今日の一冊 氷室冴子の「落窪物語 (少年少女古典文学館)」
今日、ご紹介するのは児童書です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
『落窪物語』は、早くに母を失った姫君が、継母にいじめられ、苦労しながらもやがてすばらしい貴公子とめぐりあい、幸せを得る物語である。このストーリーの基本的なパターンはシンデレラに代表されるが、古来、世界各地で作られ、今に語り継がれている。平安時代に書かれたこの物語も、みやびな恋物語というより、生身の人間の喜怒哀楽を興味深く描いた大衆文学として読み継がれ、語り継がれてきたロングセラー小説の1つである。
さてそろそろ、古典も読まないとねー。
というわけで、図書館の「少年少女古典文学館」の棚に移動しました。
ここも、ひとけが少ないエリアです。
福音館古典童話シリーズや、灰色のランサム・サーガと一緒に
「分厚い本エリア」
という感じで、そっけなく鎮座しています。
妹子も相変わらず、てんで面白くなさそうな顔をしています。
ほんとにこの子は、自分からガツガツ読む本好きちゃんではないのです。
いつも「読まされてます~」というふくれっ面で読み始めます。
嫌がるのを無理に読ませることはないわ…。
なんて言うと思うかー!!!!
「これにしなさい!!」
強引に押し付けました。
この星の下に生まれたことを不運と思うがよい。
◇
家に帰って、「勉強するのがいいか、本を読むのがいいか」と迫ると、黙って本をもってきました。
常々、気が乗らない時には、選択肢にすると、とりあえずやってくれます。
「ごはんですよ!!」
「…」
「妹子!寝ちゃったの?」
たいてい、寝室で読んでます。
「妹子!ごはん!」
「やめられないよ~!やだーー!」
半泣きで叫びながらそれでもまだ読んでます。器用だな。
「これ面白すぎるよー!!!」
だから言ったでしょ!
氷室冴子だぞ?面白くないわけがないだろ!!(ドヤァ)
「何て素敵なジャパネスク」をはじめとした、ラノベのはしり、当時はコバルト文庫と呼ばれていたジュニア小説の看板作家さんです。
(もうお亡くなりになってしまいましたが…)
今の母親世代で、ジュニア小説を読んでいた人なら、懐かしい~!!と絶対なるはずです。
氷室冴子さんの本は、こちらでも言及しました。
こうして名前を見ただけで手に取りたくなる作家のラインナップだらけです。
◇
落窪物語は、要はシンデレラなので、とても受け入れられやすいお話です。
下手をすると、ラブストーリーを拒んで月に帰っちゃうかぐや姫よりも、すんなり心に入ります。
あとがきで氷室冴子さん、悪役をほめちぎっています。
私もよく悪役をほめちぎるので、すごく共感しましたし、さすがは氷室冴子さん!という気持ちになりました。
女性のもとに通う男子の、苦労したりみっともない姿をさらしたり、ユーモラスな大騒動になるあたりも、他にはない生き生きとしたリアルな描写で面白い!と書かれています。
さすがは、平安文学に造形の深い人の書いたあとがきだ…と思いながら、ラストの方からパラパラめくっていると、こんな文章が飛び込んできました。
シンデレラ=落窪の継母、悪役のきたのかたの悔し紛れの捨て台詞です。
夜もふけて、母屋をその北の方にゆずり、対の屋にうつろうとするおちくぼ姫に、北の方は、ふと声をかけた。
「あなたも夫をもつ身になって、いずれ子ってばわかるでしょうが、自分の腹を痛めた子はかわいいものですよ。中将さまはそんなことはないでしょうが、ふいに中将さまのお子を、母君が亡くなったからといって引き取らなければならなくなって、その子が自分の子よりも美しくて、賢しげなのを見たら、胸が焼ける思いもするかもしれませんよ。にくむなといったって、にくらしいのが人情よ。でもいまとなれば、わたしもわるかったんでしょうよ、たぶんね。」
酒がはいったせいか、すこしほおを赤らめていう、そのことばのどこにも、やはり、こりたというひびきはないのである。
うわぁ…。
ぐっさり、刺さったわ…。
すごい、この北の方のこの台詞。
おちくぼは、その言葉を否定できないとして受け止める所でこのお話は終わっています。
(後半はかなり端折ったみたいです)
こんな親心が、やっぱり児童会やらPTAやらあれこれの活動やらで、親たちが果てしなくヒートアップする一つの遠因でもあると思います。
我が子!一・筋!と心を入れすぎるのもどこかでセーブしなければならないもの。
どや顔でどうだ面白かろうと差し出した本に、自分がカウンターパンチをくらった気分でした。
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