~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

今日の一冊「きかんしゃ やえもん」

今日、ご紹介するのは絵本です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

きかんしゃやえもん
阿川 弘之 (著), 岡部 冬彦 (イラスト)

年をとってしまった機関車のやえもん。くず鉄にされる運命が待っていたのですが、ある日、交通博物館の人がゆずってほしいと申しこんできました。

 

乗り物シリーズご紹介さいごの一冊(まだやるかもしれませんけど…)は、訳された阿川弘之さんに敬意を表して、「きかんしゃ やえもん」にしようと思います。

 

この本が並んでいるたびに、ああ、まだ読まれ続けているんだな、愛されているな、と思います。

 

やっぱり、鉄じゃなくても、蒸気機関車というのはちょっと一種特別です。
グレアム・グリーンの「ちいさなきかんしゃ」の「訳者の言葉」に、阿川弘之さんはこんな風に書いていて、おもわずにっこりです。

 

蒸気機関車は、世界じゅうの鉄道からしだいに姿を消していこうとしています。日本ではもちろんのこと、古いものをあんなに大事にする英国でも、もうほとんど見られなくなりました。それにもかかわらず、蒸気機関車は、相変わらず子どもたちの人気者ですね。
黒い煙と白い蒸気をはいて勢いよく走る姿が、電気機関車ディーゼル機関車とちがって、ほんとに生き物のような感じを人にあたえるからでしょう。

 

「きかんしゃ やえもん」の魅力をいくつか挙げてみると…。

 

語り口がとてもおもしろいです。
語りと汽車の擬音がまじりあって、いい味を出しています。

 

「おれだって しゃあ、わかい ころには しゃあ、たくさんの ひとを のせて しゃあ、すごい すぴーどで しゃあ、おおきな とかいから とかいへ しゃあ、はしったものだが しゃあ」

 

あしや せなかが いたいので、えきを でるときは、
「ひゃあ!」と、ひとこえ、ひめいを あげました。それから、
「しゃっ
しゃっ しゃっ
しゃっ しゃっ しゃっ
しゃっ しゃっ しゃっ
しゃっ しゃくだ しゃくだ しゃくだ……」
と おこりながら はしりだします。

 

この出るときの「ひゃあ!」
よくわかります。
映画などでしか見たり聞いたりしたことはありませんが…。

実は読み語りではこの「やえもん」は大得意の一冊で、いつもウケが良いです。

 

「いたずらきかんしゃ ちゅうちゅう」は息切れがしてきて、本当に汽車の音が出せているか不安で仕方なく、とても苦手なのですが、この「やえもん」は実にバランスにすぐれているのです。

 

☟読み語りする上で「ちゅうちゅう」がいかに息切れ必須でひどいかの記事です。

whichbook.hatenablog.com

 

他の電車もみんな可愛いです。

うしろの客車の
「ちゃんちゃん かたかた けっとん」
れえる・ばす
「けろろん ろんろん けろろん ろん」
も可愛くて大好きです。

 

全編、音楽が流れているようで、しかもそれが電車の音そのままです。

 

とっきゅうの

「ら ら らん らん ぱあん」とさけんで、とまらずに いってしまいました。

これ、めっちゃわかる~!!今でもそうです。
電車が通過するときの音の変化をすごくよくあらわしています。

 

 

以前から疑問だった「れえる・ばす」
レールバス - Wiki

 

私は見たことありませんが、こんな可愛い電車があったんだなあと、珍しく興味深くいつも読みます。

 

子どもたちに「なに?」と聞かれたりするのですが、読んでいる途中は流れを途切れさせないため、なるべく聞こえないふりをして知らんふりをすることにしているのと、ほんとに見たことがないので説明できません。

 

(ここに発射風景がありますが、確かにケロケロケロケロ、と言っているように聞こえます!)

 

この冒頭の、あらゆる発射風景の音楽に満ちた描写に、読んでいるともう子どもたちは釘付けです。
今にいたるまで売られているのもしかりです。
簡潔で優しい文章、ユーモアがあふれています。

 

 

やえもんはもう、年を取って古くなっているので、貨物列車に意地悪を言われました。

 

おべんとうに石炭を食べている(この表現がすごく好きです)ので、「おなかのなかまでまっくろけのびんぼうぎしゃ」と笑われます。

 

うっかり笑ってしまったれえる・ばすのいちろうとはるこ。
このときのやえもんの怒り顔がそれはそれはもう、表情豊かですごいです。

 

怒ったまま走り出したやえもんは、火の粉をはいてそれがいなむらに燃え付いてしまったことに気が付きませんでした。

 

農家の人たちが騒ぎ始めるのですけど、何となくサザエさんの絵を思わせるような、あのタッチのダイナミックな動きと表情がある絵で、怒って集まってくる様子、赤くなって困っているやえもん、必死でなだめている鉄道の人…。

 

見ているだけでこちらの胸に迫ってくるような迫力があります。

 

やえもんも泣いているので、このあたりで、子どもたちはいつもカンカンに腹を立てています。

 

貨物列車が意地悪を言ったぐらいでは、「ひでえ」「最低」とか言うだけなのですが、この農家の人たちに対しては、憤激のあまり逆暴動を起こしかねないぐらいざわつきます。

 

興奮のあまり演説をぶちあげはじめる子供もいるので、先を読むのが大変です。

 

このあと、「たいかくけんさ」を経て、やえもんは「くずてつ」にされることに決まります。
このあたりに来ると、もう子どもたちはシーーンとしています。
鼻をすすって泣いてる子さえいます。

 

あまりにもやえもんが、その声の音楽がゆたかで、表情がゆたかで、生き生きと怒ったり悲しんだりしているので、もう他人事とはとても思えないんです。

 

あわや、というところで、交通博物館の人が現れてゆずってもらえないかと聞いてきます。

 

やえもんを愛する子供たちが、やえもんをおそうじするシーンでは、もう子どもたちの心が絵の中の子供たちと一体となっています。

 

やえもんの満面の笑みのニコニコ顔!

 

 

愛されて来た古いものを、役に立たないからと捨ててしまうのではなくて、大切にし、保存し、存在を伝えていくことの大切さ。

 

それはやっぱり、絵や神社仏閣や、さまざまな有形無形を問わない文化財にもとても大切なことですので、そのような心も子どもたちにさりげなく伝えてくれる本です。

 

このやさしくあたたかく、ユーモラスな物語を、阿川弘之さんが残したことは大きいです。

 

乗り物好きなお子さんたちには、もちろん図鑑を買ってあげるのもいいですけど、このような乗り物を愛してきた作家さんたちの「物語」があることも知って欲しいです。


ぜひ、図鑑とセットで売りだしてもらいたいですね!
(重版出来で見ましたけど、鉄の人用の棚に置くのもいいのかも!?)

 

いま、あちこちを見て回って、本屋さんで今でも平積みで売られている阿川弘之さんの本というのは私の知る限り「きかんしゃやえもん」が一番です。

 

山本五十六」などのいかめしい小説で知られているし、娘さんの影響で、昭和のカミナリ親父・頑固者のイメージがすっかり強くなってしまった阿川弘之さんなのですが、次第に本屋の棚からも、その小説は姿を消しています。

 

その人が子供たちに書いたこの一冊の本が、今でも書店の棚を飾る。

 

もしかすると…ですが、(不吉なこと言って申し訳ないですが)時が過ぎ、阿川佐和子さんのエッセイさえ忘れ去られてしまう時代が来たとしても、この「きかんしゃやえもん」はいつまでも子供たちに愛され、本屋で見られ続けていくのかもしれません。

 

いやきっと長く愛されていくだろう、そういう普遍性を感じさせる一冊です。

 

 

 

 

小さなきかんしゃ
グレアム・グリーン (著), エドワード・アーディゾーニ (イラスト), 阿川 弘之 (翻訳)

『第三の男』などで有名な、イギリスの作家の初めての子どもの本。ちび機関車が冒険の旅に出ます。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

小さなローラー
グレアム・グリーン (著), エドワード・アーディゾーニ (イラスト), 阿川 弘之 (翻訳)

ロンドン空港で働く蒸気ローラーがギャングの一味をつかまえます。文、絵、訳ともにすぐれた絵本。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

小さな乗合い馬車
グレアム・グリーン (著), エドワード・アーディゾーニ (イラスト), 阿川 弘之 (翻訳)

細々と仕事をしてきた乗合い馬車が、悪者をつかまえます。やわらかな色合いのあたたかい絵本です。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

小さなしょうぼうしゃ
グレアム・グリーン (著), エドワード・アーディゾーニ (イラスト), 阿川 弘之 (翻訳)

いかにもイギリスの田舎らしい風物の中で、小馬のトビーがひっぱる小さな消防車が活躍します。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

きかんしゃ1414
フリードリヒ=フェルト (著), 赤坂 三好 (イラスト), 鈴木 武樹 (翻訳)

働き疲れた老機関車がこっそり夜のひとり旅に出かけます。機関車と少年の冒険と友情を描くほのぼのとしたファンタジー

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

いたずらきかんしゃちゅうちゅう
バージニア・リー・バートン (著, イラスト), むらおか はなこ (翻訳)

ちいさな機関車のちゅうちゅうは、いつも客車や貨車を引いて小さな駅と大きな駅の間を走ります。ある日ちゅうちゅうは、みんなの注目を集めたくて、ひとりだけで走り出してしまいます。威勢よく走るちゅうちゅうに、まわりのみんなは驚き、怒り出します。やがて日が暮れて、石炭も水も少なくなり、古い線路に迷い込んでとうとう止まってしまったちゅうちゅう。そこに迎えに来てくれたのは、最新式の汽車にのった機関士でした。

 

 

 

 

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