大人が読む児童書「第九軍団のワシ」3 面白くて読む手が止められない
大人が読む児童書。
「積ん読・解消計画★児童書編」です。
この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
ローマ軍団の百人隊長マーカスは、ブリトン人との戦いで足を負傷し、軍人生命を絶たれる。マーカスは親友エスカとともに、行方不明になった父の軍団とその象徴である“ワシ”を求めて、危険に満ちた北の辺境へ旅に出る。(「BOOK」データベースより)
ここからは、ネタバレなんて書いてはありますが、読んでのお楽しみとして、 さ~っと紹介をすることにします。
もう夢中になって読む手をまったく止められませんでした。
気になったところを書き連ねていってみようかと思います。
①ローマへ報告してくれた司令官
死線をくぐりぬけた戦いが終わり、救援隊の司令官が来ますが、この人が「態度の冷ややかな、陰鬱な顔つきの男」です。マーカスはすっかり腐った気分になって冷たくあしらうのですが…この司令官、態度が冷ややかですが良識のある人間で、マーカスの功績について最高の報告をしてるのです!
いわゆるギャップ萌えというやつでしょうか。(そんな言葉使うな!)
②バラの花弁
マーカスが軍に入った時にはまだつぼみだったバラが、いつのまにか咲き、そして後継者に引き継ぎをして軍にも別れを告げた時に、最後の花弁が散っていきます。
非常に詩的で美しく、かつ時の流れも効果的に使ったすばらしいシーンでした。
③おじさんの家にいる料理番のおばちゃん
おじさんは独身で館には若者がいないので、この料理番のサスティかはあれこれマーカスを子どものように世話を焼きます。「その当時マーカスは親切というものを恐れていたから──サスティカをほとんど憎むようにさえなってしまった」という一言はとても印象的でした。
まあ、世話焼きのおばちゃんがウザいのは仕方ないですが、でも結局、マーカスはサスティカにも慣れていくのですが。
これもまたギャップ萌えの一つです。(ちがう)
④病床にいるマーカス
サトクリフは病床生活を送っていた人であることを、知識として知っていましたので、感慨深く読みました。そして、その生活でなければ見られなかったであろう視点、たとえば風が吹き抜けるだけのシーンにしても、その物悲しくも印象的な場面が一つひとつ刻まれて、こちらの胸にしみいるようでした。
私はあまり、物語から作者を投影したり読まないようにしているのですが、ここは少しだけ、生涯、車椅子生活だったという作者サトクリフのことに思いを馳せずにはいられませんでした。
⑤マーカスは気の合わない高級官僚の叔父さんから、退役軍人である叔父さんのところに身を寄せたわけですが、お父さんの弟なので漠然と父の面影を追っているわけです。
しかしそれが…
マーカスはもう大分以前から、叔父を誰かに似ている、とか、似ていない、とか考えるのをやめにしていた。叔父はただアクイラ叔父であるだけなのだ。
なんてすばらしい文章なのだろうな、と思いました。
この一文がとても好きでした。
マーカス、おじさんちで「ローマの詩人バージル」の作品を読んでいます。
ヴェルギリウスだ!!
ここではバージルと訳されていますし、Vergiliusは英語の本ではほぼVergilなので、たまに誰…?と思うときがあります。
◇
このように、マーカスは叔父さんの家で傷を癒します。
そして、闘技場で二人の人物に出会います。
おとなりの娘、コティアと、剣闘士として出てきたエスカです。
(実のところをいえば、サーカスの経営者たちは、そうやすやすと剣闘士を殺してしまっては引きあわないのだった)
なるほど、なるほど!
ローマもののお話はとても好きでよく読んでいるつもりなのですが、こういう視点はなかったです。
最近のAmazonプライムのドラマでも、「ROME ローマ」 という良質のドラマがありましたし、クォ・ヴァディス もそうでしたが、剣闘士のシーンには指を上に立てるか下に立てるかで、生か死かを観客が決めるシーンがつきものです。
これを実に効果的に使っていました。
ここからは話すと面白くないので、ぼんやり、あっさりとお話しますが、コティア、エスカ、そしてエスカが捕まえてきたオオカミの子のチビは、マーカスに寄り添い、マーカスを大事に思ってくれて、マーカスにとっても大切な人となっていきます。
ここまでが半分です!!
さて、叔父の友人、参謀将校プラシドスの訪れにより、ついにワシ探しの旅が始まります。
ワシを探すとともに、父親の行方を探す旅でもあります。
もうここからは、本当に面白く…。
ページをめくる時間も惜しいほどの面白さ…。
もう、最高の一冊でした。
しかしこれをここまで面白くしているのが、半分も費やして描かれた冒頭~中盤までの、丁寧なマーカスという人となり、マーカスの傷を負った運命にあることは間違いありません。
どんな都市にも、その裏に隠された独自の歴史がある。HBO制作のドラマ「ローマ」は、古代ローマで繰り広げられた愛と策謀の物語である。共和政ローマが終わり、帝政ローマに移行する激動の時代、将軍と兵士、主人と奴隷、夫と妻、それぞれが絡み合い、男女の愛と欲望、権力をめぐる陰謀の物語が展開する。前編では、カエサルが帝国の礎を築きながらも、志半ばで倒れるまでを描く。エミー賞で8部門にノミネートされ、4部門を受賞した歴史超大作。製作期間も企画から撮影終了まで約8年もの歳月を費やすという破格のものとなった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
衰退したローマ帝国は、450年にわたるブリテン島支配に終止符をうつ。地方軍団の指揮官アクイラは、悩んだ末に軍を脱走し、故郷のブリテン島にとどまることを決意したが…。意志を貫いて生きることの厳しさ、美しさを描く。中学生以上。(「BOOK」データベースより)
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