がちキャン△「ツバメ号とアマゾン号」 再読3 テント。自炊。焚き火。子どもだけで。
大人が読む児童書。
「再読★児童書編」です。
この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
夏休み、ウォーカー家の4人きょうだいは、小さな帆船「ツバメ号」に乗って、子どもたちだけで、無人島ですごします。湖を探検したり、アマゾン海賊を名乗るナンシイとペギイの姉妹からの挑戦をうけたり、わくわくするできごとがいっぱい!
さて、子どもたちは小さな島に上陸、テントを木に縛り付けるのですが...。
もちろん、ロープはまん中がたるんだから、テントは一メートル半くらいの高さにしかならなかった。ロープは夜露がおりるとちぢむので、あまりきつすぎないように張っておいたのだ。
お母さんがこのタイプのテントにしてくれて良かったです。
理由は、地面の下がどこもすぐ岩で、ペグを打ち込むことができなかったからでした。
ちなみにこのことに気がついたのもスーザンです。
船の繋留地を移動します。
(さらっと書いていますが、とても面白いです!)
スーザンは大きなバターのかたまりを、フライパンでとかしていた。そばのプディング用のボウルには、生のなまごが六つはいっている。スーザンは、マグのふちでたまごをわって、ボウルにおとした。たまごのからが、たき火の中でぱちぱちはねた。
ハウルの動く城でのたまごを焼くシーンが思い出されます。
カルシファーがたまごのからを食べてました。
スーザンの作っているこれはスクランブルエッグです。
このときは、たまごとライス・プディングと、バターつきの黒パンとシードケーキとリンゴの食事です。
スプーンは洗わなくてはならないし、フライパンはこすっておかなくてはならない。マグとプディング用のボウルもすすいでおかなくてはならなかった。
これ!これがキャンプ!
これを全部、子供だけでやるのです。
兄弟姉妹四人はいい数です。
多すぎて目が行き届かないこともないですし、少なすぎて手が足りないこともありません。
そういえば、「ナルニア」も、「砂の妖精」も、みんな四人兄弟姉妹です。
この頃の理想的なこどもの数だったのでしょうか。
ひとりふたり、赤ちゃんがふえたりしますが、メアリーポピンズも基本はそうでした。
とりあえずおとなの再読目線で、ごはんとか片付けとかばかりみてきましたが、やはりこどもの読んでいる目線はちがいます。
みんなをひっぱり、意思決定をするリーダーのジョンでも、なんでもできちゃうカリスマ主婦のスーザンでもなく、三番目のティティです。絶妙な役回りです。
物語の中では様子を見に来たお母さんが、シリアルももってきてくれました。
「朝がとってもいそがしいとき、スーザンがポリッジを用意しなくてもすむようにね」
「わたし、お料理好きだわ。」と航海士スーザンがいった。
「いつまでも好きでいたかったら、」と、女の原住民がいった。「私の言うことをきいて、洗いものは、ほかの人にやらせなさい」
今だからわかりますが、含蓄の深いことばです...!
最初の一晩があけ、朝起きて、牛乳をとりに行こうという話になります。
スーザンのカリスマ発揮です。
「ぼくが船をこいでとってくるよ。」と、ジョンがいった。
「待って。」と、スーザンがいった。「きょうは、みんなでいきましょうよ。そしたら、みんな道がわかるし、農場の人も、私たち全員をおぼえるから、後でだれでもとりにいけるわ。」
怖い!こんな気のきくこども怖い!
お母さんは、気を付けていて頻繁に大丈夫か顔を出しますが、子どもたちもちゃんと言いつけ通り、たまに戻ってきて顔を見せます。
そのたびごとにつりざおやら、水着やらを準備してくれるお母さんです。
青物はちゃんと食べないと壊血病になりますよとのことで、レタスやグリーンピースの配慮もします。野菜は大事!
お母さんはヨット帆走のしかたも細かくきいています。
どうやらこのお母さんもヨット帆走できるみたいです。
古きよき貞淑な家庭のよき母親☆てきなイメージからどんどん離れていきます。
このツバメ号とアマゾン号が書かれた時代は1930年、ちょうど第1次世界対戦と 第二次世界対戦の あいだにあたります。
サトクリフの「第九軍団のワシ」でも序盤が非常に緻密で長く、冒険に行くまでに半分ぐらいかかりましたが、こちらもキャンプをしっかりとはじめるまでが(上下巻の長さですが)上巻のほぼ2/3をしめています。
・お父さんの許しが出る
・準備する
・(ウィンダミア湖モデルの湖を)ヨット帆走させる。
・ヤマネコ島に船をつける。
・ヤマネコ島に上陸する。
・キャンプに適した場所を探す
・テントを張り、火をおこす
・さいしょのお茶をのみ、最初の食事をする。
・お母さんが様子を見に来る
・最初の夜を過ごす
この途中の「準備する」とか「船をつける」とかのシーンがとってもとっても緻密です。
もう何をしてるのか、目の前に見えるようによくわかります。
ですが冗長ではありません。
本当に、一緒にヨット帆走させたりキャンプしたりしていて、波の音や火の音が聞えてくるようです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
つぎで終了です。
がちキャン△~究極のアウトドア体験!「ツバメ号とアマゾン号」 再読1
子どもの本だな【広告】
マルコヴァルドさんの四季 | ふたりのロッテ | 小川未明童話集 |
完訳 ファーブル昆虫記 | スパゲッティがたべたいよう | ぼくは王さま |
ともしびをかかげて〈上〉 | 新訳 赤毛のアン | 小公女セーラ |
児童文学ランキング |