今日の一冊「ちいちゃんのかげおくり」
今日、ご紹介するのは絵本です。
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今日の一冊
なつの夜の くうしゅうで かぞくと はなれ、 ひとりぼっちで まちを さまよう ちいちゃん。 悲惨な戦争のかげに小さないのちをとじた 女の子のすがたを、静かに描いた絵本。
8月を迎える前、夏休みを前にした時には、読みがたりボランティアさんがたは、みんな一冊か二冊、戦争のお話を入れることが多いです。
まだ6月で8月まで来てませんが、紹介しちゃいます。
暑くなってきて、日差しもつよくなり、かげおくりがうまく出来るようになる季節です。
冒頭は、ちいちゃんを囲む幸せな家族が「かげおくり」という遊びをする所からはじまります。
足元の影をみんなで数秒、目を離すことなくしっかりと見つめ、目をふっと上げると、細孔に残った影の残像がふわっと空に浮き上がるように見える遊びです。
このお話の悲しさは悲しさ、意味は意味として、とても面白い遊びですのでぜひやってみてください。
「ちいちゃんのかげおくり」は戦時中のお話ですが、ちいちゃんという小さな女の子の目線を追いながら語られます。
ちいちゃんは、いったい何が起きてるのか全く分かりません。
体が弱いお父さんがどうして「いくさ」に行かなければならないのかもわからないし、確かに何かが起きて、皆あわてふためき、周囲も火に包まれているのですが、よくわかりません。
だから誰を責めるわけでも何を責めるわけでもなく、ただひたすらちいちゃんの目線で、何か恐ろしいことが周囲に起こり、誰もかれもが死んでいき、最終的にちいちゃんも天に召される(と言うと聞こえはいいのですが戦争で死んでしまう)わけです。
そんなちいちゃんを受け止めたのは、空に向かうかげおくりの影たち。
おとうさんの影、おかあさんの影…。
懐かしいあたたかい記憶に包まれてちいちゃんは一緒にかげとなって空へ一歩一歩足を踏み出して行きます。
なんとなくアンデルセンのマッチ売りの少女を思わせるような描写です。
せめて、あたたかく楽しい家族の遊びの思い出と共に空に迎えられてもらおうという作者の願いがこめられています。
切ないという言葉では語りきれないお話です。
ここにはなぜ、という理由など一切なく、誰を恨みに思うわけでもないので、ただただひたすら悲しいです。
身も蓋もない言い方をすれば、何の罪もない一人の幼い女の子がただ死んでいくというお話です。
ただ、このちいちゃんのかげおくりのお話は、かつてほんとうにあったことだし、今も確かにどこかであることであり、将来、起こるべきことである、ということだけは教えてあげなければならないと思っています。
かげおくりという題名、どことなくさびしい響きです。
ですがちいちゃんにとっては楽しかった日々の思い出とつながる家族の絆でした。
この本を選ぶ方は多いのですが、やはり涙を抑えるのがとても大変だと言っていて、「どうやって泣かないようにするか?」というのを皆で相談しあったりしていました。
「かわいそうなぞう」「チヌロップのきつね」
無理無理無理、です。
慣れた方は
「ただひたすら淡々と読む!」
「もう何も考えずに読む!」
「言葉だけを追いかける、意味を考えてはだめ」
と仰っていました。
しかし私はどうしても自信がないので、残念ながらこの本をまだ読みきかせに使ったことはないのです💦
なんてこった。
しかしブログだと、別に泣かなくても紹介できるので、これはよい取り組みだ!と思いました。
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