今日の一冊「かにむかし」
今日、ご紹介するのは絵本です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
有名な日本民話「さるかに合戦」が木下順二氏の新解釈により、ユニークな絵本になりました。方言の味わいを生かしたリズミカルな再話に、清水崑氏ののびやかな墨の絵がぴったりです。
軽い気持ちで読み聞かせに使おうとすると、大変な目にあいます。
相当に長いお話です。
昔話の基本中の基本、さるかに合戦のお話なのですが、CMの三太郎にも入ってませんし、割とすたれすたれかけているものの一つではないでしょうか。
知らない子がかなり多いです。
木下順二さんのしっかりとしたストーリー仕立てがありますが、有名な「夕鶴」ほどアレンジがなくて、本当に昔話、という感じです。
方言を交えていますけど、読みにくくはありません。
歌うような、なめらかでリズムを取った、まさに夜に古い物語を聞かせるのに最適な文章です。
読んでいる方も気持ちがいいです。
かにはせっかく丹精こめて育てた柿を取ることが出来ません。
はよう、めをだせ、かきのたね──
本当に懐かしい響きです。
さるに取ってくれるように頼むのですが、さるはするする登って行って、自分が好きなだけ食うだけで知らん顔しています。
このとき、かにが怒って「よこさんか、おおい」といったとき、猿は上から青い柿を投げつけてかには死んでしまうわけですが、この時のさるの無愛想な憎たらしさといったらありません。
それまで聞えないような顔をしておきながら、返事と言えば、「なんだ、よし、ほれ」とだけ。
無愛想に、無神経に、適当に、しかも青い重たいかきを投げつける。
何とも言えない底意地の悪さと不親切を感じます。
木に登ることができるさるは、できる者の持つ、上から目線の意地悪な感じ、能動的にバカにしているというよりも、無視、相手にしない。
挙句の果てにぞんざいに扱うという、最悪さです。
絵が何とも牧歌的で可愛いので、この憎たらしさが非常にむかつきます。
このむかつきがあってこそ、結局は散々な目にあって最期は石臼につぶされてしまうという所にもすっきり感が出るわけです。
さるがまったく可哀想と思わないところが良いです。
それにしても、あだうちのためにかにの子どもたちがわしゃわしゃ歩いていくところ、きびだんごを腰につけているのですが、みんな小さなお口があるみたいで可愛いです。
そして参加していくに従ってきびだんごが減っていくところも、絵として芸が細かいです。
仇討ちに参加するメンバーで、特筆すべきはやっぱり
うしのふん
です。
絵も、いわゆるうんこ巻きのうんこではなく(汚くてすみません)
べちゃっとした黒いしみのような…まさに、もうどうにもこうにも、うしのふんとしか呼びようのないしろものです。
リアルなうんこがあだ討ちに参加するという、なかなかない設定です。
強烈に記憶に残ります。
何だか匂ってきそうな紹介の終わりになってしまいました。
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