~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

大人が読む児童書「たのしい川べ」 2 原文も美しく翻訳も巧み & まるでコント

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

たのしい川べ
ケネス・グレーアム (著), E.H.シェパード (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

人里はなれた静かな川べで素朴な暮らしを楽しんでいるモグラやカワウソたち.わがままで好奇心旺盛なヒキガエル.小さな動物たちがくりひろげるほほえましい事件の数々を,詩情ゆたかに描いた田園ファンタジー

 

 

大人が読む児童書「たのしい川べ」 1 イギリス児童文学の傑作

 

 

最初の冒頭、1話目「川の岸」。
こんな感じではじまります。

 

モグラは、その朝じゅう、いっしょうけんめい、じぶんの小さな家の大そうじにかかっていたのでした。まず、ほうきではいて、つぎには、はたきでちりをめぐう、それから、はけと、しっくいのはいったおけを持って、はしごだの、ふみ台だの、いすだのの上にのる、というぐあいでした。そこで、しまいには、のどや目も、ほこりでいっぱい、黒い毛皮は、しっくいだらけ、背中はいたくなる、うではだるくなるというありさまになりました。

 

かわいそうに…。
身につまされます。
もうすぐ、年末の大掃除が近付いていますから、なおさらです。

 

このところ、簡単にすませてサボってましたが、今年はさすがにキッチリやらないといけないことでしょう。
「スプリング・クリーニング。」
欧米では一般的とされている、「春の大掃除」です。
(なんて書いてますけど、今調べました)

 

冬に石炭を焚くからだ、と書かれていましたけど、あったかくなった所で大掃除の方がよく動けますし、水も冷たくないし、合理的な気がします。

 

積極的に採用したいです。

 

だんな「ダメです」

 

(家庭内の争いにつき、省略してお送りします。)

 

春は、地上の空気注にも、またモグラのまわりの土のなかにも動きだしていました。そして、いまでは、暗くてみすぼらしいモグラの家のなかまではいりこんで、なんといいえないそわそわした、じっとしていられない気もちで、そこらじゅうをいっぱいにしてしまったのです。
とすれば、モグラが、きゅうに、はけを床の上に投げすてて、「え、めんどくさい!」とか、「なんだ、こんなもの!」とか、「春の大そうじなんてやめっちまえ!」などといいながら、上着をひっかけもしないで、家からとびだしてしまったとしても、ふしぎはありません。なにかが、上のほうから、出てこい、出てこい、と、命令するように呼んでいたのです。

 

冬ですら、「え、めんどくさい!」とか、「やめっちまえ!」という気分になるので、春となればこれはまた、格別でしょうね…。

 

結局、よい気候でもそうでなくとも、おそうじはめんどくさいということですね。

 

モグラはすべてを放り出してどんどん、走っていきます。

 

途中でウサギをからかったりしながら、もうすっかりいい気分になっています。
このウサギをからかう所、とても面白くて好きなので、ぜひ読んでもらいたいです。

 

生垣にそったり、雑木林をぬけたりして、広い草原をあちこちといそがしげにぶらついていきますと、いたるところ、鳥は巣をつくり、花はつぼみをつけ、木の葉は芽をふいています。見るものすべてが、幸福そうに動いていて、しごとに余念もありません。そこで、モグラも、良心が、ちくりちくりとつついて、「壁ぬりはどうした!」とささやきそうなものなのに、どういうものか、ほかのものたちがいそがしく働いているのに、じぶんだけ、のらくらしているのは、なんてたのしいことだろうと思われるばかりでした。けっきょく、わたしたちのお休みの、いちばんたのしいところは、じぶんが、ゆっくり休むということよりも、ほかのひとたちがみな、いそがしく働いているのを見ることなのかもしれません。

 

名言きた!

 

けっきょく、わたしたちのお休みの、いちばんたのしいところは、じぶんが、ゆっくり休むということよりも、ほかのひとたちがみな、いそがしく働いているのを見ることなのかもしれません。

 

楽しく走っていったモグラはそこで、すばらしいもの二つに出会います。

 

一つは「川」で、一つは友達になった「川ネズミ」です。

モグラがうまれてはじめて川を見るときの描写が、すばらしい美しさです。

 

生まれてから、まだ一度も、川を──このつやつやと光りながらまがりくねり、もりもりとふとった川という生きものを見たことがなかったのです。川はおいかけたり、くすくす笑ったり、ゴブリ、音をたてて、なにかをつかむかとおもえば、声高く笑ってそれを手ばなし、またすぐほかのあそび相手にとびかかっていったりしました。すると、相手のほうでも、川の手をすりぬけてにげだしておきながら、またまたつかまったりするのです。川全体が、動いて、ふるえて──きらめき、光り、ざわめき、うずまき、ささやき、あわだっていました。

 

Never in his life had he seen a river before--this sleek, sinuous, full-bodied animal, chasing and chuckling, gripping things with a gurgle and leaving them with a laugh, to fling itself on fresh playmates that shook themselves free, and were caught and held again. All was a-shake and a-shiver--glints and gleams and sparkles, rustle and swirl, chatter and bubble.

 

やっぱり、英語学習するなら、一文一文、噛み砕くように読んですばらしいと思う、名作でやりたいです。

  

しかし現実は厳しく、こちらの文章、私はかなり難しいと思いました。

文型を探したり、意味をとりながらおしりの方から読んで行くのは無理でした。

 

ただ、ひたすら、雰囲気で綺麗だな、と思います。

 


はじめて川というものに出会い、楽しくぶらついていたモグラは、川岸で川ネズミに出会います。

 

礼儀正しく挨拶をした二匹は、ボートでピクニックに行くこととなります。


欧米の「ボート遊び」の多彩さは目を見張るほどです。
同時に、事故も多そうです。

 

よく古い映画や、お話の中で「ボート遊びをしていておっこちて亡くなった」というシチュエーションが非常に多く出ていて、「なんでそんなボート乗るの?」という一抹の疑問がずっとつきまとっていました。

(犯罪にもよく使われてます)

 

こんなのどかなお話の中で、突然不穏な連想をしたのですが、先を続けます。

 

 

すばらしいピクニックのお弁当の中身です。

 

 「このなかに、なにがはいってるんだね?」モグラは、それが知りたくて、からだをうずうずさせながらききました。

「コールドチキンがはいってる。」と、ネズミは、かんたんに答えました。「それから、コールドタンにコールドハムにコールドビーフにキュウリの酢づけにサラダにフランスパンにサンドウィッチに肉のかんづめにビールにレモネードにソーダ水──」
「ああ、ちょっと待ってくれたまえ!」モグラは、ぼうっとなって、大声をあげました。「きいてるだけでも、胸がいっぱいだ!」

 

 

「きいてるだけでも、胸がいっぱいだ!」

確かに。

 

What's inside it?' asked the Mole, wriggling with curiosity.
'There's cold chicken inside it,' replied the Rat briefly;
'coldtonguecoldhamcoldbeefpickledgherkinssaladfrenchrollscresssandwichespottedmeatgingerbeerlemonadesodawater----'
'O stop, stop,' cried the Mole in ecstacies: 'This is too much!'

 

こんなに楽しいピクニックですけど、あとかたづけはめんどうです。

 

バスケットのあとかたづけは、バスケットをあけるときのように、たのしくはありませんでした。たのしくないにきまっているのです。けれども、モグラには、いま、なんでもがおもしろくてたまらないのでした。とはいうものの、さてすっかり、バスケットにつめおわり、きちんとひもを結んでしまってみると、まだお皿が一まい、草の上から、じぶんのほうをじろじろ見あげています。それもかたづけおえると、ネズミが、また、うっかりしまいわすれたフォークが一つ、のこっていると、さしずをします。ところが、それもしまった、またそのあとで、モグラのすわりこんでいた下から、からしのびんがでてきたではありませんか──

 

わ…わ…わかりすぎる…!!!

 

川を見るのもはじめてなら、ボート遊びもはじめて、すべてにおそるおそるであったモグラは、おなかは一杯になるわ、気持ちいいわで最高是人生也みたいないい気分になります。

 

だがしかし…モグラ君はやらかしはじめます。

 

もうボートにもすっかりなれて(と、モグラは思ったのです)なにかじっとしてはいられない気もちになっていました。

 

最初はあんなにおびえてドキドキしていたのに。
モグラは、ボートをこいでみたいと言い出しますが、ネズミ君はやさしく却下します。

 

紳士です♡
世の上司たちも、却下するときにはこういう風にやってもらいたいです。

 

モグラは、一、二分だまって見ていました。が、ネズミが、いかにも力づよく、いかにもやさしそうにこいでいくのを見ているうち、うらやましくてたまらなくなりました。そして、高慢にも、じぶんだって、きっとあれくらいじょうずにできるんだと、考えはじめてしまったのです。そこで、モグラは、とびあがるなり、ネズミのかいをうばいとりました。

 

どうした、モグラー!

 

それが、あまりきゅうだったので、水の上をながめながら、まだなにか詩らしいものを口ずさんでいたネズミは、両足を空中につき立て、あおむけにひっくりかえってしまいました。

 

まるでコントです。

 

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

たのしい川べ―ヒキガエルの冒険
ケネス・グレーアム (著), E.H.シェパード (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ヒキガエルアナグマモグラなどがひっそりと暮らす静かな川辺。素朴な動物たちの詩情ゆたかな空想物語。

 

  こちらでは、版権切れのため無料で原書が読めます。

www.gutenberg.org

 

「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492

 

プロジェクト・グーテンベルクについて
Wikiの説明ページ

プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館

 

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