今日の一冊「小さなきかんしゃ」
今日、ご紹介するのは絵本です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
『第三の男』などで有名な、イギリスの作家の初めての子どもの本。ちび機関車が冒険の旅に出ます。
図書館で、翻訳が阿川弘之だ!と思って背表紙で引き出しました。
絵に見覚えがありました。
これもアーディゾーニ。
さんざん推している、「魔女ファミリー」もこのかたの絵です。
ふと見ると、横にも似たような本(シリーズ?)があります。取り出してみました。
三冊並んで綺麗に阿川弘之の訳です。
全部乗り物だ。
「ローラー」は、石炭で動く蒸気ローラー車というもののようです。
阿川弘之、どんだけ乗り物好きなんだ。
ちょっと笑ってしまいました。
阿川弘之さんは、今はもう文豪というイメージよりも「阿川佐和子さんのものすごくひどいお父さん」もしくは「『きかんしゃやえもん』の作者」である、と言った方がわかりやすいかもしれません。
1946年(昭和21年)グレアム・グリーンが「小さなきかんしゃ」を書き、
1959年(昭和34年)「きかんしゃやえもん」発行です。
1975年(昭和50年)に、「小さなきかんしゃ」を訳されてます。
この「小さなきかんしゃ」のお話の存在を知ったとき、阿川弘之さん、さぞ「やえもん」の仲間がいたような喜びを感じられただろうなと推測します。
三冊読んでみました。
(調べてみたら、まだ、「小さなしょうぼうじどうしゃ」というのもあるようでした)
どれも面白いです。
シリーズものというわけではなく、ひとつひとつがまったく違うお話ですし、世界観もまったくちがいストーリーのスタイルもみな違います。
映画「第三の男」のグレアム・グリーンのストーリーテラーの力を知るような気がしました。
文豪の書いた子供の本としては、アーサー・ミラーの「ジェインのもうふ」、サマセット・モームの「九月姫とウグイス」などありまして、どちらもすばらしいものでした。
そして、大変翻訳が素晴らしいです。
阿川弘之さんが鉄だからという理由だけではないようです。
さすがです。読みやすく簡潔でありながらユーモアがあふれており、時折笑ってしまうような…素晴らしいです。
阿川弘之の新しい一面をこんなところで発見したという感じです。
◇
「小さなきかんしゃ」は、最初から最後までこの小さい機関車が主人公です。
一定区間を往復するだけのきかんしゃが、飽きてしまって意思をもって逃げ出すというお話です。
A駅とB駅があったらその間だけをいったりきたりする汽車が飽きてしまうというモチーフは、「きかんしゃ1414」、「いたずらきかんしゃちゅうちゅう」にも見られるもので、どれもそれぞれのキャラをもっていてそれぞれの冒険があります。
「きかんしゃやえもん」はスクラップにされそうになりますし、「1414」は子どもを助けます。
こちらの「小さなきかんしゃ」は、ひたすらただひたすらいろんな線路を思うままに気ままに走り回って好き放題です。
「ちゅうちゅう」のように、大騒ぎをするわけでもなく...鉄橋をわたり、歴史あるおしろの側をとおり、色んな景色を見て走ります。動物たちがびっくりして「ありゃなんだ」と見ます。
見開きの地図が、とても素敵です。
夢があります。
ガチャガチャした大きな駅で、気後れしたり...。
そのうち、石炭が尽きてきました。
もうこれ以上走れず、線路の上で朽ち果ててしまうかと思ったその時スコットランド急行に助けてもらうのですが、この急行列車がとてもゆかいです。
「わしの線路の上で、おまや、何をしちょるかい?」
えっ?どこの方言!?
この大先輩の大きな列車に、「ちびきかんしゃはしくしく泣きながら」事情を話します。
「でも、ぼく道にまよって、石炭もなくなって、リトル・スノーリングへもう帰れないんです。」
「ばか言うな。おまやの村まで、15キロほどしかありゃせん。」(地図を見てください。急行の言っていることは、ほんとうです)
「わしがおまやを、おしてっちゃろう。朝ごはんの前には、家へ帰れるぞ。」
いやほんとうにどこの方言?
とてもぴったりで、親切で経験を経たおじいちゃんらしく、まいごの子を助けてくれた感ありありです。
胸があたたかくなりました。
これまで走り回っている間は、特に話しているわけでもなく、ただ走り回るのが楽しいといった感じだったので、ここでこの交流のあたたかさは胸にしみました。
まいごってそういうものですよね。
会話しながらまいごになりませんし。
「そんだら、ゆうかんなちびすけ、さいならよ。」スコットランド急行は言いました。
「そんなこと言われると、ぼくはよけいはずかしいや。」
「なあに、心配するなて。おまや、ほんまにゆうかんなちびすけじゃ。みんながきっと、おまやのことをじまんするぞ。」
なんだかすごーくかわいいです。
阿川弘之さんの訳が最高です。
三日ばかりかけて三冊、順番に紹介していきたいと思います。
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細々と仕事をしてきた乗合い馬車が、悪者をつかまえます。やわらかな色合いのあたたかい絵本です。
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ロンドン空港で働く蒸気ローラーがギャングの一味をつかまえます。文、絵、訳ともにすぐれた絵本。
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いかにもイギリスの田舎らしい風物の中で、小馬のトビーがひっぱる小さな消防車が活躍します。
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年をとってしまった機関車のやえもん。くず鉄にされる運命が待っていたのですが、ある日、交通博物館の人がゆずってほしいと申しこんできました。
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働き疲れた老機関車がこっそり夜のひとり旅に出かけます。機関車と少年の冒険と友情を描くほのぼのとしたファンタジー。
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ちいさな機関車のちゅうちゅうは、いつも客車や貨車を引いて小さな駅と大きな駅の間を走ります。ある日ちゅうちゅうは、みんなの注目を集めたくて、ひとりだけで走り出してしまいます。威勢よく走るちゅうちゅうに、まわりのみんなは驚き、怒り出します。やがて日が暮れて、石炭も水も少なくなり、古い線路に迷い込んでとうとう止まってしまったちゅうちゅう。そこに迎えに来てくれたのは、最新式の汽車にのった機関士でした。
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文豪が残した昭和のエンタメ小説! 時は昭和30年代、知り合った自動車解体業「ぽんこつ屋」の若者と女子大生。その恋の行方は?
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ムギと王さま―本の小べや〈1〉
エリナー ファージョン (著), エドワード・アーディゾーニ (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)
幼い日,本のぎっしりつまった古い小べやでひねもす読みふけった本の思い出―それはエリナー・ファージョンに幻想ゆたかな現代のおとぎ話を生みださせる母胎となりました.みずみずしい感性と空想力で紡ぎだされた,国際アンデルセン賞作家の美しい自選短篇集
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天国を出ていく―本の小べや〈2〉
エリナー・ファージョン (著), エドワード・アーディゾーニ (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)
幼い日,本がぎっしりつまった古い小べやでひねもす読みふけった本の思い出―それはエリナー・ファージョンに幻想ゆたかな現代のおとぎ話を生みださせる母胎となりました.みずみずしい感性と空想力で紡ぎだされた,国際アンデルセン賞作家の美しい自選短編集から,この巻には13編を収めます
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高いビルにはしごをのばして火を消すことのできる、はしご車ののっぽくん。たくさんの水で激しい炎も消すことのできる高圧車のばんぷくん。けが人を運んで助ける救急車のいちもくさん。大きくて立派な働きをするみんなは、いつも小さな消防自動車じぷたを「ちびっこ」あつかいしていました。でも、道がせまい山の中で火事がおこりました。このままでは山火事になってしまいます。そんなとき、出動を命じられたのはなんとじぷたでした。
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ジェインは、お気に入りのピンクの毛布を鳥に持っていかれ悲しみますが、毛布が赤ちゃん鳥の巣になることを知って…。
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タイの国を舞台に、心やさしい九月姫と八人のいじわるな姉さんたちが、歌のじょうずなウグイスをめぐって広げる物語。イギリスの作家モームの唯一の童話。(「BOOK」データベースより)
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