大人が読む児童書「ながいながいペンギンの話」 2 ペンギンの赤ちゃんとにんげんの交流
大人が読む児童書。
「再読★児童書編」です。
この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
こわいものしらずのおにいさんのルルと、おくびょうだけと心のやさしいおとうとのキキが、力をあわせてきけんをのりこえ、たくましくそだっていきます。南極に生まれたふたごのペンギンの物語。(「BOOK」データベースより)
大人が読む児童書「ながいながいペンギンの話」 1 くしゃみくんとさむがりやのちびくん -
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大人が読む児童書「ながいながいペンギンの話」 1 くしゃみくんとさむがりやのちびくん -
p>大カモメから逃げてたどりついた先で、ルルはおばあさんペンギンに会います。
おばあさんは、「にんげん」について色々と話してくれました。
探検隊の人とのあたたかな交流と、ペンギンを油の原料として狩猟する猟師のおそろしさの二つです。 <>
>ペンギンオイルの資源として乱獲されていた過去
こんなことがあったとは…。
普通にペンギンを愛でているだけでは、このページにはなかなかたどりつけませんが、今回読み直したことで検索をして、詳しく知ることが出来、とても良かったと思います。
えさとりに出かけていたおとうさんとおかあさん、たくさんのペンギンたちの「にんげん」に対する議論に巻き込まれて、足止めをくらっていました。
やはり安保闘争の時代に近いので、この、あちこちで「どう思いますかっ!?」と議論をたたかわせているペンギンたちの姿が、そういう所に重なって見えてなかなか面白いです。
◇
家に帰ろうとして、おばあさんペンギンのすみかから出たルルですが、歩いているうちに道がわからなくなってしまいます。
さらにまいごになったルルは、雪の原っぱでひとり、ぱったりと倒れてしまいました。
ああ~。
そのとき、向こうから二本足の不思議なペンギンが歩いてきて…。
ルルを助けてくれました。
ところどころの絵が本当にすてきです。
このときの絵がいかにも死にそうで…こんな、みじめにつぶれているヒナを見たら、誰もが拾い上げてしまいそうなリアルさがあります。
しらないペンギンは、むねのポケットのチャックをあけると、ふるえているルルを、そのなかへ入れてくれました。ポケットのなかは、あたたかくて、オキアミのにおいがしていました。そして、ルルは、すっかりあんしんして、そのなかで、ねむってしまいました。
ルルを拾って助けてくれたのは、クジラとりの船の猟師さんでした。
こっちはにんげんとして読んでますから、この優しい猟師さんとルルの交流のかわいさはとても心あたたまるところです。
しかしです…。
すごく「美味しそうなにおい」として、「オキアミのにおい」がよく出て来るのですけど…。
うちのだんなは釣りをするのでよく釣りえさとしてオキアミを買ってきてますし、たまには釣りに付き合ったりもしますけど…。
正直、オキアミの匂いとは、何というか…それほど…すごくいい匂いとは…。
う~~~~ん。
(歯切れが悪い)
慣れれば、ああ海の匂いだな~と思ったりもするのですけど…気分が悪い時にはちょっと避けた方がいいような…。
子供ははっきりいって正直なので
「くさい」
とズバリ言っちゃうのですけど、そういう時に
「これがあのオキアミの匂いなんだよ!!」
と主張すると、
「えー?まじで?くさ…」
と言いながらも、少しだけ、ただクサイと思っているのとは違う感情も生まれてきてくれます。たぶん。
せっかくのいいシーンなのにオキアミの匂いの話ばかりでは何なので先を続けます。
◇
ペンギンのおとうさんおかあさんたちは、自分たちがにんげんについて議論している間に、ルルがさらわれてしまったことにきがつきました。
ペンギンたちは、みんな総出でルルの名前を呼びながらそこらじゅうを探します。
この様子は、行方不明になった子を探す捜索隊の人々のすがた、そのまんまです。
ちょっと涙をさそわれます。
ここからが第一話のクライマックスになるのですが、非常にダイナミックな動きのある筋立てなので、見事という他はなく、それはそれは固唾をのんで見守ることとなります。
◇
にんげんの足跡と、ルルのふわふわの毛が落ちている、その向こうに捕鯨船が行くのを見たペンギンたち…。
群れをなして、捕鯨船に襲い掛かります!
海も真っ黒になり、甲板もうずめるほどのペンギンの群れです。
(もちろんデフォルメもあるでしょうけど、わりとちいさめの船です)
妹子も、兄助が小さい頃も、とにかくこのシーンの絵が大好きで、細部まで仔細に観察してます。
鼻をぎゅっと噛まれている人がおり、海に突き落とされそうな人がいて、船長っぽい人の頭の上にペンギンがダイブしていたり、とにかく本当に面白いです。
左中央部に、ルルをつれていったもりうちのセイさんらしき人がいて、ルルを抱え上げて困った顔をしています。
実際、話の中ではポケットの中にいることになっているので、多少の違いはありますが、この文字がずらーっと並んだ中に見開きではさまれた絵が、非常なインパクトと緊張緩和をもたらしてくれます。
目をぎらぎらさせて「ルルをかえせ!」と迫るペンギンたちのすごさは、親の愛だなあ~と思います。
◇
こんなにまでしてペンギンたちが助けに来たというのに…。
ルルはぜんぜん、帰りたがりません。
まあ、子どもなんてこんなもんです。
この離れがたいセイさんとルルの別れが、ほんとうにかわいいです。
いやあ、さぞかし可愛くて手放しがたいだろうなあ。
なついている様子もかわいいです。
すべてがひたすら可愛くて切ないです。
セイさん、
「ぼうや、かえんな」
と言ってうながし、ルルの足に、青い毛糸をつけてくれました。
◇
こんなに古いお話なのですけど、ぜんぜん普通に今の子どもたちにもいけるのは、極限まで平易なことばでわかりやすく書かれている子どもの本ならではです。
先日ご紹介した小川未明のなどは、やはり「おどろいたのであります」とか「でありました」などという表現もあって、若干古臭い言葉づかいもなくはないです。
(そこが独特の味わい深さでもあるのですが)
石井桃子さん、いぬいとみこさん、松谷みよ子さんなどの昭和期児童文学黄金期の作者さんがたは、余分な単語を使わず、シンプルでわかりやすくありながら、余韻があり、なおかつストーリー性も大切にしているという、そのできばえは芸術的なほどです!
つづきます。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
知りたがり屋のムーシカと、いたずらっ子のミーシカは北極グマのふたごのきょうだい。母さんグマが目を離したすきに雪の穴を飛び出したふたりは、たちまちまいごになってしまいます。(「MARC」データベースより)
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