大人が読む児童書「チベットのものいう鳥」3 金沙江(=長江)、河の女神の物語
大人が読む児童書。
「積ん読・解消計画★児童書編」です。
この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
「5.金沙江の女軍」
すばらしいです。
通しで読んだ後にも言えますが、これが筆頭で一番個性的で素敵な物語です。この一篇のためだけにでも、買いたいと思いました。
原始の大河の擬人化です。
金沙江(=長江)のお話です。
大河の擬人化も面白いですが、その擬人化具合が、実際の「河」としての性質とひとりの神格を兼ね備えた女性としての性質とが実に見事にとけあっていて感動的でした。
大河の神たちを産んだ母はパエンカラ山脈。
四人の子供がいます。
長男が黄河(ホワンホオ)
長女が怒江(ヌーチアン・サルウィン川上流)
次女が瀾滄江(ランツァンチアン・メコン川上流)
三女が金沙江(チンシャチアン・長江)
主人公は金沙江、チンシャチアン。かわいい響きです。
いちばん末の女の子です。
河たちは、母のもとを離れ、旅をしながら大陸を巡り、支流を従えながら下っていきます。
それを軍隊の進軍にたとえていて、金沙江は女軍です。
怒江(ヌーチアン・サルウィン川上流)と瀾滄江(ランツァンチアン・メコン川上流)は、こらえ性が無くて軽はずみ、ということになっていますが、これは黄河と長江に比べて短いからのようです。
まあ…確かに…。
黄河と長江、この二つに比べればね…。
河の流れのさざめきが女性の笑い声のようで、山や城壁に何度もぶつかっては打ち壊して先にすすみます。
母パエンカラが命じた一大事業、金色の種を岸辺にまきながら進み、「大地を緑玉黄金のような世界に変える」ために。
金沙江が山や谷にぶつかって壊しながら進むたびに、その周囲を支配している原始の神々が怒り、何者だと呼びかけます。
すると水しぶきと女性の笑い声の中からぱっと(大河の擬人化した)美しい女将軍が姿を現すところなど、とても素敵でした。
チベットに留まらず、中国全体の神話とも言えそうでスケールの大きさを感じさせます。
パエンカラとは、崑崙山脈のひとつ、バヤンカラ山脈のことのようです。
6.金花と銀花
九尾の狐っぽいターマという悪役が登場します。
いかにも中国の狐狸精こりせい(フーリーチン)という感じです。
7.慈善家とカメ
とんち系です。
8.白鳥になった王子
昔話によくある、毎日山羊がいなくなる話と、ギリシャ神話のアモールとプシュケを足したようなお話です
9.竜の目をかく
画竜点睛だ!しかし、画竜点睛の熟語のもと、故事になったお話とはまた違うようです。
10.九色鹿
くしきじかと読みます。人間の欲の深さと醜さを説いています。
しかし、九色の鹿とは、とてもファンタジックで素敵だなと思いました。
ファンタジーを書く人たちにも、とても示唆に富み参考になるなと思います。
昔話はこうして、現代にあわせた形で再話、再話と語られていき、語り継がれていくものですから…。
11.一本の手
12.黄金の夢
これは完全にギリシャ神話の「ミダス王」です。そのまんまです。
「アモールとプシュケ」っぽかった「8.白鳥になった王子」といい、チベットにもギリシャのお話が伝わっていたのだろうか。
それとも、類話と呼ばれるものは世界各地で見られるので、どれが最初だと言うことは出来ないのかもしれません。
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