~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

今日の一冊「ふしぎなオルガン」

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

ふしぎなオルガン

リヒャルト・レアンダー (著), 国松 孝二 (翻訳)

ドイツの外科医が戦地から故郷の子どもたちに書き送った、ふしぎで美しいおとぎ話。神のみこころにかなった花よめ花むこが教会に入るとひとりでに鳴りだすオルガンの話、ガラスの心臓を持ったおひめさまの話、コショウ菓子が焼けないおきさきと口琴のひけない王さまの話など、20編。どの物語も忘れがたい印象を残します。

 
岩波文庫の「ふしぎなオルガン」

どんなお話なのかな、とぱらぱらめくってみて、はっとしました。


子どもの頃魅せられて、何度も何度も読んだ赤本の「世界少年少女文学全集」

あの中に入っていたお話がいくつも入っています。

 

そうか、あの赤本のシリーズのあの巻は、リヒャルト・レアンダーだったのか。

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少年少女文学全集に入っていたのは五編でした。

 

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こうして読んでみても、この五編はピカイチのすばらしい作品で、選んだ人の眼は確かだ!と思いました。

 

「ガラスの心臓」も好きでしたが、わたしが特に大好きだったのは「沼の中のハイノ」です。

なかなか、一番最初に読んで好きだった翻訳というのはやっかいなもので、こだわりが出てしまいます。

岩波の翻訳、まだ読んでいない作品はとてもすばらしく読めたのですが…。
「沼の中のハイノ」だけは、こちらの訳の方が好みだったなあ…なんて思ってしまいます。

岩波の方は買うことも借りることもできるでしょうから、もはや絶版になって50年経過している「世界少年少女文学全集」の方を少しだけ引用がてら紹介させていただきます。

 

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絵がとても素敵でした。

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青い目の娘は、王子が来るのをいつも森の中で待っています。

 

歌がとても多くて、どれも素敵でした。
ハイノは両親、特にお母さまのたくらみで青い目の娘のことは忘れてしまいます。

「つむと、いちばんだいじなものを忘れてしまう毒の花」というのを、我慢できなくなって摘んでしまうのですが…。

何となく、「ほかの女性」をほのめかしているような感じがします。(勝手な推測です)

 

青い目の娘はハイノがその後旅に出て、鬼火の女王につかまったのを知って助けに出かけます。

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ずっと青い目の娘に寄り添うはとがいい味を出しています。

 

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ここは本当に名場面で、翻訳(余川文彦さんです)の妙が冴え渡り、魅せられて何度も何度も読み返した所です。

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鬼火の女王の黒い巻き毛がとけてかぶさる…。
妙に生々しくリアルで、いまだに記憶にはっきり残っています。

青い目の娘さんがハイノをどうやって助けたかは、ぜひ本編で確認していただき、そして、翻訳がいったいどういう風に違うのかというのも、ちょっと照らし合わせてみて頂くと、とても面白いと思います。

岩波少年文庫の国松孝二さんの訳もそれはそれはすばらしいものでした。

 


「ガラスの心臓を持った三人の姉妹」

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この少年少女文学全集の本、レアンダーの挿絵がたいそうきれいでした。

影絵のようなつくりで、シルエットがとても繊細です。
このようなところからしても、この本は本当によく出来ていたなあ、と思います。

 

「夢ぶなの木」

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一番おとなむきのお話ではないでしょうか。

ブナの木に本当に魔法の力があるのかどうかもわかりませんし、お嫁さんがなぜ怒ったのかもぜんぜんわかりませんでした。

ですが、何度も何度も読みました。

今になってわかるし、記憶にも残っているというのは不思議なことです。
子どもむけだから、大人むけだからと本は分けられないし、幅広く手を出してみるべきと思う作品です。

 

「ふしぎなオルガン」

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岩波文庫で、この「世界少年少女文学全集」に入っていない、レアンダ―の他の作品を読めたのは本当に嬉しいことでした。

印象に残ったいくつか、書き留めておきます。

 

「こがねちゃん」
おしゃまでいたずらな幼児の女の子があっちこっち出かけた挙句帰れなくなって眠くなって寝てしまい親は必死で探すというお話なのですが天使が助けてくれるというなんということはない全方向において優しいお話です。

子どもは宝物、こがねちゃんという名前がまた可愛いです。

 

「見えない王国」
ごく普通の人たちにとって、古い大きな木はコーヒーを沸かすための薪のもとにしか見えません。
星が綺麗に輝いていても、冷えるからじゃがいもが凍らなければいいということしか考えない。
この世の美しさに向ける心を描いています。

 

「錆びた騎士」
割と、フランスのオーノワ夫人あたりにありそうなお話です。

「コショウ菓子の焼けないおきさきと口琴のひけない王様の話」

王様とお妃様の話にしてはいますけど、完全に普通の家庭の夫婦の話です。
お互い似た者同士の王様とおきさきさま、喧嘩と仲直りが可愛いです。


「ゼップのよめえらび」

ゼップはお母さんの言に従い、「男の子の気を引くようなことを何もしてない娘」を選びます。
面白かったのは、お母さんが、慈善的なこと(貧乏な人にパンをやるだとか)をしている娘はよくない、と指摘したところでした。

見せ付けるようにやる慈善は、裏で見せられないようなことをやっている。 

 うわぁ…。

 

やらない偽善よりやる偽善とは言いますが、なんだかちょっと、ものすごく刺さることばでした。

 

「古いトランク」
少女の心を隠して持ち歩いているおじいさんなんて、なんだかちょっと面白いなと思いました。

 

「不幸鳥と幸福姫」
恋によって不幸を呼び寄せる青年は幸福を呼び寄せるようになり、笑顔だった姫は泣き暮らすようになる。
おもしろい対比でした。

 

「クリストフとベルベルとが、じぶんから望んでひっきりなしにゆきちがいになった話」
レアンダーは恋愛ものや、夫婦の関係を描いた作品が多いです。
おくさまにもきっとウケること間違いなしです。

 

 


その他

「悪魔が聖水の中に落ちた話」

「若返りの臼」

「カタカタコウノトリの話」

「魔法の指輪」

「子どもの話」

「小鳥の子」

「天の音楽」

「天国と地獄」

 

 

 

 

whichbook.hatenablog.com

 

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バルバルさん 秘密の花園〈上〉 クリスマス・キャロル
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