~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

大人が読む児童書「魔女ファミリー」 2

 

大人が読む児童書。
「再読★児童書編」です。


この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

魔女ファミリー

エレナー・エスティス (著), エドワード・アーディゾーニ (イラスト), 井上 富雄 (翻訳)

7歳の女の子エイミーが魔女の絵を描きながら「いけ、ガラス山へ!」と命令すると、悪名高い魔女ばあさんが本当に追放された。空想と現実がたくみに交錯する長編ファンタジーの新訳。

 

大人が読む児童書「魔女ファミリー」 1  -

 

 

怒りにまかせて魔女ばあさんを追放したエイミーですが、多少落ち着いて来ると、ハロウィンに魔女がいないのはまずい、と思いつきました。

アンガーマネジメントで深呼吸でもしたのかもしれません。

 

エイミーの中ではどうやら、「魔女ばあさん一人がいない=すべての魔女がいないも同然」らしいです。
他の魔女が小物すぎるのか、それとも魔女ばあさんが凄すぎるのか。
たぶん後者です。

 

旧訳では、ハロウィンは「万聖節」と訳されていました。
新訳ではもちろん、「ハロウィン」です。
「魔女のいないハロウィンはサンタのいないクリスマスのようなもの」

魔女ばあさんが一年中いい魔女でいたら、ハロウィンで下界に降りて来てもいい。
まるで、いい子でいたらサンタさんが…という発想にそっくりです。

 

それを子どもたちが決定するところにおかしみがあります。

 

 

エイミー、「追放」と「征服」をあわせて「追服」ということばを作ります。
新しい言葉をご披露して何度も言ってみる、エイミーの得意げなドヤ顔が可愛いです。
この言葉遊びの面白さがふんだんに入っているところもこの本の魅力です!

 

この冒頭で、ほとんど動かないのですが、超・重要登場人物(?)…。
人物?人物…。が、登場します。

 

庭でじっとしている、年取った大きなマルハナバチです。
エイミーのおとうさんがマルチと名付け、そう呼ばれてます。
このハチは大変、大変、大変重要人物?です!
テストに出ます。

 

 

こうして威勢よく、魔女ばあさんを追放して元気に話しているように見えて、エイミーは実はけっこう、怖がっています。

 

ふとお日さまが黒い雲に隠れ、遠くでかみなりが鳴ります…。
魔女ばあさんが今、ガラス山に向かっているのかもしれない!

 

何気なく、おとなりさんのボダイジュによじのぼったりしますが、影に入れば見つからないだろうとの判断からです。
「ふくしゅう」されて魔法をかけられたら大変だからです。

 

「ゆうかん」な割に内心けっこうビビってるのですが、このために、「魔女ばあさんがいかにすごいか」というのも強調されて、けっこうリアルに魔女ばあさん追放するなんてこれはまじでヤバいんじゃね?という気持ちに読んでいるこちらもなってきます。

 

 

エイミーは魔女ばあさんに事情を説明した命令書兼ご挨拶のお手紙を書くことにします。
(クラリッサはまったく手紙が好きではなく、おばあちゃんにもなかなか手紙を書こうとしないあたり、あるあるです。私もこのタイプです…)

 

いつの間にか、庭からマルハナバチのマルチがいなくなっています…。
何気ない描写ですが、重要な布石です!
魔女ばあさんと一緒に、行ってしまったのです。

 

エイミーは、魔女ばあさんにあてて手紙をかきはじめました。エイミーは、わからないことばがあれば、かってにつくってかきました。

 

ここで、魔女が「さかさまことば」が好きだということや、「書き取り競争」が苦手などということもさらっと語られます。
あとで大騒ぎの魔女を含めての書き取り競争があります。

 

どうやって手紙を届けるのか?
手紙を窓枠に置くと、ベニスズメが一羽飛んできて、手紙をくわえて飛び去っていきます。
素敵な描写です!

 

からだがきらきらかがやくまっかなベニスズメが一わ、みごとなつばさに冬の日をあびてとんできて、窓べにとまりました。

 

このもりだくさんの一章、最後にエイミーが疲れてベッドに寝転ぶと、クラリッサがレコードをかけはじめます。
レコードだー!!
今の子たちは知らないだろうな~。
しかもこの題名が可愛いです。
「ウィンドーのわんちゃんはいくら?」というのです。

 

スパゲティの「つるつる」もそうですが、この「ウィンドーのわんちゃんはいくら?」という字の表現がかわいくて、すごく記憶に残っていました。

 

今回、この記事を書くにあたって、英語版を確認してみたら、
How much is that Doggie in the Window?
でした。

 

YouTubeで確認してみたら…ありましたー!!
いや~。いい時代になったものです。
レトロ感あふれる曲です。時代ですね。

www.youtube.com

 

 

 

2章、場面は魔女ばあさんターンに切り替わります。

 

魔女ばあさん、エイミーの命令によって、本当に追放されてしまってます!

 

一章までだと、どことなく、この二人の女の子たちの絵の話なのか、想像なのか、それにしてはリアルだな、などと感じていたものが、一気に現実となります。

 

魔女ばあさん、ガラス山で怒ってぷんぷんしています。

 

「ちぇ、ちぇ、ちぇ、まったくひどい場所だぞえ!おてんとうさまさえ、ガラスでぎらぎらしちまって。イバラのしげみも、野バラのしげみもありゃしない。あばれまわりたい荒れ野もなけりゃあ、沼もない!」

 

ここまでの流れがすばらしくなめらかで自然です。
えっ?なんで?と思うような余地なく、すうっと物語に入っていきます。

 

どこを見てもぎらぎらしたガラスばかりのガラス山、魔女ばあさんと一緒にいるのは…ねこです!
まあ、お約束です。
ほうきとねこは、魔女にぜったいのつきものです。

 

このお話では、魔法使いや魔女が引退するとねこになるということになってます。
(ちなみに、ちょびっとですがしゃべります)

 

絵の中のお話なのか、空想が広がっているだけなのか、その境目は曖昧です。

 

こんな事態に(なぜか)なってしまい、ご機嫌ななめな魔女ばあさんに、ベニスズメが手紙を届けてくれます。
むろん、エイミーからの手紙でした。

 

魔女ばあさん、うっかり喜びます。
こんなときは、敵からの手紙でも嬉しいものみたいです。

 

エイミーからの手紙が出だしからとんでもなくひどいです。

 

いじわるで、年よりで、こんじょうまがりのまじょばあさんへ

 

いや~、こりゃひどい。
ちなみに一通目はすでに一章で描かれてますけど、その時は

 

しんあいなる、たいへん、たいへんお年よりのまじょばあさんへ

 

でした。

 

 

 

 

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

The Witch Family
Kindle版 Eleanor Estes (著), Edward Ardizzone (イラスト)

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

百まいのドレス
エレナ エスティス (著), ルイス スロボドキン (イラスト), 石井 桃子

「百まいのドレス」を持っていると言い張る、まずしいポーランド移民の女の子ワンダ。人気者で活発なペギーが先頭に立って、みんなでワンダをからかいます。ペギーの親友マデラインは、よくないことだと感じながら、だまって見ていました…。どんなところでも、どんな人にも起こりうる差別の問題を、むずかしい言葉を使わずにみごとに描いた、アメリカの名作。ロングセラー『百まいのきもの』が50年ぶりに生まれかわりました。(「BOOK」データベースより)

 

 

 

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