「のびる のびる きこのみみ」根性で探し出しました。生源寺 美子さんの本でした。
昨日、話題にした「のびる のびる きこのみみ」。
絶版になっていたのだけは確認していたのですが、本棚の中でも迷子になっていたので、根性でついに探し出しました。
妹子もお友達も、この本が大好きです。
音読によく使っていました。
兄助に覚えてる?と聞くと「覚えてる」と言いました。
ほとんどの本はやはり、残念ながら消え去ってしまうのですが、何気ない本なのになぜか強烈に残る本というのがあります。
くだんのアップルパイの箇所です。
ホールのアップルパイをを6ピースに分けてくれるのです。
しかしこのおみやげをもってきてくれた従妹のかおるねえさん、きこのお母さんにデートの現場を見られていました。
「結婚するつもりじゃないでしょうね?」
「ちょっとおっちょこちょいみたいじゃない?」
と、そのあたりの会話を、「のびた のびた きこのみみ」で聞き取ったきこちゃんは、何と、偶然、かおるねえさんのお母さん、つまりおばさんからの電話を受話器で取ります。
何ときこちゃん、直接おばさんに
「かおるねえさん、おっちょいこちょいと結婚するってほんと?」
と聞いてしまいます。
やめてあげて~!
おばさん、驚きのあまり、しばらくものも言えなくなります。
笑えもするし、ドキドキもするし、さりげない日常なのにすごく手に汗握るし面白くて、強烈に記憶に残っている一冊です。
改めて見ると、書いたのは生源寺 美子さん。
ほかにどんな作品を書いているのだろうか…。
もう、絶版扱いが多いのかな~。
と思って、出てきたのがこれ!
「マキオのひとり旅」
これ、大好きでした!!
今も本棚にあります。
そして、いまだに売られているんだ~!!
春休みに、東京のおばさんの家へ遊びに来たマキオ。おばさんの家には、5才のちあきと赤ちゃんのひさおがいます。ひさおの具合が悪くなりおばさんは病院へ…。マキオは、はじめての東京の夜のおるすばんです。
Amazonのレビューなど見ていると、やはりわたしと同年代の人で懐かしい、忘れられなかった、という意見が散見され、わかるわかる~!とうなずきます。
すごく、子どもの心の機微をついて、印象的なひとこまを切り出すのがうまい方です。
おかあさんが手術のため、マキオはおばさんの家にやっかいになります。
おかあさんも具合が悪いのに、おばさんの赤ちゃんのひさおまで具合が悪くなり、マキオはいとこのちあきと一緒に、おるすばんをすることになります。
ちあきはチャキちゃんと呼ばれていて、とても元気でおしゃまな可愛い女の子なのですが、とにかく何をしでかすかわかりません。
面白いことに、「となりのトトロ」そっくりの事件もおきます。
「おみまいにいくね」という手紙を残したまま、チャキはいなくなっていて、マキオは青くなってあたりを探し回ります。
(ちょっと気になって調べてみたところ、マキオの一人旅は、初版1973年、トトロは1988年でした。)
トトロのように田舎ではなく、東京なので、探し回るのは昭和の住宅街や商店街です。
途中で、なまいきなチャキちゃん、色んな人に病院をたずねてまわり、ひとりの男性が連れて行くか、いかないか…のあたりで、知り合いに声をかけられてその男性はすっと離れる…。
すごくドキドキするシーンです。
この男性は、決して悪い人ではなく、あまりにも生意気でチャキチャキしたこの5歳の女の子を、興味半分で付き合ってやろうとした所のよう…でした。
でも、この人に連れて行かれていったいどうなっていたかは、まったくわかりません。
また、道路で死んでいるネコは、どうしておそらにとんでいかないの?というチャキちゃんの無邪気な疑問。
「きかれないおねがい」というのはあるんだよ、それでも祈る気持ちが大切なんだよ、というチャキちゃんのお父さんのお話。
耳のわるい女性が家政婦会から来て、お仕事を断られた時のがっかりした様子…。
ちょっと、胸に刺さるような出来事が次々に起きて、マキオは子供らしい自分なりに衝撃を受け、その出来事を一生懸命考えて、心に刻み込みます。
私には、この「耳のわるい家政婦の女性」の話が一番強烈に残っていたのですが、妹子もまた同じのようでした。
チャキちゃんもマキオも、少し普通とは違うこの女性にとまどいながらも、断られてしまうと、どうして雇ってあげなかったの?とお父さんを二人がかりで責めます。
日常は、理不尽なことや、よくわからないこと、おどろきの連続です。
「のびる のびる きこのみみ」も、「マキオのひとり旅」も、次々に繰り出されるさまざまな出来事に、はっと胸を突かれ、ドキドキしっぱなしになる本です。
今も売られていること、とても嬉しくなりました。
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