「本好きは作るもの」読解力を身に付ける~珠玉の児童書~

「本好きは作るもの」~珠玉の児童書~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

閑話 雑誌「飛ぶ教室 第61号 2020年春号」 神宮輝夫さんのインタビュー

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

買ってからずいぶん時間がたってしまいましたが、「飛ぶ教室」第61号(2020年春)を購入していました。
 

 

飛ぶ教室 第61号(2020年春) (はじまりの日) 雑誌

 

この雑誌のことについてちらっとご紹介すると、児童書関係の伝統ある雑誌で、児童文学の公募も行っています。
西の魔女が死んだ」も、この雑誌の連載です。

 

雑誌名のもとになっているのは、ケストナーの「飛ぶ教室」。
ドイツの少年たちのギムナジウム生活をつづった名作です。

 

飛ぶ教室 (岩波少年文庫)

エーリヒ ケストナー (著), 池田 香代子 (翻訳)

ボクサー志望のマッツ、貧しくも秀才のマルティン、おくびょうなウーリ、詩人ジョニー、クールなゼバスティアーン。個性ゆたかな少年たちそれぞれの悩み、悲しみ、そしてあこがれ。寄宿学校に涙と笑いのクリスマスがやってきます。(「BOOK」データベースより)

 

もうずいぶん買っていなかったのですが今回、この雑誌に、神宮輝夫さんのインタビューが載っていたので、手に取りました。

 

神宮輝夫さん、ドリトル先生をはじめアーサー・ランサムなど、さまざまなすぐれた翻訳を手がけられてきた人です。

 

訳にユーモアがあって、腹を抱えて笑ってしまうような楽しさがあります。
物語の楽しさを何倍にもして届けてくれる超・名翻訳者さんです。

 

神宮輝夫さんの記事、示唆に富む内容がたくさん載っていましたので、インタビューを追いながら、なんとなく感想など書き記してみます。

 

 

最初に、神宮輝夫さんの経歴が語られるわけですが、高校生の時から児童文学を志しておられたというのがとても印象的でした。
印象的なんて言葉使ってますが、単純にすごいです。
そして、「本を読む環境が周囲にあった」ことの大きさを切々と語られていました。

 

担任の先生が読書好きで、本を読むことを奨励していたのが良かった…とのこと。
「読書好きの担任の先生」の影響の大きさを語られています。
本屋さんも身近にたくさんあったとのこと。
そのような環境がなくなっている現在…。どうなっていくことでしょうか。

 

神宮輝夫さん、「少年倶楽部は読みませんでしたね」とたったひとこと言われていて、それ以上言及がなかったです。
少年倶楽部は大人気で、漫画雑誌の草分けと思いますが、距離を置かれていたのでしょうか。
単純にあまり趣味に合わなかっただけなのかもしれません。

 

 

早大童話会」の山中恒さんについて。

神宮 もうとにかく、なんだかんだとうるさい男でした。しかし彼は、思想性を持っていた。児童文学とはどういうものか、どんなふうに、何を書かなければいけないのか、そういったことを、一家言として持ってましたね。

「インタビュー 子どもの本のグレートランナーに聞く!」より

 

「おにのこブン」、「あばれはっちゃく」、「とべたら本こ」、「おれがあいつであいつがおれで」…。

なつかしい本名が並びます。
あばれはっちゃく」と「おれがあいつであいつがおれで」は、つばさ文庫から今も出ていて、可愛い絵もついています!
(私の好きだった「とべたら本こ」は絶版になっていました。)

  

神宮 大きなことを言ったりして景気がいいんだけども、言ってることは間違いなかったんですね。威勢がよかったから、影響力はありました。

 

 

大石真さん。
寺村輝夫さん。

 

すぐれた名児童文学者の名前が続きます。
(どうでもいいですが、今日「ぼくは王さま」が机の上に開いて置いてありました)

 

鳥越信さん。

 

この方は児童文学作家さんではなく、早稲田大学の教授で児童文学論を書かれている研究者のかたのようです。
神宮輝夫さんにとっては、たいへん影響が大きかったようで、何度も名前が上がりました。


鳥越さんという明確な思想的指導者がいたことがとても重要だったと言われています。
オルガナイザー。
「火付け役で、うまく人をそそのかしてやらせるのが非常に上手」

 

神宮輝夫さんのすばらしい翻訳を促して応援されたのがこの方なのだとすれば、これは本当にすばらしい功績です。

創造者は個性でなければならないし俯瞰してみることができるひとは、旗印をふって導く。
名編集者たる人の意味を深く考えさせられました。

 

そして、古田足日さんへの評価が強烈です。びっくりです。

 

神宮 古田君の場合、自分のことを主眼にして言っていて、説得力がなかったと思うんですね。結局、自己主張をしていたような気がします。

 

そのあとでインタビュワーの野上暁さんが見事にこの頃の状況を綺麗に解説されています。

 

作品として残るのは、評論にはもしかすると向かないかもしれないその人となりをあらわす強烈な個性であるのかもしれません。

 

それと共に、このような、縁の下のとでもいいますか俯瞰して見渡して問題点を指摘し、リーダーシップを発揮できる人物というのが、「作者」ではなく存在するというのがとても大きかったのだなと思います。

 

 

この時代の「早大童話会」の方々が目指したのは、
「このままじゃダメだ、リアリズムによる、いまの時代の子どもたちに合った形での、ちゃんとした文体を持った文学作品を、というメッセージを出した」
というもののようでした。

 

神宮 この時期の何人かの作家たちには、子どもたちに自信をもって提出できる<価値あるもの>がありました。

 

とても気になる一文でした。

 

「子どもたちに自信をもって提出できる<価値あるもの>」をいまの作家には感じない、というようです。
そういう風に捉えてしまいました。

 

まっすぐに走る一本の背骨のようなもの。
伝えたい、伝えなければならない、という激しく、真に迫ったメッセージ。

それはやはり、古今東西の名作をひもとき、読書を重ね、思考をかさね、内省を重ねる所からしか生まれないのではないだろうか…。

 

神宮 私の場合、西洋文学の影響はあって、物語性が強くないとダメだということは、もう、本当に強く心に刺さりました。 

 

よくわかります!
物語性、ストーリーの強さはすべてに勝ります。
(そして、いまはその強さは漫画にあるような気がしています。個人的意見ですが)

 

神宮 それから、文体ですね。やはり、童話会の文体じゃ動かない。はっきりとした動きでないと、児童文学もすすんでいかないということは、当時非常に強く感じさせられました。

 

 

「パスワードシリーズ」の松原秀幸さんの名前が挙がっていました。
アーサー・ランサムに影響を受けて書こうと思ったと書かれてます。

 

神宮 それは、すごいですよね。ランサムは難しい男なんだけど、あれを基にして自分の作品を書くってのはちょっと厄介だと思うんだ。相当、勇気がいると思うんですね。でも、書いちまえば書けるんだよ。本当に書ける。
みんな、書いちまえばいいのに、どんどん。そうすれば、十書いたら、必ず一つか二つ当たりが出ると思う。あれだけのものを書く手本があって、私なんかも、へえはあ、言いながらやってるじゃない、出なきゃ、うそだ。

 

神宮輝夫さんの、ものを書くことを志す人々への 励ましを感じました。

 

 

 

久しぶりに買った「飛ぶ教室(雑誌)」とても示唆に富んで面白い内容でした!

 

◇  

 

今回の「飛ぶ教室 第61号」に載っている、斉藤倫さんの詩がとても良かったです。
斉藤倫さんの選詩本をご紹介します。

 

ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集

斉藤 倫 (著), 高野 文子 (イラスト)

詩はおもしろくて、ほんとうにたのしくて、そして自由だ。詩は、ことばを自由にし、ことばによって縛られ、不自由になっているわたしたちに、ことばは、わたしたちを縛るのではなくて、わたしたちは、ことばによって自由になれるのだと教えてくれる。20篇の詩を通して、詩人斉藤倫と楽しみ、そして考える、詩のことそしてことばのこと。

 

 

あばれはっちゃく ‐ワンぱく編‐

山中 恒 (著), うみこ (イラスト)

おれは”あばれはっちゃく”こと、桜間長太郎。イタズラとケンカだけは誰にも負けねえ! 特にズルい大人には、がぜん闘志が湧いてくる。子供だと思って油断していると、痛い目みるぜ!? 全世代がはまった超名作!

 

おれがあいつであいつがおれで

山中 恒 (著), 杉基 イクラ (イラスト)

お地蔵さまの前でぶつかった日から、中身が入れかわってしまった一夫と一美。しかたなく、一夫は女子の、一美は男子の生活を始めたんだけど、これがもう大変!! しかも一美のボーイフレンドが家にくることになって

 

  

西の魔女が死んだ

梨木 香歩 (著)

中学に進んでまもなく、どうしても学校へ足が向かなくなった少女まいは、季節が初夏へと移り変るひと月あまりを、西の魔女のもとで過した。西の魔女ことママのママ、つまり大好きなおばあちゃんから、まいは魔女の手ほどきを受けるのだが、魔女修行の肝心かなめは、何でも自分で決める、ということだった。喜びも希望も、もちろん幸せも……。その後のまいの物語「渡りの一日」併録。

 

 

西の魔女が死んだ

中学に進んでまもない夏の初めに、学校へ行けなくなったまいは、森で暮らす“西の魔女”のもとで過ごすことに。西の魔女とはまいのママのママ、英国人である大好きなおばあちゃんから、「早寝早起き、食事をいっぱいとって、よく遊ぶ。そして、何でも自分で決めること」の大切さを教わる。まいは戸惑いながらも、料理、掃除、洗濯、庭づくり・・・と、毎日励んでいくが、実はその生活は、“魔女修行”の始まりだった――。 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

どうでもいい話ですが、萩尾望都の傑作、「トーマの心臓」もギムナジウムのお話です。好きだった人ならば、ぜったいこのケストナーの描く「飛ぶ教室」も好みだと思います。

 

 

トーマの心臓

萩尾望都 (著) 形式: Kindle版

冬の終わりのその朝、1人の少年が死んだ。トーマ・ヴェルナー。そして、ユーリに残された1通の手紙。「これがぼくの愛、これがぼくの心臓の音」。信仰の暗い淵でもがくユーリ、父とユーリへの想いを秘めるオスカー、トーマに生き写しの転入生エーリク……。透明な季節を過ごすギムナジウムの少年たちに投げかけられた愛と試練と恩籠。今もなお光彩を放ち続ける萩尾望都初期の大傑作。

 

 

 

児童書の復権を(note記事)

おすすめ児童書リスト(note記事)

 

子どもの本だな【広告】

空がレースにみえるとき 十五少年漂流記 ながい夏休み おたまじゃくしの 101ちゃん
ふしぎなたいこ ひみつの花園 水の子
スプーンおばさんのぼうけん 強くしなやかなこころを育てる! こども孫子の兵法 いちごばたけの ちいさなおばあさん

 

にほんブログ村 本ブログ 絵本・児童書へ
にほんブログ村


児童文学ランキング