「大きい一年生と小さな二年生」元祖ツンデレのギャップ萌え
もう、200版に届くほど売られている、名作中の名作
「おしいれのぼうけん」の古田足日さんの作品です。
大きい1年生と 小さな2年生 (創作どうわ傑作選( 1)) 作者: 古田足日,中山正美 出版社/メーカー: 偕成社 発売日: 1970/03/01 メディア: 単行本 |
これはまだ、ツンデレなどという言葉が存在しなかった時代の物語。
小さくても気の強い女の子、あきよちゃん。
なりは大きいけれど、気が小さくて泣き虫なまさやのお世話をすることになります。
このなんのかんのと、お世話するまでの導入部分が、非常に自然で違和感がないです。
「ちこく、ちっこく~!」
学校に遅刻してパンをくわえてえて走っていると街角でぶつかった!
というご都合主義は排除されてます。
ご都合主義もそれなりに楽しく、わかっていながら楽しむという面はあるのですが、(アニメは時間制限もありますしね!)そこはやはり、名作たるゆえん 。
物語は、あきよが背丈を測る所からはじまります。
弱虫のまさやは、一年生になったのに、学校に行けません。
そんなまさやが、頼りがいのある背の低い二年女子、あきよに
卵からでたひよこが、はじめて見た者を親と認識して慕うという
刷り込み(インプリンティング)されてしまい
すっかりなついて
あきよちゃんがいなければ学校に行けない
という状態に陥ります。
周りのキャラも強烈です。
みどりは女の子ですが、ときどき、まさやのおなかをげんこつでなぐったりして、まさやをなかすのです
みどりちゃんはちょっと忘れられません。
あきよちゃんにレイをもらってドキドキするまさやです。
あまりのヘタレっぷりをお母さんにとがめられたまさやは、
そうだ!あきよちゃんみたいになればいいんだ!
と大いなる勘違い。
まさやは、バードウォッチングならぬ
あきよウォッチングをはじめます。
結果、まさやはあきよの、言いたいことをはっきり言う性質が学校内で巻き起こしているサバイバル生活を目の当たりにするわけですが
思った以上のハードな仁義なき戦い
二年生なのに、五年生まで泣かすバトルロイヤル生活を目にして、チキンなまさやは早々にあきらめます。
まさやはウォッチングはとりあえずやめますが、あきよとその親友のふじおかまりこと仲良しになります。(なぜまりこだけフルネーム?)
ふじおかまりこ。この物語の一番の常識人でいい味を出してます。
そこである事件が起きるわけですが…
ここで起きる、最強のツンデレギャップ萌えによる衝撃から
この児童文学史上最弱の大きな一年生、まさやが奮い立ち、大きな成長をとげる道のりはぜひ、読んで確かめて頂きたいとおもいます。
ネタバレするには忍びない感動です。
まさやでなくとも、すべての人があきよちゃんに胸キュンです。
あきよちゃんへの感情が、お母さんにはできなかったまさやの成長をうながします。
大切に思う人のために出てくる底力は、もともとそなわっていたものでした。
内気で弱気だった臆病者のまさやの優しさの力は、ホタルブクロの花とともに開花します。
子供たちは、ここでもやはり、作中のクソガキたちの悪口を言います!
こちらは笑ってしまいますが、子供たちは真剣です。
この、「悪口を言う」と言うのはやはり、この作品にどれだけ共感し、心がこの世界に入っているかの指標のようなものです。
これは、という作者がいます。
絶対に間違いのない作者です。
古田足日さんは筆頭です。
全集を買うのもおすすめします。どれ一つはずれがありません。
なんとまさやの家にはカラーテレビがない。
などという、ジェネレーションギャップな昭和の時代の話ではありますが
・まさやが漫画雑誌を読みふけって何もせず、お母さんに怒られる。
・すぐ男子が「チビ、チービ」などと言って人の身体的特徴をからかう。
・前の晩に遅くまで漫画を読みすぎて、朝寝坊で朝ごはんが取れずおなかがすいて泣き出す。
小学生あるあるです。
ごらんのとおり、まさやは漫画が大好きです。
のんびりやのまりこが、たいへんいい味を出しています。
表紙ではなにげにひどい扱いですが。
さて、この本は、字は大きいですが割とページ数があり、装丁も厚く、いかにも「本」といった感じです。
絵本から 児童書にうつる誘導の一冊の位置付けになるかと思われます。
これはとても大切なことで大抵のお子さんは、
絵本から、そのまま絵の世界から抜け出せないまま漫画へと移ってしまいます。
漫画は素晴らしい文化なので、どんどん読んで良いと思いますが、それだけではやはり、足りないのも確かです。
やはり、文字に、本に、慣れるには
読んで最高だった!!
という体験を得るのが一番です。
大きな一年生と小さな二年生を
ぜひ、お子さんと一緒に親御さんにも読んでもらい、
読んで損はない
と実感して下さい。
(2014年にはアニメ化もされたようですが、それほど評判はよくなかった模様。興味のある方はこちらをどうぞ)
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