大人が読む児童書「グリックの冒険」2 読了。君は、君自身の戦いを戦え
大人が読む児童書。
「積ん読・解消計画★児童書編」です。
この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
大人が読む児童書
飼いリスのグリックは、野生のリスの住む北の森にあこがれ、カゴから脱走します。町でドブネズミのガンバと親しくなり、動物園で知りあった雌リスののんのんといっしょに、北の森をめざします。
今回読むにあたっては、まずは図書館から借りてきたのですが、このハードカバー...💖
すごく読みやすいです。
本屋さんに置く場所もないし、つくるのにもお金がかかり、高いので買い手もないのかもしれません。
でも、この
「本」を読んだぞ~!感はすごいです。
大人でさえ思いますから、子どもがこうしたしっかりとした装丁の分厚い本を開いて夢中になって読む感覚は、特別なものではないかと思います。
経験です。
字が小さくて、分厚くて、地味そうな(一見つまらなさそうな)重たい物体の中に、素晴らしい世界が広がっているという...。
改めて、このようなしっかりした物語をハードカバーで子どもに与えることの意味の大きさを考えさせられました。
◇
さてグリックは、クマネズミとドブネズミ(ガンバ側)の争いに巻き込まれます。
この戦いをガンバと一緒にこなし、しばらく一緒に過ごしたことで、グリックは胆力もつき、長い旅をこなすだけのスキルを身に付けます。
ガンバは、彼の知っているリスの仲間たちの所に案内するまで、じっとグリックに付き添います。
えさの面倒もみてやり、危険も教えます。
かっこいいです…ガンバ…💖
私情が入りまくりです。
作者が「冒険者たち」のあとがきで、急にグリックのお話に飛び込んできて、動き出したと言っていたのもわかる気がします。
そして、ガンバ、ずっと一緒にいるわけではありません。
どこか、グリックを自分の戦いに巻き込んだことを後悔している様子もあります。
ガンバはグリックを見届け、シマリスたちの群れの手前で別れを告げます…。
ガンバはグリックに何度か、大切なことを伝えます。
「あれは君の戦いではなかったんだよ。あれは、おれたちの戦いだったのさ。いいかい、君の戦いはあれじゃなくて、これからだ。君は、君自身の戦いを戦えばいいんだ。」
上野の公園にはリスがいて、カメラを向けると完璧なキメポーズもしてくれると書いてあるのを、最近ツイッターで見たことがあります。
「グリックの冒険」のwikiページをみていると、これは井の頭公園ではないかとのことでした。
しかし、グリックがきたのは、「北の森」ではなくて、動物園のシマリスのおりの中でした!
グリックはおどろき、ここはぼくのうちじゃない!と叫びます。
たくさんの動物園のリスたちは驚きながらも、グリックを受け入れてくれます。
グリックは次第に、動物園の生活に慣れていきそうになっていきますが…。
グリックがシマリスたちに、ネズミたちの戦いの話を聞かせていると、突然、声が響きます。
「それはもうわかったわ!いつまでも同じことをくりかえしているの!ネズミじゃなくて、あなたの戦いの話がききたいのよ!あなた自身の戦いの話が!いつになったらあなたは...」
あなたの話を聞きたいのよ!
という叫び。
それは、ガンバの「君は、君自身の戦いを戦え」ということばにつながるものでした。
その叫びに突き動かされ、グリックがガンバが教えてくれた入り口をたどって外の世界に出ようとすると、足の悪いのんのんというめすのシマリスがこっそり、ついてきていました…。
二匹は連れ立ってハトのピッポーが言及した「シマリスのいる北の森」目指します。
…というお話です!!
大変読み応えがあり、かつ長編で文章も読みやすく、ワクワクドキドキ、まさに「冒険者たち(ガンバの冒険)」を読み終わるのが待ちきれなかったあの感覚をふたたび味わえます。
ああ、こんな風にして、これが面白かったからこれも…これも、という風に、「本を読むこと」に引き込まれて行ったなあ…と記憶がよみがえりました。
「読書」に対して格段にハードルを低くしたのはこれらの楽しみでしたし、叙述がしっかりしていて見事なため、大人の名作本にもすんなりと入っていける土壌を育てます。
グリックは元気なのでひとりでどんどん行ってしまおうと思えばできたはずでした。
しかし、のんのんの存在にどれだけ助けられたか知れません。
お互いに励ましあい、助け合いながら、北の森を目指し、二匹でなければたどりつけなかったのです。
(そして、のんのんがなぜ、足が悪くなってしまったのか、という理由を知った時には本当にぞっとしました)
グリックは、ガンバの戦いを目にすることで、「生きるための戦い」それも「他人のものではない、自分自身の戦い」を意識するようになります。
とてもとても大事なことだと思いました。
いつまでも語り継いでいきたい一冊です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
イタチと戦う島ネズミを助けに,ガンバと15ひきの仲間は、船で夢見が島に向いました。しかし、白毛のノロイがひきいる、どうもうなイタチの群れに追いつめられ、海岸の岩山で最後の決戦の時をむかえます。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ガンバと15ひきの仲間は、ゆくえ不明のネズミをたずねて、四の島に渡ります。探しあてたネズミのそばにいたのは、死に絶えたはずの2ひきのカワウソでした。凶暴な野犬と戦いながら、カワウソの仲間が生き残っているかもしれない伝説の河「豊かな流れ」をめざして冒険がはじまります。そこには、想像をこえる体験が….
頑張り者のネズミ・ガンバは、相棒のボーボと一緒に、海を一目見ようと港町までやってくる。そこで出会った子ネズミの忠太が、自分たちの島の仲間を助けて欲しいと求めてきた。力自慢のヨイショや博学のガクシャといったネズミ仲間とともに、大海原へ乗り出すことを決意する。だが、目的の島には脅威の白イタチ・ノロイが待ち構える。小さなネズミ7匹が繰り広げる波乱に満ちた大冒険。他に類を見ない表現にドキドキハラハラの連続だ。(C)斎藤惇夫/岩波書店・TMS
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