃがキツネを跳ね飛ばしそうな大きさなのですが、このかぼちゃはきっと、中身も薄くてすっからかんだったんですね。

 

 

逃げていくきつね。

 

起き上がったダーは、てっきりきつねが生まれたばかりの馬だと勘違いして、壮絶な追いかけっこが始まります。

 

もうめちゃくちゃですけど、夕日の中を真っ赤に照らされた田んぼと、雄大な光景の中を走って行くダーときつねの見開きの絵、素晴らしく美しいです。

 

狐は森に逃げ込んで、ダーはあとを追いかけます。

今度はさる、次はとらと、うまには形も大きさもかすりもしないような、どうしてそれを間違えるのか?というどうぶつたちを次々に追いかけて、みんなとんだ災難です。

 

とまあ、こうどうしようもない話なのです。
オチもあるようなないような……。

 

ただ、笑えることは確かです。
考えられないような無茶苦茶なことが次々に起きますから。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ガラスめだまときんのつののヤギ―ベラルーシ民話
スズキ コージ (イラスト), 田中 かな子 (翻訳)

おばあさんが大切に育てた麦をヤギが食べ散らしてしまいます。クマもオオカミもかなわなかったヤギを、なんと豆つぶほどのハチが見事に退治してしまいます。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

プンクマインチャ―ネパール民話
大塚 勇三 (著), 秋野 亥左牟 (イラスト)

継母に虐げられていた素直で優しいプンクが、山の牧場でおなかをすかして働いていると、キツネの頭とヤギの頭を合わせもつ不思議なヤギ、ドーン・チョーレチャが食べ物を出してくれました。それを知った継母はドーンを殺して食べてしまいます。プンクがその骨を集めて山の牧場に埋めると、そこから、おいしいまんじゅうがたくさんなる大きな木が生えてきました。そこに鬼の夫婦がやってきて……。ネパールの民話を力強く大胆に美しい絵で描きます。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

石のししのものがたり―チベットの民話による
大塚 勇三 秋野 亥左牟 

山の神である石の獅子の言いつけを守り、黄金を手に入れた正直者の弟と、欲張りすぎて罰を受けた兄。日本人にも親しみのあるストーリーが、雄大なスケールで描かれます。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

まいごのたまご
アレックス・ラティマー (著), 聞かせ屋。けいたろう (翻訳)

風に吹かれて巣からころがり落ちた、まいごの卵が、お母さんをさがしています。あたりにいた恐竜たちも心配して、たまごの親さがしに協力します。やがて、夕方になったとき、奇跡がおこり、たまごの親がだれなのかがわかりました!ようやくお母さんと再会できた、まいごのたまごは、翌朝、ぶじに孵ることができました。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

トラのじゅうたんになりたかったトラ
ジェラルド・ローズ (著, イラスト), ふしみ みさを (翻訳)

いいなあ。オレも、なかまにはいりたいなあ。やせこけたトラは、宮殿のひろまで楽しそうにごはんを食べている王さま一家が、うらやましくてたまりません。ある日、宮殿の庭にじゅうたんが干されているのを目にしたトラは、とんでもないことを思いつきます! ケイト・グリーナウェイ賞作家による、とびきりゆかいな絵本。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

むらの英雄 (エチオピアのむかしばなし)
渡辺茂男 (著), 西村繁男 (イラスト)

むかし、アディ・ニハァスという村の12人の男たちが、粉をひいてもらうために、マイ・エデガという町へ行った。 帰り道、一人が仲間を数えたが、自分を数えるのを忘れたので、11人しかいなかった。 「たいへんだ! 誰かがいないぞ! 」 …さてそれからどうなった?! 読み聞かせに楽しいエチオピアの昔話です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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三銃士 ミヒャエル・エンデが教えてくれたこと ジョニーのかたやきパン
ふくろのなかにはなにがある? ジル・バークレムの世界 のばらの村をたずねて ブレーメンのおんがくたい
卑弥呼 まぼろしの女王 マリールイズいえでする 若草物語

 

 

大人が読む児童書「くるみわり人形」4 読了 すべての争いのはじまり。それは……あぶら身。

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

くるみわり人形
北見 葉胡 (イラスト), E.T.A. ホフマン (著), 村山 早紀 (著)

クリスマスの日、マリーは、おくりものの中に、りっぱな服に身をつつんだ、くるみわり人形を見つけます。すっかり、このお人形が気に入ってしまうマリー。しかし、真夜中になると、家の中で音がきこえ、おどろきの光景を目にすることになります……!世界中で愛され読みつがれてきた名作に、現代の児童文学作家たちが新しい命をふきこんだ、ポプラ世界名作童話シリーズ。

 

 

今日の一冊「くるみ割り人形」クリスマスのホラー

大人が読む児童書「くるみわり人形」1 マルチパンのなぞ。

2 きらびやかさの中にひそむ不可思議な仕掛け

3 クリスマスの夜に起きる、人形とねずみの大戦争

 

典型的なクリスマスの物語といわれる「くるみ割り人形

 

クリスマスは過ぎてしまいましたが、しかしこのマリーちゃん。
気持ちわるいねずみの王様と思っちゃうの大戦争に巻き込まれたのは、まさにそのクリスマスの夜です。

 

そしてマリーのくるみ割りの物語はクリスマスに始まって、その後もずっと続いていきます。

 

なんとなくバレエ作品などでは、
「クリスマスの一夜の夢」
という扱いをされているような気がするのですが、全然そんなことはなく、クリスマスがこの不思議な物語の始まりだったのです。

 

 

ドロッセルマイエルさんが語る、くるみ割り人形の事情を語る「かたいくるみのおとぎ話」は三章にわたって続きます。

 

大筋を言ってしまうと
(古典的名作なので、もうネタバレも今更です)

 

・ピルリパート姫という姫が、ねずみのマウゼンリンクス夫人に呪われて醜くなってしまった。
・クラカトゥクのくるみという、かたいくるみを割って食べさせることが呪いを解く方法。
・これを命令されたのが「ドロッセルマイル」という、偶然にも同じ名前の男だった。☜え?
・「ドロッセルマイル」の甥っ子が、その役割を受けることになった。
・魔法を解く方法は、半分成功し、姫は元どおり美しくなったが、失敗した部分もあり、ドロッセルマイエルの甥っ子は、醜い姿になってしまった。

 

 

つまりあのくるみわり人形は、魔法をかけられた「偶然にも同じ名前のドロッセルマイエル」の甥っ子のなれの果ての姿のようなのです。

 

今度はこのくるみ割り人形の魔法を解かねばなりませんが、これは
「マウゼンリンクス夫人の孫の、七つの頭のむす子を、くるみ割り人形が自分の手で殺し、かつ、醜い姿にもかかわらずある上流婦人から愛されたとき」
だそうです。

 

あー読めたわ。
と思わないで、ぜひ抄訳でない完全版を読んでみてもらいたいと思います。
このお話は、細かい所に面白味があるのです!!

 

しかし多分バレエでもっとも見せ場であり、長いパートである、金平糖の踊りなどさまざまな踊りを妖精の国で披露するあの部分は、かなり終盤の1章程度に過ぎません。

 

 

妹子「あぶら身のところはやんないの?」
わたし「えーあそこ好きなの?」
妹子「だってあそこをやらなきゃ意味ないじゃん。紹介してよ」

 

確かにあぶら身のところは面白いからな。

 

というわけで、終盤の展開は、是非読んでもらいたいところですが、それとは別に、少し戻って、ドロッセルマイエルさんが話した「かたいくるみのおとぎ話」の中でも、ちょっと細かい部分のエピソードをご紹介したいと思います。

 

 

くるみわり人形が、もともと自分のせいでもなかった呪いを引き受けたのはピルリパート姫のためでした。


この姫が呪いを受けることになった訳があります。
例によって親戚を招待しなかったとかしたとかそういう話っぽくはあるのですが……。

 

つまりこういうことです。

 

王様(姫のお父さん)が、ある日大宴会を催しました。

そこでお妃様が自ら台所用のエプロンをかけて調理していたのですが、

 

いよいよ、あぶら身をさいころの形に切って、銀のあみの上で焼く、だいじなところになりました。

 

銀の網の上で焼いていいのかどうかとか、いろいろ突っ込みどころがありますが、多分ゴージャスさを演出したかったので銀になったんだろうなと思います。

 

王様の宮殿には、マウゼンリンクス夫人という、王さまと親類だと言い張っている「かまどの下に宮廷をかまえる」者(……?あきらかにねずみ)が住んでいました。

おきさきさまが、ちょっとだけ分けてもいいと行ったことが災いして、あぶら身はほとんど食べ尽くされてしまいました。

 

この「あぶら身」、「ちょうづめ」に入れるのですけど、おそらくは、というかほぼ間違いなくソーセージのことです。

 

王さま、この出来上がったソーセージを食べるのですが、その時の様子がこうです。

 

肝臓のちょうづめが出たとき、王さまはしだいしだいに顔色が青ざめ、天井に目を向け──かすかなため息を胸からもらして──どうやら、はげしいいたみで、胸をかきむしられるようにみえました。

 

王さま、顔を手でおおって、嘆いたり悲しんだりします。
みんなが看病するんですが、様子が治まる気配がありません。

何だ何だ。
いったいどうしたんだ。

 

深い、なんともいいようのない悲しみが、王さまの胸をせめさいなんでいるらしいのでした。

 

あれこれと薬をためし、力を尽くして看病した結果がこうです。

 

ようやく王さまは、いくらか正気にかえられたようすで、口ごもりながら、ほとんど聞きとれないくらいの声でこうおっしゃいました。
「あぶら身が少なすぎるよ。」

 

妹子「いやどんだけ~!あぶら身どんだけ~!」

 

この王様が嘆き悲しんでいる様子、およそ1ページにあたって、延々と続いています。
私も笑ってましたが、妹子もここは面白いと言って、腹を抱えて笑ったところでした。

 

食べ物の恨みは恐ろしく、 このあぶら身の恨みこそ、マウゼンリンクス夫人の一族と、ピルリパート姫のお父さんの王さまとの、長い戦いと魔法の応酬の原因となったのです!

 

 

この王さまも、肝心のピルリパート姫も、非常にわがままで自分勝手な人間です。

 

自分の呪いを解いてくれようとした若者なのに、醜くなると
「どこかへ連れて行って!見たくもない!」
と叫びます。

 

さてこうなってくると、先の大戦争でのマリーの 優しさが際立ってきます。

 

マリーに対して、ドロッセルマイエルさんはこんな風に言うのでした。

 

「くるみわりを助けてやれるのは、きみだけだ……おじさんではだめだ。しっかりがんばって、まごころをつくしてあげなさい。」

 

 

この有名な「くるみ割り人形

きっと、バレエを機会に存在を知って、読んでみたいと思うお子さんもきっといることと思います。

 

きらびやかで美しいクリスマスの贈り物の中で、マリーが不格好で醜いけれど、誠実であたたかいくるみ割りに目をとめる。

とても大事なことを示唆しているように思います。
人にとって大切なのは外見ではなくて、行動と誠実さで決まる、というようなことです。

 

たしかに「くるみわり人形」には、私が読んでいてもちょっと夜に読むのははばからられるような不気味さがあります。

 

それは決しておとぎ話の範疇を出るものではなく、かえってこのきらびやかなクリスマスを彩る効果を演出するものではあるのですが。

 

たくさんの子どもたちを、夢と幻想、また紙一重の所にあるホラー展開にさそい、怖がらせたり、どきどきさせたりしてくれることと思います。

ある時はロマンティックであり、ある時は大戦争の勇ましさであり、おとぎ話もあり、人間の醜さ、本当の真心とはいったい何なのか…。

 

児童書の古典。
間違いなく、名作中の名作の一冊です。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

くるみ割り人形 白鳥の湖 バレエ名作物語 (集英社みらい文庫)
ひかわ玲子 (著), 碧風羽 (その他)

クリスマス・イヴのパーティで、名づけ親のドロッセルマイヤーさんから、くるみ割り人形を送られた少女クララは、その夜、不思議な体験をする…「くるみ割り人形」。悪魔に呪いをかけられ、白鳥の姿に変えられてしまったオデット姫。夜の湖で出会ったジークフリート王子と恋に落ちるが…「白鳥の湖」。世界中で上演されている、チャイコフスキーの人気バレエ2作品が、ロマンチックなファンタジー小説に!【もくじ】はじめに/くるみ割り人形/白鳥の湖/解説 少女の夢のつまった世界(深沢美潮

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ラビリンス 魔王の迷宮 (字幕版)
Amazonプライム

おとぎ話が大好きな少女サラは、泣き止まない幼い弟に腹を立て、愛読書"ラビリンス"に出てくる呪文を唱えてしまう。その瞬間、魔王ジャレスが本当に現れ、彼女の希望通り弟を連れ去ってしまう。慌てたサラは弟を取り戻す為、迷路を抜けてゴブリン・シティの城へ向かうが…。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

とぶ船
ヒルダ・ルイス (著), ノーラ・ラヴリン (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ピーターがある日、うす暗い小さな店で手に入れた古い小船は、なんと魔法の「とぶ船」でした。ピーターたち4人きょうだいはこの船で、エジプトやウィリアム征服王時代のイギリス、北欧神話の世界にまで冒険旅行をします。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

くるみ割り人形 白鳥の湖 バレエ名作物語 (集英社みらい文庫)
ひかわ玲子 (著), 碧風羽 (その他)

クリスマス・イヴのパーティで、名づけ親のドロッセルマイヤーさんから、くるみ割り人形を送られた少女クララは、その夜、不思議な体験をする…「くるみ割り人形」。悪魔に呪いをかけられ、白鳥の姿に変えられてしまったオデット姫。夜の湖で出会ったジークフリート王子と恋に落ちるが…「白鳥の湖」。世界中で上演されている、チャイコフスキーの人気バレエ2作品が、ロマンチックなファンタジー小説に!【もくじ】はじめに/くるみ割り人形/白鳥の湖/解説 少女の夢のつまった世界(深沢美潮

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

やかまし村の春・夏・秋・冬
アストリッド リンドグレーン (著), イロン・ヴィークランド (イラスト), 大塚 勇三 (翻訳)

かまし村はスエーデンの小さな農村。クリスマスにはショウガ入りクッキーを焼き、復活祭には卵パーティーで大もりあがり!夏休みには宝物をさがしに湖の島へ。子どもたちの四季おりおりの遊びやくらしを、いきいきと描きます。小学3・4年以上。(「BOOK」データベースより)

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ママお話きかせて―冬の巻
(小学館のお話シリーズ)

初版と新版は、表紙デザインが異なります。日本昔話、イソップ童話などが90話収録。毎日ちゃんと読み聞かせても三か月分あり、読み応え十分。挿絵はダイナミックかつ個性的で、家族の話題作りにもいかがでしょうか。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

こうさぎのクリスマス
松野正子 (著), 荻 太郎 (イラスト)

両親がキツネに追われたまま帰ってこないので、兄ウサギのラビーと妹ウサギのルビーは、二人だけで暮らしていました。森で薪をひろいながら、他の家にはどこもクリスマスツリーが飾ってあるのを見て、ラビーはルビーに「うちにはサンタクロースなんかこないよ」といいます。でも二人はそっとお互いのためにクリスマスの贈り物を……。心にしみいるお話が柔らかなタッチで描かれます。(福音館https://www.fukuinkan.co.jp/book/?id=03-0249

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

子うさぎましろのお話
佐々木 たづ (著), 三好 碩也 (イラスト)

サンタクロースからもらったおかしを食べてしまった子うさぎのましろは、またほしくなってもらいにいくのですが……。

 

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

白雁物語(スノー・グース) ドリトル先生航海記 みつばちマーヤの冒険
ちいちゃんのかげおくり 新訳 長くつ下のピッピ くわずにょうぼう (こどものとも傑作集) (日本語) 単行本 - 1980/7/31 稲田 和子 (著), 赤羽 末吉 (イラスト)
パパ、お月さまとって! おやつがほーいどっさりほい ジャングル・ブック

 

 

大人が読む児童書「くるみわり人形」3 クリスマスの夜に起きる、人形とねずみの大戦争

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

くるみわり人形
北見 葉胡 (イラスト), E.T.A. ホフマン (著), 村山 早紀 (著)

クリスマスの日、マリーは、おくりものの中に、りっぱな服に身をつつんだ、くるみわり人形を見つけます。すっかり、このお人形が気に入ってしまうマリー。しかし、真夜中になると、家の中で音がきこえ、おどろきの光景を目にすることになります……!世界中で愛され読みつがれてきた名作に、現代の児童文学作家たちが新しい命をふきこんだ、ポプラ世界名作童話シリーズ。

 

 

今日の一冊「くるみ割り人形」クリスマスのホラー

大人が読む児童書「くるみわり人形」1 マルチパンのなぞ。

2 きらびやかさの中にひそむ不可思議な仕掛け

 

こわくなったマリーが見たのは、あの大きなふくろうが消え、代わりにドロッセルマイエルさんが、かけ時計の上に座り込んで、「黄いろい上着のすそを、つばさのようにたらしている」姿でした。

 

ドロッセルマイエルさんの不可思議な行動その2です。

 

普通に考えて、おとなの世界で一緒に話したり笑ったりしていた人がこんな所にいるはずがありません。

ですが、どことなく奇妙で薄気味の悪い、ドロッセルマイエルさん。
おとなもここにいるという不可思議が、夢と現実を曖昧にして、おそろしさを際立たせます。

 

あちこちのすきまから光るぎらぎらした目玉。
(まんま「ラビリンス」です)
それは、薄気味の悪い(ゴブリンではなくて)ねずみの姿でした。

 

およそ1ページにわたって暴れまわり、走り回るねずみの群れの最後に現れたのは…

 

──まあお聞きなさい。──マリーのすぐ足もとから、まるで、地獄の力でおしだされたかのように、砂や石灰や、こなごなになったれんががはねあがって、きらきらかがやく七つの王冠をかぶった七匹のねずみの頭が、ものすごい声で、ちゅうちゅう鳴きながら、床から出てきたのです。

 

こいつは、7ひきのねずみが出てきたのではなく、ギリシャ神話のヒドラのように、7つの首を持ち、それぞれに7つの王冠をかぶった、一匹の大ねずみでした。

ヒュドラー - Wikipedia

 

ねずみたちは、まっしぐらにおもちゃや絵本の入っている棚に向かって押し寄せます。

 

おもちゃの戸だなにはあかあかとあかりがともり、人形たちがかけまわり、迎え撃つ準備をしています。
そのリーダーになっているのは、なんとあのくるみ割り人形でした。

 

この、人形たちを率いて戦う、くるみわり人形が実に勇ましくてかっこいいです。

 

 

くるみ割り人形は、大きくて不格好ではありますけど、人形皆を率いた(ナポレオン的な)大将の役割です。

 

ちょっと面白いことに、ここであの、お人形のクララちゃんも動き出します。

そして、くるみ割り人形に対して
「病人なんだから、戦争になんて出かけないで、からだをやすめていてちょうだい。ここで皆の戦いを見ていましょう♡」
的なことを言ってやさしく口説きます。

 

そのとき、クララちゃんはくるみ割りの体を抱きしめているのですが、くるみわりはもがいて離れてしまいます。

でも、離れたら離れたでくるみわりは非常に礼儀正しく、片膝をついてお礼を言うのですが、このあたりのやりとりは、まさに宮廷でみる、騎士と貴婦人のやりとりのようです。

 

クララちゃん、どうしても戦いに行くというくるみわりに、自分の帯を取ってかけてやろうとします。
この「帯」は、サッシュと呼ばれる儀礼的なやつなんではないかと推測しています。

サッシュ - Wikipedia

 

いかにも、プロイセン王国時代の宮廷でありそうなやりとりをお人形でやってみせるという、おとぎ話です。

 

しかし、くるみ割り、介護を断ったばかりか、この帯まで拒否!

あくまで礼儀正しく、固辞したかわりに、くるみわりが自分の体にかけたのは、マリーがさきほど、包帯のように巻いてくれた飾り気のないリボンの方でした。

 

どうやら、この帯をかけるだのかけないののやりとり、騎士と貴婦人の愛のあかし♡のようなものを意味するようです。

くるみわりは、マリーのまごころを取って、あくまでクララちゃん(たぶん美人)のお人形の好意を断ったのでした。

 

 

戦いが始まるまでに、これらのけっこう詳細なやりとり。
それから7つの頭に王冠をいただくねずみの王様との大戦争に突入します。

 

・太鼓で急を知らせる。
・ラッパ手が合図を吹き鳴らす。
・マリーの兄、フリッツ君のおもちゃの兵隊たちが列を作る。
・大砲を砲兵たちが引き出してきてこんぺいとうを打ち込む。
・「こしょう菓子」も大砲のたまの役目。

 

ねずみとおもちゃたちとの大戦争はすさまじい勢いです。

 

こうしてみると、ホフマンが語り聞かせる形式のこの物語、実際の戦いの絵を見るような生き生きとした臨場感を当時の子供たちに与えただろうと思われます。

 

面白いことに、大戦争のめちゃくちゃの最中に、例のお人形のクララとゲルトルート(こちらも人形です)、走り回って泣きながら抱き合い、泣き崩れるという……。

役に立たない援軍もいます。
お人形やおもちゃたちを使って、リアルな大戦争をやってみせる夜の夢だとしても、芸がとても細かいのです。

 

 

主に、「くるみわり人形」はバレエで有名ですが、今回調べてみると、バレエになっているのは、「三銃士」「モンテ・クリスト伯」のデュマ父が翻案したものがもとなんですね。

くるみ割り人形 - Wikipedia

 

バレエでの戦いの場面は、第一幕第一場。
長大なくるみ割り人形の演目の中では、そこまで長いパートではないです。

 

 

しかし、おもちゃたちの負け色が濃くなってきました。

 

ついにくるみ割り(大将)が、敵軍(ねずみ)に囲まれ、どうしようもなくなったとき

 

くるみ割り「馬だ……馬だ……馬を持ってきてくれたら、王国を一つやるぞ。」

 

シェイクスピアだー!!

 

シェイクスピア「リチャード三世」の超有名なせりふです。
ホフマンもリチャード三世が好きだったのか。

何しろリチャード三世はこれで殺されてしまいますから、絶体絶命にこれほどふさわしいセリフはありません。

 

しかし、リチャード三世は(魅力的だけど)悪人の物語と頭から思い込んでいましたが、こうして、醜くはあるけれど、立派な英雄としてのくるみ割りがその台詞を言っているように、やっぱりリチャード三世は、決してネガティブなイメージだけではないのだろうなと思いました。

 

ホフマン、GJ!👍

 

このとき、敵の散兵がふたり、くるみわりの木でこしらえたマントをひっつかみました。そして、ねずみの王さまが勝ちほこって、七つののどをちゅうちゅう鳴らしながら、とびかかってきました。

 

ピンチなことに変わりはなかった。

 

わけのわからないうちに、気持ち悪いねずみの「おばけ」とくるみわり人形に率いられたおもちゃの大戦争を見守っていたマリー。

この絶体絶命に、もう黙っていられなくなり、手に持っていたスリッパを思いっきりねずみに投げつけます。

 

 

マリーが目覚めたとき、けがをしてベッドに寝かされていました。
「おもちゃの戸だなのガラスを腕で突き破って、腕を切って倒れていた」とのことです。

 

7歳のマリーは、一生懸命、ねずみの王さまとくるみ割り人形との戦いを大人たちに語りますが、当たり前ですがまったく相手にしてもらえません。

 

おとなパートの中で、相変わらず実に不思議な役割を果たすドロッセルマイエルさんですが、ここでもとても奇妙な言動をしておとなたちも、マリーも驚かせます。

おとなたちに対しては、何らおかしなところのない説明を行いながら、すべて知っているのではないか…。
何か、この騒動に深く関わっているのではないか。

 

わざと、知らないふりをしているだけなのではないか、そうではないのか、曖昧な言動です。

 

・病気のマリーの枕元で、奇妙な時計の歌を歌い、その中には「ねずみの王さま」「ふくろう」のキーワードが入っている。
・マリーは「七つの首をもつねずみ」とは一言も言っていないのに、「ねずみの王さまの14の目玉」と言う。
・「かたいくるみのおとぎ話」という、くるみわりがかけられた魔法についてのおとぎ話を聞かせてくれる

 

ドロッセルマイエルさんは、「あくまでただのおとぎ話だ」と言います。

 

しかし、それは明らかにあの大戦争がなぜ起こったかを明らかにする物語だったのでした。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

とぶ船
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くるみ割り人形 白鳥の湖 バレエ名作物語 (集英社みらい文庫)
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やかまし村の春・夏・秋・冬
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こうさぎのクリスマス
松野正子 (著), 荻 太郎 (イラスト)

両親がキツネに追われたまま帰ってこないので、兄ウサギのラビーと妹ウサギのルビーは、二人だけで暮らしていました。森で薪をひろいながら、他の家にはどこもクリスマスツリーが飾ってあるのを見て、ラビーはルビーに「うちにはサンタクロースなんかこないよ」といいます。でも二人はそっとお互いのためにクリスマスの贈り物を……。心にしみいるお話が柔らかなタッチで描かれます。(福音館https://www.fukuinkan.co.jp/book/?id=03-0249

 

 

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トムは真夜中の庭で くれよんのくろくんシリーズ 七つの人形の恋物語
ガンバとカワウソの冒険 ひっこしだいさくせん ともだちは海のにおい
バムとケロのにちようび 義経記 あめの ひの ピクニック

 

 

大人が読む児童書「くるみわり人形」2 きらびやかさの中にひそむ不可思議な仕掛け

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

くるみわり人形
北見 葉胡 (イラスト), E.T.A. ホフマン (著), 村山 早紀 (著)

クリスマスの日、マリーは、おくりものの中に、りっぱな服に身をつつんだ、くるみわり人形を見つけます。すっかり、このお人形が気に入ってしまうマリー。しかし、真夜中になると、家の中で音がきこえ、おどろきの光景を目にすることになります……!世界中で愛され読みつがれてきた名作に、現代の児童文学作家たちが新しい命をふきこんだ、ポプラ世界名作童話シリーズ。

 

 

今日の一冊「くるみ割り人形」クリスマスのホラー

大人が読む児童書「くるみわり人形」1 マルチパンのなぞ。

 

 

何ページにもわたって詳しく描写されている、すばらしい贈り物の数々。
また、クリスマスの飾りつけの数々。

これを、ここまで見事に、言葉だけで描写している作品というのは、ほかに例をみないほどです。

 

クリスマスツリーひとつとってもこうです。

 

部屋のまんなかのもみの木には、金のりんごや銀のりんごがたくさんなっており、また枝という枝からは、砂糖をふりかけたアメンドーや、色とりどりのボンボンや、そのほか、ありとあらゆるみごとなキャンデデーが、つぼみや花のように、ぶらさがっていました。
ですけれど、このふしぎな木を見て、何よりも美しいと思われたのは、そのほの暗い枝のかげに、星のようにきらきら光っている、たくさんの小さいあかりなのです。それから、内にも外にも光をはなちながら、さあどうぞ、花や実をつみ取ってくださいと、にこやかに子どもたちをまねいている木そのものです。

 

……などという文章が、これはほんのさわりだけなのですが、延々と続いています。

こういうのを読んでいると、(前に書いたような気もしますが)「美しいものを『美しい』という言葉以外であらわすことがじょうずな文章だ」などという修辞のおべんきょうのことばが、まったく意味のない事に思えてきます。

 

「みごとな」「美しい」「かわいらしい」満載ですが、ちっともいやになりません。

 

まるで目の前に、そのクリスマスツリーがあるかのようです。

 

 

フリッツは、いわゆるアンデルセンにもよく出てくる「スズの兵隊」系の一個大隊をもらって大喜びです。
これ、何となくわたしは、レゴやマインクラフト、またシミュレーションゲームを想像しました。

フリッツは、ドロッセルマイエルのおじさんが作ったぜんまい仕掛けの自動人形たちに文句をつけたりする、けっこう失礼なやつです。

妹(7歳)のおしゃべりにも、ツッコミばかり入れています。

 

昔はフリッツが大嫌いでしたが、今読んでみると、色とりどりの砂糖菓子のような描写の中に、この子がいるからこそ、ぴりっときいた薬味のように話がひきしまっているんだなと思うようになりました。

 

妹子「何だこいつ。大嫌い。しんじゃえ!」
わたし「…………言い過ぎ」

 

 

さて、このきらびやかで美しい贈り物の中で、マリーがひときわ気に入ったものがありました。
それが、どう考えても「美しい」とはとてもいいがたい、不格好な形をした、変な恰好のくるみわり人形です。

 

けっして、他の贈り物に比べて、美しいとは言えないのに、マリーはひとめで好きになってしまいます。

 

上記で説明したような、すばらしい描写で、このくるみ割り人形が「いかにすばらしくくるみをかみ砕けるか」というのが、およそ1ページほどもかけて語られます。


おかげで、妹子はすっかりくるみ割り人形が欲しくなって、Amazonで買え買えとうるさいです。

 

38CM伝統的な木製くるみ割り人形、くるみ割り人形の置物手描き、棚やテーブルのためのお祝いのクリスマスの装飾、カラフルな印刷された漫画のクルミの人形のクリスマスツリーの装飾

昔はそんなのカタログも何もなかったので、
今や、「ナッツクラッカー」と検索すれば見ることが出来るようになってしまった…。

 

わたし「いやいや妹子、お母さんも欲しいと思って調べたことがあるんだけどね、マジで無理だから。ほらこれ、このサーファー型のくるみ割り人形、くるみと一緒に写真に写ってるやつ」

サーファー型なんてあるのかよ…と思いつつも、ちょうどくるみの写真が一緒に映っていました。

 

わたし「見て。そもそもくるみが入らない感じでしょ?」
妹子「ほんとだ」

Clever Creations クリスマス サーファー くるみ割り人形 レッド サーフボード フェスティブ ビーチ サーフィン クリスマス デコレーション あらゆるコレクションに最適 棚やテーブルに最適 木100% 高さ10インチ


わたし「やってみたこともあるんだよ。はっきりいって、。くるみが入らない上に、全然くるみが噛み割れない。絶対にうちにある鉄のやつ使ったほうがいいって」

 

貝印 (KAI) くるみ&銀杏割り Kai House Select 本体:ステンレススチール 柄部:天然木 182×42×12mm DH-7249

↑こういう奴です。

 

 

みんながなごやかにくるみ割りをして楽しんでいるのを見たフリッツ、大きくて硬そうなくるみを、無理矢理に押し込んで、くるみ割り人形を壊してしまいます。

 

とつぜん──ぺきっ──ぺきっ──という音がしたかと思うと、くるみわりの口から小さい歯が三本落ちて、下あご全体がはずれて、ぐらぐらになってしまいました。

 

歯が三本落ちた。

 

間違いなく、このくるみ割りは、このサーファータイプの人形ではないです。
(だからなぜサーファー?)

 

歯が別々についています。
気になって、ドイツのAmazonまで見に行って調べてみましたが(Nussknackerだそうです)やはりありません。

変わり種で、長靴をはいた猫風のはありましたが、同じ感じです。

 

きっと、ドロッセルマイエルさんの作ったくるみ割り人形は特別製だったんだ。

 

 

しかし、フリッツはくるみ割りを壊したにも関わらず、謝りもしなければすまないと思いもしません。
逆に、完全に壊れたってかまわないから、くるみを割るまで使い倒してやると言い張ります。

 

マリーは泣きだして、くるみ割りを取って隠してしまいました。

 

このムカつくフリッツとマリーのけんかに、お父さん、お母さんおよび、ドロッセルマイエルさんも参加して、フリッツはお父さんに怒られます。
しかし、何とも不可解なことに、ドロッセルマイエルさんは、フリッツの味方をします。

 

このおじさん、実に不思議な人で、このお話のところどころ、重要な所で、何とも説明のつかない行動を取ります。
この、どう考えても褒められたものではないフリッツの行動のどこに味方する余地があるのか?

これは、まだ序盤の小さなフラグにすぎません。

 

しかし、

・出てくる全員が良い子良い子と、マリーを持ち上げないこと
・どう考えても不可解な、理屈の通らないドロッセルマイエルさんの随所にみられる行動
・フリッツのムカつく、いかにもやんちゃな男の子の言動
・周囲がきらびやかであればあるほど、くるみ割り人形のぶかっこうさが目立つ
・これから起きる不思議なホラー展開

 

という、これらが複雑にからみあって、ついには、この物語を、「決して忘れることができない」という次元にまで押し上げるという、効果をもたらしています。

 

矛盾、ナンセンスさが、精巧なからくり人形のように、計算され尽くして配置されています。

 

お話とは、整合性が取れているだけでは名作にはなれないのです。

 

 

壊れたくるみ割りを、大事に預かることになったマリー。

 

自分のお人形の「クララちゃん」に、まるで人間のように話しかけ、ベッドを傷付いたくるみ割り人形のために貸してくれないかと頼みます。

 

マリーがあまりにも大真面目に、くるみ割り人形を生きている、けがをした病人扱いしたり、お人形に向かって話しかけたりしますので、だんだん、どこからどこまでが子どもの遊びなのか、わからなくなってきます。

 

親たちがいなくなり、夜が近付くと、なお、その傾向が強くなります。

 

お人形のクララちゃんはだまってムッとしている様子。
だまってるのは当たり前なのですが、なんだか本当にクララが失礼な態度を取っているような気分になってきます。

マリーはクララを引き出して、ベッドをくるみわりに使わせてやり、自分のリボンを包帯のように巻いてやりました。

 

さて、マリーがベッドルームへ行こうとしたそのとき。

 

すると、そのとき──いいですか、お聞きなさい。──そのときです、ストーブのうしろとか、いすのうしろとか、戸だなのかげとか、そこらじゅうから、かすかに──かすかに、ひそひそと、ささやく声や、がさごそという音が、聞こえてきたのです。

 

時計が時を打つことができずにもだえ、うなりをあげます。
大きな金色のふくろうが、時計を包むように止まって、こんな風にささやきました。

 

「おい、時計たち、時計たち、みんなそうっとうなるんだぞ……ねずみの王さまは耳がさといからな……ぷるぷる……ぷむぷむ。さあうたえ、むかしの歌をうたって聞かせろ……ぷるぷる……ぷむぷむ。小さな鐘よ、鳴りだせ鳴りだせ、じきにあいつはおだぶつだあ。」

 

この様子、デビッド・ボウイの名作映画「ラビリンス」に似ているな。

 

ゴブリンたちがのぞき、ささやきあい、ふくろうが飛ぶ。
そっくりです。

 

ラビリンス 魔王の迷宮 (字幕版)

 

「ラビリンス」を作った人たちも、もしかすると「くるみわり人形」の原作から、ヒントを得ていたかもしれません。

 

こんな風に、何か名作が何かのオマージュを取り入れているのを発見したり、連想をして思い出すのも、楽しいです。

 

物語は最高潮で不気味な予感がします。
ここが、4章「おばけ」です。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

くるみ割り人形 白鳥の湖 バレエ名作物語 (集英社みらい文庫)
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とぶ船
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ピーターがある日、うす暗い小さな店で手に入れた古い小船は、なんと魔法の「とぶ船」でした。ピーターたち4人きょうだいはこの船で、エジプトやウィリアム征服王時代のイギリス、北欧神話の世界にまで冒険旅行をします。

 

 

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くるみ割り人形 白鳥の湖 バレエ名作物語 (集英社みらい文庫)
ひかわ玲子 (著), 碧風羽 (その他)

クリスマス・イヴのパーティで、名づけ親のドロッセルマイヤーさんから、くるみ割り人形を送られた少女クララは、その夜、不思議な体験をする…「くるみ割り人形」。悪魔に呪いをかけられ、白鳥の姿に変えられてしまったオデット姫。夜の湖で出会ったジークフリート王子と恋に落ちるが…「白鳥の湖」。世界中で上演されている、チャイコフスキーの人気バレエ2作品が、ロマンチックなファンタジー小説に!【もくじ】はじめに/くるみ割り人形/白鳥の湖/解説 少女の夢のつまった世界(深沢美潮

 

 

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やかまし村の春・夏・秋・冬
アストリッド リンドグレーン (著), イロン・ヴィークランド (イラスト), 大塚 勇三 (翻訳)

かまし村はスエーデンの小さな農村。クリスマスにはショウガ入りクッキーを焼き、復活祭には卵パーティーで大もりあがり!夏休みには宝物をさがしに湖の島へ。子どもたちの四季おりおりの遊びやくらしを、いきいきと描きます。小学3・4年以上。(「BOOK」データベースより)

 

 

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子鹿物語 マルコヴァルドさんの四季 少女ポリアンナ
三びきのこねこ そらいろのたね エラと『眠れる森の美女』
シナの五にんきょうだい 宝島 あなたってほんとにしあわせね!

 

 

大人が読む児童書「くるみわり人形」1 マルチパンのなぞ。

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

くるみわり人形
北見 葉胡 (イラスト), E.T.A. ホフマン (著), 村山 早紀 (著)

クリスマスの日、マリーは、おくりものの中に、りっぱな服に身をつつんだ、くるみわり人形を見つけます。すっかり、このお人形が気に入ってしまうマリー。しかし、真夜中になると、家の中で音がきこえ、おどろきの光景を目にすることになります……!世界中で愛され読みつがれてきた名作に、現代の児童文学作家たちが新しい命をふきこんだ、ポプラ世界名作童話シリーズ。

 

 

クリスマス前の定番ということで、「くるみ割り人形」にしようかな。
なんとなく以前適当な紹介になってしまったような気がして心が残っていました。

 

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ホラーだと言って紹介しましたが、どうホラーなのか、そしてホラーでない部分についても、もう一度読みながら、きちんとご紹介してみたいなと思いました。

私の持っているのは石丸静雄さん訳です。

 

例のごとく、目次を書いてみます。
全部で14章です。

 

1.クリスマスの前夜
2.おくりもの
3.マリーのお気に入り
4.おばけ
5.たたかい
6.病気
7.かたいくるみのおとぎ話
8.かたいくるみのおとぎ話のつづき
9.かたいくるみのおとぎ話のおわり
10.おじと甥
11.勝利
12.人形の国
13.都
14.おしまい

 

「クリスマスの前夜~病気」までが主人公マリーのお話です。

 

3章ある「かたいくるみのおとぎ話」は、マリーが聞かされる、くるみ割り人形の昔話になります。
そこからは…むにゃむにゃ(ネタバレ回避…)…。

 

この4章めの「4.おばけ」の所が、もっともホラー臭が強い所です。
題名がストレートに「おばけ」ですし。

 

作者のホフマン(1776年~1822年)は、後期ロマン派を代表する幻想文学の鬼才とwikipedia先生には書かれています。

 

E.T.A.ホフマン - Wikipedia

 

 

冒頭にきらびやかに描写される、この主人公のマリー(7歳)のおうちなのですが、なんとも輝かしいドイツのクリスマスです。
それも若干、貴族的なにおいのする「良家のお嬢さんのおうち」という感じです。

 

シュタールバウム家。
主人公のお父さんは、衛生顧問官ということになってるんですけどこの衛生顧問官ってなんだ?

 

調べてみると作者ホフマンは、プロイセン王国の時代です。

 

検索していると、「16世紀ドイツにおける『官吏』としての顧問官の誕生」などと書かれている記事(pdfの論文のようです)も見つけましたので、王様に仕えている国家公務員ぐらいの感覚だと思います。

 

この プロイセン時代のシュタールバウム家の子供たち、マリーとフリッツ。
残念ながらお兄ちゃんのフリッツは、最初はともかく、後からはあまり出てきません。
主人公はマリーです。

 

上にもひとり、おねえさまのルイーゼというのがいらっしゃるんですが、このおねえさまはほぼお母さんみたいな扱いで、あまり話には関わってきません。

 

やっぱり昔の話を読んでると、いろんな立場の大人が周りにいっぱいいて、嫌な人もいればお母さん代わりをするようなおねえさんもいたりします。

乳母みたいな立場で、おばあちゃん並みに散々甘やかしたり世話を焼いたりする人がいます。

また、お料理をする立場の女中さんよりも立場が強そうな、女性コックさんのようなお手伝いさんがいたりして、いろんなものを作ってくれたりします。

これらのたくさんの人々が、子どもたちを、気にしたり世話をしたり、お説教したりして、たくさんの人に見守られている感じが強いです。

(基本的に安定した経済状況の家庭の話ではあります)

 

 

このシュタールバウム家と仲良しのお付き合いをしている、フリッツやマリーの名付け親、ドロッセルマイエルさん

ホフマンはふざけて描写したのかも知れませんけど、随分変わった人です。

 

背はひくく、やせこけて、顔はしわだらけで、右の目のあるところには大きな黒い「こうやく」をぺったりとはりつけていて、かみの毛は一本もありませんでした。

こうやく?

dictionary.goo.ne.jp

この「右の目のあるところにこうやくを貼り付けている」というのがちょっとピンと来ない感じだったのですが、塗り薬を片目に貼っている、ということ…?

 

何となく、独眼竜の眼帯みたいなイメージで良いのでしょうか。

 

独眼竜だとカッコよすぎるな。

 

このドロッセルマイエルは、ホフマンが自分を投影していそうな気もします。

 

ドロッセルマイルさんは上席判事ということですが、ホフマン本人も法律家の家系に生まれた司法官(裁判官)です。

このお話を描いた頃(1816年)には、ベルリンの大審院の判事をしていたということなので、まさにドロッセルマイルのおじさんです。

 

「世界少年少女文学全集15ドイツ編2」のあとがきによれば

ホフマンはそのころ、友人のヒッチヒという人の家によく遊びに行きました。そしてその家のふたりの子どもを、たいそう可愛がっていました。おもちゃをこしらえてやったりおどけたことをしてみせたり、おもしろいくるみわりのお話をして聞かせたりする上席判事ドロッセルマイルこそは作者のホフマンその人と考えてもいいでしょう。(石丸静雄)

 

 

最初は子どもたちは、クリスマスの準備をしているはずの部屋には、決して入ってはいけないと厳しく言われ、暗がりでじっと我慢して待っています。

 

我慢が最高潮に達した時、さっと扉が開かれて、見事に飾りつけをした大広間や、中の間が目の前に広がります。

 

その様子は、文章を読んでいても、まさに舞台の幕が上がる様子そっくりで、これをバレエ作品にしたのは、実によくわかる話です。
ぴったりです。

 

その色とりどりのすばらしさ、おいしそうさ!
もらったプレゼントの見事さや、奇妙なドロッセルマイエルさんが持ってくるおみやげの珍しさが、筆を尽くして語られています。

 

 

キラキラしたクリスマスの描写を読みながら、なぜ最近、「くるみわり人形」を強く思い出すことになったのか、そのきっかけを思い出しました。


マジパンです!

 

前回紹介した「飛ぶ船」で、「マジパン」が出てきたのですが、調べているとマジパンはマルチパンと同じであるということが判明していました。

 

マルチパン……マルチパン、どこかで聞いたぞ?と首をひねっていて、思い出したのが「くるみわり人形」でした。

 

まだ冒頭の部分、どんなものをクリスマスにもらえるのだろうか?
この入ってはいけない扉の向こうはどんななのだろうか、と、マリーとフリッツが話しているシーンでした。

 

ドロッセルマイエルのおじさんは、いつだったか、あたしに、きれいなお庭のことを話してくだすったわ。そのお庭には、大きなお池があって、金の首飾りをつけた、とてもきれいな白鳥が、たくさんおよぎまわっていて、それはそれは、かわいい歌をうたうのよ。すると、そのうち、ひとりの女の子が、お庭からお池のほとりにやってきて、白鳥たちを呼びよせて、おいしいマルチパンをやるんですって。」
「白鳥が、マルチパンなんか食べるもんか。」
フリッツは、いくらかあらっぽく、ことばをはさみました。

 

実にかわいらしい7歳の女の子のおしゃべりなのですが、お兄ちゃんのフリッツがくだらないとばかりに一蹴してるのもまた、ちょっと子どもらしくて笑えます。

 

この「くるみわり人形」には頻繁に出てきます。頻出単語です。
マルチパンとはなんぞ、というのが長年の疑問でした。

 

マジパンのことだったのかー!!

 

…つづきます。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

くるみ割り人形 白鳥の湖 バレエ名作物語 (集英社みらい文庫)
ひかわ玲子 (著), 碧風羽 (その他)

クリスマス・イヴのパーティで、名づけ親のドロッセルマイヤーさんから、くるみ割り人形を送られた少女クララは、その夜、不思議な体験をする…「くるみ割り人形」。悪魔に呪いをかけられ、白鳥の姿に変えられてしまったオデット姫。夜の湖で出会ったジークフリート王子と恋に落ちるが…「白鳥の湖」。世界中で上演されている、チャイコフスキーの人気バレエ2作品が、ロマンチックなファンタジー小説に!【もくじ】はじめに/くるみ割り人形/白鳥の湖/解説 少女の夢のつまった世界(深沢美潮

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ロッタちゃんとクリスマスツリー
アストリッド=リンドグレーン (著), イロン=ヴィークランド (イラスト), やまむろ しずか (翻訳)

明日は、楽しいクリスマスイブ。けれども、ロッタちゃんの家では、まだクリスマスツリーにするモミの木が手にはいりません。嘆き悲しんでばかりいるお兄さんたちを残してロッタちゃんは雪の町へ飛び出していきます。行動的な女の子を生き生きと描いたリンドグレーンの絵本。絵は彼女とのコンビが多いヴィークランドです。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

とぶ船
ヒルダ・ルイス (著), ノーラ・ラヴリン (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ピーターがある日、うす暗い小さな店で手に入れた古い小船は、なんと魔法の「とぶ船」でした。ピーターたち4人きょうだいはこの船で、エジプトやウィリアム征服王時代のイギリス、北欧神話の世界にまで冒険旅行をします。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

くるみ割り人形 白鳥の湖 バレエ名作物語 (集英社みらい文庫)
ひかわ玲子 (著), 碧風羽 (その他)

クリスマス・イヴのパーティで、名づけ親のドロッセルマイヤーさんから、くるみ割り人形を送られた少女クララは、その夜、不思議な体験をする…「くるみ割り人形」。悪魔に呪いをかけられ、白鳥の姿に変えられてしまったオデット姫。夜の湖で出会ったジークフリート王子と恋に落ちるが…「白鳥の湖」。世界中で上演されている、チャイコフスキーの人気バレエ2作品が、ロマンチックなファンタジー小説に!【もくじ】はじめに/くるみ割り人形/白鳥の湖/解説 少女の夢のつまった世界(深沢美潮

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

やかまし村の春・夏・秋・冬
アストリッド リンドグレーン (著), イロン・ヴィークランド (イラスト), 大塚 勇三 (翻訳)

かまし村はスエーデンの小さな農村。クリスマスにはショウガ入りクッキーを焼き、復活祭には卵パーティーで大もりあがり!夏休みには宝物をさがしに湖の島へ。子どもたちの四季おりおりの遊びやくらしを、いきいきと描きます。小学3・4年以上。(「BOOK」データベースより)

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ママお話きかせて―冬の巻
(小学館のお話シリーズ)

初版と新版は、表紙デザインが異なります。日本昔話、イソップ童話などが90話収録。毎日ちゃんと読み聞かせても三か月分あり、読み応え十分。挿絵はダイナミックかつ個性的で、家族の話題作りにもいかがでしょうか。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

こうさぎのクリスマス
松野正子 (著), 荻 太郎 (イラスト)

両親がキツネに追われたまま帰ってこないので、兄ウサギのラビーと妹ウサギのルビーは、二人だけで暮らしていました。森で薪をひろいながら、他の家にはどこもクリスマスツリーが飾ってあるのを見て、ラビーはルビーに「うちにはサンタクロースなんかこないよ」といいます。でも二人はそっとお互いのためにクリスマスの贈り物を……。心にしみいるお話が柔らかなタッチで描かれます。(福音館https://www.fukuinkan.co.jp/book/?id=03-0249

 

 

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子うさぎましろのお話
佐々木 たづ (著), 三好 碩也 (イラスト)

サンタクロースからもらったおかしを食べてしまった子うさぎのましろは、またほしくなってもらいにいくのですが……。

 

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

長ぐつをはいたねこ たんじょうび 名探偵カッレとスパイ団
みどりのゆび 100かいだてのいえ Pitschi
どうぶつのこどもたち エルマーとりゅう ババヤガーのしろいとり

 

 

大人が読む児童書「やかまし村の春・夏・秋・冬」2 読了 お腹を抱えて笑ってしまう「はじめてじゃないおつかい」

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

やかまし村の春・夏・秋・冬
アストリッド リンドグレーン (著),
イロン・ヴィークランド (イラスト), 大塚 勇三 (翻訳)

かまし村はスエーデンの小さな農村。クリスマスにはショウガ入りクッキーを焼き、復活祭には卵パーティーで大もりあがり!夏休みには宝物をさがしに湖の島へ。子どもたちの四季おりおりの遊びやくらしを、いきいきと描きます。小学3・4年以上。(「BOOK」データベースより)

 

 

今日の一冊「やかまし村の子どもたち」

大人が読む児童書「やかまし村の春・夏・秋・冬」1 クリスマスからはじまる物語。のどかな日常系

 

以前ご紹介したとき、このようなちょっと分厚い、文字ばかりの本を子どもになじんでもらうため、「読み聞かせで面白い章だけを読んできかせる」と書きました。

 

この本は、冒頭からクリスマスでクッキーを焼くというすてきな所からはじまっているので、そういうことはしなくても読んでくれるのですが、やっぱりこの本の中にも、特別に面白く、お腹を抱えて笑ってしまう章があります。

 

「春・夏・秋・冬」では、「9章 アンナとわたしのお買い物」がそれにあたります。

 

11章の「オッレの妹が生まれました」も面白いのですが、やはりこの7章に敵う章はありません。

どんな感じなのか?
この捧腹絶倒な巻を、ちょっとご紹介してみたいと思います。

 

 

アンナとわたし(リーサ)は、ふたりとも、お母さんにお買い物をいいつかって、連れだってお買い物に行きます。

 

お買い物をするお店は、やかまし村から離れた所にある「大村」という、学校もある少し大きな村にあるのですが、かなりの距離があります。

なので、お買い物をする品も、たくさん種類があって大変なのです。

 

お母さんは、メモを渡そうとしましたが、えんぴつがすぐには見つかりません。
アンナもリーサも、「覚えていくから大丈夫」と言って出かけました。

 

リーサのお買い物:
 イースト200g
 ショウガを1袋
 針を1袋
 イワシのかんづめ1かん
 甘いアーモンドを100g
 酢を1びん
 一番上等なあぶりソーセージ1つ

アンナのお買い物:
 石けん
 黒パン1つつみ
 コーヒー500g
 角砂糖1kg、ゴムバンド2m、一番上等なあぶりソーセージ1つ

 

針を一袋。
そんなに、なくすものなんだろうか…?

二人とも、「いちばん上等なあぶりソーセージ」が入っているところがみそです。

 

アンナのおじいさんに追加のお買い物を頼まれました。

 

氷砂糖すこし、しょうのうの塗り薬

 

さらに、オッレのお母さんからも追加でおつかいを頼まれます。

 

四十番の白糸を1まき、ヴァニラ入り砂糖を1かん、いちばん上等なあぶりソーセージ

 

お母さんたちはみんな、あぶりソーセージを買いたがりますね。
みんなだいすき、あぶりソーセージというのは、スモークソーセージなんでしょうか?
美味しそうです…。

 

このお買い物、けっこう重たくなると思うのですが……。

アンナの方が重そうです。
石けんに、コーヒー500g、それに砂糖が1キロ!

 

ヴァニラ入り砂糖というのもちょっと気になりました。
味がすでについている砂糖ということですね。

 

 

女子二人でお買い物、歌を歌いながら、楽しい気分で上機嫌です。
この歌う歌が傑作です。

 

あぶりソーセージについて歌うのですが、ゆったりした節回しで歌ったり、明るい元気で調子で歌ったり、それを組み合わせたりして歌います。

 

しかし、けっきょく、わたしたちがきめたのは、とってもかなしくて、それでも、はじめからおわりまですばらしくうつくしい節まわしでした。その節は、きいてると泣きたくなるくらい、かなしくて、すてきでした。
「ほんとに、あぶりソーセージって、かなしいものねえ!」
アンナがそういってるとき、やっとわたしたちは、お店につきました。

 

既にここだけで十分に笑えるのですが、ここからが大変です。
これだけ頼まれて、忘れものをしないはずがありません。

 

最初の忘れ物:イース

 

この忘れ物をしたかもしれない品を探すのに、アンナとリーサは、
「かごにはいってる包みを、ぜんぶ手でおしてみはじめました。」

 

この探し方、めっちゃわかる~!と思いました。
ビニール袋の上からでも、「おしてみはじめる」ことありますから。

 

どうやら、ひとつひとつすべてきちんと包みとしてくるんであるようです。

 

いやいやながら二人は戻って、(そのたびにお店のおじさんは「すっぱいドロップ」をくれます)また帰ろうとします。
いつも、「分かれ道のところ」で二人は気が付きます。

 

二回目に気が付いた忘れ物:おじいさんのしょうのうのぬり薬

 

また二人はいやいやながら戻って、おじさんに笑われながらすっぱいドロップをもらい、忘れ物を購入します。

 

三回目。

 

さて、もういっぺん、あの分かれ道にきたとき、アンナは、すごくこわそうな顔をしました。その顔つきといったら、ほんとにかわいそうなくらいでした。

 

三度めに気付いた忘れ物:お砂糖

 

二人とも、分かれ道のところが鬼門だということに気が付きました。
なので、走って通ることにします。
名案だとわたしも思いました。

 

二人は走って分かれ道を通り抜け、いい気分になりました。
そして、きた時と同じように、歌い始めます。

 

『いちばん、いちばん、上等な、あぶりソーセージ、ひとつだよ……』

 

二人は立ち止まりました。
あぶりソーセージを買い忘れてしまったのです!

 

いや、さすがにもうこれは帰ってもいいだろう!
というところですが、あぶりソーセージは、アンナのお母さんと、リーサのお母さんと、オッレのおかあさん、全員が頼んだ品なのです!

 

これはさすがに、買いに戻らないわけにはいかない……。

 

わたしたちは、道のわきにすわりこんだまま、ながいこと、口もききませんでした。やがて、アンナがいいました。
「あぶりソーセージなんてもの、だれもつくろうとおもわなきゃいいんだわ。……」

 

このあたりで、もう妹子もわたしも涙が出るほど笑っているのですが、この雑な紹介のままだと、面白さが10分の1ぐらいになってるのが実に残念です。

 

 

何気ない日常って、こんなにも楽しくて面白いものだっただろうか?
ひとつひとつの買い物の品や、行き来する道のりが、こんなにも輝いていただろうか?
この本を読んでいると、そんな風に感じられます。

 

ずいぶん昔の(昭和期の)「むかし話集」なのですが、「ママお話きかせて―冬の巻」という本のあとがきに、こんな風に書かれていました。

ところで、テレビや映画からも、情操をやしない知識を得ることはできます。しかし、自分の意思をつたえるのには、ことばをもってします。テレビや映画は視覚が主となっていますから、ことばでする表現のほうは多分に省略されます。それにくらべて、おはなしは、すべてをことばでする劇です。しぜんと多くことばをおぼえ、そして、また、意志を表現する方法をまなびとることができるのです。外国語をならうことも必要ですが、そのまえに、まず、祖国のことばが、正しく美しくつかえるよう、心がけることがたいせつだと思います。


西山敏夫さんの書かれたあとがきでした。

 

 

いまはYouTubeといい、Twitterでもインスタでも、動画があふれている時代ですから、何となく、「文章だけでものごとを描写する」ということが、薄れかけているように思います。

本もまた、会話ばかりが多く、挿し絵が多くなっています。

 

でも、絵がなければ子どもは読まない、と思い込んではいないかな?と思います。
また、詩的で繊細な文章だけに頼りすぎてはいないだろうか。

 

もっと骨太に。
もっと、単純に。
もっとわかりやすく、もっと明るく楽しく。

 

正確に美しく、楽しくすばらしく、「文章だけで」その状況を、空気を、景色を、描写すること。
それを読むことこそ、読書の最大の楽しみであり、よいと言われる効果なのではないだろうか?

 

そのことばがたくさんわたしたちの中、子どもたちのなかに流れ込んできて、よく言われる「想像力」だけではない、表現する力を培ってくれるのではないか。

 

そんな風に感じることができる、すばらしい訳にめぐまれたリンドグレーンの名作です。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

やかまし村の子どもたち
アストリッド・リンドグレーン (著),
イロン・ヴィークランド (イラスト), 大塚 勇三 (翻訳)

かまし村には、家が3軒きり、子どもは男の子と女の子が3人ずつ、ぜんぶで6人しかいません。でも、たいくつすることなんてありません。ひみつの手紙をやりとりしたり、かくれ小屋をつくったり、毎日楽しいことがいっぱい!小学3・4年以上。(「BOOK」データベースより)

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

やかまし村はいつもにぎやか
アストリッド リンドグレーン (著),
イロン・ヴィークランド (イラスト), 大塚 勇三 (翻訳)

かまし村の子どもたちは、楽しいことを見つける天才!リーサが子ヒツジを学校へ連れていったり、みんなでオッレの歯をぬく作戦をたてたり、宝箱をめぐって男の子と女の子がかけひきをしたり…陽気な話がつづきます。小学3・4年以上。(「BOOK」データベースより)

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ロッタちゃんとクリスマスツリー
アストリッド=リンドグレーン (著), イロン=ヴィークランド (イラスト), やまむろ しずか (翻訳)

明日は、楽しいクリスマスイブ。けれども、ロッタちゃんの家では、まだクリスマスツリーにするモミの木が手にはいりません。嘆き悲しんでばかりいるお兄さんたちを残してロッタちゃんは雪の町へ飛び出していきます。行動的な女の子を生き生きと描いたリンドグレーンの絵本。絵は彼女とのコンビが多いヴィークランドです。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

長くつ下のピッピ
アストリッド・リンドグレーン (著), 桜井 誠 (イラスト), 大塚 勇三 (翻訳)

あしながおじさん」にヒントを得て,作者リンドグレーンの小さい娘が,「ねえ,長くつ下のピッピって女の子のお話を作って」と母に頼んだ.そこで生れたのがこの世界一つよい少女の物語だった.自由ほんぽうに生きるピッピに,子どもは自分の夢の理想像を発見し,大人は愛さずにはいられない野育ちの永遠な少女を見出す.

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ママお話きかせて―冬の巻
(小学館のお話シリーズ)

初版と新版は、表紙デザインが異なります。日本昔話、イソップ童話などが90話収録。毎日ちゃんと読み聞かせても三か月分あり、読み応え十分。挿絵はダイナミックかつ個性的で、家族の話題作りにもいかがでしょうか。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ママお話きかせて―春の巻
(小学館のお話シリーズ)

みつばちマーヤ、桃太郎さん、一寸法師など花の季節にふさわしいお話を収録。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ママお話きかせて―夏の巻
(小学館のお話シリーズ)

はだかの王さま、七夕さま、人魚姫など夏の夕べに心なごむお話がせいぞろい。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ママお話きかせて 秋の巻
(小学館のお話シリーズ)

虫の音楽会、かぐや姫、月とうさぎなど静かな秋の夜長に最適なお話を紹介。

 

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

はじめてのおつかい いないいないばあ シンデレラ ミステリー
まぼろしの小さい犬 太陽の東・月の西―北欧伝説 雨月物語
トム・ソーヤーの冒険 どうぶつのこどもたち どうぶつ会議

 

 

大人が読む児童書「やかまし村の春・夏・秋・冬」1 クリスマスからはじまる物語。のどかな日常系

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

やかまし村の春・夏・秋・冬
アストリッド リンドグレーン (著),
イロン・ヴィークランド (イラスト), 大塚 勇三 (翻訳)

かまし村はスエーデンの小さな農村。クリスマスにはショウガ入りクッキーを焼き、復活祭には卵パーティーで大もりあがり!夏休みには宝物をさがしに湖の島へ。子どもたちの四季おりおりの遊びやくらしを、いきいきと描きます。小学3・4年以上。(「BOOK」データベースより)

 

 

クリスマスが近づいていますね。
以前、サラッとご紹介したやかまし村。

 

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うちの「どうぶつの森」は、「どう森」も「あつ森」もどちらも、妹子は「やかまし村」という名前をつけていました。

 

「長くつ下のピッピ」を描いたリンドグレーンが作者なので、これはもう間違いがない一冊です。

 

リンドグレーンの作品群は
「長くつ下のピッピ」や、「ロッタちゃん」のように、とんでもないめちゃくちゃが起こるもの。
「ミオよわたしのミオ」「はるかな国の兄弟」のようなファンタジー作品
などなどがありますが、この「やかまし村」シリーズはいわば日常系
ただひたすら、子どもたちの毎日を描いているものです。

 

北欧の農村、それも村にたった三軒というのどかな生活で、 主人公の「わたし」(リーサ)を含めた6人の子供たちが毎日、元気にゆかいに過ごしています。

 

とにかく面白い。
やっぱりこれは大塚雄三さんの翻訳が面白いんです。
食べ物も非常に美味しそうです。

 

そんな「やかまし村」シリーズの中でも、この「やかまし村の春・夏・秋・冬」は、 冒頭がクリスマスから始まります。

 

クリスマスの後に、春が来て……雨が降って、という風に続いていくので、クリスマスの後も、 楽しいプレゼントをもらえる イベントが終わってしまった、みたいなしんみりした気持ちにはなりません。

 

 

6人の子供たち。
ラッセ、ボッセ、「わたし(リーサ)」、オッレ、ブリッタ、アンナ。

 

ラッセ、ボッセ、「わたし(リーサ)」は三人きょうだいです。
ブリッタとアンナは姉妹です。
オッレだけがひとりっこ。でも、このお話の中でいもうとが生まれます。

 

お話の始まりからして、いかにもクリスマス~!な、すてきな冒頭です。

 

ほかのところではクリスマスがいつはじまるのか、わたしは、しりません。でも、このやかまし村にクリスマスがやってくるのは、わたしたちがショウガ入りクッキーを焼く日なんです。この日は、クリスマス・イブとおんなじくらい、たのしい日です。ラッセとボッセとわたしとは、クッキー用のこね粉を、めいめい、たっぷり一山ずつもらい、そのこね粉をつかって、すきなようにクッキーを焼けるのです。

 

クリスマスはクッキー作りから!

妹子「いつも、どうして子猫を使ってクッキーを焼くのかすごく不思議だったんだよ」
わたし「子猫……!!」

 

たしかに、「こね粉」というのを使っているのを見たことも聞いたこともありません。
でもこれが日本語の特徴ですが目で見てひらがなと漢字の混じっているこの「こね粉」とみれば言いたいことはわかります。

 

妹子「自分で読んでみて初めて分かったんだよ。ああ!子猫じゃなかったんだー!!って」

 

逆に今まで、どういう想像をしていたんだ。

自分なりに子猫を使ってクッキーを作ると言うのを想像してみましたが、全く思い浮かびませんでした。
あしがたをつけてもらって、肉球型のクッキーを焼くとかなのかな?

 

 

次の日はクリスマスツリーを切る日。
ミルクを運ぶ大きな馬ぞリを持って行きます。

 

それから、クリスマス・ツリーの飾りつけをするのですが、ここで「わたし(リーサ)」をはじめとしたラッセとボッセの3人きょうだいは、
クリスマス・ツリー用にとっておいた赤いりんご
・干しぶどうと木の実を入れた紙のかご
・ショウガ入りクッキー
…を、クリスマスツリーに吊るします。

 

「ショウガ入りクッキー」と書かれているのが、また美味しそうでいいのです。

今ならさしずめ、問題なく「ジンジャー・ブレッド」と訳されるのでしょうが、私にとってはいつまでも「ショウガ入りクッキー」です。人の形をしていることも知りませんでした。

 

しかしここでリーサたちはいろんな型を使っています。
「いちばんいいのはブタのかっこうをした型です」
と書かれています。
人型でなければならないというわけではなさそうです。

 

 

クリスマスツリーにクッキーを吊るすのを、今まで何度か、実行したことがあります。
しかしこれはなかなか難しいことでした。

 

まず吊るすための穴をあらかじめ、あけておかなければなりません。
後で開けようと思っても至難の業です。

 

うちはサブレ生地にジンジャーパウダーを申し訳程度に香り付けで使ったものなので、糸を通した針で突き刺すとあっという間に壊れてしまいます。

 

もちろん、穴を開けてから焼いても焼くあいだに生地が広がってとけて、穴は潰れてしまっていますが、それでも無いよりましです。

 

兄助も妹子も、実はあまりクリスマスツリーや飾りつけには興味を持たない子たちなのですが、さすがにこのクッキーを吊るすのは大人気で(というよりもそこだけが大人気で)、他の飾りには目もくれずに目をギラつかせていました。

 

そして、どんどんなくなっていきます。

実際のクリスマスの日には、もうクッキーはほぼないという状態です。
まあこれは仕方ないのかもしれません。
目の前におやつがぶら下がっていたら、食べてしまいますよね……。
さあ食べてくださいと言わんばかりですもんね。

 

仕事にクリスマスは関係ないので、毎年いつもやれるわけではありませんでしたが、クッキーをつるすのは長年の憧れでした。
自分が子供の時には、きっぱりと却下されていたので、自分がやりたいようにやれるのは楽しいです。
はっきり言って子供のためというより完全に自分のためです。

 

自己満足!

 

うちのレシピです。

やわらかバター100g
粉砂糖70gふわっとするまで。
卵黄L1個とバニラエッセンス。
薄力粉200g。
ビニール袋に入れ30分冷やす。打ち粉は充分に。
型抜く。
余熱170度。10~15分。

 

 

クリスマスの後には、みんなでそり遊びをします。

 

お父さんたちがやってきて、そりを横から取ってしまいました。
家が三つしかない村の三人のお父さんたちが、仲良くひとつのそりに並んですべって遊んで、名前で呼び合っています。

多分この三人のおとうさんたちは、この村で生まれ育った仲良しなのでしょうね。

 

しがらみがいろいろあり、自由にするわけにもいかず、心から楽しいとは言えないこともある年越しです。

 

でもこのやかまし村を読んでいると、自分が好きなようにすればいい、こうしなければいけないなんて言うことはない。

そしていつもどおりの冬の過ごし方だって、心ひとつで楽しく過ごせるんじゃないか。だんだんそんな気持ちになってきます。

 

純粋に、クリスマスって楽しいものだった。
だってリーサたちがあまりにも楽しそうなので。

 

大好きなやかまし村シリーズの1冊です。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

やかまし村の子どもたち
アストリッド・リンドグレーン (著),
イロン・ヴィークランド (イラスト), 大塚 勇三 (翻訳)

かまし村には、家が3軒きり、子どもは男の子と女の子が3人ずつ、ぜんぶで6人しかいません。でも、たいくつすることなんてありません。ひみつの手紙をやりとりしたり、かくれ小屋をつくったり、毎日楽しいことがいっぱい!小学3・4年以上。(「BOOK」データベースより)

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

やかまし村はいつもにぎやか
アストリッド リンドグレーン (著),
イロン・ヴィークランド (イラスト), 大塚 勇三 (翻訳)

かまし村の子どもたちは、楽しいことを見つける天才!リーサが子ヒツジを学校へ連れていったり、みんなでオッレの歯をぬく作戦をたてたり、宝箱をめぐって男の子と女の子がかけひきをしたり…陽気な話がつづきます。小学3・4年以上。(「BOOK」データベースより)

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ロッタちゃんとクリスマスツリー
アストリッド=リンドグレーン (著),
イロン=ヴィークランド (イラスト), やまむろ しずか (翻訳)

明日は、楽しいクリスマスイブ。けれども、ロッタちゃんの家では、まだクリスマスツリーにするモミの木が手にはいりません。嘆き悲しんでばかりいるお兄さんたちを残してロッタちゃんは雪の町へ飛び出していきます。行動的な女の子を生き生きと描いたリンドグレーンの絵本。絵は彼女とのコンビが多いヴィークランドです。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

長くつ下のピッピ
アストリッド・リンドグレーン (著), 桜井 誠 (イラスト), 大塚 勇三 (翻訳)

あしながおじさん」にヒントを得て,作者リンドグレーンの小さい娘が,「ねえ,長くつ下のピッピって女の子のお話を作って」と母に頼んだ.そこで生れたのがこの世界一つよい少女の物語だった.自由ほんぽうに生きるピッピに,子どもは自分の夢の理想像を発見し,大人は愛さずにはいられない野育ちの永遠な少女を見出す.

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

名探偵カッレくん
アストリッド・リンドグレーン (著),
エーヴァ・ラウレル (イラスト), 尾崎 義 (翻訳)

名探偵を夢見るカッレくんは、ある日エイナルおじさんの怪しい行動に第六巻を働かせ、捜査を始めます。宝石窃盗団に迫ったカッレくんは、仲良しのアンデス、エーヴァ・ロッタとともにお城の地下室に閉じこめられてしまいますが…。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ミオよわたしのミオ
アストリッド リンドグレーン (著),
イロン・ヴィークランド (イラスト),大塚 勇三 (翻訳)

ストックホルムの町で,もらわれっ子としてつらい日々を送っていた少年ボッセは,ある夜,父の王がまつという「はるかな国」へ迷い込みます.王子ミオとなった少年は,白馬ミラミとともに,ざんこくな騎士カトーと戦うため,不吉な魔法の城へむかいます….北欧民話の味をいかした,美しく感動的な空想物語.

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

はるかな国の兄弟
アストリッド・リンドグレーン (著),
イロン・ヴィークランド (イラスト), 大塚 勇三 (翻訳)

ヨナタンとカールの兄弟は,楽しい生活を期待しながら,はるかな国ナンギヤラにやってきた.しかし,2人を待ちうけていたのは….怪物カトラをあやつり村人を苦しめている黒の騎士テンギルを倒そうと,2人は戦う決心をする.生と死,愛と憎しみ,正と邪との戦いを織り込みながら,勇敢な兄弟の姿を叙事詩風に描いた作品.

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

さすらいの孤児ラスムス
アストリッド リンドグレーン (著),
エーリック・パルムクヴィスト (イラスト), 尾崎 義 (翻訳)

孤児院をぬけだした9歳の少年ラスムスは,陽気な風来坊のオスカルにであい,街角でアコーディオンをかなでながらの旅にでる.凶悪な強盗犯をつかまえて大手柄をたてたラスムスは,やがて金持ちの夫婦にもらわれることになったが….リンドグレーンは,この人間愛あふれる作品を書いて国際アンデルセン賞に輝いた.

 

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

タランとリールの城 日本奥地紀行 チムひとりぼっち
王さまになった羊飼い ウルスリのすず くいしんぼうのあおむしくん
宝島 北欧の挿絵とおとぎ話の世界 流れのほとり

 

 

大人が読む児童書「黒ねこのおきゃくさま」 ねこの絵選手権優勝の盾を贈呈したい。

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

黒ねこのおきゃくさま
ルース エインズワース (著), 山内 ふじ江 (イラスト),  荒 このみ (翻訳)

冬の嵐の晩、貧しいひとり暮らしのおじいさんのもとに、一ぴきの黒ねこがやってきました。やせ細り、びしょぬれになってふるえている黒ねこを哀れに思ったおじいさんは、わずかばかりのミルクとパンを全て与え、さらにはとっておきの羊の肉までやってしまいます。そればかりか、残っていたまきをすべてだんろにくべて、黒ねこをあたためてやるのでした。そして翌朝、奇跡はおこりました……。

 

 

ルース・エインズワースの、絵本と本の中間といったハードカバーの本です。

 

あんまり猫がかわいいので。
あまりにもこの絵がかわいいので。

 

手に取ってから、しばらく話よりも、あまりの絵のかわいさにじっと見とれてしまいました。

 

 

海外の人って、猫を書くのそんなに上手じゃないような気がします。

ごく少数の例外を除いて、そのリアルな例外も、どちらかというと目のキツさもきちんと写生してますし、でなければトムとジェリーのトムみたいな感じです。

 

これは、すごい。
猫のかわいさが、わかっていすぎる。

 

と思って見てみたら挿し絵は、山内ふじ江さん。
日本人だったー!

 

日本人は、世界に類のないねこずきで、浮世絵にもねこの絵がたくさん残っていると聞きますが、(ちょっと真偽はわかりません)この挿絵を描いたかたは、相当に猫の絵の名手です。

ほんとうに猫です。

 

 

絵がかわいいという話はここまでにして、このお話です。

 

貧しいおじいさんが1人暮らしをしています。
孤独な独居暮らし。
寒くて年を取って体が弱っています。しかもお金もありません。
人生はつらい。

 

しかしおじいさんは今日は土用の晩であることを思い出しました。

 

おじいさんは、思い出して、にっこりしました。すると、やせこけたつちいろの顔が、まるで、しなびたリンゴの皮のように、しわくちゃになりました。

 

一週間に一度だけ、肉のごちそうと、寝る前にミルクにひたしたパンを食べるのだそうです。

 

なんて素敵な表現でしょうか。
さすがルース・エインズワース。(ねこと、作者の名前で選びました)

 

「ミルクにひたしたパンは、体をとってもあたたかくしてくれるそれで、ようくねむれるんだ」

 

こ、これは……。

 

先に猫の絵を見ちゃってるので、読めたなという感じはします。
先に見なきゃ良かったような、見てもあんまり変わらないような、とにかく可愛いとしか感じません。

 

扉の向こうで鳴き声がします。雨風のひどい日です。
聞き違いではありません。またなきごえが聞こえました

 

おじいさんは痩せた黒猫を招き入れました。
このびしょ濡れの様子!タオルにくるまれた様子!

 

(猫の絵のことばかり書いてますが、おじいさんの様子、貧しいながらも整った家の中の様子、暖炉の火など、とてもすばらしいです)

 

おじいさんはミルクをやり最後に残っていた分のパンもちぎってひたして、すべてあげてしまいます。

 

猫は舌なめずりをしながらあちらこちらを物色し、今度はどうやら肉に気がつきました。
おじいさんこれも、全部猫にやってしまいました。

 

 

さらに今度は食器棚に残っている骨です。
おじいさんせめて骨くらい取っておいて後でだしをとってスープを作ろうと思って撮っていたものです。

 

猫にやってしまうんだろうなとは思っていましたが、ちょっと予想外に何もかもしゃぶり尽くされたというか、ここまですべてあげてしまうと、何とも言えない気持ちになります。

 

猫はもうひもじそうな骨と皮ばかりの猫ではありません。
ちょっと不思議な感じがします。

 

毛はやわらかく、ふさふさになり、ひげはぴんとはって、りっぱになりました。しっぽはふくらみ、さっきの二倍になっていました。…?

 

わずか一食、食べたばかりでこんなになるものだろうか。

 

 

今度は薪です。
震えている猫を温めるため、おじいさんあるだけの薪を残らず全部、使ってしまいました。

 

おじいさんは、とてもしあわせでした。まきがぱちぱちもえて、時計がかちかちなって、おきゃくさまは、のどをごろごろならしています。なんて心地がいいんだろう。なんてしずかな気持ちだろう。なんて心がいっぱいなんだろう。おじいさんは、おなかがぺこぺこだったのも、すっかり忘れてしまいました。

 

すべてがなくなったはずなのにこの満たされた気持ち。
おじいさんは寝床に入って、なくなったもののことはもう考えないことにしました。
読んでいるこちらまで満たされます。

 

朝起きて、外は雪で覆われています。
食べるものもなく、薪ももうないおじいさん。

 

猫は外に出ようとする仕草を見せます。

 

 

黒猫は堂々と外に出て行き、その姿はまるで女王さまのように立派に見えました。

 

ここで猫はふりかえり、
「なぜわたしをおいだして、とびらをしめてしまわなかったのですか?」
と人間のように尋ねます。

 

確かにこの猫は、何か不思議な妖精か何かです。
猫が去って行った後も、雪の上に足跡はありませんでした。

 

おじいさんが戻ってみると、ミルクがたっぷりとありパンもあり肉もあり、薪もなぜか、山のようにありました。

この家に、二度と食べ物も薪も、尽きることはありませんでした。

 

 

不思議な物語です。

 

昔話風の仕立てにしてありますが、これは小さな小説です。
分かち合うことの喜び幸福、心の豊かさを描いています。

 

しかし何にもまして猫があまりにも可愛いです。
でも可愛いだけじゃなくて神秘的なところがまた良い。

 

最後に外へ去っていく猫はこちらが「愛してお世話してあげる」存在ではありませんでした。

 

 

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

こすずめのぼうけん
ルース・エインズワース (著), 堀内 誠一 (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

子スズメはお母さんから飛び方を教わりました。羽根をぱたぱたやっているとちゃんと空中にういているので、子スズメはおもしろくなってどんどん遠くまで飛んでいきました。そのうちに羽根が痛くなったので休もうと思いましたが、ようやく見つけた巣にはカラスやヤマバトやフクロウがいて、中に入れてもらえません。やがてあたりは暗くなって……。骨格のしっかりした物語絵本です。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

しおちゃんとこしょうちゃん
ルース・エインズワース (著), 河本祥子 (イラスト, 翻訳)

まっ白な毛のしおちゃんと、白に灰色の混じるこしょうちゃんは双子の子猫、何をするのも一緒です。ある日、どちらが高いところに登れるか競争をして、庭の木のてっぺんから、下りられなくなってしまいました。鳥や飛行機に鳴いて助けを求めても、だれも来てくれません。でも夜になると、お母さんが迎えにきてくれました。お話の名手・エインズワースによる、張り合う子猫たちのおかしさとお母さん猫のあたたかみが感じられる作品。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ちいさな ろば
ルース エインズワース (著), 酒井 信義 (イラスト), Ruth Ainsworth (原著), 石井 桃子 (翻訳)

ちいさなろばは、昼間遊ぶときも夜眠るときもひとりぼっちです。クリスマスイブにプレゼントを配る手伝いをしたろばに、サンタクロースは、「あしたの朝、なにかがおまえを待ってるよ」と言います。クリスマスの朝、ちいさなろばを待っていたものは……。『こすずめのぼうけん』『黒ねこのおきゃくさま』など、子どもの心をとらえるお話の名手、エインズワースの原作が、格調高い訳文と絵で、美しい絵本になりました。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ねこのお客 (岩波少年文庫(1055)―かめのシェルオーバーのお話 1)
ルース・エインズワース (著), 河本 祥子 (翻訳)

キャンディおくさんの家で暮らしている牛や犬,ねこなどの動物たちは,ある朝庭でカメを見つけて大騒ぎ.いったいどこから,どうやってやってきたのでしょう.じつはこのカメは,長い時間をかけて,ゆっくりゆっくり世界をまわりながら,たくさんの物語を集めてきたのです.カメはその中から,こわい話ふしぎな話を語ります.

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

きかんしゃ ホブ・ノブ
ルース・エインズワース (著), 安徳 瑛 (イラスト), 上條 由美子 (翻訳)

赤い機関車ホブ・ノブは、こひつじ、いぬ、ねこ、あひる、めんどり、しちめんちょうを乗せて、遊園地へ向かいます。途中、真っ暗なトンネルに近づくと、動物たちは怖がって大騒ぎになりました。ホブ・ノブはトンネルの中で汽笛を鳴らし、明るい火の粉をたくさんはきだして、みんなを安心させます。そしてホブ・ノブと動物たちは、遊園地で楽しく過ごしました。繰り返しのきいた簡潔なストーリーが、幼い子どもの心を満たします。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

こねこのぴっち
ハンス・フィッシャー (著), 石井 桃子 (翻訳)

リゼットおばあさんの家に住んでいる子ねこのぴっちは、ほかのきょうだいたちとはちがうことをして遊びたいと思いました。ところが、アヒルのまねをして池で泳ごうとして、おぼれてしまいます。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

こねこのぴっち (大型絵本)
ハンス・フィッシャー (著, イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

長いあいだ小型版で親しまれてきた、人気者のかわいい子ねこのぴっちが、迫力ある美しい大型絵本にうまれかわりました。読みきかせにもぴったりの大きい画面で、動物たちの表情をお楽しみください。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

Pitschi
Hans Fischer (著)

リゼットおばあさんの家に住んでいる子ねこのぴっちは、他の兄弟たちとは違った遊びをしようと思いました。アヒルの真似をして池で泳ごうとしますが…。

 

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

新編 世界むかし話集(5)東欧・古代編 時の旅人 北極のムーシカミーシカ
もしもしおかあさん ガリバー旅行記 ぼくは王さま
ヤナギ通りのおばけやしき たんじょうび 新編 世界むかし話集(9)アフリカ編

 

 

大人が読む児童書「とぶ船」5 読了 けじめをつける、物語を終わらせるということ

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

とぶ船
ヒルダ・ルイス (著), ノーラ・ラヴリン (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ピーターがある日、うす暗い小さな店で手に入れた古い小船は、なんと魔法の「とぶ船」でした。ピーターたち4人きょうだいはこの船で、エジプトやウィリアム征服王時代のイギリス、北欧神話の世界にまで冒険旅行をします。

 

 

大人が読む児童書「とぶ船」 児童書は世界へのとびら

2 古い、うすぐらい小道のうすぐらい店に魔法は待っている

3 あのトトロに影響?病気のお母さんのエピソード

4 ノルマン・コンクエスト時代のイギリス。なじみの薄い歴史を生き生きと

 

下巻では、お話が

・エジプトの発掘現場へGO!
古代エジプトへGO!

と推移します。

 

みんな大好き、エジプトへ!

 

前回の記事で話題にしましたが、作者がこのお話を書く前、ハワード・カーターがツタンカーメン王の墓を発見しました。

当時、別にその時代の人間じゃなかった私もハワード・カーターに大興奮だったので、きっといまの子どもたちだって大興奮してくれるはず。

 

山岸凉子の「ツタンカーメン」は、カーターをかっこよく書いてくれるだけじゃなくて、地道でリアルな発掘の様子を描いていて、とてもイイ!です。

 

 

四人は、「ハワード・カーターに話を聞いたらこんな感じかな♡」というノリのテンションで、今まさにエジプトを発掘中の考古学者の所にとぶ船で飛んでいき、話を聞いてお食事を一緒にとって、素敵な一日を過ごします。

 

そこで聞いた、気になる情報…!
が、次の古代エジプトへGO!」のきっかけとなるものでした。

 

時代背景をご紹介します。

 

四人兄弟姉妹が行った「古代エジプト」とはどの時代なのか?

 

エジプトの長い長い歴史には、初期王国、古王国、中王国、新王国とあって、人気のツタンカーメン、トトメス、ハトシェプスト、ラムセスあたりはみな、新王国です。
情報も、古い時代に比べて豊富だからなのでしょうね。

新王朝はBC1570~1000。

 

四人が行ったのは、BC2000~の中王国。

ツタンカーメン時代よりも500年ほど前のアメン・エム・ハト一世の時代です。

アメンエムハト1世 - Wikipedia

 

ここで4人は実在している人物を元にしていそうな王子をとぶ船で助けるのですが…。
・なんとなく、ハワードカーターっぽい考古学者
・苦境に落ちた古代エジプトの王子

 

これはやはり、ハワード・カーターに会いに行って、ツタンカーメンを「とぶ船」で助けられたならなあ…!というロマン、空想のようなものを感じます。

 

医者であったり、シェフであったりする現代の人物が、時空を越えて突然、戦国時代や幕末に現れ、坂本龍馬や信長に関わるのと、基本おなじです。

 

 

次のエピソードは、この「とぶ船」の中でも特に好きなお話です。

ウィリアム征服王の時代からマチルダが現代にやってきます!

 

このエピソードはマチルダが本当に可愛く大好きなので前回の登場回ともに夢中になれるところです。

 

大切な友達が夏休みに遊びに来た、ひと夏の大切な記憶、というモチーフは、よく児童書でも絵本でも用いられています。

それが、時空を越えて、中世イングランドのノルマン人の少女がひとときだけ、現代に遊びに来る。

 

現代人が未来へ行って遊ぶのでもなくて
古代へ行ってあれこれ見聞きするのでもなくて
中世イングランドの少女が、今の(当時の)イギリスにやってきて、あれこれと体験をする。

 

なぜかわかりませんが、読んでいるこちらはどうしてかマチルダの気持ちがよくわかり、マチルダに感情移入して読んでしまいます。

 

日本という異国の立場から、イギリスの(当時の)子どもたちの生活を見ているからなのかもしれません。
そのキラキラした喜び、好奇心、夢中になる心。
子供は順応性が高いです。

 

たとえ時代はちがっても、あの頃生きている人々は、おなじなのだ…!
と、感じられる、とてもすばらしいエピソードです。

 

 

最後はロビン・フッド

 

薔薇戦争よりも300年ほど前の時代、中世イギリスの十字軍時代の義賊ということになっています。
伝説上の人物です。
いま、ロビン・フッドを知っている日本の子どもはいるのかな?
名前も聞いたことないのではないでしょうか?
わたしが子どもの頃は、割とお話も出ていたのですが、最近はほとんど見かけない気がします。

 

定期的に映画にもなっているみたいですが、史実上の人物ではないからかな。

 

 

ロビン・フッドを最後に、物語は幕引きに入ります。

 

「とぶ船」を名作としていて、何よりもすばらしいのが、その終わり方です。
上巻で、北欧神話の国に行った時から、漠然と予見されていたことでした。

 

神秘の世界、魔法の世界は、ある一時期だけに訪れるもので、そしていつかは卒業しなければならないものであること。

中世イングランドの少女マチルダも、最後は背を向けて帰っていきました。
それぞれの時代で、生きて行かねばなりません、との言葉を残して。

 

終わり方が、実に潔いのです!

楽しければ楽しいほど、すばらしい体験であったからこそ、幕引きをしっかりと閉じ、終わらせねばなりません。
夏休みは、いつまでも休みのままではいられない。

 

終わりが必ず、来るのです。

 

「はてしない物語」の記事の時にも、少し書いたことですが、名作だな、と思う作品に必ずある、この「空想の世界からきちんと読者を吐き出す」「幕を引く」という終わり方。

 

これは、子どもたちにとって本当に大切です。
けじめをつける、というのは勇気がいることです。

 

こちらも魅入られ、すばらしいと思っているからこそ、このけじめに対するきっぱりとした態度は、尊敬の心を生みます。

 

だからこそ、見守り、寄り添いながらも、最終的には別れをうながす大人の態度は、とても大事なことだと思います。
一緒になって遊んでもいいわけですけども、やはり監督者としての心を忘れてはならない。

 

そして、最後に子どもたちが自らの手でいさぎよくこの話を終わらせたことによって叶えられたことがあります。
「心からの望み」が何だったのか。

 

それは、本来は忘れさられるはずだった「とぶ船」の記憶を、いつまでも持ち続けていられることではなかったか、とそんな風に考えました。

 

 

 

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

The Ship That Flew (English Edition)
Kindle版 英語版 Hilda Lewis (著), Beebliome Books (編集)

The model Viking ship lay in the window of a little old shop in an unfamiliar back street, and Peter, on his way to the dentist, lost his heart to it at once. It cost him all the money in hist pocket, including the fare home. That was how he came to take the way along the beach which led him into grave danger, but also opened his eyes to the magic properties of the little ship in his hand—the ship that flew.

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ツタンカーメン (全4巻)
山岸凉子(著)

「我は汝を王と成さしめる者なり」。1903年エジプト。封印されたファラオの墓発掘に挑むハワード・カーターはテントの中で枕元に立つ金のサンダルを履いた男から不思議な言葉をかけられた。彼の人生をかけた挑戦が、始まりを告げる。ツタンカーメンの王墓発掘を描く冒険歴史ミステリー。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

信長のシェフ
西村ミツル (著) , 梶川卓郎 (イラスト)

現代の料理人・ケン。彼が目を覚ますとそこは戦国時代だった。京で評判の料理の噂を聞きつけた信長は、強引にケンを自分の料理人にするが…!?戦と料理が織りなす前代未聞の戦国グルメ絵巻!コラム&レシピ「戦国めし」も必見!

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

JIN―仁― (全13巻)
村上もとか (著)

南方仁は東都大学附属病院に勤める脳外科医である。ある日、彼が頭部裂傷の緊急手術を執刀した患者が、病院を脱走しようとする。患者と揉みあう内に仁はなんと幕末の1862年にタイムスリップしてしまった。電気も消毒薬も抗生物質もない世界で、医師南方仁の戦いが始まる。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ロビン・フッドのゆかいな冒険
ハワード パイル (著), 村山 知義 (翻訳), 村山 亜土 (翻訳)

伝説の英雄ロビン・フッドは,シャーウッドの森に住むイギリス一の弓の名手.悪政に反抗し,しいたげられた人びとのために戦ったロビンと彼の仲間たちの冒険を生き生きと描く.(解説=神宮輝夫)

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ロビン・フッド(字幕版)
Amazonプライム

すべての人のため、一つの愛のため、そして正義を守るため、法をも破り、男は闘った--。 No Rating (C) 1991 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

砂の妖精
イーディス ネズビット (著), H R ミラー (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ロンドンから田舎に移り住んだ子どもたち4人。彼らは砂の中に棲んでいるサミアドという不思議な妖精に出会います。その魔法の力で空を飛んだり、巨人になったり…愉快な冒険物語。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

時の旅人
アリソン アトリー (著), 松野 正子 (翻訳)

病気療養のため、母方の古い農場にやってきたペネロピーは、ふとしたことから16世紀の荘園に迷い込む。王位継承権をめぐる歴史上の大事件にまきこまれた少女の、時をこえた冒険。中学以上。(「BOOK」データベースより)

 

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

やさしいライオン ジャッキーのパンやさん しずくのぼうけん
かちかち山 おとうさんの庭 ニャーンといったのはだーれ
おんがくかいのよる―5ひきのすてきなねずみ とけいのほん1 フランクリンとルナ、本のなかへ

 

 

大人が読む児童書「とぶ船」4 ノルマン・コンクエスト時代のイギリス。なじみの薄い歴史を生き生きと

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

とぶ船
ヒルダ・ルイス (著), ノーラ・ラヴリン (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ピーターがある日、うす暗い小さな店で手に入れた古い小船は、なんと魔法の「とぶ船」でした。ピーターたち4人きょうだいはこの船で、エジプトやウィリアム征服王時代のイギリス、北欧神話の世界にまで冒険旅行をします。

 

 

大人が読む児童書「とぶ船」 児童書は世界へのとびら

2 古い、うすぐらい小道のうすぐらい店に魔法は待っている

3 あのトトロに影響?病気のお母さんのエピソード

 

7章では、ノルマン・コンクエスト時代のイギリスの話となりました。

 

子どもたちのぼうけんについては、読んでもらった方がおもしろいと思うので、詳しくは書かないのですが、ここで、あまりなじみがないのではないかと思われる、ノルマン・コンクエスト時代のイギリスの歴史事情について、ちょっとウィキペディア先生の助けを借りてご説明をしたいと思います。

 

ここは、Google先生およびWikipedia先生の出番です。

 

ノルマン・コンクエスト - Wikipedia

 

 

5世紀頃にブリテン島にドイツの北岸からアングロサクソン人が進入。
ドイツの「ザクセン」と、「サクソン」は重なっている。

つまり、ドイツ系だということでしょうか。
そう簡単には割り切れないのでしょうけど。

 

ノルマン・コンクエスト
アングロ・サクソンVSノルマン
と考えていると、ドイツが起源の一族かフランスが起源の一族かと考えがちです。

 

ですが、Wikipediaこの家系を見る限り、同じ北部ノルマン人と結婚によってつながっています。
かなりノルマン人の影響は強いです。

 

そもそもが北部のドイツやフランスも、北欧のバイキングなどと、密接に関係しているようですので、実際は絡み合った縁戚関係により、そこまで「サクソン人」「ノルマン人」とかっちりとわけられるものでもないようだなと思いました。

 

とにかく歴史上では
ヘイスティングスの戦いにおいてノルマンディー公ウィリアムによってアングロサクソン王朝が倒され、ここからイングランドノルマン朝になる」
ということです。

 

そして有名なのがバイユーのタペストリ

 

バイユーのタペストリー - Wikipedia

 

 

ウィキペディアに詳細なように、以前はノルマンディー公ウィリアムの王妃マチルダが寄進したと考えられていたようです。

 

この「とぶ船」の物語中では、このタペストリは「マチルダ王妃が作らせた」とされる考えによって物語が書かれています。

 

今考えてみると、作者は明らかに、バイユーのタペストリからこのお話を編み出したのだろうな、と思われます。

 

 

土地の人との会話から、この4人の兄弟姉妹は、
「ピーターの鼻が高いところはノルマン人に似ているが、基本はアングロサクソンの顔立ちだ」
ということのようです。

 

なかなかうまいことお話ができています!

 

忘れてしまいそうになりますが、これは児童書です。

 

もし日本人でこのような話を作ったなら、弥生人縄文人かというような話になるのでしょうか。
現在の考古学では、そうはっきりと分けられるものでもなかったことが判明していますが、昔はそれなりにみればわかるぐらいの違いだったとしても、それはそれでおかしくはありません。

 

この土地の奥さんの言葉から出た
「センラックの野でお果てなされたハロルド王さま」
センラックの野というのが、ヘイスティングスのことでしょう。
ハロルドとは(Wikipedia先生のいうところの)ハロルド・ゴドウィンソン。ハロルド2世のことだと考えられます。

 

エドガーさま」というのは、亡くなったことによって跡目争いからこの戦争が起きたという、アングロサクソンエドワード懺悔王の甥の子どもみたいです。
このエドワード懺悔王は、ノルマン人の母を持っているのですが、甥は異母兄とのことで、そうではないようです。

 

 

この複雑かつ、微妙な情勢の中で、マイペースにふるまう四人の子どもたち。
彼らの前に、ノルマン人の貴族の少女、マチルダが登場します。

 

かわいい!大好きです。

 

この子はこの長いお話の中でたったひとり、ぼうけんの中、この四人兄弟姉妹と、心を通わせた人物です。

 

ちょうどノルマンディー公ウィリアムが王と決まったばかりの時代の話ですから、周囲はみなピリピリしています。
そんな中で、征服者側のノルマン人の少女なので、ツンと頭を上げて威張った様子です。

 

この少女に注目したのは次男のハンフリ。
名前が作者の息子と同じですね。

 

「とぶ船」の話の中で、わたしはこのハンフリがいちばんお気に入りでした。
病気のお母さんの所に行くときに、赤いバラを摘み取ったのもこのハンフリです。

 

ノルマン人の少女は、こんな感じです。

 

その子は、 どっしりした、 みどり色の 長い服を着ていて、ひろい 袖には毛皮がぬいつけてあり、 首には金のくさりをかけていました。 十ばかりに見えるその子は、 高慢そうに頭をそらせ、いじわるそうにあたりを 見まわしていました。

 

あとで仲良くなるのですけど、最初はこんな感じで、じつにいじわるそうな感じです。
ハンフリ、「あんなにつんとしてなければ、ずいぶんかわいいのに」なんて考えています!

 

ずいぶんかんしゃくもちの、プライドの高い女の子です。
四人のことを、「サクソンのブタ」なんて呼びますし、最初から喧嘩ごしです。

 

でも、でも、そこが、かわいいんです!

このマチルダの魅力が、このお話の根幹です。

 

実は、ハンフリ以外はほぼ、四人のことはぼんやりとしか覚えていませんでした。
長兄も、ピーターだったかな?またピーターか。長男=ピーター多いな…なんて考えていました。
(ピーターという名前は、キリストの第一弟子、聖ペテロの名前が元なので、長男によく付けられるようです)

 

今に到るまで、マチルダのことを一度も忘れたことはありません。
サブキャラクターのはずが、主人公たち以上に生き生きとした魅力をもって、心に刻み付けられました。

 

 

このお城の殿様が、マチルダの父上です。
海から渡ってきて、アングロ・サクソンを従えたノルマン人なので、きびしい顔立ちの居丈高な男性なのですが、マチルダには若干甘い様子。

 

チルダと話をしているうちに、四人は仲良くなりますが、手を差し伸べたのはハンフリです。
ハンフリ、最初からずっとマチルダに優しいんです!

 

高慢で、威張っていたマチルダも、本当はさびしいことが知られます。
この城で、いつも遊び相手もなく、ひとりぼっちのマチルダ

 

チルダの部屋には、たいそう立派な、ノルマン人とサクソン人との戦いが刺繍されたタペストリが、さしかけの状態でししゅう台に設置されてあります。

バイユーのタペストリーだ~!!!

 

このマチルダは、ノルマンディ公女ウィリアムの妻、女王マチルダから名前をもらったとのことで、そんな少女が、バイユーのタペストリっぽいものを持っているという、この歴史ずきにはたまらないシチュエーション!

 

でも、マチルダはししゅう台をけとばします。
「もうこんなもの、つくづく、あきてしまった!」

 

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子どもの頃に読んでから、今にいたるまで、忘れられない絵、忘れられないシーンです。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

The Ship That Flew (English Edition)
Kindle版 英語版 Hilda Lewis (著), Beebliome Books (編集)

The model Viking ship lay in the window of a little old shop in an unfamiliar back street, and Peter, on his way to the dentist, lost his heart to it at once. It cost him all the money in hist pocket, including the fare home. That was how he came to take the way along the beach which led him into grave danger, but also opened his eyes to the magic properties of the little ship in his hand—the ship that flew.

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

砂の妖精
イーディス ネズビット (著), H R ミラー (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ロンドンから田舎に移り住んだ子どもたち4人。彼らは砂の中に棲んでいるサミアドという不思議な妖精に出会います。その魔法の力で空を飛んだり、巨人になったり…愉快な冒険物語。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

火の鳥と魔法のじゅうたん
イーディス ネズビット (著), H.R.ミラー  (イラスト), 猪熊 葉子 (翻訳)

ロンドンに住む5人の兄妹は子供部屋のじゅたんを焦がしてしまい、新しいじゅうたんを買ってもらったら・・・なかには不死鳥の卵が・・・空飛ぶじゅうたんと不思議な力を持つ不死鳥と数々の冒険をするのですが、願いはかなえられるけど、意外な結果に・・・日常にふとまぎれこんだ「魔法」を楽しく描くネズビットの傑作

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

メリサンド姫: むてきの算数!
E. ネズビット (著), 高桑 幸次 (イラスト), 灰島 かり (翻訳)

むかしむかし、人間と妖精がいっしょにくらしていたころ、ある国にそれはそれはかわいらしいお姫さまが生まれ、メリサンド姫と名づけられました……と、そこまではごく普通のお話だったのですが……。悪い妖精がかけた呪いに、姫と王子が算数マジックで立ち向かう!

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

第九軍団のワシ
ローズマリ サトクリフ (著), C.ウォルター ホッジス (イラスト), 猪熊 葉子 (翻訳)

ローマ軍団の百人隊長マーカスは、ブリトン人との戦いで足を負傷し、軍人生命を絶たれる。マーカスは親友エスカとともに、行方不明になった父の軍団とその象徴である“ワシ”を求めて、危険に満ちた北の辺境へ旅に出る。(「BOOK」データベースより)

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ともしびをかかげて
ローズマリ サトクリフ (著), チャールズ・キーピング (イラスト), 猪熊 葉子 (翻訳)

衰退したローマ帝国は、450年にわたるブリテン島支配に終止符をうつ。地方軍団の指揮官アクイラは、悩んだ末に軍を脱走し、故郷のブリテン島にとどまることを決意したが…。意志を貫いて生きることの厳しさ、美しさを描く。中学生以上。(「BOOK」データベースより)

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

時の旅人
アリソン アトリー (著), 松野 正子 (翻訳)

病気療養のため、母方の古い農場にやってきたペネロピーは、ふとしたことから16世紀の荘園に迷い込む。王位継承権をめぐる歴史上の大事件にまきこまれた少女の、時をこえた冒険。中学以上。(「BOOK」データベースより)

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「ナルニア国ものがたり」全7冊セット
C.S.ルイス (著), 瀬田 貞二 (翻訳)

押入れやクローゼットを開けたとき、この向こう側に行ってみたいと、ふと思うことがある人。それは『ナルニア国ものがたり』をかつて夢中になって読んだ人にちがいない。第二次世界大戦中のイギリスの片田舎。ロンドンから疎開してきたピーター、スーザン、エドマンド、ルーシィの4人きょうだいが学者先生のお屋敷を探検するところから、この壮大な物語は始まる。

 

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

ちいちゃんのかげおくり どろんこハリー はれときどきぶた
銀のほのおの国 ガリバー旅行記 あさになったのでまどをあけますよ
ロッタちゃんのひっこし あのころはフリードリヒがいた 999ひきのきょうだいのおひっこし

 

 

大人が読む児童書「とぶ船」3 あのトトロに影響?病気のお母さんのエピソード

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

とぶ船
ヒルダ・ルイス (著), ノーラ・ラヴリン (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ピーターがある日、うす暗い小さな店で手に入れた古い小船は、なんと魔法の「とぶ船」でした。ピーターたち4人きょうだいはこの船で、エジプトやウィリアム征服王時代のイギリス、北欧神話の世界にまで冒険旅行をします。

 

 

大人が読む児童書「とぶ船」 児童書は世界へのとびら

大人が読む児童書「とぶ船」2 古い、うすぐらい小道のうすぐらい店に魔法は待っている

 

ほかの兄弟姉妹たちとピーターが合流してから、この船のことを兄弟たちが信じるようになるまでは、せっかく面白いところなので、ここは省くとして、この船を使っての、この四人兄弟姉妹たちの最初の冒険です。

 

「お母さんのところに行ったエピソード」

 

これについて、わたしは前々から、ちょっと言いたくてたまらなかったこと、誰かに賛同を求めたかったことがあります。

 

というのも、この病気のお母さんに会いに行くエピソード。

 

・お母さんが病気であり、会うことができない
・なんだか難しそうな病気であるらしい
・子供たちはみんな元気に暮らしているのだけれど、どこかでおかあさんのことで影が落ちている。
・みんなお母さんを心配しているし寂しがっている
・魔法の船で夜にこっそりお母さんに会いに行く
・お母さんの寝顔をみんなで見る
・夢かと思われるが、子供たちが持ってきたバラの花が残っている

 

これ、どこかで見たり聞いたりしたような話だと思いませんか?
そうです!
あの「となりのトトロ」にそっくりなのです。

 

「とぶ船」の翻訳は1953年。
「となりのトトロ」は、1988年公開です。そして、昭和30年代(1955年~)が舞台です。
どうです?ぴったりだと思いませんか?

 

ジブリ作品は、児童書をモチーフとした作品が多いです。
魔女の宅急便ハウルアリエッティ、マーニー、ゲド戦記など。
そして千と千尋は、「霧のむこうのふしぎな町」が影響を与えていると言われていますし、ラストシーンにも、名作児童書をオマージュしたと自ら宮崎駿監督が書かれているシーンが存在します。

 

はっきり確認したことではないんですけど、どう考えても絶対この長年愛されてきている超有名な「とぶ船」の児童書の存在、内容を宮崎駿監督が知らないわけはなく、この「お母さんに会いに行く」部分になんとなく感銘を受けて、日本の子供達の話にしてトトロを描いたのではないのかなと、長年思ってきました。

この場合、船は猫バスになったわけです。

 

全く関係がないのじゃないか?と思われる方は是非、この「とぶ船」を読んでみてもらいたいと思います。

あまりにも似ていますので。

 

(ちょっと見つけられなかったのですが、以前、トトロの映画を観た当時からずっと「とぶ船」との類似性を指摘していたと主張されている方のブログもありました。)

 

 

決してパクリであるとか言いたいわけではなくて、例えば、ディズニーのライオンキングが、手塚治虫ジャングル大帝に似ているなどと言われたこともあるわけです。

それにお母さんに会いに行くエピソードは、この長編の「とぶ船」のごく一部分の類似性にすぎません。

 

それでもやっぱり、あの昭和という時代に、いかに優れた作品が、大小さまざまな影響を与えてこんにちの名作が生まれてきたという背景もあるのではないかと思っています。

 

なのでこの「となりのトトロ」「とぶ船」の類似性をもっとアピールして、ぜひたくさんの子供たちに「とぶ船」を逆アピールしたいと私は考えているわけです!

 

 

ここからは様々な国への旅立ちです。

…と言いたいところでしたが、今回読み直し調べてみたところ、ほとんどエジプトであったことが判明しました。

 

ツタンカーメンの大発見があった頃では無理もありません。
この発見の後、しばらく発掘熱がイギリスでは続いたそうですから。

 

最初に子供達が行ったのは4章「ナイルの岸」
現代エジプトのバザールです。
(現代といっても、当時の現代なので、かなり昔ではあります)

 

ピーターがお休みの宿題でエジプトの研究文を書かなくちゃならなかったからなのですが
じゃあ行ってみよう☆
というテンションがまさにドラえもんです。

 

しかしこの場合は、何か起きたときに対応する道具を出してくれるネコ型ロボットはいないので、4人兄弟が自分たちで何とかしなければなりません。

 

 

この船、古代に行くならともかく現代をとぶときは、ちゃんと空中を飛んでくれます。
なので、英仏海峡をすぎフランスの上を飛んで地中海を抜け、シシリー島のエトナ山の煙を見て、海の色がだんだん濃くなってくるという、この上なく素晴らしい旅です。

 

さらに、お世話係のガートルードが作ってくれた素晴らしいお弁当!
バザールの素晴らしいお菓子の数々!

 

マジパン=マルチパンだということを、ここで知りました。

 

マルチパンというのは、「くるみわり人形」にたくさん出てきていました。
その時は、何か特殊なパンなのだろうと思っていましたが、マジパンのドイツ語が、マルチパンだったのです!
衝撃の事実!

 

読み返してみたところ、子どもの頃のわたしは、このとき4人が食べたお菓子の素晴らしさにあまりにも夢中になっていて、その後の大変な展開の内容はすっかり忘れていました。

 

この回の記憶はもう、食べ物しかありません。
イギリスはメシマズだと言われるのですが、いまだに信じられません。
(本場イギリス料理を食べたことのない人)
おいしいイメージしかありません。

 

 

次に行くのは、北欧神話の世界!
これは胸熱です。

オーディンにフリッガ、フレイ、ロキなどが登場します。

 

詳しく書いてしまうと面白くないので、詳細は省きます。

 

これらの神々が子どもたちと会話するのですが、妙に人間臭すぎず、神性を保っていて、言うことも予言めいていてどこか神秘的です。
そこがとても良いのです!!
作者は、やはり神様は神様でいてもらいたいと思う、そこのさじ加減をようくご存じです。

 

これまでの冒険や、神々の助言によって、子どもたちはより、この船を使いこなせるようになりました。

 

何よりもありがたいのは、船首の金色のイノシシの首をなでて願えば、古代に行ったときにも、四人兄弟姉妹の姿もその当時の人々の姿になり、ことばもわかるようになる、ということでした。

 

現代エジプトの時には、言葉が通じなかったのでえらいことになってしまったのです。

 

これで、準備は整いました!

 

七章で、このお話最大の盛り上がり、いちばん面白いところ。
ノルマン・コンクエスト時代のイギリスに出発です。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

The Ship That Flew (English Edition)
Kindle版 英語版 Hilda Lewis (著), Beebliome Books (編集)

The model Viking ship lay in the window of a little old shop in an unfamiliar back street, and Peter, on his way to the dentist, lost his heart to it at once. It cost him all the money in hist pocket, including the fare home. That was how he came to take the way along the beach which led him into grave danger, but also opened his eyes to the magic properties of the little ship in his hand—the ship that flew.

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

となりのトトロ
宮崎駿 (監督)

大人から子どもまで、幅広い年齢層に支持され続ける宮崎駿監督による代表作のデジタルリマスター版。昭和30年代の田舎を舞台に、仲良し姉妹・さつきとめいと、不思議でチャーミングな生き物・トトロとの心温まるふれあいを描くファンタジーアニメ。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

クラバート
オトフリート=プロイスラー (著), ヘルベルト=ホルツィング (イラスト), 中村 浩三 (翻訳)

ヴェンド人の少年3人組で村から村への浮浪生活をしていたクラバートは、ある時から奇妙な夢を見るようになる。「シュヴァルツコルムの水車場に来い。お前の損にはならぬだろう!」という声と止まり木に止まった11羽のカラスの夢。 その声に従って水車場の見習となったクラバートは、昼は水車場の職人として働き、金曜の夜には12羽目のカラスとなって、親方から魔法を習うことになる。(小山由絵)

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

霧のむこうのふしぎな町 (講談社青い鳥文庫)
柏葉 幸子 (著), 杉田 比呂美 (イラスト)

心躍る夏休み。6年生のリナは1人で旅に出た。霧の谷の森を抜け、霧が晴れた後、赤やクリーム色の洋館が立ち並ぶ、きれいでどこか風変わりな町が現れた。リナが出会った、めちゃくちゃ通りに住んでいる、へんてこりんな人々との交流が、みずみずしく描かれる。『千と千尋の神隠し』に影響を与えた、ファンタジー永遠の名作。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

小人の冒険シリーズ 全5冊セット
メアリー・ノートン (著), 猪熊 葉子 (翻訳), 林 容吉 (翻訳)

イギリスの古風な家の床下に住む小人の一家。生活に必要なものはすべて、こっそり人間から借りて暮らしていましたが、ある日、小人の少女アリエッティがその家の男の子に見られたことから、小人たちの運命に大きな変化が……。イギリスファンタジーの傑作「小人の冒険シリーズ」全5作

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

思い出のマーニー
ジョーン ロビンソン (著), ペギー・フォートナム (イラスト), 松野 正子 (翻訳)

養い親のもとを離れ、転地のため海辺の村の老夫婦にあずけられた少女アンナ。孤独なアンナは、同い年の不思議な少女マーニーと友だちになり、毎日二人で遊びます。ところが、村人はだれもマーニーのことを知らないのでした。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ハウルの動く城 (全3巻)
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ (Author) , 西村醇子 (Translator) , 市田泉 (Translator)

魔法が本当に存在する国で暮らす18歳のソフィーは、「荒地の魔女」に呪いをかけられ、老婆に変身してしまった。家を出て、悪名高い魔法使いハウルの動く城に、掃除婦として住み込んだソフィーは、暖炉に住む火の悪魔と仲よくなる。やがて、ハウルもまた「荒地の魔女」に追われていると知ったソフィーは…? 英国のファンタジーの女王ダイアナ・ウィン・ジョーンズの代表作。スタジオジブリのアニメーション映画「ハウルの動く城」原作。【解説】荻原規子

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

くるみわり人形 (ポプラ世界名作童話) (日本語) 単行本 - 2018/11/10 北見 葉胡 (イラスト), E.T.A. ホフマン (著), 村山 早紀 (著)

クリスマスの日、マリーは、おくりものの中に、りっぱな服に身をつつんだ、くるみわり人形を見つけます。すっかり、このお人形が気に入ってしまうマリー。しかし、真夜中になると、家の中で音がきこえ、おどろきの光景を目にすることになります……!世界中で愛され読みつがれてきた名作に、現代の児童文学作家たちが新しい命をふきこんだ、ポプラ世界名作童話シリーズ。

 

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

ツバメ号とアマゾン号 もりのなか やまなし
くもの糸・杜子春 チポリーノの冒険 エルマーのぼうけんセット
西遊記 少女ポリアンナ (10歳までに読みたい世界名作) 小公女セーラ

 

 

今日の一冊「おやすみまえの365話」 …から「雪女」の家庭事情

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

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今日の一冊

 

カラー版 ママおはなしよんで 幼子に聞かせたいおやすみまえの365話
千葉 幹夫 (著)

人気の画家たちの挿絵とともに、日本と世界の昔話・名作を、一日一話ずつ366話収録した、オールカラーの豪華絵本です。 定番の「桃太郎」「おむすびころりん」「白雪姫」「おおかみと七ひきのこぶた」といった昔話はもちろん、「やまたのおろち」「じゅげむ」などの神話や落語、「ハイジ」「ロビンフッド」などの名作やギリシア神話も多数収録しています。 主な特長は次になります。 ●504頁、オールカラー、上製本という、他書にはない圧倒的に豪華な体裁と内容。 ●毎日3分程度で読み聞かせできるお話を366話掲載。

 

最近、妹子は、
「短いお話がたくさん入ってるのがいい」
といって、好んで昔話集をたくさん読んでいます。

 

長いストーリーは、 じっくりと読むタイプですし、深く入り込みすぎてしまうらしいので、 短いお話が気軽なようです。

 

昔は、こんなにいっぱい昔話あるんだからそこから読めば~とか思ってましたけど、この「幼子に聞かせたいおやすみまえの365話」は妹子が自ら欲しいと言ったので買いました。

 

 

妹子「なんで雪女はみのきちを殺さないの?おかあさんわかる?」
わたし「!?」

 

妹子、「雪女」を読んでいました。
365日の中でも、2月9日のお話です。

 

この雪女の話、ちゃんと登場人物に名前がついています。
木こりのもさくじいさんみのきちという若者です。
これか、みのきち。

 

寒い冬の日に山小屋で過ごした二人。
真っ白な女の人が、もさくじいさんに白い息をかけて殺し、みのきちには、このことは誰にも言っちゃいけない、話したら殺すからと言って去っていきました。

 

それから、春になって出会ったお雪という娘と結婚……。
見れば見るほど似ている……。

 

いや、気づけよ。

 

 

お話の欄外のひとつひとつに、小さなアドバイス(advice)がついています。
『雪女はどうしてみのきちを殺さなかったのか、親子で考えてみましょう』

 

これか!

 

わたし「わぁー道徳的。教科書みたい(*^-^*)」
妹子「そういうのいらないんだよね~」
わたし「いらないんだよね~とか言いながら、考えたんだ。どれどれ、なら親も考えねばなるまいて」

 

うーん。

 

わたし「これ、こどもがいなかったら雪女、みのきちを殺してるな」

 

(ずっと殺すとか殺さないとか殺伐とした会話が続きます)

 

わたし「殺さなかったのは子供のためだな」
妹子「そうだね、十人もいるもんね」
わたし「十人!?」

 

読みとばしてました。
妹子はほんとに、細部までちゃんと読むなあ。
わたしが注意散漫なだけか。

 

わたし「ほんとだ……。子供が十人いる」
妹子「ぜんぜん冷たくないね。あっつあつだね」
わたし「……ソ、ソウデスネ……」

 

 

やはり子どもにとって自分が選んで買った本というのは特別なようです。
岩波少年文庫の中でも「青い月の石」は特別なんだそうです。
妹子が探してきて欲しいと言って買った本だからです。

 

今もよく引っ張り出して、この365日の本を読んでいるのですが、確かに有名なお話のダイジェストみたいなところもありますけど、作家の生きた時代の年表が載っていたり、それぞれのお話のミニ情報みたいなものも実に多彩です。

 

これは買ってよかったなと思う本です。

 

 

わたし「で、雪女がどうしてみのきちを殺さなかったのか、あなたはどう考えたの?」

妹子「これ、雪女はみのきちが好きで、もさくじいさんがじゃまだったからころしたんじゃないかなっておもった」
わたし「そ、そんな深慮遠謀で最初から嫁になることを狙っていたという!?」
妹子「そう」

 

それで十人も子供を!?
逆に恐ろしい!

 

とんだヤンデレ雪女だ!

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

青い月の石
トンケ・ドラフト (著), 西村 由美 (翻訳)

ヨーストはある暗い夜、家の外にあやしい黒い影を目にする。そして次の日、校庭の地面の下からぶきみな男が現れた。その名は地下世界の王、マホッヘルチェ! ヨーストは足あとを追っていくが……。それは月が青くなったときに始まった、少年と仲間のとくべつな冒険の物語。現実とおとぎ話が入り交じる、人気作家のファンタジー

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ママお話きかせて―春の巻
(小学館のお話シリーズ)

みつばちマーヤ、桃太郎さん、一寸法師など花の季節にふさわしいお話を収録。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ママお話きかせて―夏の巻
(小学館のお話シリーズ)

はだかの王さま、七夕さま、人魚姫など夏の夕べに心なごむお話がせいぞろい。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ママお話きかせて 秋の巻
(小学館のお話シリーズ)

虫の音楽会、かぐや姫、月とうさぎなど静かな秋の夜長に最適なお話を紹介。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ママお話きかせて―冬の巻
(小学館のお話シリーズ)

初版と新版は、表紙デザインが異なります。日本昔話、イソップ童話などが90話収録。毎日ちゃんと読み聞かせても三か月分あり、読み応え十分。挿絵はダイナミックかつ個性的で、家族の話題作りにもいかがでしょうか。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

新編 世界むかし話集(1)イギリス編
山室静 (編集) 形式: Kindle版

ムーミン」やアンデルセン童話など、北欧・児童文学の研究・翻訳に生涯携わり、子供たちには夢を、大人にはやすらぎを与え続けた著者・山室静の世界むかし話集第1弾。
<イングランド>ネコの王さま/カメの遠足/最初のバナナ/三びきのクマ/ロンドン橋の上で/ジャックと豆の木/他8編
<コーンウォール>ベッチィ・ストーグの赤ちゃん/頭から下に向かって/他3編
<スコットランド>ヒース酒の秘密/詩人トマスの話/他5編
<ウェールズ>長すねグウィスの嘆き/他3編
<アイルランド>白いマス/笛吹きとプーカ/他9編

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

新編 世界むかし話集(2)
山室静 (編集) 形式: Kindle版

これまで家庭で語られていただけの昔話が、今日のように文化的宝と認められるようになったのは、グリム兄弟の『家庭と子供のための童話集』の刊行によるところが大きい。
本書は「ヘンゼルとグレーテル」「白雪姫」などのグリム童話を中心に、オーストリア、スイス、オランダ諸国の昔話を多数収める。
<ドイツ> カエルの王子/ヘンゼルとグレーテル/オオカミと七ひきの子ヤギ/いばら姫/他21編
<オーストリア> 永遠の国へ行った花婿/ハシバミの枝/他3編
<スイス> 三つの言葉/ローツェ氷河はどうしてできたか/かわいい小鳥/他5編
<オランダ> スタフォレンの奥方/飛びゆくオランダ人/他3編

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

新編 世界むかし話集(3)北欧・バルト編
山室静 (編集) 形式: Kindle版

他のゲルマン諸国では、神話詩や英雄伝説キリスト教の影響で失われたが、北欧ゲルマン人はすこぶる詩歌を愛し、それが語り伝えられている。北欧の民話が豊かであるのは、そのような伝統を受け継いでいるからである。
<デンマーク> 辛抱づよい奥方/十一羽の白鳥/小さい野ガモ/他8編
<スェーデン> 跳ぶ巨人/水の精(ネック)と少年名/スコールンダ山の巨人/他7編
<ノルウェー> 北風のくれたテーブルかけ/海の水はなぜからい/他8編
<アイスランド> 雌牛のブーコラ/アザラシの皮/他6編
<フィンランド> 七人兄弟/ほうきつくりの老人と王さま/他5編
<バルト諸国> 年越しの晩/欲ばりの王さま/他7編

 

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

カイウスはばかだ 14ひきのあさごはん こども論語
しあわせな いぬに なるには: にんげんには ないしょだよ! アンデルセン童話集 (1) ゆうちゃんのみきさーしゃ
ちいさなねこ なぞなぞのすきな女の子 新訳 長くつ下のピッピ

 

 

大人が読む児童書「とぶ船」2 古い、うすぐらい小道のうすぐらい店に魔法は待っている

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

とぶ船
ヒルダ・ルイス (著), ノーラ・ラヴリン (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ピーターがある日、うす暗い小さな店で手に入れた古い小船は、なんと魔法の「とぶ船」でした。ピーターたち4人きょうだいはこの船で、エジプトやウィリアム征服王時代のイギリス、北欧神話の世界にまで冒険旅行をします。

 

 

大人が読む児童書「とぶ船」 児童書は世界へのとびら

 

物語は、四人兄弟姉妹の長兄、ピーターの歯いたからはじまります。
訳は石井桃子さん。

 

歯のいたいことから、何かとてもすてきなことがおこるなんて、誰にも考えつけないでしょう。でも、こんどだけは、ほんとにそうなったのです。

 

よく構成の似ているネズビット作品ですと、何となくめちゃくちゃになるぞ臭が強いとでも言いますか、たぶん作者がおもしろい人で、いたずら好きなのでしょう。

もう、笑って笑って涙が止まらなくなるけど、主人公の本人たちは大弱りで困ってしまう、という風があります。

 

ナルニア国の四人姉妹は、作者の敬虔なキリスト教の考え方が投影されていて、正しい事とは、あやまちとは、という雰囲気があります。

アーサー・ランサムは……(笑)
アウトドア!ぼうけん!子供だけでアウトドア!です。

 

それぞれの作品に、それぞれの色があります。
この「とぶ船」は、何かワクワクする、すてきなことが起きるぞ!という予感でいっぱいです。

 

作者がおとな向けの歴史小説を書かれていると読んで、なるほどという思いです。

このとぶ船は、想像力のつばさです。

運んでいって、実際に見せてくれる、いわばドラえもんのタイムマシン。
それが「船」だというところがまたすてきです。

 

 

その「船」がピーターの手に入るようになったいきさつはこうです。

 

・お母さんが病気で入院することになった。
・ピーターが歯痛になった。
・お母さんが連れて行くことができないので、お父さんが責任をもって一人で行くことができるか?とたずね、ピーターはひとりで歯医者に行ってみることになった。

 

この、「お母さんが病気で入院することになった」にご注目です。
あとで関わってきます。

 

ピーターは、この一人で歯医者に行く際に、お父さんからおこづかいを支給されています。
原文では1シリング。
石井桃子さんは、「50円」と訳されています。

 

・バス代50円(25円×2)
・お茶代50円(ペットボトル代金のようなものと考えたらよいでしょうか)
・ごほうび50円
・自前のおこづかい25円(自分で何か買うかもしれないと思って持って行きました)

 

まずピーターは往復切符を買い忘れました。
持っているのは片道切符。

 

お父さんは、往復切符を買えば、「バス代は45円ですむはずだ」と言いました。
なので、5円は返さないといけないです。

訳文の方だとなんとなくふわっとしているので、往復切符を買っても買わなくても大丈夫なんじゃないか、どっちでもいいんじゃないかという感じですが、原文では「distinctly」という一言が入っており、5円は返すものとして明確だということになっています。

 

この5円が非常に重要な役割を果たします。

 

 

ピーターはゆうかんに歯の治療を済ませましたが、さておこづかいをどう使うかです。

ピーターの持っているおかね
バス代残り25円+お茶代50円+ごほうび50円+こづかい25円=150円

 

しかし、「バス代残り25円+お父さんに返す5円=30円」は、とっておかねばなりません。
つまり、ピーターが自由に使っていいお金は120円までです。

 

どうしようかと思って、商店街をぶらついていたピーター。

 

そこで、海岸へいく、さいしょの角を曲がりました。それは、古い家がぎっしりならんだ、せまい、すこしうすぐらい通りでした。

 

いまでも歩いている時、 こう言う通りに出会うとドキドキします。
このうすぐらい通りにある、うすぐらい小さな店。

 

うすぐらい、小さな窓からのぞいた中に、ピーターは「それ」を見つけました。

 

二十センチもないほどの、黒っぽい木で出来た小さな船。
両方の船べりにかかった、丸い盾と、船首飾りは金色に塗ったイノシシの首です。

 

「かたほうの目に黒い眼帯をかけた」、お年寄りが出てきて迎えます。

 

この小さな船の値段は、
「いまもっている金ぜんぶと──それから、もうすこし」
でした。

 

ピーターは、持っているお金、150円をすべて出して、その船を買い取ります。
その150円の中には、お父さんに返さなければいけない5円と、帰るためのバス代25円が含まれていました。

 

5円と言えど、お金はお金。

 

注釈によると、「1953年間の岩波少年文庫初版のままにしてあります」とのことです。
思い入れがある本なので、嬉しいですが、今の金銭価値に変換しても別に構わないような気もします。

 

しかしこのたったの5円が、例え5円であろうとも、自分が持っているべき以上のものであったという、この感覚がすごく大事です。

 

このお金のやりとりと、子供の頃の対価のお話がそれはそれは大好きでした。

なので、岩波さんが変えずにこのままにしておいてくれたことを感謝します。

 

 

ピーターはその5円はほかの兄弟たちに借りることにして、とりあえず海伝いに近道を走って帰ることにしました。

 

この不思議な船はよくよく観察して20~22センチほどはあるのに、それより小さいポケットにスルッと入ってしまいます。

 

気になって測ってみました。
岩波の少年文庫は、四六版と呼ばれる128✕188mmのもののようです。

 

この、心もち大きめな岩波のより、さらに 5センチほども大きいとなると、 これはカバンに入るけれど 確かにポケットには入らないでしょう。

こういう冷静な分析を出来るところが、 大人になってから読む醍醐味です。

 

 

新しいおもちゃに夢中になったピーター、海岸を行く時に忘れてはならないことを忘れていました。
満潮です。
潮が満ちてきて、ピーターめがけて押し寄せてきました。

 

妹子「これほんとにトラウマ。こわい」

 

ピーターが絶望して、うちに帰りたいと口走った時、ポケットの中で何かがもぞもぞ動きました。
あの船が魔法のように大きくなってピーターを乗せ、うちまで飛んで帰ってくれたのです。

 

この不思議なシーンはとても静かに言葉なく、描写だけで推移します。
なのでより一層魔法であるという感覚が強いです。
それも静かで強力な、何かとても不思議なことが起きている。

 

そしてそれは正当な対価、少し無理をして払って手に入れたものである、ということです。

 

 

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The Ship That Flew (English Edition)
Kindle版 英語版 Hilda Lewis (著), Beebliome Books (編集)

The model Viking ship lay in the window of a little old shop in an unfamiliar back street, and Peter, on his way to the dentist, lost his heart to it at once. It cost him all the money in hist pocket, including the fare home. That was how he came to take the way along the beach which led him into grave danger, but also opened his eyes to the magic properties of the little ship in his hand—the ship that flew.

 

 

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砂の妖精
イーディス ネズビット (著), H R ミラー (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ロンドンから田舎に移り住んだ子どもたち4人。彼らは砂の中に棲んでいるサミアドという不思議な妖精に出会います。その魔法の力で空を飛んだり、巨人になったり…愉快な冒険物語。

 

 

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「ナルニア国ものがたり」全7冊セット
C.S.ルイス (著), 瀬田 貞二 (翻訳)

押入れやクローゼットを開けたとき、この向こう側に行ってみたいと、ふと思うことがある人。それは『ナルニア国ものがたり』をかつて夢中になって読んだ人にちがいない。第二次世界大戦中のイギリスの片田舎。ロンドンから疎開してきたピーター、スーザン、エドマンド、ルーシィの4人きょうだいが学者先生のお屋敷を探検するところから、この壮大な物語は始まる。

 

 

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ツタンカーメン (全4巻)
山岸凉子(著)

「我は汝を王と成さしめる者なり」。1903年エジプト。封印されたファラオの墓発掘に挑むハワード・カーターはテントの中で枕元に立つ金のサンダルを履いた男から不思議な言葉をかけられた。彼の人生をかけた挑戦が、始まりを告げる。ツタンカーメンの王墓発掘を描く冒険歴史ミステリー。

 

 

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飛ぶ教室
エーリヒ ケストナー (著), ヴァルター・トリアー (イラスト), 池田 香代子 (翻訳)

ボクサー志望のマッツ、貧しくも秀才のマルティン、おくびょうなウーリ、詩人ジョニー、クールなゼバスティアーン。個性ゆたかな少年たちそれぞれの悩み、悲しみ、そしてあこがれ。寄宿学校に涙と笑いのクリスマスがやってきます。(「BOOK」データベースより)

 

 

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火の鳥と魔法のじゅうたん
イーディス ネズビット (著), H.R.ミラー  (イラスト), 猪熊 葉子 (翻訳)

ロンドンに住む5人の兄妹は子供部屋のじゅたんを焦がしてしまい、新しいじゅうたんを買ってもらったら・・・なかには不死鳥の卵が・・・空飛ぶじゅうたんと不思議な力を持つ不死鳥と数々の冒険をするのですが、願いはかなえられるけど、意外な結果に・・・日常にふとまぎれこんだ「魔法」を楽しく描くネズビットの傑作

 

 

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火の鳥と魔法のじゅうたん
イーディス ネズビット (著), H.R.ミラー  (イラスト), 猪熊 葉子 (翻訳)

ロンドンに住む5人の兄妹は子供部屋のじゅたんを焦がしてしまい、新しいじゅうたんを買ってもらったら・・・なかには不死鳥の卵が・・・空飛ぶじゅうたんと不思議な力を持つ不死鳥と数々の冒険をするのですが、願いはかなえられるけど、意外な結果に・・・日常にふとまぎれこんだ「魔法」を楽しく描くネズビットの傑作

 

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

時の旅人 ドン・キホーテ くまの子ウーフ
土神と狐 ふくろのなかにはなにがある? なぞなぞのすきな女の子
秘密の花園 少女ポリアンナ 美女と野獣

 

 

大人が読む児童書「とぶ船」1 児童書は世界へのとびら

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

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今日の一冊

 

とぶ船
ヒルダ・ルイス (著), ノーラ・ラヴリン (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ピーターがある日、うす暗い小さな店で手に入れた古い小船は、なんと魔法の「とぶ船」でした。ピーターたち4人きょうだいはこの船で、エジプトやウィリアム征服王時代のイギリス、北欧神話の世界にまで冒険旅行をします。

 

 

子ども時代に大・大・大好きだった、思い入れのある児童書です。

 

一時期絶版になっていて絶望していたのですが、岩波さんが復刊してくれてその時は本当に嬉しかったです。
上・下巻ある大長編ですが、妹子も、兄助も大好きです。

 

イギリスは本当にすばらしい物語の宝庫です。

 

長かったヴィクトリア朝時代。
産業革命によって爆発的に発展したイギリスは、(世界に国々にとって)功罪はあれど、黄金期を迎え、私たちを夢中にさせた王道児童文学の傑作もこの時期に醸成され、数々生み出されています。

 

 

岩波さんの添え書きによると作者のヒルダ・ルイス(1896年~1974)。
ロンドンに生まれノッティンガムに暮らし、大人向けの歴史小説を書きました。
ひとり息子のハンフリのために書いたのだとのこと。

 

「タイムファンタジーの傑作」
ほんとうにそうです。傑作です。

 

ヒルダ・ルイスは、ヴィクトリア朝末期に生まれていますから、もうほぼ次世代の方なのですが、これを読んでいると明らかにイギリスの王道児童文学の形式を踏襲しています。

 

その形式とは何かというと出てくる子供たちが4人。
4人の兄弟姉妹なのです。

 

 

砂の妖精をはじめとするイーディス・ネズビット。1858年から1924年
アーサーランサムは1884年から1967年。
ナルニア国のC・S・ルイスは1898年から1963年。

 

これらはみな主人公が4人の兄弟姉妹です。

 

これは研究したわけでもなんでもない私の想像なので話半分に聞いていただきたいのですが、4人というのは子どもたちのどの立場にあってもどこかにはまってくる子がいるはずです。

 

兄であり姉であり弟であり妹である。
世話焼きタイプであり空想家であり、やんちゃであり、困らせや。

 

つまりどんな子供が読んでも、そのうちの誰かに自分をおいて楽しむことができるという子供に対する心、児童文学を書こうという、子どもに読んでもらおうという、はっきりとした目的を感じます。

 

 

「とぶ船」は、明らかに「ネズビット風」ではあり、不思議なグッズを手に入れた4人の子供たちが、およそ1話完結であちこちを旅をしてしっちゃかめっちゃかの騒動を巻き起こす、というその大筋の骨組みは、ネズビット作品群とほぼ同じです。

 

しかしやはりこの本が私にとって特別であるというのは、その1つ1つの旅先が実に多彩で、歴史的な考証にちゃんと彩られてリアルであることです。

本当に自分がその時代に行ったような気分になれます。

 

とぶ船が好きすぎて、図書館から10回も20回も借りてきたのですが、でもなぜか買ってはもらえませんでした。
大人になってから自分で買い求め、ついでに英語版も買いました。

 

ある時は北欧神話にすっかり魅せられて、そうだ確かうちに北欧神話の本があったはず(赤本の児童文学全集)と思って、詳しく読みふけりました。

 

エジプト、北欧神話の世界、古代のイギリスに興味を持ったのはこの本がきっかけでした。

 

「児童書は世界へのとびらである」という、典型例のような作品です。

 

 

この本、上下2冊なのですが、開いて見ると分かりますが文字がそんなにぎゅっと詰まっていません。
上巻下巻ともに、どちらも八章ずつあり、合計16章です。

 

「トムは真夜中の庭で」が、文字がぎゅうぎゅうに詰まっており、ページ数も多くて一巻で27章あったのに比べると、ずいぶん違います。

 

でも、「トムは真夜中の庭で」は、1巻で完結していたからいいのであって、あれは巻を変えるということはありえません。
切れ目なく1つの物語として完結しているイメージです。

 

「とぶ船」ならそのおもしろさに、上巻を読んで下巻を読まないという選択肢はないので、そこはやっぱりこのもとの物語が持つ力に対する信頼のようなものを感じます。
出版社さんの絶妙な判断です。

 

ここに出てくる4人兄弟は、
ピーター、シーラ、ハンフリ、サンディ・グラント。

 

どちらかと言うと兄弟たちそのものよりはこの話のキーになる「魔法の船」そのものがあまりにも強烈で、どこに行ったか、何をしたかの方がずっと強く心に残っています。

 

 

どちらかというと、この本の紹介は、あらすじよりも「どこへ行ったか」を中心に伝えていきたいと思ったので、最初に並べてみます。

 

・おかあさんの病院
・現代エジプトのバザール
北欧神話アースガルド
ノルマン・コンクエスト時代の中世イギリス
・エジプトの発掘現場
古代エジプト
ロビン・フッド

 

そんなにエジプトにばかり行ってたかな!?

こうして書き並べてみると、ずいぶんエジプトに特化していました。
世界の色んな所に行ってると思ったのですが、主にエジプトと昔のイギリスだった。

 

何となく気になったので調べてみます。

 

1922年、ハワード・カーター、ツタンカーメン王の墓を発掘。
1939年、「とぶ船」出版
1953年、石井桃子、「とぶ船」翻訳、出版

 

と、こういうことでした!

 

やっぱり、考古学の先生とのシーンは、すごくハワード・カーターっぽいなと前から思っていたのです。
そして、ちょうどこの頃、わたしはハワード・カーターにもハマっていましたっけ。

 

山岸凉子さんが、最近、電子書籍解禁しましたが、その中にツタンカーメンがあります。
これは、ツタンカーメンのお話ではなくて、ハワード・カーターのお話なので、連載されたときとても嬉しかったです。
ツタンカーメン (全4巻)
山岸凉子(著)

ハワード・カーターが大好きです。
ちょっと真面目で好青年の、融通のきかない誠実でスマートな、山岸凉子版ハワード・カーターがすごくすごくかっこいいです。

 

ツタンカーメンの発見は世紀の大発見でしたから、ヒルダ・ルイス女史もこのときめきを、興奮を、子どもたちと分かち合いたい!と思ったのかもしれません。

 

何となく、おとなになって読み返してから、こんな所で、自分のハワード・カーター萌え(萌えって言うな)を、とぶ船のヒルダ・ルイス、山岸凉子といった世代の女性と同じところに発見したような気がして、いま、勝手にとても感動しています。

 

 

 

 

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The Ship That Flew (English Edition)
Kindle版 英語版 Hilda Lewis (著), Beebliome Books (編集)

The model Viking ship lay in the window of a little old shop in an unfamiliar back street, and Peter, on his way to the dentist, lost his heart to it at once. It cost him all the money in hist pocket, including the fare home. That was how he came to take the way along the beach which led him into grave danger, but also opened his eyes to the magic properties of the little ship in his hand—the ship that flew.

 

 

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砂の妖精
イーディス ネズビット (著), H R ミラー (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ロンドンから田舎に移り住んだ子どもたち4人。彼らは砂の中に棲んでいるサミアドという不思議な妖精に出会います。その魔法の力で空を飛んだり、巨人になったり…愉快な冒険物語。

 

 

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ライオンと魔女―ナルニア国ものがたり〈1〉
C.S.ルイス (著), ポーリン・ベインズ (イラスト), 瀬田 貞二 (翻訳)

地方の古い屋敷にやってきた4人きょうだいが、ある日大きな衣裳だんすに入ると、そこは雪の降りつもる別世界、ナルニア国だった。ナルニア国ものがたりシリーズ第1作。1985年刊の新版。

 

 

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ツバメ号とアマゾン号
アーサー・ランサム (著), 神宮 輝夫 (翻訳)

夏休み、ウォーカー家の4人きょうだいは、小さな帆船「ツバメ号」に乗って、子どもたちだけで、無人島ですごします。湖を探検したり、アマゾン海賊を名乗るナンシイとペギイの姉妹からの挑戦をうけたり、わくわくするできごとがいっぱい!

 

 

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火の鳥と魔法のじゅうたん
イーディス ネズビット (著), H.R.ミラー  (イラスト), 猪熊 葉子 (翻訳)

ロンドンに住む5人の兄妹は子供部屋のじゅたんを焦がしてしまい、新しいじゅうたんを買ってもらったら・・・なかには不死鳥の卵が・・・空飛ぶじゅうたんと不思議な力を持つ不死鳥と数々の冒険をするのですが、願いはかなえられるけど、意外な結果に・・・日常にふとまぎれこんだ「魔法」を楽しく描くネズビットの傑作

 

 

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「ナルニア国ものがたり」全7冊セット
C.S.ルイス (著), 瀬田 貞二 (翻訳)

押入れやクローゼットを開けたとき、この向こう側に行ってみたいと、ふと思うことがある人。それは『ナルニア国ものがたり』をかつて夢中になって読んだ人にちがいない。第二次世界大戦中のイギリスの片田舎。ロンドンから疎開してきたピーター、スーザン、エドマンド、ルーシィの4人きょうだいが学者先生のお屋敷を探検するところから、この壮大な物語は始まる。

 

 

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ツタンカーメン (全4巻)
山岸凉子(著)

「我は汝を王と成さしめる者なり」。1903年エジプト。封印されたファラオの墓発掘に挑むハワード・カーターはテントの中で枕元に立つ金のサンダルを履いた男から不思議な言葉をかけられた。彼の人生をかけた挑戦が、始まりを告げる。ツタンカーメンの王墓発掘を描く冒険歴史ミステリー。

 

 

 

 

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