大人が読む児童書「あしながおじさん」 5 読書でつながるふたり
大人が読む児童書。
「再読★児童書編」です。
この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
孤児ジェルーシャに、突然ふってわいたような幸福が訪れた。<あしながおじさん>が大学へ通わせてくれることになったのだ。彼女は、義務の報告の手紙を毎月送った。あしながおじさんとは?
大人が読む児童書「あしながおじさん」 1 どれを読んだらいいかわからないほどの翻訳の多さ -
大人が読む児童書「あしながおじさん」 2 テンション爆上がり -
大人が読む児童書「あしながおじさん」 3 読んでるこちらもテンション爆上がり -
大人が読む児童書「あしながおじさん」 4 魔性の女ジュディ -
ジュディ、はじめて、大学の懸賞金付文学賞で25ドル稼ぎます。
大学の校友誌だとは言っても、これは彼女が本当に自分の力で手に入れたお金でしょう。
結構じ~んときます。
たぶんシェイクスピアに傾倒していることを考慮してか、ジャービスさんはお芝居を見せるためにニューヨークにご招待です。
ジュディ、サリーとジュリア、三人セットなんですけど、こうなってみると姪っ子のジュリアがいたのはあしながおじさんにとってはラッキーでした。
あらゆる口実に使われてます。
シェイクスピアって、なんて偉大なんでしょう!
「ハムレット」は、わたしたちが教室で解釈してよむより、ああして舞台の上でみたはうが、ずっとずっとすてきです。わたし、まえからだいすきでしたけれど、いまはもう、すきなどというていどではありません。
シェイクスピア好きとしては分かるわ~と言うか、まず読んでみて感動してるからじゃあって連れて行ったら、こんなにみずみずしい感動をしてくれました。
見せた甲斐がありまくると言うか、すごく嬉しいと思います。
お別れ前にニューヨークですみれとすずらんの大きな花束も送ってます。
これは3人にあげてますけど明らかにジュディ目当てでしょう。
嬉しいあまり、あしながおじさんここでちょっとやりすぎちゃうんですよね。
ジュリアがセレブらしく、高級帽子店で次々に試着してみせる所を手紙にうらやましげに書いたので、帽子用のおこづかいを五十ドルも贈っちゃいました。
お花にお金に舞台観劇と雨あられです。
この子にしてやれることなら何でもしてやりたいという、高まる気持ちは分かるんですけど…ジュディはこれを突っ返します。
虚栄に対して反省もしたんでしょうけど、何て言うんだろう?
「わけもなくお金をもらうことに対する違和感」なのかな。
これは若い女性のとってとても大事な感覚じゃないかな。
はじめて自分の力で稼いだお金の意味もかみしめていたでしょうし。
ジュディが自立に向かう第一歩です。
◇
ちょっと後でまとめようかなと思って省いてたのですけど、ジュディは、大学に来てから、雨あられと色々な本をつめこむように読んでいます。
『マザー・グース』も『デビッド = カパーフィールド』も『アイバンホー』も『ロビンソン = クルーソー』も『ジェイン = エア』も『ふしぎの国のアリス』も、わたしはよんだことがありません。またラドヤード = キプリングのいったことばもひとつだってしりませんでした。(略)
これはほんとうなんですが、信じていただけないでしょうか)、シャーロック・ホームスなんて名まえ、きいたこともなかったんです。
これはまだ、ジャーヴィスさんが会いに来る前のお手紙です。
あしながおじさんがどうしてジュディをこんなに気に入っちゃったのか。
それは貢ぐのが嬉しいだけではないと思います。
こうして本をおすすめしてる立場としていま、自分があしながおじさんに異常に共感しています。
子どもの時にはジュディに共感してましたけど…。
(「ジェーン・エア」を読んで腹が立って眠れずにちょっと夜風で頭を冷やしたりとか…)
いちどに一さつなんてものじゃありません。四さつ並行してよむのです。ここのところは、テニソンの詩と、『虚栄の市』と、キプリングの『高原物語』と、──おわらいにならないで──『若草物語』をよんでいます。 この女子大で、『若草物語』をよまずに育ってきたのは、どうやらわたしひとりだけのようです。これだけはだれにもいえませんでしたけれど。(だって、それをいったら、それこそ<かわりもの>のレッテルをはられるにきまっていますもの)
若草物語を読まないと変わり者。
今の日本の大学で、読んでないと変わり者とされる媒体の本とか、あるのかなあ~?
◇
ねえ、おじさま、わたしは、人間にとっていちばん必要なことは、想像力をもつことだと思います。想像力があれば、わたしたちは他人の立場になって考えることができます。
そうすれば自然、親切にもなり、思いやりもでき、よくわかってあげられるようにもなります。その想像力は、子どものころに育てておくべきものです。
ところが、ジョーン・グリアー院では、ごくわずかでもそんなひらめきがあらわれると、たちまちそれをふみつぶしてしまおうとしました。あそこでは、義務がなによりもつよくさけばれていました。
わたしは、子どもというものは、義務なんてことばの意味をしる必要はぜんぜんないと思います。ぞっとするような、いやらしいことばです。子どもはなにをするのも愛情からでなければいけないのです。
若草物語のジョーもこのような使命感に燃えて学校を作っていたのだろうな~。
実際に二人がどんどん親しくなる過程で、あしながおじさん本人がすご~く読書家で、こうしてジュディが読んだ本、言及した本は全部読んでいるし、どの話も通じるという事が語られています。
あの子供時代に大好きになった「追跡」という本を読んでくれたこと、嬉しかっただろうなと思います。
訳した恩地さんがあとがきで、ここにジュディがあげた本は素晴らしい名作ぞろいですので、是非読んでみてくださいと書かれています。
本当に超一流の名作ぞろいです。
どれ一つ読んで後悔することはない本ばかりです。
この子はと思った子が、自分がすばらしいと思った本を、こんな風に吸収してくれる嬉しさを、あしながおじさんはかみしめていそうです。
◇
まあ、盛り上がるあまり、たまにあしながおじさんはジュディの気持ちを無視した暴挙に出ます。
休暇にサリー・マクブライドの招待を断らせ、自分の農場に行かせてます。
ペンドルトンさんからセンプルおばさんへお手紙がきました。
いまバークシャー地方を自動車で横断中だが、つかれたので、どこかしずかな農場で休養したい。夜、そちらにたどりついても、とめてもらえるへやがあるだろうか?一週間ほど滞在するかもしれない。いや、二週間か三週間になるかもしれない。ついてから、休養できそうかどうかみたうえできめよう、と。
いやいやいやいや(笑)
言い訳考えるのにどれだけ時間使ったんだろう(笑)
あからさますぎて笑えてくる。
農場で二人きりはまずいのでは…。
でも…よく知り合いたい…会って二人きりでゆっくり話したい…。
とか、そうとうに悶々としてそうだわ。
でも、ここでゆっくり二人はお互いの話、特に大好きな本のお話を、ゆっくりすることができました。
マクブライド家ですることと言ったら、(ジュディがずらずら書いてますけど)クラブに属して、ダンスパーティー開いて、サリーのお兄さんが別の男子も連れてくるとか(ー!!)
リア充生活だー!花男のはじまりだー!
問答無用で却下されて、ジュディはすごくがっかりしたのですけど…。
静かな自然いっぱいの場所で、ゆっくりと読書をしたり、執筆に専念するのは、恋愛抜きにして、この子の将来を考えてお金を出しているあしながおじさんとしては、妥当な判断と、私も思います!
◇
このあと、相変わらずマクブライド家との交流に、さすがに我慢したり…。
ジュリアのペンドルトン家に行って、ここより孤児院の方がましだと言ったり…。
あれこれ、あれこれ、もう少女漫画真っ青の面白展開が続くわけですが、このあたりで我慢しておきます。
ぜひぜひ、再読してみて欲しいです!
これは男性にもおススメ☆。
自分のことを誰かほかの人に話してる手紙を読むという、相当に倒錯的な楽しみもありますし☆(どういう紹介の仕方!?)
◇
最後に一つだけ...。
あしながおじさんに対して、ヨーロッパ旅行をジュディが固辞した直後に、ジャーヴィスさん本人が現れて、ヨーロッパに行くように説得してます。
(ジャーヴィス、多分、あしながおじさんとしてなら聞いてくれなくても、自分が一緒に行くって言ったら行くんじゃないかって思ったんじゃないでしょうか。しかもこっそりデートしようとか誘ってるし…)
たとえ他人だとしても、どう考えてもツーカーとしか思えません。
上流階級で知り合いなんじゃないかな~ぐらいは、ジュディも思ってたかもしれません。(最後の手紙でも、何となくそんな予感があったことが書いています)
あしながおじさんとしても、ジャーヴィスとしても、ジュディが小説家になろうとするなら、文化の塊であるヨーロッパを見せたいという気持ち(あともっと親しくなりたい)は、わかるんですけど…。
でもなんかこれは、ジュディがあくまで頑固に断った方が分かるような気がします。
貰いすぎっていうか…よくしてくれすぎ?
そこまでしてくれる意味がわからないという...。
ジュディの自立の過程で、この子を、女の子として魅力的だと思う以上に、かけがえのない人だと強く思うようになったあしながおじさんの気持ちがよく、よく、よ~~くわかる再読でした!
次の記事で、あしながおじさんに出てきた本のリストを出して、おしまいにしようと思います。
◇
版権も切れていますので、グーテンベルクで出ています。
原文が読めます。
わたしも読んでみたのですが、とてもとても読みやすかったです。
「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492
◆プロジェクト・グーテンベルクについて
☞Wikiの説明ページ
プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリカ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館。
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