今日の一冊「秘密の花園」
今日、ご紹介するのは児童書です。
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今日の一冊
遠いインドでいちどに両親を失ったメアリは、イギリスの田舎のおじさんの家にひきとられました。そのお屋敷には、入口の鍵がかかったまま、十年間誰も入ったことがないという「秘密の庭」がありました…。バーネットの名作。小学5・6年以上。(「BOOK」データベースより)
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しっかりと全訳している岩波文庫は、高学年で読んでほしいところです。
しかし、子どもだからとあなどれないもので、このきちんと真面目に訳された岩波文庫でも、内容が面白いのでぐいぐいと最後まで読んでしまう3、4年生のお子さんもいます!
このような岩波のようないかにも「本らしい本」を一冊読み切ったという経験、そして面白かったという思いは、確実に「本を読む」ことに対してハードルを下げます。
自信がつき、ほかとも差がつきますので、いい意味で鼻を高くすることができます。
バーネット夫人の名作三部作「小公女」「小公子」「秘密の花園」
これらは、どれをとってもすばらしい作品です。
「小公女」に出て来るセドリック、「小公女」の主人公セーラは、どちらも実にすばらしい子どもたちです。
セドリックはその明るくて非の打ちどころがない王子様キャラで、頑固おやじになってしてしまったおじいさまの貴族の心を溶かしますし、優しく気高い心のセーラは気の毒にひどい目にあいまくりますが、どんな時にも公女(王女さま)であるという誇りを忘れず、耐えて幸せをつかみます。
これに比べて…
「秘密の花園」のメアリーは、まあ、実にいやな女の子です。
母親はメアリーをほったらかしですし、常に不機嫌で顔も醜いと書かれています。
彼女は、いわゆるネグレクトの子どもです。
彼女は誰も好きじゃないし、周囲も彼女を好きじゃないので、メアリーのわがままに否定はいっさいしません。
やさしいからではなく、どうでもいいからです。
おそろしい疫病が流行って(コロナみたいです)、両親が死んでしまった後に、メアリーは会ったことが一度もない、おじさんの所に行くことになります。
このお話は、読んでいくとわかりますが、イギリスのガーデニング愛がいっぱいで、非常に植物についての記述が詳細です。
描写がじつに美しいです!
ネグレクトでもあるけれど、機嫌も悪くて容貌も醜く、だれにも好かれない子ども…。
新しい環境と生活の中で、自然いっぱいの田舎の空気の中で、次第にメアリーは生気を取り戻していきます。のびやかで動物を愛し愛される少年とお友達になり、そして、この家に秘められた不思議な庭の話を耳にします。
そしてさらに、暗い部屋の奥深くにベッドで寝た切りになっている、いわば彼女と同じ境遇の(ネグレクトの)少年を発見します…。
◇
秘密の花園の良いところは、「醜くて愛されない誰にも興味を持たれない私」がどんどん変化していくところです。
ある意味王道のみにくいあひるの子やシンデレラな展開なのですが、大人の手があまり介在せず、子どもたち同士で、というところが良いです。
秘密の庭をこどもだけで発見するドキドキも素敵です。
放置され、知らん顔をされ、かえりみられない子どもが、自然の美しさの中で少しずつ癒されていきます。
さらに同じように傷ついた同じ立場の子供を知ることで、自分は一人ではない、と感じることができるようになっていきます。
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有名な「それ、名前は知ってるけど…」という作品に、読んで損する本はありませんので、本を好きになってもらうのにはもってこいです。
中身を知らなくても買ってあげたり、借りてあげたりしていただきたいです。
絵本から本へ、児童書が文学作品へのとびらになるように、海外の名作児童書は、海外文学に入るとびらになります。
世界は広いです。
さらに、物語として風俗、考え方、文化、歴史に触れることは、必ずグローバルな世界に向かうときにも役にたってくれることでしょう。
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バーネット夫人の作品は、原書がほとんどグーテンベルクで読めます。
「小公女」「小公子」もありますし、英語のおべんきょうにはこれはもってこいです。
「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492
◆プロジェクト・グーテンベルクについて
☞Wikiの説明ページ
プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリカ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館。
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