~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

今日の一冊「新編 世界むかし話集(3)北欧・バルト編」

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

新編 世界むかし話集(3)北欧・バルト編
山室静 (編集) 形式: Kindle版

他のゲルマン諸国では、神話詩や英雄伝説キリスト教の影響で失われたが、北欧ゲルマン人はすこぶる詩歌を愛し、それが語り伝えられている。北欧の民話が豊かであるのは、そのような伝統を受け継いでいるからである。
<デンマーク> 辛抱づよい奥方/十一羽の白鳥/小さい野ガモ/他8編
<スェーデン> 跳ぶ巨人/水の精(ネック)と少年名/スコールンダ山の巨人/他7編
<ノルウェー> 北風のくれたテーブルかけ/海の水はなぜからい/他8編
<アイスランド> 雌牛のブーコラ/アザラシの皮/他6編
<フィンランド> 七人兄弟/ほうきつくりの老人と王さま/他5編
<バルト諸国> 年越しの晩/欲ばりの王さま/他7編

 

 

「新編世界むかし話集3」の北欧・バルト編です。
みんなだいすき、北欧です。
山室静さんも、ムーミンを訳されていますし、ここが本領発揮なところなのですが、みんなだいすき(多分)北欧神話のエッダなどからは極力省かれ、あまり聞いたことが無い、めずらしい土着の昔話を中心に採られているように思います。

 

以前にご紹介した記事です。

whichbook.hatenablog.com

whichbook.hatenablog.com

 

前の記事ひとつとっても、非常にボリューミーで、すごい量の昔話がいっぱいです。

 

キンドルにしては割とお値段が張るほうかもしれません。
11冊そろえるとなると、かなりのものです。

それでも、それだけの価値がある本です~!(主張)

 

しかも、本で出版されていた時のものよりも、物語の量を増やしているというのがまた有難いです。

 

山室静氏は2000年に逝去されていますが、こんな所に、子どもたちへの昔話への残していただいているところがすばらしいです。

 

 

デンマーク

 

 辛抱づよい奥方 ((王様が心の清らかな奥さんを求めるあまり、常識では考えられないような無茶ぶりを繰り返します。 長編)
 十一羽の白鳥 ((アンデルセンの野の白鳥の原型?悪い継母が11人の皇子を白鳥に変えてしまい、妹が探しに出かけます。長編)
 小さい野ガモ ((継母に井戸に突き落とされた娘、 井戸の中で子供の世話をして3つの祝福を受けました。まねをして入った継娘の「キツネのしっぽ」が強烈です。長編)
 坊さんと小鳥 (リップヴァンウィンクルもの 美しい小鳥の声を聞いていただけなのに…。短編)
 人魚のしかえし (欲の深い人間たちにいじわるされた人魚がしかえしをします。短編)
 つぼがトコトコ (トコトコ歩いて運を持ってきてくれる、すてきなつぼのお話です。最後が強烈です。牧師さんのうん○が…。中編)
 トロールの麦酒 (結婚式でビールがなくなったトロールが人間のところに借りにきます。短編)
 欲ばり牧師とゆかいな下男 (よくばり牧師の下男がとんちをきかせて草刈りをなまけます。短編)
 影を売った男 (星新一ショートショートにでもありそうな、影を失った男のお話です。短編)
 鳥の巣 (えらい僧正さま、約束はちゃんと守りましょう。子どもは見てます。短編)
 お百姓と山男 (吉四六さんでも見たような…。百姓と山男が、作物のいいところと悪い所をお互いに取り分けます。短編)

 

 

 

 跳ぶ巨人 (負けのわかった草刈勝負、貧乏人の方に突然味方する巨人です。短編)
 水の精(ネック)と少年 (いたずら者の少年ペール、水の精とその子供をめちゃくちゃにからかって大金を巻き上げます。長編)
 スコールンダ山の巨人 (教会の鐘の音に追われて遠い北海に引っ越した巨人たち。かなり不気味なお話です。短編)
 トーレ・エッペの幽霊 (幽霊をおんぶして帰った怖いもの知らずのむすめ。やっかい払いするために幽霊の頼みを聞いてあげます。中編)
 びっこの犬 (ギリシャ神話のアモールとプシュケっぽい話です。犬がすんごく可愛いです。かなりの長編)
 少女とヘビ (美女と野獣系です。まえかけにつつんでキッスがリアルです。中編)
 テルイェの町の死刑台 (こわくないです。なんとなく行政や民主主義への風刺を含んでいるようです。昔話なのに。短編)
 ガラス山のお姫さま (白雪姫のように、殺される代わりに豚の心臓を替わり持ち帰られるのは王子さまです。ある罪で放逐された王子様、ガラス山の上のお姫様ゲットがんばります。長編)
 クネス (桃太郎ならぬたまご太郎です。内容も桃太郎+力太郎の感じで、かなりパワフルです。長編)
 緑のひげを生やした男 (青髭ではなくみどり髭です。もっとダイレクトにすぐに変なことがわかりますし、自力で逃げます。短編)

 

ノルウェー

 

 北風のくれたテーブルかけ (何でも望んだものを出してくれるグッズを悪い男が全部横から巻き上げてしまいます。最後にもらったのは…。中編)
 海の水はなぜからい (日本にもそっくりな話がありますが、過程がそれぞれの国の特徴があって面白いです。短編)
 パンケーキの話 (7人の子供とお母さんとおばあさんと男とめんどり…色々ふっ切ってパンケーキが逃げます。中編)
 ブタの食べ物 (狐のいたずらでぶたさんが待遇の改善をしそこねます。短編)
 木のつづれのカーリ (鉢かつぎ姫と美女と野獣、アモールとプシュケ、シンデレラをぜんぶ合わせたようなお話です。鉢にあたる何をかぶるのかというのがひとつの大きなポイントで、この場合は木のつづれです。木のつづれって何?長編)
 死人のミサ (うっかり早朝のミサと間違えて深夜のミサに行ってしまった奥さん。似たような昔話をいくつか聞いたことがありますが忠告してくれるのはお隣の亡き奥さんです)
 妖精族の起こり (本当に起源だけです。「塚の民」という言い方が素敵です。超短編
 三びきのヤギ (出ました3匹のやぎのがらがらどんです!)
 バタ坊や (まるまる太ったバタ坊やといぬのグルタン。トロール女と陰惨な殺しあいを明るく繰り広げます。長編)
 家事をやろうとした旦那さま (「しごとをとりかえたおやじさん」の原型がここに。この昔話集、基本を揃えています)

 

アイスランド

 

 雌牛のブーコラ (雌牛のブーコラと一緒に、女トロールから必死で逃げます。北欧は女のトロールが出てくることが多いです。長編)
 アザラシの皮 (皮をとられて戻れなくなったのは、天女ではなくアザラシです。中編)
 人間の皮で作った靴 (実に不気味な話です。怪奇ものです。なんとか解決して本当に良かったです。短編)
 トルント・トルントと山のトロール (眠りながら魔法にかけられていなくなった男。これも非常に不気味な話です。トロールというのはもともと人間だったんだなっていうのも分かりました。短編)
 大ガラス (継母が兄の祖父に魔法かけて大ガラスにしてしまいました。よくある話のようですが魔法を解くのは妹の姫の夫です。中編)
 こわいもの知らずの少年 (生意気な少年のおぱけの倒し方が週刊少年ジャンプの格闘もの並です。長編)
 リニ王子と少女シグニ (行方不明になったリニ王子を少女シグニが知恵と勇気の力で助けます。長編。このベッドが私もほしいです)
 人間にだまされた妖精の娘 (恩を仇で返したサイテーな男の話です。今なら大炎上です。中編)

 

フィンランド

 

 七人兄弟 (まるでヘンゼルとグレーテルのように、貧乏なので森に置き去りにされた7人兄弟。悪魔と盛大な逃走劇を繰り広げます。中編)
 ほうきつくりの老人と王さま (王様がほうき作りの老人にひどいことしますが、深慮遠謀があってのことでした。短編)
 動物の恩がえし (穴に落ちた旦那と動物たちを助けますが、人間だけがひどいです。長編)
 キツネとオオカミ (働きものの狼と、ずる賢いキツネのおはなしです。お弁当がバターです。)
 カンテレのひき手 (貧乏な若者がクリスマスの夜にサウナでカンテレをひいていると、ひとりの娘が入ってきました。)
 神が助けなければ金があっても豊かにはならない (不運のようで幸運な、ある老人のお話です。)
 ある夫婦 (おしどり夫婦の片方が、妻の死後に再婚しようとしたそのとき…。短編)


バルト諸国

 年越しの晩 (なんとも説明しづらいです。未来の夫を占った娘のお話です、としか…。エストニア
 欲ばりの王さま (よくばりの王さまがひどいめにあいます。教訓もの。リブランド)
 クシャミ (くしゃみをしたときに海外でお元気で!ということの起源譚です。リトアニア
 馬にされた地主 (下男たちを酷使する無慈悲なパワハラ旦那が、ばちがあたりひどいめにあいます。ラトビア
 なぜクモにはこぶがあるか (ある日蜘蛛の糸が天にかかっているのを見た男は…起源譚です。短編。ラトビア
 なぜ人間はヘビをにくみツバメを愛するか (ノアの大洪水のとき、方舟には一つの穴が開いていました。短編。ラトビア
 霧の山の王さま (きり深い夜に迷子になった少女が目が一つしかない不思議な王様にであいます。少女の一生は、幸と不幸が入り交じることに…。長編。人狼の言及があります。エストニア
 人オオカミの皮 (ずばり人狼の話です。前のもそうですが、人狼になるのは女性です。なりかたも書かれています。ラトビア
 金のひき臼 (けちVS貧乏。ニワトリが超・元気です。リフランド)

 

 

これをまとめるの、大変のようなのですけど、おはなしじたいは昔話で簡単なので、トイレ休憩などで読みながらぼちぼちすすめてます。

 

辛抱強い奥方はボッカチオの「デカメロン」から取っているそうです。すごーい!

 

後書きを読んでいると、山室静さんが、各国の民族学者に非常に深い造詣があることが分かります。
フィンランドのカレワラ・タリナは本当に面白いので興味がある人はぜひ読んでみてほしいと思います。

 

あと書きに山室静さんも書かれていましたが、ヨーロッパはキリスト教の影響がこく昔ながらの物語がキリスト教おでん乗り換えられてしまった体いるところがあるのですが北のには影響受けない頃の話が残っています。


ルーン文字が出てきたりケルトの影響が色濃いです。

 

 

昔話なので、ちんば、びっこなどそのままです。
新版では、どうなっているのかな~と思いましたが、訂正されていませんでした。それはそれで、訂正されていない方が今となっては貴重だし、ありがたいです。

 

しかし読み聞かせする時も、私も迷いました。
「足をひきずっている人」「足の悪い人」という風に即興で読み替えて読んだり「昔はこういう言い方をしてたけど、今はこういう風に呼んだらだめなんだよ」と教えたりと、ひと苦労をしました。

 

おやごさんも若干の配慮は必要かと思いますけど、「そういうことを学ぶ機会」としてとらえれば、とてもよいことだと思います。

 

 

お気に入りの話

 

スウェーデンの「水の精(ネック)と少年」

 

改めて読むと、水の精(ネック)の子どもがすごくかわいくて、少年がほんとにひどいな~と思うのですが、子どもはめちゃくちゃひどいお話が大好きです。

 

 

ノルウェーの鉢かつぎ姫(他もろもろ)「木のつづれのカーリ」

すごくもりだくさんで、昔話のお姫さま系を全部つめこんだ、総集編みたいなお話です。

 かなりの長編です。

 

気付かない王子さまの、木のつづれのカーリに対する態度、どのお姫さまものよりもひどいです。
気付いてもらえないほうのカーリがすごく明るいです。
おちょくって(この言い方、関西の方言らしいのですが)、要はからかって、ふりまわします。

 

前は明るく、後ろは暗い
だから王子は
今日のわたしがどんなに笑ったか
ごぞんじないわ!

 

盛りだくさんだし、明るいし、ひどいしで色々面白くて大好きでした。
でもいまだに、木のつづれが何なのかわかりません。

 

 

ノルウェー「三びきのやぎ」

 

ブルーセは「鼻っ柱のつよいヤギ」の意味だと書かれているのですが、「ブルーセ」=「がらがらどん」だったのかもしれないですね。
もはやがらがらどん以外考えられないです。
「三びきのやぎのブルーセ」ではいまいち伝わりません。

 

「がらがらどん」と訳された瀬田貞二さんのすばらしさです。
瀬田貞二さんが訳された本での名前は確認できてないので、別の名前だったかもしれませんが汗)

 

 

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

新編 世界むかし話集 (全11巻)

Kindle版 山室静 (Editor)

 

 

 

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