今日の一冊「ヒナギク野のマーティン・ピピン」
今日、ご紹介するのは児童書です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
思い入れが強い作品なのですが、さらっと紹介しておきます。
この本、Amaznの紹介らんに記述がありませんでした。
ファージョン作品集5巻。
とあっただけでした。
うちの本を開いてみると、最初にこんな風にあります。
この本に出てこない だいじな人たち
5人の女性の名前が並んでいて、このお話に出てくる子どもたちのおかあさんのようです。母親、とありますから。
その下にこうあります。
この本に出てこない だいじでない人たち
5人の男性の名前が並んでいます。
うちの娘はもうこれで笑ってしまいました。
この、「この本に出てこないだいじな人とだいじでない人」は、前作「リンゴ畑のマーティン・ピピン」の登場人物たちです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
恋人から引き離されてリンゴ畑の井戸屋形にとじこめられている少女ギリアンを,6人の娘たちが牢番として見張っています.陽気な旅の歌い手マーティン・ピピンは,美しく幻想的な6つの恋物語をくりひろげて娘たちの心を奪い,首尾よく牢屋のかぎを手に入れます.ファージョンが作家としての地位を確立した傑作
「リンゴ畑」も「ヒナギク野」も、大筋がありながらも、主人公のマーティン・ピピンが語る形式のオムニバス形式になっており、どのお話もとてもすばらしいです。
「リンゴ畑」は恋物語が中心になっており、「ヒナギク野」は子供たちに語り聞かせるおとぎ話です。
子どもに語り掛けるお話として、「ヒナギク野」はとても面白く、また詩的なものばかりで、読み聞かせをするのも、一話ずつ今日はこれを、と読んであげてもいいと思います。
「リンゴ畑のマーティン・ピピン」の方はプロジェクト・グーテンベルクで英語の原書版が無料公開されています。
「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492
◆プロジェクト・グーテンベルクについて
☞Wikiの説明ページ
プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリカ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館。
エリナー・ファージョンは、その原文の美しさには定評がある作家で、イギリスの教科書に使われていたこともあると聞きます。
石井桃子さんの美しい訳文がぴったりと合わさって、それは素晴らしい児童文学の世界を垣間見せてくれます。
「ヒナギク野のマーティン・ピピン」の冒頭に飾られている詩をご紹介しておきます。
これは、縦書きの「紙の本で」読むとなおいっそう、美しいものです。
この本を読む人びとよ、
あなたはサセックス生まれか
われらの日の出のさまを、
また夜の月の出を、
あなたは知っているのか。
われらの日月は、
アンバリ・マウントの頂(いただき)に
黄いろの光の
碗(わん)のようにのぼる。
さかしまにのぼるその大きな碗(わん)は、
台地と丘に、光のすべてをそそぐ。
この歌を読む人びとよ。
あなたがサセックス育ちであれば、
その大きな碗が、あなたの頭上で
金色の泡の玉と変わり、
アンバリのみどりのすそ野に立つ
ひとりの子どもの息に吹かれて、
青い空を泳ぎわたるのを
いくたび見たことだろう。
かつて、あなたを知り、
いまも、あなたと遊ぼうと
願う子どもの息に吹かれて。
この詩を冒頭に読むことができる、それだけでも、これがいつまでも本棚に、また書店に残していく価値がある本だと言えるでしょう。
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