大人が読む児童書「たのしい川べ」 3 ヒキガエル君とは…?
今日、ご紹介するのは児童書です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
人里はなれた静かな川べで素朴な暮らしを楽しんでいるモグラやカワウソたち.わがままで好奇心旺盛なヒキガエル.小さな動物たちがくりひろげるほほえましい事件の数々を,詩情ゆたかに描いた田園ファンタジー.
大人が読む児童書「たのしい川べ」 1 イギリス児童文学の傑作
大人が読む児童書「たのしい川べ」 2 原文も美しく翻訳も巧み & まるでコント
記憶を頼りに、序盤だけを読んで見切り発車で書き始めてしまいましたけど、とにかくこのお話は…。
・文章が素晴らしく美しかったこと。
・原文が難しかったこと。(でも詩的で美しかったこと)
・とにかくヒキガエルに、笑わせられるわ、腹が立つは、ハラハラするわ、 あきれ果てるわで、とても面白かったこと。
それだけを覚えています。
さてじゃあもう一度読み返すかと開いてみました。
数年前に読んだはずなのに割と記憶違いのところもありました。
ヒキガエル君の登場するタイミングなど…。
◇
読み進めるにつれて、文があまりにも美しくてうっとりとやめられず、かといって合間合間では、ヒキガエル君がすごく面白いので、一気に最後まで読み切ってしまいまいました。
最後になってみると、この物語をうまくレビューすることなんて、とてもできそうにないのだが…と思いはじめました。
何度か引用してきて、何となく文章の「感じ」は受け取ってもらえたかなと思うのですが、実に詩的で、描写がゆたかで、美しい文章です。
両岸には、緑の芝生が、水ぎわまでスロープになってのびていて、しずかな水の底には、茶色の、ヘビのようにまがりくねった木々の根が、つやつやと光っていました。ゆくてを見れば、銀色の肩をのぞかせた堰が、まっ白い水しぶきをあびています。それとうでをくむようにならんで、休みもなく水をおとしている水車。そして、水車は灰色の破風づくりの水車小屋を、小わきに高くかかえこむようにしながら、人の心をしずめるようなうなり声であたりを満たしていました。ひくく、息づまるようなその音、しかもその音の中から、ときどき、小さい、はっきりした、たのしげな話し声があがるのです。
「情景を文字で描写する」というお手本であるような文章です。
これを読んで、「流れる川沿いの緑の芝生を思い浮かべ、水車と水車小屋を思い浮かべ、音の話し声を思い浮かべる」ことができるか…!?
よほど才能にめぐまれたお子さんでなければ無理ではないのかな!?
いきなりヒキガエルのところだけピンポイントで説明するなら別だけど…。
◇
しかし、大人にはアピールできます。
子供にいきなり読んでもらうのは厳しくても、これがいい本だと、名前なりともすすめることができるのは、おとなです!(力説)
一度読んでもらえば、ヒキガエルの所などがいかに面白いかわかってもらえるし、そうすれば子供に子供にと言う理由もわかってもらえるはず。
それでも、すてきすぎる所があまりにも満載すぎて、この紹介記事も、それを全部書いていたら1年ぐらいかかってしまいそうです。
ケネス・グレアム、ボート遊びのことをこんな風に描いています。
「どこかへ出かけようが、出かけまいが、目的地へつこうが、ほかのところへいってしまおうが、それともまた、どこへもつくまいが、ぼくらは、いつもいそがしい。そのくせ、これといって、特別のしごとがあるわけじゃない。そして、一つのことをやってしまうと、また、なにかやることがある。だから、それをやりたきゃ、やるもいいさ。だけど、やらないほうが、まだいい。ねえ、きみ、ほんとに、けさ、なにもすることがないんなら、いっしょに川をくだって、一日ゆっくり、あそんでいかないか?」
することが山ほどあっても、行きます。(断言)
◇
ヒキガエル君が大冒険を始めるのは後半ですが、一話から出ていますし、その姿はユーモラスです。
子どもにも、間違いなくこのヒキガエル君の強烈キャラはうけるはずなんですが、よく考えたら題名にも「ヒキガエルの冒険」てちゃんと入ってましたね。
二話「街道」では、ネズミはモグラを引き合わせるため、ヒキガエルのところに遊びに行きます。
お金持ちでお屋敷に住んでいるヒキガエル、古いマナーハウスのような豪華で素敵な所に住んでいて、宴会場やらボート小屋やら持っています。
「ああ、あんな気のいい動物はないさ。」ネズミは答えました。「とても罪がなくて、おひとよしで、気もちがやさしいんだ。あんまりりこうとはいえないけれどね──われわれは、みんながみんな、天才というわけにいかないんだからね。それは、自慢やで、うぬぼれやのところもあるさ。 でも、とにかく、とてもいいところがあるんだ、ヒキガエルというやつは。」
ネズミ君はとにかく紳士なので、お行儀のいい言い方をします。
罪がなくて・お人よしで・気持ちがやさしくて
ここまではいいですよね。
あまりりこうではない
婉曲に言ってるけど、要はアホタレ、ってこと?
自慢屋で・うぬぼれや
これですね。
私が見るところ、間違いなくヒキガエル君の最大の特徴は、自慢やでうぬぼれやの所です。
そして、夢中になりやすく飽きっぽいのですが、その夢中になり方がヤバいです。
何かに傾倒してそれに情熱を注ぎこむのは、基本良いこととされているのですけど…人によっては…よい方に働かないことも…あります…。
ヒキガエル君はちょっと、その度を越えてます。
「2.街道」ですでに、そのヤバさは十分に現れています。
すべてはここで始まったのです。
◇
モグラ君はネズミ君によって、ヒキガエル(呼び捨て)に引き合わされますが、なかなか人のよい、いい感じのやつです。
一話目で、船に乗っていてひっくり返ったヒキガエルを二匹は目撃したわけですが、ヒキガエル、そのためか、訪問した時には、船にはすっかり興味を失っていました。
今ハマっているのは、ジプシーの箱馬車。
要は、今で言うならキャンピングカーです。
それとはまったく、小ぢんまりと、気もちよくできあがった馬車でした。小さなつり床――壁にたたみこんである小さなテーブル――料理用ストーブ、錠前のついた戸だな、本箱、鳥のはいった鳥かご。それから、'いろいろな種類や大きさのつぼ、なべ、水さし、やかん。
「全部そろってるんだ!!ヒキガエルは、得意そうにいって、戸だなをひきあけました。「ほらね、ビスケットに、エビのびんづめに、イワシに――いりそうなものは、みんなあるんだ。これは、ソーダ水だし、――あれはタバコだし――レター・ペーパーに、ジャムに、かるたに、ドミノあそびまであるんだよ。だから――」と、段をおりながら、ヒキガエルはつづけました。
本当に、こっちまで乗りたくなってくるような描写です。
(特に食べ物が)
これらの児童文学を読んでいたので、イギリスが食事がまずいというのは、どうにもピンとこないことでした。
今でもピンときてません。
まだ行ったことがないので、こんなご時世でいつ行けるやら皆目見当もつきませんけど、イギリスにだけは絶対に一度行ってみたいと思っています。
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昨日から載せているこちら☟は、ハードカバーの方です。
こちらでは、版権切れのため無料で原書が読めます。
「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492
◆プロジェクト・グーテンベルクについて
☞Wikiの説明ページ
プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリカ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館。
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