今日の一冊「魔法だらけの島」
Twitterをしていると、とてもすてきな児童書のツイートがたくさん流れてきます。
そういうのを見るととても幸せな気分になります。
こちらのツイートを見つけたとき、どきっとしました。
#日本怪奇幻想読者クラブ
— 奇妙な世界 (@kimyonasekai) March 9, 2020
イーディス・ネスビットの絵本『まほうだらけの島』(中山知子訳 おのきがく絵 文研出版)を読了。魔法に支配された島に囚われた王女を描くファンタジー作品です。 pic.twitter.com/FUCehnUAWY
まさか、この作品を、この表紙を、Twitterで目にする事が出来るとは…。
夢のような気分がしました。
こちらがうちにある本です。
ごらんのとおり、ボロッボロです。
大好きだったので、紹介したいなと思うときもありましたが、現在は販売されていないようです。
今売られている本の方を優先的にご紹介しようと思っていました。
この本、図書館でもあまり見たことがありません。
手に取ることができない本の中身がこうでああで、と説明しても切ないなと思っていました。
時の流れには逆らえません。
どこかで、消えていってしまう本があってもそれは仕方のないことです。
ですが、こうしてTwitterで見ると、とてもこみあげるものがありました。
◇
これは、母が買ってくれたものではなくて、おばあちゃんの家にあった本です。
わたしはこの本が大好きでした。
いつもおばあちゃんの家にはいとこたちが群れていましたが、その中の誰もこの本には興味を示さず、だいぶみなが大きくなってから、おばあちゃんがわたしにくれました。
「そんなに好きならあげるから、持って帰っていいよ」
◇
この本、おくづけがありません。
かなり古い本のようです。
文研出版とあります。
文研出版さんを調べると、HPがありました。
現役で子供の本を出版され続けているようです。
とても嬉しくなりました。
おのきがくさんは、かたあしだちょうのエルフの作者さんです。
ライオンとたたかって片足をなくしたエルフは、子どもたちを守って、黒ひょうとたたかいます。
Wikiを見る限り、中山知子さんは実にさまざまな児童書を訳されています。
川端康成に師事...すごいです!
先日、少年少女文学全集について少し書きましたが、こちらも川端康成氏の責任編集によるものでした。
このノーベル賞作家、日本の宝の川端康成氏がいかに子供に心をかけ、教育と読書に心を注いでいたかよくわかります。
◇
この本の紹介文で、中山知子さんは子供に語り掛けるように「ネスビットさん」の紹介をしてくれました。
ネスビットさんは、みなさんとちっとも変わらない、ふつうの子供たちといっしょになってあそんでるふりをしながら、ひょいと魔法使いをひきずりこんで、実にゆかいなお話を書いちゃって、世界じゅうの子どもたちを、うーんと、びっくりさせました。
ネスビットさん。
みんなが大好きなネスビットさん。
この、連呼される「ネスビットさん」という響きがわたしの心に強く残りました。
わたしが「作者」というものを強く意識したのは、これが最初だったような気がします。
おのきがくさんのこの絵がとても好きでした。
そして、算数が出てきます。
先日ご紹介した「メリサンド姫: むてきの算数!」も算数が出てきます。
しかし「まほうだらけの島」こちらはかなり手ごわいです。
意地悪なおとうさまの王様(これがまた恐ろしく憎たらしいおとうさまです)に苦しめられるおきさきさまは、可愛い女の子をひとりさずかります。
しかし、あれこれあってお姫様は孤島に閉じ込められてしまうわけですが、その魔法を解くのがこれです。
さらにダメ押しの一言が入っています。
なるほど、ごらんのとおり、たいへんやさしい計算ですね。
いやいやいやいや。
煽り文句は続きます。
もちろん、あなたがたなら、こんな算数は、わけないですよね。なぜって、みなさんちゃんと学校でならっているし、ならうときは、ちゃんとくろうしているわけですものね。
いや、わかんないから!すごい難しいから!!
ネスビットさん、本当に算数を出すの好きだよな~。
算数という教科がこのように自然に結びついて、距離と速度について学んでいるときも、私の心に浮かぶのは「同時に自宅を出発しない兄弟」とか「速1cmの速さで動く点P」よりも(いや、もちろんそれも心に浮かびますが…)、うずまきと竜と、ストップウォッチを必死で握り締めてながめているお姫様です。
子供の算数に対する心理的抵抗を減らそうと思う試みはじつにさまざまなものがあって、ドラえもん算数やコナンくんなどは、そのようなものかと思われます。
自分に関して言えば、そのような漫画も大好きではありましたが、実際に読んでいると、一番読んで欲しいであろう「問題の考え方」はスルーして、そことは関係ない、いつもラストを飾るオチのギャグとか、どうでもよいコマの中の背景のねこなどにばかり注目してしまいがちでした。
メリサンド姫や魔法だらけの島に出てくる算数は、物語の中にとけこんですうっと心に中に入ってくるような気がします。
何しろこれを解けなければお姫様を助けられないわけです!
ネスビットさんの作品に出てくる登場人物はいつも、かたくるしくしかつめらしいテンプレの物語の中の登場人物臭がなくて、どこか能天気でユーモラス、個性があります。
それは、例えば長くつしたのピッピのように超トンデモな個性ではありませんが、どことなく親しみが持てて、かつなんとなく現代的な雰囲気があります。
読んでいる人に、向こうからぐっと紙面から視線を向けて、こちらに近づいてくるような感じがします。
こんな形で、算数に触れるのも、なかなかよいことだと思われます。
◇
ところで…。
この問題、誰か解いてもらえませんか?
算数に得意な人…。
もしいらっしゃったら、ぜひお願いします。
むかしむかし、人間と妖精がいっしょにくらしていたころ、ある国にそれはそれはかわいらしいお姫さまが生まれ、メリサンド姫と名づけられました……と、そこまではごく普通のお話だったのですが……。悪い妖精がかけた呪いに、姫と王子が算数マジックで立ち向かう!
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