読まれ続ける理由「チョコレート戦争」
今日、ご紹介するのは児童書です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
おとなはなんでぼくたちのいうことを信じないの? 身におぼえのない、罪をきせられたことから、子どもたちは町一番のケーキ屋さんに戦いをいどみます。日本児童文学のロングセラーをリニューアル。「MARC」データベースより)
本屋さんに行くと、「大きい一年生と小さな二年生」が棚からはみだして飛び出ていました。
まだ売られている、しかも現役!
そして目立ちます。
ほほえましく思いながら見ていくと、「チョコレート戦争」!
この本屋さんにもありました。
あちこちの本屋でやはり、見かけます。
わたしも大好きな本です。
これは昭和時代の子供たちが、町一番の高飛車な洋菓子店、金泉堂を相手に大騒ぎをやらかすお話なのですが、これがまた本当に面白い!
◇
ことの起こりは教室で起きたケンカです。
それも、先生がうっかり、授業終了の15分もまえにテストの答案用紙を返却してしまったところからはじまります。(いつもは用心して、ぎりぎりになるまで決して返さないようにしていました。)
子どもたち、ハチの巣をつついたような大騒ぎを始めます!
ここのシーンが実に傑作です。
とたんに、ハチどもは、わんわん、うなりはじめた。耳もつぶれるばかりの、大さわぎがはじまった。
「わあーい、百点、百点!」
「しまった!ピシャリ(おでこをたたく音)、やっぱり、前のとおりやればよかったんだ」
「キャーッ、あなた、何点?」
ターン、ターン、ターン(ゆかの上を両足ではねる音)(あまりにも多いので略)
「いいさ、いいさ。おれたち、算数に弱いんだものな」
「なにくそ、……こんどこそ、みておれ。チャッ(これはテスト用紙をやぶいた音らしい)」この、むちゃくちゃな大さわぎに、先生はしばらくの間、あっけにとられてつっ立っていた。
特にこの
「なにくそ、……こんどこそ、みておれ。チャッ(これはテスト用紙をやぶいた音らしい)」
の所が子どもたちには大好評で、腹を抱えて笑ってくれますし、いつまでもいつまでも覚えています。
チャッ(テスト用紙をやぶいた音)
◇
この大騒ぎの中で、調子に乗った一人の手が一人の顔に当たったことから、喧嘩がはじまります。
しかも、調子に乗った方の小原くんがいい点数で、手を当てられた方の明くんがあまりよくない点数だった所が火種です。
調子に乗った小原くんは、手が当たったことを謝らないどころか、あろうことか明くんのテスト用紙をすきをみてひっくり返し、ケッケッケとばかにしました。
明くんは怒りと恥ずかしさで思いっきり手を出してしまいます。
戦闘開始。見えないゴングが、ジャンとなったようであった。
最初は明くんが優勢です。床に馬乗りになられた小原くん...。
明くんは「あやまれ、あやまれ」と叫びます。
小原くんの口が、モゾモゾとうごいた。なにか、いいたげだった。明は手をゆるめた。
そのとたん、小原くんの口から、ピュッと、つばがとびだした。
熱帯の魚、テッポウウオは、口から水をふきだして、百発百中、水上にとんでいる虫をおとすという。(略)つばが、明の目のなかに命中した。
これはもう…。
小学生の男子あるあるです。あるあるすぎます。
毎日教室で見ますからぐらいの勢いです。
(それは言い過ぎにしても)やっぱり、これを読む子どもたちは、そのあるあるすぎるほどリアルであることを、ちゃんとわかってくれます。
また、この物語の緩急!
テストのあたりでひっくり返って笑っていた子どもたちが、この喧嘩、特に明くんがばかにされた所で一気にシリアスになり、シーンとなります。
テッポウウオのあたりでは、女の子あたりからは「やだもう、最低」「だから男子は…」「やだよね」などという声が出てきます。
この場をしずめたのは光一くんです。かっこいいです。
こういうこの場を抑えるガキ大将的落ち着いた大人っぽいキャラの男の子は、最近あまり見なくなったなあ…。
ちなみに先生はとっくに教室を逃げるように出て行っていますので、この展開はまったく見ていません。
長々と冒頭をご紹介しましたが、この後に明と光一の二人はとんでもないトラブルに巻き込まれ、大きな誤解を受けて大騒動に膨らんでいくわけですが…。
この冒頭の持つ意味はとても大きいです。
ぎゅっと子どもたちの心をつかみます!
◇
最近、大人が児童書を読むことをもっと推奨すべきだと思い始めました。
理由はただ一つ。
児童書を子供に買ってあげるお金💰を持っているのは大人だからです!
どんな児童書が子供にとってすぐれており、「本を読む」ということに対してもっともよい刺激を受けられるか、どんな児童書の名作があるか、を知るためには、大人も児童書を読まなければなりません。
読まなければ知られることもありません。買われることもありません。
したがって、子供の手に渡ることもありません。
読みボラがいくら頑張ったといっても、せいぜい出来ることは「読みボラリスト」を渡すことぐらいです。
もっともっと、積極的におとなが児童書に向かい、積極的に児童書を読んでみる必要があります。
さらに、これほどまでに長いこと売れ続けているものを、これからどうやってまた生み出していけばよいのか?という未来への指標ともなるでしょう。
そして、本当に子供のために書かれたこれほど長いこと支持されている児童書を読んだとき、忘れていた自分の中の子ども時代が、よみがえるのを感じることもあるでしょう。
置き去りにされてしまった何か、を思い出すことがある…かも、しれません。
以前書いた記事です…。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
チョコレートつながりで置いておきます。
舞台はイギリス。選挙で勝利をおさめた“健全健康党”は、なんと“チョコレート禁止法”を発令した!国じゅうから甘いものが処分されていく…。そんなおかしな法律に戦いを挑むことにしたハントリーとスマッジャーは、チョコレートを密造し、“地下チョコバー”を始めることにした!チョコレートがこの世からなくなったら、あなたはどうしますか?禁チョコなんて、ダイエットのときしかしたことない!読めばきっと、チョコレートが食べたくなる…。(「BOOK」データベースより)
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