「本好きは作るもの」読解力を身に付ける~珠玉の児童書~

「本好きは作るもの」~珠玉の児童書~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

大人が読む児童書「ニワトリ号一番のり」3 ~どんどん引き込まれる

 

大人が読む児童書。
積ん読・解消計画★児童書編」です。


この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

ニワトリ号一番のり
J・メイスフィールド (著), 寺島 龍一 (イラスト), 木島 平治郎 (翻訳)

19世紀後半、中国からロンドンまでの広大な大洋上を、先着をきそってシナ茶を運ぶ帆船の物語。潮のかおり、帆船の美しさ、海の男たちの魂を見事に描き切った作品です。

 

大人が読む児童書「ニワトリ号一番のり」1 ~読み始めるまでのハードル -

大人が読む児童書「ニワトリ号一番のり」2 ~序盤を切り抜ける - 

 

 

 

このイヤな人っぽい船長、話をしてるとなおイヤな感じです。

 

経歴について会話をすると見せかけて、変な侮辱をしてきます。
(しかしクルーザーの人となり、船長のダメさ、船の状況をこの会話一つですべて説明してしまう…上手いです!)

 

これまでどの船に乗っていたのか→「機関を扱ってたんでしょ」という侮辱をするのですが、これがどうして侮辱とわかったかというと、ランサムを読んでたからでした。

 

帆船から蒸気船へちょうど変化していく時代です。


それまで帆船というのは風を読み、帆を操る、それはもう紀元前からコツコツと人類が積み上げてきた特殊スキルであったはずで、蒸気船の動力(機関)というのは、その前提を打ち壊しました。

風だけに頼らずに船を動かせるようになったので、格段に安全性は向上し、機動力も増したはずですが、操帆技術に誇りを持っている海の男たちは、この機関に対して心理的抵抗はかなりのものだったようです。

 

このイヤミな船長(27歳エリート)は、そこをひっかけて「君は今までどこにいたの?機関なんかやってる船で石炭でもいじってたんじゃないの?あんなきたならしい」的な感じを、この5倍ぐらいの長さでやらかします。
主人公のクルーザー(22歳好青年)は、公平で現実的な視点を持った人のようです。

 

「若い者は汽船のほうがすきですよ、船長。汽船は新しいものです。そして新しい人間は、そのほうへひかれます」

 

何か、現代のいろいろにも、刺さるものがあるな~~。
こういう、エジプトの壁画にも「最近の若い者は」と書かれていたというエピソードのように、ひと昔まえの本を読んでいても、現代に通じるひとことを見つけたときにすごく嬉しくなります。

 

 

船長、機関への偏見の次は、中国の福州に対する偏見を出してきました。


クルーザーは、中国の福州で大企業を営んでいるスラッド氏の推薦でこの「ブラックガントレット号」に乗ったらしいのです。(経営者なのか重役なのかはちょっとわかりません)

 

なんでそんな偉い人に推薦されてんの?
何か便宜でもはかったか秘密でも握ったんじゃないの?
とかなんとか、ほのめかしたいらしいのですが…。

 

クルーザー、何を言いたいのかわからないので、
「推薦状書いてくれたんだから理由も説明も書いてあったでしょう」
「書いてなかった」
「説明するように頼まなかったんですか」
と、しごく真っ当な質問返しをするのですが、これが船長にグサッと突き刺さります。

 

なぜなら、この偉そうなエリート船長も、スラッドさんには頭が上がらなくて自尊心が傷付いてるという事実を思い知らせたからです。
いいカウンターパンチでした。

クルーザーにそんなつもりはなかったのですが。

 

そばで水夫たちが聞き耳立ててますが、こっちも聞き耳立ててこっそり聞いてる気分です。

 

会社で、こういうイヤミの応酬、やりあいが始まり、それを下を向いてキーボード打ってるふりしながら聞き耳を立てるシチュエーションというのは非常によくあって…めっちゃわかる!!とこぶしを握ってしまいます。

 

あれ…?
これ…児童書だよね??

 

しかし、この船長との会話バトルで、がぜん面白くなったのは確かです。

 

船長「(意訳)中国の福州みたいな所、最悪で汚くて退屈だろうね~。何もすることないだろうね。男女のつつしみのない交際とか以外はね~。イギリスから来た若い女性二人が~。めいとか言ってるけど~」

 

こっ…これは…???

 

これは…スラッド氏は本国(イギリス)から愛人?を連れて行ってるし、クルーザーがそれを知ってるし、何か関係してるだろ?とほのめかしてるのかな!?

 

ゲスい!!
性格悪い上にゲス!!何こいつ!
最悪!!

 

これはクルーザー(22歳イケメン)が気の毒です。
この女性は、本当にスラッド氏の姪ごさんとそのお友達だったらしく、クルーザーも知り合いだったようです。

 

船長、ゲスい上にしかもしつっこい!
まだ言うか!!

 

クルーザーはまだ船尾楼の手すりの所に立って、帆の下のすみを風上へ引っ張っておく滑車が一つ船長の頭の上へ落ちてきたら、じゅうぶんに首の根をへし折るくらいの重さはあるだろうにと、考えたりしていた。今度は、船長はすっかりおだやかに、人ざわりがよくなっていた。

 

うっかり笑ってしまいました。

 

別に罵倒されるわけじゃなく普通の会話に見えるけど、皮肉と侮辱を交えてあることないこと当り散らされる。


こちらはすっかり気分が悪くなってストレスのやり場がないのに、向こうはもうすっきりして人当たりがよくなってる。
それがさらにムカつく。

 

職場あるあるです。

 

これは…児童書…?

 

 

ここで、突然のゲリラ豪雨(スコール)に助けられました。

 

すごいのが、クルーザー、22歳の若輩者でありながら、30年ぐらキャリアのある者でも出来ないような、冷静な分析をしているところです。

 

いったい何にとりつかれて、あの人はあんなもののいい方をしたのだろう。だが、心の底では、クルーザーはこんないざこざの原因を、ちゃんと知っていた。

船長は二か月このかた、適当に休んだことがなくて、過度の緊張や、引き続く無風カームの昼や、夜の押さえつけられるような感じのために、気ちがいのようになっているのだ。

しかし、感情を害した人が気ちがいなんだといってみても、害されたほうの者には、まるでなぐさめにはならない。

少なくともう一月この気ちがいとつきあっていかなければならないだろうし、風があいかわらず吹かなかったり、逆風を受けたりすると、気ちがいはいよいよひどくなるばかりだろう。

 

(多少、最近は使わない単語が使われていますが、古い訳本だしとてもよい文章なのでお許しください)

 

つまり船長、チャイナクリッパーの競争に勝ちたいあまり、最近まともに寝ていないのです。


睡眠をきちんと取り、休息をすることの大切さを守らずに、風一つ、天候一つ、ほかの船の影ひとつにピリピリするという生活のずっと続けているので、神経がまいってしまっている。

 

…と、クルーザーは分析しています。

 

結果、八つ当たりをしているのですが、これは会社勤めの人間全員にささるのではないでしょうか。
(八つ当たりする方もされる方も)

 

これはすごいわ。

 

上司にムカついたとき、いわれのない侮辱をされた時は、(まあ多くの人は)直接反論したりガチンコで喧嘩なんてできません。


何らかの方法で自分のストレスに折り合いをつけるしかなく、そういう時にこの大きな視点からの冷静な分析は、役に立つかもしれない。
これ、どんな自己啓発本を読むより、働く上で役に立つのではないだろうか。

 

「会社での人間関係にイライラしないために」
「神経質な上司との付き合い方」
「会社づとめのための人間観察と分析力」

 

しかし、感情を害した人が気ちがいなんだといってみても、害されたほうの者には、まるでなぐさめにはならない。

 

わかる~~~!!!

 

ところで、このクルーザーが詰められた経歴の中に、ニワトリ号のマイザドン船長のことが出てくるのですが、あとで序盤のこの二人のやり取りはかなり重要なものであったことが分かりました。
それに、この頭のおかしい船長の「航海と競争とで頭がおかしくなりそうな状況」も実に重要なフラグでした。

 

 

ここからはすごいです。
右肩上がりで面白くなっていき、もう面白さしかないです。

 

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whichbook.hatenablog.com

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

The Bird of Dawning or The Fortune of the Sea
John Masefield (著), Philip W. Errington (序論)

 

  

 

 

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