大人が読む児童書「長い長いお医者さんの話」 5 読了 わんちゃんのかわいさ
今日、ご紹介するのは児童書です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
チェコの文豪カレル・チャペックの楽しい童話集。しんせつな町のお医者さんたちや、はたらき者の郵便屋さんが活躍するしゃれたおとぎ話9編を、兄ヨセフのゆかいな挿し絵が飾ります。
大人が読む児童書「長い長いお医者さんの話」 1 チャペックの傑作 -
大人が読む児童書「長い長いお医者さんの話」 2 チーズをはさんだパンのおいしさ -
大人が読む児童書「長い長いお医者さんの話」 3 中野 好夫氏の名訳 アッババババァ -
大人が読む児童書「長い長いお医者さんの話」 4 中野 好夫氏の名訳 カッパと小鳥と -
さて、このヤマガラさんのおくさまと、顔を出したツグミのおくさまが、「飛びかたを教える子育ては大変だ」という話をはじめます。
そこから、おじいさん鳥が、「なぜ鳥は飛べるようになったか」の、因果譚というか、理由づけの物語を語って聞かせるところで…出てくるのが…。
「流れ星は天使さまのたまご」です。
素敵です…♡
うっとり…。
たまにこういうすてきなフレーズが出て来るので、たまりません。
創作系の人にとっても、とても示唆に富んでいると思うので、児童書は子どものみならず、おとな、お受験系、創作系、すべての人にとって全方位有効ななにかだと思いまーす!
とはいっても、なにか有用でなければ意味がないということはないので…。
意味などもとめず、読んで楽しんでほしいと思います。(突然の弱気)
◇
ものすごく大好きな「長い長いおまわりさんの話」をすっとばして、「犬と妖精の話」です。
(愛が深すぎて語れそうもありませんでした)
わんちゃんのお話は、本当にとんでもなく愛くるしいです。
チャペックは愛犬家で知られていて、犬の魅力を知り尽くしていると言っても過言ではないです。
くわえて、表現の素晴らしさです。
ここで登場するのは、ヴォジーシェクくんという犬なのですが、まだ生まれたての子犬の時に、粉屋のおじいさんとおばあさんに拾われました。
ふかふかした柔らかい毛皮のようなものを探り当て、連れ帰ってからパンにひたした牛乳をチューチューする愛らしさと言ったら…。
それはもう天下一品です。
あー可愛い。
そしてヴォジーシェクが夜の森で見聞きした、犬の妖精たちがとても、すてきです…。
しかし犬の妖精とは?
私の持っている本は、ハードカバーで表紙が青みがかったものなのですが、文字など何もなくて、ただこの犬の妖精たちが踊っているシーンの挿絵だけが刷られています。
犬の妖精、と聞いて、こんな風に描くのって、すばらしいなあ…。
お兄さんのヨセフ・チャペックの絵と完璧なコラボレーションです。
ここでも、「犬の妖精の長老」が出てきて、周囲の妖精たちに、さまざまな話を話してきかせます。
犬の妖精が語るお城の描写は、生肉やハムやベーコンで作られていて本当に笑えます。
愛犬家のかたは、ぜひ「ダーシェンカ」一読の価値ありです。
といいますか、愛犬家でない人でも、愛犬家になってしまいそうなほどのかわいさです。
◇
山賊ロトゥランドのお話は、途中まではバカ丁寧なやさしい追いはぎがなんだかユーモラスでかわいいです。
それなのに、ラストの豹変は…。まさにこれこそカレルチャペックと言いたくなる現代的な皮肉に満ちています。
はっきりいって、子供の私にはこのラストはきつかったです。
しかし大人になっているとしみじみとよく分かるので、やはりこの本も、子供や大人という垣根を超えた名作と言えるでしょう。
◇
ネコずきの方は、「王女さまと小ネコの話」があっているでしょうが、ここではネコと犬が大の仲良しになります。
わたしはこの子ネコの「ユーラ」という名前が大好きで、一時期は、この「ユーラ」という名前をゲームのRPGの主人公にしていました…。
黒歴史?いやいや、一周まわって、むしろ懐かしい思い出です。
友達に「ユーラって何?」と聞かれて、ドヤ顔で説明していました。
これは、何と紹介したらいいのかわからない、すごく複雑なお話です。
子ネコとお姫さま
子ネコと犬
探偵物語
名探偵の冒険物語
不思議な犯人
王女さまと小ネコと少年
という風に、それぞれがつながりながらも、まったく別のお話のように独立して続いていきます。
それぞれのお話の中でも、わかりやすいものもあり、そうでもないものもあり…。
違うお話になってしまったかと思えば、ふっと元に戻ってくる。
こんなお話はあまり経験がないです。
特に、不思議な目をしたネコ盗人の犯人のお話は、とても神秘的なお話で、とても深く心に残りました。
この人は、魔法使いということになってますが、運の悪い人であるような感じもあり、人をからかってるような所もあり…。
最後は、牢獄の中にいても、自分の所業を悔いた罪人たちの心に、慈しみと安らぎを与えるという、とても優しいラストで、この本の最後を飾るのに相応しい作品だと思いました。
よい本は、こんな風に多少ネタバレ書いちゃっても、決して読んだ時の感動を減じるものではないので、この本はまさに翻訳とのコラボレーションによる、名作だと思います。
◇
今回のこのお話を読んでいて、たくさんの物語を語ってきかせ、周囲に集まってお話をねだる「としより」が何人(人?)も出てきました。
子どもに話を物語るのは「としより」「おとな」の役割だ、と思いを新たにしました。
ゲゲゲの女房にも(またか…)
昔、妖怪話をきいた「のんのんばあ」や、水木しげるの奥さんのおばあさまのように、物語を語り聞かせた、経験を経たおとなたちが存在します。
今は、児童書というのがそれなのだと思うのです。
わたしも、思いをあらたに、いーっぱい、古い名作児童書を、心おきなく紹介していきたいdeath。
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世界中の犬たち、そして犬に手を焼き、それでも犬がかわいくてたまらない全ての人たちのために-----愛犬家カレル・チャペックが犬好きの心をギューと掴んではなさない名著を新・決定版として刊行。愛犬ダーシェンカのために書かれたおとぎ話8篇、エッセイ、イラスト、写真で構成された、読んで楽しい・見て愛くるしい愛蔵版です。
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ロボットという言葉はこの戯曲で生まれて世界中に広まった。舞台は人造人間の製造販売を一手にまかなっている工場。人間の労働を肩代わりしていたロボットたちが団結して反乱を起こし、人類抹殺を開始する。機械文明の発達がはたして人間に幸福をもたらすか否かを問うたチャペック(一八九〇‐一九三八)の予言的作品。
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