今日の一冊「オンネリとアンネリのおうち」
今日、ご紹介するのは児童書です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
なかよしの女の子オンネリとアンネリは、夏休みのある日、「正直な拾い主さんにさしあげます」と書かれた封筒をひろいました。中に入っていたのは、たくさんのお金。家族の誰にもかまってもらえず、いつもひとりぼっちだったふたりは、そのお金でふたりだけのおうちを買うことにしました。女の子の憧れがぎっしりつまった夢のようなおうちで、ふたりだけの暮らしがはじまります。フィンランド生まれの、楽しくて幸せな夏の物語。
とても可愛らしいお話です。
少女の夢がいっぱいつまっています。
ある日リボンで結んだお手紙を拾ったオンネリとアンネリ。詳細は略しますが、二人だけのおうちを手に入れます!
「詳細は略しますが」の部分はぜひ、読んでもらって確認してもらうとして…。
二人だけのおうち。
夢のような展開です。
おうちの中は詳細に記述されていますが、まさに少女の夢そのものです!
大人だって想像したいです。
していいと思います。
女の子には、「とくべつなともだち」という存在があると言います。
確か「赤毛のアン」か何かのあとがきにどなたかの作家さんが書かれていたと思うのですが、今ちょっと思い出せません…。
でも、「女の子には『とくべつなともだち』がひとりいる」という一言が、わたしに強く焼きつきました。
たしかにそれはほんとうだ、と思ったからでした。
赤毛のアンにとっての、ダイアナのような存在です。
時間の流れによって別れがあったり、その「とくべつなともだち」枠が変化したりはするものの、たしかにその枠はわたしの中にも存在する、と思うときがあります。
現実のこどもたちの世界では、その「とくべつなともだち」であると思ったり思われなかったりする人間関係がトラブルを引き起こしたり、嫉妬や独占欲を生んだりしながら、人との距離の取り方を学んでいくわけですが…。
(赤毛のアンシリーズでは、大人になってからはダイアナも結局、時の流れによって昔のような絆ではなくなっていく様子もつぶさに描かれています)
しかし、実際にいる・いないに関わらず、概念としての「とくべつなともだち」とその絆を、読書の中で知って体験することで、女の子はなんとなく安定するようなところがあるような気がしています。
オンネリとアンネリは完璧な一対の「とくべつなともだち」です。
どちらか主でもなく従でもなく、これはふたりの物語です。
(いちおう、主人公はアンネリではありますが)
最近、映画化されました。
ポップでカラフルな画面がとてもかわいい作品です。
筋立てそのものは、本を読んで感じるほどのパンチはないかもしれないですが、とにかく映像にパンチがあるのでじゅうぶんに楽しめます。
子ども同士がとくべつな絆で結び合わされるとき、そこには孤独が背後にあるように思います。
どんなに完璧に見える家庭でも完璧ということはありません。
どこかに影があり、どこかに孤独があります。
そして、その孤独が子供たちを結び合わせ、影が子供たちを外の世界へと向かわせます。
こどもがひとりだけでなくて、手に手を取り合ったとき、ひとりだけでは成し得ない力と冒険が生まれます。
愛情がないわけではないのだけれど、子供だけに心をかけるわけにはいかない親たちの隙をついて、オンネリとアンネリのかわいい物語ははじまります。
薔薇乃木婦人をはじめとした周囲の大人たちの見守る目があたたかいです。
ぷんぷくりんのプクティーナさん、のっぽのやせっぽちのノッポティーナさん、登場人物の名前の響きもとてもユーモラスです。
物語は心に想像による追体験を与えてくれるものだな、と強く感じられる一作です。
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オンネリとアンネリはとっても仲良し。ある日ふたりは、バラ通りで「正直者にあげます」と書かれた手紙とお金の入った封筒を拾い、そのお金で、バラの木夫人というおばあさんから夢のように素敵な水色のおうちを買うことに。オンネリは9人きょうだいのまん中で、アンネリは離婚したおとうさんとおかあさんの間を行ったり来たり。ふたりの両親は忙しすぎて、自分たちがいなくても気づかない。「わたしたち、ふたりの家に住んでいい?」気難しそうなお隣さんや、魔法が使える陽気なおばさん姉妹、ちょっぴり変わったご近所さんと交流しながら、ふたりだけの楽しい生活が始まる。しかし、お隣さんに泥棒が―! (C) Zodiak Finland Oy 2014. All rights reserved.
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『オンネリとアンネリのおうち』で小さな可愛いおうちを手に入れたオンネリとアンネリのもとに、11月のある日、ショーララと名乗る小さな家族が薔薇乃木夫人をたずねてきました。彼らは、彼らをつかまえようとする悪い人間たちから逃げているといいます。そこでふたりは、夫人が見つかるまで、家にかくまうことにしました。はたして、彼らを守ることができるのでしょうか。フィンランド生まれの、ハラハラドキドキの冬の物語。
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