大人が読む児童書「ながいながいペンギンの話」 3 読了 3話から成るペンギンのぼうや成長物語
大人が読む児童書。
「再読★児童書編」です。
この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
こわいものしらずのおにいさんのルルと、おくびょうだけと心のやさしいおとうとのキキが、力をあわせてきけんをのりこえ、たくましくそだっていきます。南極に生まれたふたごのペンギンの物語。(「BOOK」データベースより)
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この「ながいながいペンギンの話」は3部構成仕立てになっています。
ペンギンたちが捕鯨船を猛追して圧迫面接を行った結果、ルルがもどってきたところまでが第一部です。
このお話、主にこの元気なお兄ちゃんのルルが主人公です。
しかし、このおとなしくて優しいキキがまた可愛いんです!
やんちゃなルルは、相変わらずの行動力で散々、やらかします。
正直、まだ序の口です。
皇帝ペンギンの島へ行き、シャチをやっつけ、牢屋に入って、逃亡して、とえらく忙しいです。
まだ大人ペンギンにもなっていないのに、並の冒険よりか、よほどすごい体験をしています。
◇
当時は何気なく読んでいましたが、今になってみれば、幼保~小学校高学年まで、という、ものすごく幅広くおすすめできる、すごい本です。
ひらがながほとんどなので、幼保のお子さんにもぜんぜん大丈夫ですが、「ながいながい」と付けたのは、読んでいる子どもに「まだ?」「なが~い」と言われてしまうかもしれないと考えてのことだろうかと思いました。
最後にある、いぬいとみこさんの後書きがきがとても興味深いです。
カレル・チャペックの「長い長いお医者さんの話」が好きでこの話を書いたと書かれています。
私も「長い長いお医者さんの話」は大好きなのだけど、いったい何年に訳されているのだろう?
Wikiによると、
長い長いお医者さんの話チャペック童話集(中野好夫訳、岩波書店、1952年)
だそうです。
1952年(昭和27年) チャペック 長い長いお医者さんの話(中野好夫訳)
1957年(昭和32年) ながいながいペンギンの話 初版発行
1960年(昭和35年) いったん絶版に。
1963年(昭和38年) ハードカバーとして再版
私が持っているのは、1977年(昭和52年)62刷のものです。
そもそもが、そこまで行く前に既に販売されているのですから…。
ものすごい重版出来です。
しかも、いまだに本屋さんに並んでいます。
◇
あとがきを追っていくと、思いがけない記述がありました。
ちょうど一九五三~五四年ごろ、日本の不毛な幼年文学の世界にあたらしい生命をみつけだしたいと、必死になっていた自分たちのすがたと、雪あらしに耐えて氷の原っぱに立っているペンギンのすがたとが、何か切りはなせない感じがして、手を加える気もちになれないのです。
幼い子どもは、注意力のつづかない──つまり長い話になど興味をもちつづけることのできない幼稚な存在とみられて、原稿用紙二~三枚のたわいもない幼年童話の横行がゆるされ、いっぽう「文学的」「芸術的」という名のもとに大人の感傷に裏うちされた悲哀のこい「幼年童話」が大人たちから高く評価されていたあの時期に、そうしたものを否定して、行動的な主人公が活動する「たのしくて長い幼年文学」を書くことができるか否かということは、わたしには大きな問題でした。
そんな熱い思いを抱えて出来上がった本であったのか、とびっくりしました。
いちど絶版になる前も、「おさない人で本を読む人が少なかった」と書かれています。
二年ほどかかって、ペンギンの話は完結(一九五六年二月)し、福光えみ子さん、福地トシさんのそれぞれの保育園で、幼い人たちの鑑賞にじゅうぶん耐えたと知らされたときのよろこびは、わすれられません。
そうなんですよ!
幼保世代の子どもたちに向いている作品なんですこれは!
そして、ぜんぜんいけると思います!!
そりゃあ、読むとなると子どもによりますけど、読み聞かせてあげる分にはぜんぜんいけると思います!!
今また、「おさない人で本を読むひとが少ない」時代が来ているような気がします。
そして、ここに書かれている「大人の感傷に裏打ちされた悲哀のこい『幼年童話』」とは…。
現代の幼年向けの本を描こうとしている人にとっても、とても注意すべきポイントなのかもしれません。
いぬいとみこさんの目は、徹底的に子どもたちだけに向いていて、ぶれることがありません。
このお話の完成度の高さとともに、その厳しいプロフェッショナルの姿勢が、この名作を生み出したのだろうなあと、そんな風に思いました。
◇
まあともかく、このあとがきはどこをとっても興味深く、またとても楽しいです。
このお話には、そこかしこに「ペンギン語」が出て来るのですが、基本は
ケーオッ!
ケケ、ケオ、ケーオ
というようなことばです。
小学生の子どもたちでこの本を愛読している子たちに、質問を受けたそうです
「どこでペンギンのことばをおぼえたのですか?」
(笑)
その質問に対して、いぬいとみこさんはこんな風に答えています。
ペンギンのことばについていえば、わたしはわたしのお話の中のルルやキキたちのことばは、よくわかるのです。もしあなたが犬を飼ったことがあるひとなら、そしてその犬がとてもすきなら、なぜわたしにルルとキキのことばがわかるのか、想像がつくのじゃないかしら?わたしはペンギンたちが大すきなので、「ルルやキキたちは、こういったにちがいない……」と、空想することができるのです。この空想の力によって、わたしは南極へいったことはありませんが、ルルとクジラのガイのぼうけんや、氷のわれ目の中にいたおばあさんペンギンのすがたなど、いきいきと目にうかべることができました。
いぬいとみこさんの、想像力をかきたてる立派なハードカバーの「本」を、まだまだ幼い子供たちに届けてあげたいと思いをあらたにしました!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
知りたがり屋のムーシカと、いたずらっ子のミーシカは北極グマのふたごのきょうだい。母さんグマが目を離したすきに雪の穴を飛び出したふたりは、たちまちまいごになってしまいます。(「MARC」データベースより)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
チェコの文豪カレル・チャペックの楽しい童話集。しんせつな町のお医者さんたちや、はたらき者の郵便屋さんが活躍するしゃれたおとぎ話9編を、兄ヨセフのゆかいな挿し絵が飾ります。
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