今日の一冊「小さなローラー」
今日、ご紹介するのは絵本です。
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今日の一冊
ロンドン空港で働く蒸気ローラーがギャングの一味をつかまえます。文、絵、訳ともにすぐれた絵本。
このグレアム・グリーンの「小さな」絵本シリーズ、挿し絵、内容、翻訳、三拍子そろってよい本ですので、再注目されてほしいです。
一つだけまだ読めていない「小さなしょうぼうじどうしゃ」も読んでみたいです。
「きかんしゃ」
「ローラー」
「乗合い馬車」
それぞれがそれぞれに、見所が違うのですが、この「小さなローラー」は密輸組織がおもしろいです。
というより、この本、ちびローラーよりも、密輸組織がどのようなもので、どのような秘密の組織で、裏の手を使って警察の手をかいくぐっているか、という説明がほとんどです。
密輸組織の名前は「黒い手」 と言いまして、暗号を使います。
これが、見開きでされたその暗号です。
アーディゾーニ氏の挿し絵のさえわたる所です。
休みなしに働くちびローラー者は、風で飛んできたこの暗号の紙を見つけます。
絵本の中ではさらっとした紹介を、カバーの「訳者のことば」で、阿川弘之さんが詳細に説明をしています。
この絵本で、訳者がいちばん困ったのは、14ページと15ページの暗号です。英語の原文をしるし、お母さん方のために説明をしておこうと思います。
最初が肉(meat) の絵で、 meatは meet(会う)に通じます。
次はトランプのキング(King)と、典型的なスコットランド人 (Scott) の服装です。
昇る太陽は、すなわち朝(morning)を意味し、17はそのまま17日(17th)、 Uはyouになります。
そのあとの書類のようなものは、遺言書(will)です。
Cがsee、 Aは a、 旅行鞄(suitcase)、 荷札または名札(labell)、 荷物運送人 (carter)とつづきます。
その次は、クリケットの棒が倒れているところだから、アウト (out)。つまり、 セーフ、アウトのアウトでしょう。
side と theは、逆さになっているだけ。
柵のような絵は、牧場などにある門(gate)、手は、9ページにある「黒い手』グループのサインというわけで、これを全部つなぐと、「Meet King and Scott morning 17th! You will see a suitcase labelled Carter outside the gate.]となるというわけです。 (阿川弘之)
ものすごく真面目な説明です。
面白いのは、この「訳者のことば」はカバーの折り返しに書かれていますので、ほとんど文字数がない、そのわずかなスペースをさいて、この当時の「乗り物状況」の説明をちゃんと書いている事です。
こちらの「小さなローラー」ではこんな感じです。
中に英国のコメット・ジェット機のことが出てきますが、本が最初に書かれた1953年ごろ、コメットは世界でただ一つのジェット旅客機でした。
先日紹介した「小さなきかんしゃ」の方には、こうでした。
この本の主人公「ちびきかんしゃ」は、導輪(1番前の小さな車輪) 1、動輪(ピストンで動かす大きな車輪) 1、後輪1、いわゆる「1-1-1」型式の、珍しい小型機関車です。急行をひく機関車には「2-3-0」の型式と,「2-3-1」の型式とが出てきます。
もっとも、これは子どものためのお話ですから、英国国鉄に、これとそっくり同じ蒸気機関車がいたかどうか、私は知りません。
何だか人柄も感じられますし、ちょっと笑えます。
「私は知りません」という所などです。
わからない所はわからない!
そこまで書くところが、細部まで手を抜かない感じです。
この説明からも、真面目で細部まで気を使う、きちっとした阿川さんの性格がうかがえます。
とても好感が持てます。
このお話は、小さなローラー車がこの密輸組織を捕まえるのですが、ほとんどが密輸組織の方に主に話が割かれていて、私が読んだ「小さな」三作の中でも、お話としてはそれほどまとまっていない方かもしれません。
でも、絵や翻訳がそのような所を補ってあまりある、とても面白い!と思える絵本でした。
小さなローラー (グレアム・グリーンの乗りもの絵本) 単行本 - 1976/3/15 グレアム・グリーン (著), エドワード・アーディゾーニ (イラスト), 阿川 弘之 (翻訳)
ロンドン空港で働く蒸気ローラーがギャングの一味をつかまえます。文、絵、訳ともにすぐれた絵本。
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小さなきかんしゃ (グレアム・グリーンの乗りもの絵本) 単行本 - 1975/1/20 グレアム・グリーン (著), エドワード・アーディゾーニ (イラスト), 阿川 弘之 (翻訳)
『第三の男』などで有名な、イギリスの作家の初めての子どもの本。ちび機関車が冒険の旅に出ます。
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小さな乗合い馬車 (グレアム・グリーンの乗りもの絵本) 単行本 - 1976/3/15 グレアム・グリーン (著), エドワード・アーディゾーニ (イラスト), 阿川 弘之 (翻訳)
細々と仕事をしてきた乗合い馬車が、悪者をつかまえます。やわらかな色合いのあたたかい絵本です。
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小さなしょうぼうしゃ (グレアム・グリーンの乗りもの絵本) 単行本 - 1975/11/20 グレアム・グリーン (著), エドワード・アーディゾーニ (イラスト), 阿川 弘之 (翻訳)
いかにもイギリスの田舎らしい風物の中で、小馬のトビーがひっぱる小さな消防車が活躍します。
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きかんしゃやえもん (岩波の子どもの本) 単行本 - 1959/12/5 阿川 弘之 (著), 岡部 冬彦 (イラスト)
年をとってしまった機関車のやえもん。くず鉄にされる運命が待っていたのですが、ある日、交通博物館の人がゆずってほしいと申しこんできました。
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ムギと王さま―本の小べや〈1〉 (岩波少年文庫) 単行本 - 2001/5/18 エリナー ファージョン (著), エドワード・アーディゾーニ (イラスト), Eleanor Farjeon (原著), Edward Ardizzone (原著), 石井 桃子 (翻訳)
幼い日,本のぎっしりつまった古い小べやでひねもす読みふけった本の思い出―それはエリナー・ファージョンに幻想ゆたかな現代のおとぎ話を生みださせる母胎となりました.みずみずしい感性と空想力で紡ぎだされた,国際アンデルセン賞作家の美しい自選短篇集
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天国を出ていく―本の小べや〈2〉 (岩波少年文庫) 単行本(ソフトカバー) - 2001/6/18 エリナー・ファージョン (著), エドワード・アーディゾーニ (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)
幼い日,本がぎっしりつまった古い小べやでひねもす読みふけった本の思い出―それはエリナー・ファージョンに幻想ゆたかな現代のおとぎ話を生みださせる母胎となりました.みずみずしい感性と空想力で紡ぎだされた,国際アンデルセン賞作家の美しい自選短編集から,この巻には13編を収めます
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