~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

山室静氏編「世界昔話全集」(1)イギリス編

自粛生活で今夜も図書館も開いていない状態で、子供たちによみ聞かせをしたい時のおともに…。

山室静市の「世界昔話全集」をご紹介します。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

新編 世界むかし話集(1)イギリス編

(現代教養文庫ライブラリー) Kindle版

ムーミン」やアンデルセン童話など、北欧・児童文学の研究・翻訳に生涯携わり、子供たちには夢を、大人にはやすらぎを与え続けた著者・山室静の世界むかし話集第1弾。<イングランド>ネコの王さま/カメの遠足/最初のバナナ/三びきのクマ/ロンドン橋の上で/ジャックと豆の木/他8編<コーンウォール>ベッチィ・ストーグの赤ちゃん/頭から下に向かって/他3編

 

 

これは昔、3冊の世界昔話全集として発行されたもので、記述したことがありました。

whichbook.hatenablog.com

 
この3冊の「世界昔話全集」は大変分厚く、読んでも読み切れないほどの内容のボリュームでした。


それがこのたび、地域ごとにまとめられKindle本となって出ているのを発見しました!
数々の神話や昔話を読んできた私でも(えらそうなことをいうようですが💦)、この中でしか見たことのない話が本当にたくさん入っています。

イギリス編が(1)になっています。
しかし、この世界物語全集で本当に面白いのはアフリカ編やオセアニア編です!

 

まずは、イギリス編(1)から、どんなお話が入っているのか、題名とさらっと内容をご紹介したいと思います。

 

イングランド

 ネコの王さま (短話。ちょっぴりホラーです)
 カメの遠足 (短話。子どもたちの超・お気に入りです。)
 最初のバナナ (短話)
 三びきのクマ (お約束です)
 ロンドン橋の上で (中編。宇治拾遺物語にも似たようなのを読んだ気がします)
 ジャックと豆の木 (お約束ですが、細部に読んだことのない話が付け加えており、おもしろいです)
 トム・ティット・トット (中編。イギリスでは非常に有名で、エリナー・ファージョンの「銀のシギ」のもとになっているお話です)
 ゴダム村の利口な人たち (イソップに似たとんち系です)
 ディック・ウィティントンとネコ  (有名なロンドン市長の伝説です。出世もの)
 燈心草のずきん (イギリス版鉢かつぎ姫です)
 腹をすかした草かり人足 (短話。ユーモア)
 世界のはての井戸 (カエルとお姫様のお話の原型のような話です)
 白い家の老人 (ホラー。番町皿屋敷に似ています。子供は盛り上がります)
 ジャムづくりの鍋 (短話。ユーモア)

 

コーンウォール

 ベッチィ・ストーグの赤ちゃん (中編・ぐうたら夫婦の赤ちゃんが妖精にさわられます。教訓もの)
 頭から下に向って (中編・教訓ものです)
 黒いブッカと白いブッカ (中編・ブッカとは小鬼です。賢いおばあさん。老人を敬うことを教えます)
 二人のばか者 (中編。ユーモア)
 錫掘りと犬とユダヤ人とケーキ (読み応えある物語です)

 

スコットランド

 ヒース酒の秘密 (歴史。スコット人に敗北したピクト人の残酷な運命のお話です。)
 詩人トマスの話 (スコットランドでは詩人トマスはとても有名です)
 ダンヴェガンの妖精の旗 (半歴史。妖精の妻を持った領主の旗と一族の運命のお話です)
 コマドリミソサザイの結婚 (中編。かわいらしいユーモア)
 三つの質問 (イソップに似たとんち系ですが、どこでも読んだことがありません)
 赤毛の巨人 (割と長い冒険物語です。アイルランド赤毛の巨人がむかしベリガンにやってきて…(略))
 ロクランの王さまの三人の娘 (割と長い冒険物語です)

 

ウェールズ

 長すねグウィスノのなげき (歴史もの。グウィスノは王さまです)
 カドワラダーと彼のヤギ (中編。山地へ逃げた山羊を追って飼い主は山に入ります)
 眠っているアーサー王アーサー王伝説そのものではなく、眠るアーサー王に会った男の話です)
 少年と真黒い雄牛 (軽くホラーです。教訓もの)

 

アイルランド

 白いマス (美しい姫が婚約者の王子を追って身を投げた後、湖には白いマスが泳いでいました。ところがいたずら者が…)
 笛吹きとプーカ (中編。吟遊詩人系のお話が割と入っていますが、中でもユーモアにあふれています)
 ノックグラフトンのこぶ男 (基本はこぶとりじいさんのような感じですが、こちらが迷いこむのは妖精です。月曜、火曜、月曜、火曜)
 巨人の階段 (ロバートの夢の中に、巨人にさらわれた少年がある日出ました。巨人から救い出して欲しいというのです…)
 魔女の遠足 (働き疲れている人に起きる不思議なお話もよく出ます。シーモアはある日、魔女の赤い帽子を手に入れて…。ノコギリ草とヘンルーダ、の響きが耳に残ります)
 大工のゴーバン親子の話 (賢い娘が内助の功で夫を助けるお話です。助かるためなら浮気もみずから夫に勧めます)
 山男と百姓のおかみさん (妖精はけちを嫌います。教訓もの)
 リア王の子供たち (長編。ダナの一族のケルト神話の一篇です)
 ミダアとエティン (多少短めのケルト神話ケルト神話集の中では見かける話です)
 邪眼のバロア (長編のケルト神話ケルト神話集で読んだものとはかなり違っていて、伝説の種類の多様さを感じさせます。実際の歴史を描いているようにも思えます)
 ブレアゴの庭 (長編の嫁探し冒険譚です。三人の王子の中でも主人公が末子であることがお約束です)

 

 

こうしてみると、最初にかなり短めのお話をもってきて子供たちを慣れさせながら、次第に迫力のある冒険譚にさそっています。

 

ユーモア系をはさみ飽きさせず、後半はかなりハードな内容の歴史もの(頭を打ち落としたり戦争で殺されたりなど)と妖精譚が混じったような作品をたくさん取り入れ、とても読み応えがあります。

 

詩や歌も各所に入っており、この旋律が記憶に残る手助けとなります。

アイルランド編の「魔女の遠足」などは、私は内容をすっかり忘れてしまっていましたが…。

ノコギリ草とヘンルーダ
それとおいらの赤い帽子で
イングランドへ、ひとっとび。

この詩はしっかり覚えていました。

 

子どもに対するおとぎ話だけではなく、大人にも大変興味深い本です。

 

主に、一般的に神話の話として本が出ており、好まれているアーサー王伝説、トゥアハ・デ・ダナンのケルト神話クーフーリンなど)は、どちらかというと入っていません。
膨大になるため、割愛してその代わりに子どもに語り聞かせるのによいけれど、神話体系からはこぼれてしまいそうなお話をピックアップされています。

 

最後に、山室静氏が解説を書かれていますが、歴史や出展にも非常にくわしく記述があり、とても興味深いです。
また、以前話題に載せた「世界少年少女文学全集」1 への記述もあり、そちらにも同時期に非常にたくさんの世界のおとぎ話が載せられていることも書かれています。

 

 

whichbook.hatenablog.com

 

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