今日、ご紹介するのは児童書です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
人里はなれた静かな川べで素朴な暮らしを楽しんでいるモグラやカワウソたち.わがままで好奇心旺盛なヒキガエル.小さな動物たちがくりひろげるほほえましい事件の数々を,詩情ゆたかに描いた田園ファンタジー.
大人が読む児童書「たのしい川べ」 1 イギリス児童文学の傑作
大人が読む児童書「たのしい川べ」 2 原文も美しく翻訳も巧み & まるでコント
鬼滅で大賑わいの本屋に行くと、又吉の「東京八景」のとなりに「ドリトル先生新訳」がおいてあって、これは最高にグッジョブな配置!!と心にこぶしを作りました。
もっと児童書の名作を大人向けの棚に置けばよろしいと思います。
子供が子供として手に取ることをしない児童書を、児童の棚だけに眠らせておくのはもったいないです。
大人に読んでもらい、そして、子どもたちに読んでもらう。
…というのを、いま考えつきました。
◇
本にそれほど興味がない、というお子さんには、まあ無理強いしてまで読んでもらう必要はないかな、と思いつつも…。
あまりにもヒキガエル君の行動が面白おかしいので、これは読んでもらいたいなあ~!
という気持ちにやっぱり、なります。
妹子、やはり川の描写のところなどは、眠くなってしまうみたいだったので、少しその後のところを読んであげました。
ピクニックのおいしそうな羅列を読み上げて、これは興味津々です。
ここからだよ、これからなんだよ!という所で突然聞かれました。
「そのお話、ヒロイン出る?」
「!?」
いや、ヒロインかぁ~。牢番のむすめさんかな?
すごく可愛いのですが、でもほんのちょっとだし、ヒロインて感じじゃないかなあ。
この牢番のむすめさんは、人間です。
本当に、何の矛盾もなくどうぶつと人間が暮らしてるのですが、他の地域に動物はちらほらしかいないなど、何となく線引きはあるようです。
ネズミ、モグラ、ヒキガエルアナグマ、カワウソあたりが住んでいる周辺が「どうぶつ村」というイメージでしょうか。
んっ…どうぶつの村…どうぶつの…森…!?
ま、まあ、とにかく、牢番のむすめさんはとても可愛いです。
どうぶつ好きなので、投獄されてショックを受けてつぶれているヒキガエルをとても気の毒に思い、親切にしてくれます。
その中で
・むすめは、ヒキガエルの気持ちを傷つけるといけないので、自分がペットとして動物を可愛がっていることは遠慮して言わなかった。
・ヒキガエルは、むすめが自分のことを好きなのかと思った
・ヒキガエルは、ヒキガエル屋敷の主人と、牢番のむすめという身分の違いがあるのを残念に思った。
という箇所があるのですが、もう本当にヒキガエルをぶんなぐって成層圏まで飛ばしてやりたいような、勘違い野郎のうぬぼれ屋です。
牢番のむすめ、20年の刑をくらったヒキガエルが気の毒になって、せんたくばあさんの格好をさせて逃がしてあげます。
ここからものすごい、爆笑ものの逃走劇が繰り広げられるのですが…。
…回想おわり。
わたし「うん、ヒロインはいないかな」
妹子「ネズミでしょ?ネズミってねえ、すごいよね、潮路とかさ…」
ガンバの冒険かーーい!!!
妹子「だって、あれはすごくない?はかなすぎる運命でしょ!ネズミなのに…ネズミだよ!?」
わたし「……………」
妹子「すでに人間でしょ!あんなすごいドラマ、人間でやれよ!」
妹子、ネズミ=ガンバから、ちょっと離れられないみたいです。
イギリス紳士のネズミの入る余地がなかったみたいでした。
しかもこのあと、「楽しくボートをこいでいる」辺りですやすやと眠ってしまいました。
ボート、モグラ君がひっくり返すまで読ませてよ~(涙)
まあ、いそぐこともないし、この本は一生ものだと思っているので、ゆっくりと(妹子にも)紹介していきたいと思っています。
◇
「8.ヒキガエルの冒険」
投獄されたヒキガエル、ショックでつぶれていますが、牢番のむすめに親切にしてもらって元気をとりもどします。
洗濯ばあさんの恰好をして脱獄してから、追手をやりすごすあたりは、爆笑&ハラハラです。
「9.旅びとたち」
海ネズミに会った川ネズミが、旅へのあこがれをかきたてられます。
旅というもののあやしい魅力に取りつかれ、熱病のようになってしまった川ネズミ──。
「10.ヒキガエルの冒険のつづき」
ひき舟に乗せてもらった、ヒキガエル、船こぎのおかみさん相手に、でたらめな話をしゃべりまくります。
おかみさんにバカにされたヒキガエルは、ひき舟用の馬をかっさらって逃走、ジプシーに馬を売りつけ、すっかりいい気分に…。
そこに破滅のもとになった自動車が現れて、ヒキガエルはまたしても…。
最初から最後までヒキガエルがめちゃくちゃです。
「11.夕だちのごとく涙くだりぬ」
ヒキガエル屋敷は、占拠され、すでにヒキガエルのものではなくなっていました。
アナグマをはじめとして、ネズミ、モグラ、ヒキガエルは、屋敷の奪還作戦を練ります。
ヒキガエルは相変わらずです。
「12.英雄の帰還」
すったもんだの大立ち回りのすえ、ついにヒキガエル屋敷を取り戻します。
最後のヒキガエルの選択は、実に興味深い!
これまた、ちょっと例をみない不思議なラストの飾り方でしょう…。
ヒキガエルの立場にいる自分、うぬぼれやでおしゃべりな自分が、何となく胸がすっとする終わり方です。
◇
あとがきで、石井桃子さんが、戦前にこの本の抄訳を出された 中野好夫さんの題名を踏襲して、「たのしい川べ」にした、と書かれていました。
先日の長くつしたのピッピの「竹さんの靴」もですけど、すごくピッタリハマった訳というのは、新訳で翻訳しなおすとき、換えなくてもいいんじゃないでしょうか!?
翻訳としてのプライドなのか、何かひっかかるのか...?
あまりにもすばらしい訳なのでそのままに使わせていただきました、でいいのになあ~!と、慣れ親しんだこちらとしては、たま~に思うときも、あります。
ここにご紹介していないあとがきの中で、石井桃子さんは、グレアムの生涯について、また児童書について、すばらしい解説を書かれています。
これを読むだけでも必見!のみごとなものでした。
中に、ルーズベルト大統領の逸話があり、面白かったです。
・このような本は当時あまりなかったので、どこの出版社からも断られた
・先に出した随筆集のファンであった、ルーズベルト大統領に、グレアムが「たのしい川べ」を一冊贈呈した。
・大統領は、グレアムの随筆かと思って開いてみると、どうぶつと子ども向けの話かとそのあたりに置いておいた。
・それを、奥さんと子どもが見つけて、読みつづけられているのをもれ聞いて、大いにこの話を楽しんだ。
・出版をするように本屋(出版社?)にすすめた。
...という逸話でした。
ここで、奥さんと子供が読みつづけていた、というのは、おそらく、読み聞かせしていたんだと思われます。
もれ聞いた、と書いてあるので。
読みきかせ、ちょっと心が折れそうでしたけど、わたしもやっぱり頑張りたいと思います!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
たのしい川べ―ヒキガエルの冒険(ハードカバー)
ケネス・グレーアム (著), E.H.シェパード (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)
「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492
◆プロジェクト・グーテンベルクについて
☞Wikiの説明ページ
プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリカ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館。
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