文字の色が見える「はらぺこのえんそく」
今日ご紹介するのはオーストリアのフェラミークラさんの作品です。
はらぺこのえんそく―三人のシュタニスラウス (世界のどうわ傑作選 (4)) 作者: ヴェーラ=フェラミークラ,ロームルス=カンデア,中村浩三 出版社/メーカー: 偕成社 発売日: 1985/12/01 メディア: 単行本 |
おじいさんシュタニスラウスとおばあさん
おとうさんシュタニスラウスとおかあさん
小さいシュタニスラウスと姉のベローニカ
ほのぼのとした三代の家族が同居しています。
大・中・小と、絵にも想像しやすいです。
物語は、このようにはじまります。
はちが かぜを ひいちゃ かわいそう!
小さいシュタニスラウスは、あさ はやく 目を さますと、おねえさんの ベローニカに こえを かけました。
「まだ ねむっているの?ベローニカ」
すると、ベローニカが こたえました。
「まだ よおく ねむっているわ。」
小さいシュタニスラウスは、はブラシをとって、げんかんぐちに でました。
朝、起きることが楽しくなりそうな一幕です。
このお話の描写は、出だしもそうですが、まるで家族ですごす休日のキャンプのような、ゆかいで楽しい雰囲気があり、とてもなごみます。
・寝巻きのままで滝を浴びたり→お風呂に入るのが楽しくなる。
・庭にテーブルを出してごはんを食べる→やってみたくなる。ごはんが楽しくなる。
・部屋の壁に落書きをする→……これはやってもらっては困るかもしれませんが…
ペンキ屋さんを待っている間に、三人はえんそくに出かけることにするのですが、のんびりとしたおだやかな空気の中で、冒険あり、不思議な出来事ありの飽きさせない展開です。
何と言っても特筆すべきは色です。
おじいさんが緑、おとうさんが赤、小さいシュタニスラウスが青なのですが、例えば
このような表現で表しています。
白黒の文字の中に、青の色が見えるようです。
そしてさらに、このらくがきが動き出し…!
あとがきは訳者の中村浩三さんが書かれています。
最近思うのですが、よいあとがきを書かれる方は、あとがきで自分がたりをしません。
自分の体験を語る所からあとがきに入るのは、読書感想文とさほど変わりないものです。
児童書というのは、親の愛のプレゼントのようなもので、特に子供たちに対するよいあとがきは、そのような部分に文字数を割くより、少しでも作品の紹介を優先します。
あとがきの一部には、こんなことが書かれていました。
みなさんはらくごをきいたことがありますか?ほんとうにおもしろいらくごというものは、きけばきくほど、おもしろくなるものです。この「はらぺこのえんそく」も、よめばよむほどおもしろくなるお話です。
みなさんもこの本を、なんどもなんども、くりかえしてよんでください。そして、おおいにわらってくださいね。
中村 浩三
さりげなく落語を紹介し、導こうとする、読者の子供たちへの細やかな心配りです。
この本は、字も大きく、文字と文字の間にスペースをもうけて読みやすくしていますが、わりと分厚くてきちんと「本」という感じです。
小学生でも、「本を呼んだぞ!」と思えるものであり、しかも面白い。
絵本→本、への導入に大変良い1冊です。
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