大人が読む児童書「チベットのものいう鳥」4 読了です。
大人が読む児童書。
「積ん読・解消計画★児童書編」です。
この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
13.如意宝
如意と言えば如意棒のイメージしかなかったですが、はたと気づきました。
如意とは、思った通りに、とか、のぞみをかなえる、という意味なのでした。
昔話ではよく、げすな男たちが美しい女性にHなことをたくらむのですが、編者が子ども向けに配慮して、「いかにぼんやりと柔らかくするか」に心を砕いている様を見るのは面白いです。
えっ?と思うようなことを、わからないままにさらっと事実をありのままに描いていたりします。
おとなの読み方のたのしみの一つです。
今回のこの「チベットのものいう鳥」はなかなかに女性が気高く、美しさのせいで他の男にさらわれたり言い寄られたりしても、とにかく最後まできっぱりと拒否します。
これが(私が超おススメの)山室静氏編の昔話集などですと、女性もたださらわれただけではなくて、すっかりなびいた挙句、元夫を殺そうとしたりするお話なども割と入っています。
編者の配慮に寄るところは大きいだろうなと思うと同時に、実母犯人を継母にしたグリムなどのように、原作改編にもつながっていき、こうして形を変えていくのだろうな…、と思いました。
14.金玉を吐きだす物語
これはほんとにひどいです。
何がひどいとは、ものいう鳥がひどいです。
いいところで終わりすぎです。王子がかわいそう…。
15.竹娘
竹取物語だー!!
びっくりするほど同じでした。
この本のあとがきでは、類似性に驚いたと訳者のかたが書かれていましたが、Wikiなどを調べてみると、研究がすすんで、むしろ竹取物語の方がこちらに影響を与えたか、子どものために編をあまれた田海燕さんが、さまざまな物語を独自に編みこんだ可能性もあるとのことでした。
なるほど。ならばアモールとプシュケやミダス王などとの類似もうなずけます。
どこからどこまで、と言うことは出来ないでしょうが…。
こうして、昔話は形を変えながら世界に広がって行くのかな、と思わせる一遍でした。
16.チャアルカンのさばき
まんまイソップや一休さんのようなお話でした。
17.幽霊とおくびょう者
18.三人のラマの本心
19.国王と同名の人
男の娘だ~~!
(すみません)
意味がわからないかたは調べなくて良いです…💦
20.六人の友と大きな金の鳥
21.双頭の鳥
22.軍馬が石臼をひく
すごく短くて、要は備えあれば憂いなし、という話なのですが、今、時流にもあっていて普通になるほどと思わせる内容でした。
立派な軍馬を戦争が終わった後に、無駄なのでと石臼をひかせることに使った所、使える軍馬はいなくなり戦争にも負けてしまった…という内容です。
中国の故事にいかにもありそうな感じです。
23.ジャーマの機転
最初の絵から最初に連想したのは、旧約聖書のユディト伝でした。
アルキメデスの原理を使って象の重さをはかったり、どこからどこまでが作者の改変で、どこまでがチベットの民話そのままなのかな、と思います。
24.もどった銀貨
25.しっぽと頭のあらそい
超短話です。
26.白蛇をたすける
27.結末
娘「あれだけ大変だったのに、結末が2ページだよ、2ページ!!」
アラビアンナイトも結局、千夜話しつくしたあとは、千夜の産んだ子供を出してきて2ページぐらいで終わります。
読み終えて思ったのが、このお話はそもそもの趣旨が「愚かな王子を賢くしたい」という所から始まっていたわけです。
そこで、最後に「ものいう鳥を話を聞くこと」が「愚か者を賢くする手段であった」
とされている所がなるほど、と思いました。
実際に話を聞いていたのは賢い王子の方なのですが、為政者として大切なことはすべてこれらの昔語りの中にはいっていましたでしょ、というような趣旨のことを鳥は言います。
「読書」「物語を読む」「読みきかせ」「本を読みなさい…」
欲の醜さ、気高い心の大切さ、人のさが、運命への抗い方、出来心のおそろしさ。
物語の中に、あらゆる教訓が入っていました。
しかし、あまり教訓くさくもなく、単なるお話として面白く、バランスが取れていてとても良い本でした。
特に「5.金沙江の女軍」はこれ一つが入っているだけでも、購入したい、購入する価値があると思うようなお話でした。
特にラストは例を見ないもので大変感銘を受けました。
「チベットのものいう鳥」昔話を昨今のファンタジーブームで翻案するにもとても参考になるところあり、なおかつとてもすばらしいのが、子供用にと噛み砕きすぎず、中国の香りをうつす硬派な訳本にしていることです。
漢文を習った時にこの雰囲気がわかるだろう、と思うような流麗さです。(若干もってまわったところがあるにはありますが)
もとは漢文である詩がたくさんちりばめられてあり、リズムを壊さないようにしてあります。
これまでずっと残っているのがよくわかる、実にすばらしい名著でした。
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