今日、ご紹介するのは絵本です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
目に見えないほど小さな魔女ピッキは、くさりにつながれた犬や、ひどい目にあっているクマや、まいごの男の子の耳の中に入りこんでささやきます…「くさりをちぎるのよ」「悲しまないで」と。そしてピッキは、人々を苦しめる悪い王さまと、対決することに…?オランダを代表する児童文学作家テレヘンによる昔話ふうの物語に、人気画家テルンクヴィストが絵を添えた、珠玉の大型絵本。オランダでもっとも優れた絵本に与えられる「金の絵筆賞」受賞作。「BOOK」データベースより
次にピッキが憑りついたのはクマです。
口輪をはめられて踊らされている年取ったクマなので、どちらかというと、このくびき断ち切って自由になったりして欲しい所です。
ピッキが入り込んで命令するので、クマは飼い主からバイオリンをひったくって演奏をはじめます。
そして、逆にクマ使いの男を踊らせるのです。
ピッキの力には誰も逆らえません。
このピッキ、別に、誰に対して悪意を持ってるわけでもないです。
どちらかというと無邪気です。
問題はこのピッキが去った後です。
イヌにもクマにも、本当にろくなことになりません。
確かにこれは魔女です。
災いをもたらすもの、厄災です。
クマは疲れ果て、むちで打たれるし、悲しそうな顔で、いったい何が起きたのかさっぱりわからないし、ひどいめにあった、と考えてます。
ここまで読んでいると…。
ピッキが入ったことによって起きる現象は、「キレる」に置き換えてもいいような気がしてきます。
感情、気持ちにまかせて暴走させてしまったら、いいことはないよね。
でもキレる方も我慢を強いられているよね、
というような感じです。た、たぶん…。
◇
次にピッキが入り込んだのは、泣いている迷子の男の子です!
ああ~。
これはヤバい。
イヌ、クマと続いて人となりました。
この後の展開は何だか、確かに見ようによっては悪いことではない…ですが、なんとなく恐ろしい感じがします。
妹子が冒頭で「王さまかわいそう」と言ったとおりです。
この王さま、すんごい悪い王さまです。
妹子に同情される謂れはないし、すべて自業自得なのです。
ただ、王さまに降りかかった結果がすごく残酷です。
ピッキが男の子になりかわって、国中の囚人を釈放しろ(一応、「悪いことをしていないものは」という注釈付きです)と言えば、それに逆らえる者は誰もいません。
王様を引き出せ!と言えば、群衆たちが王さまを引きずり出してきます。
(もう一度言いますが、一応、ものすごく悪い王様でそもそも憎まれていた、ということになってます)
ピッキは王様を群衆と男の子の前で、謝罪させますけれど、ここも何ともいえないすごい絵で、すごい雰囲気です。
鋤や鍬を持った真っ黒な群集にぐるっと取り囲まれ、血を流してひざまずいている王さま。
その前に立つ、男の子の周辺の空白。
そして、王様は謝りますけど、何を謝ってるのか理解できません。
口先だけで謝ります。
それは恐れからです。
いままでだれのことも、一瞬たりとも、おそれたことがなかった王さまが、この男の子のことは、こわくてたまらなかったのです。
男の子は不思議な魔女の力によって、「権力」を握りました。
しかもその力を得たのが、まだ未熟な幼い子供です。
王様に次々に罰を下す、その「考え」とは男の子のものではなく、ピッキのものにすぎず、単なるよりしろ、魔力を使う道具になっているだけのように見えます。
しかし、潜在的に、犬も、クマも、男の子に象徴される一般人の群集も、ピッキが命じてやらせたこと、「考え」「気持ち」を開放したいという潜在意識は持っていたように思えます。
ピッキはただ、力を与えた。
結果、悪い王様は血を流して地を這いずりながら、どこまでも歩いていき、草むらのどこかに消えてしまいます。
永遠に這いずることになるような…?
呪いにも似た民の怨嗟を感じます。
最後の方に関しては何ともはや…。
読後感が悪くはないのですが全体的に良いとも言えません。
しかしこれは、絵本賞をもらうはずです。
あらゆる歴史を紐解いた時、このようなことが現実に起きているのを大人である私たちは知っているからです。
子供達もいつか大人になった時に歴史を学び、ニュースを見て、あっ、これはあれのことだ、と思う時があるかもしれません。
昔話風のこの恐ろしい物語の中で、傲慢さに対して、自分勝手さに対してのいましめを刻んで欲しいなと思います。
◇
実は、「ピッキ」と一緒に、「ニワトリ号一番乗り」という分厚い福音館の本を借りていました。
この二冊、どちらも、図書館にいちど返してしまおうかな~と思っていた本です。
もし読みきかせする子どもたちのことがなくて、このブログのこともなくて(笑)自分が大人としてだけ、自分の考えでだけで読んでいたら、本当にそのまま返してしまっていたかもしれません。
児童書は子どものためのもの。
子どもに届けるためのもの。
そこが大原則で基本です。
児童書も絵本も、本当に奥深いです。
子どもの本だな【広告】
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