大人が読む児童書「写楽暗殺」3 めくるめく伝統芸能の世界
今日、ご紹介するのは児童書です。
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今日の一冊
大人が読む児童書「写楽暗殺」2 あれ、私たち入れ替わっちゃったぁ~?
小5女子が男子になって江戸時代へ行って写楽と知り合って狂言ミステリーに巻き込まれる。
こんな荒唐無稽な物語をよく思いついたな!と思うほど、あれこれ入り混じっていますが、まったく違和感がありません。
あとがきで今江祥智さん、カニズバーグの来日の際、お会いしてちょうど「レオナルドダヴィンチ」について書いているという言葉に刺激を受けてのことだと書かれています。
石井桃子さんもファージョンにお会いしているそうですし、有名な児童文学者のかたたちは、国境を越えて親交があったのだなと思います。
「クローディアの秘密」では、ミケランジェロの彫像を生かしていた。
ならばこちらは日本だ、写楽を!ということのようです。
文化芸術と児童文学が密接に関わっている所がすごいです。
このお話、英訳にしてもすごーくウケると思うのですけど、どうして消えてしまってるいるのか…。
やっぱり、小5の女子にきったはったの流血沙汰はキツいからでしょうか?
今ならむしろ逆にいけると思うんですが。
漫画化もめっちゃ行けると思います。
ストーリーは夕一郎の狂言の稽古・写楽の絵の修行・お栄ちゃんをからめて、夕一郎のお父さんが巻き込まれた事件の謎と、写楽が写楽として躍進していく過程を描いています。
ちょっと別の面から、このお話に出て来る伝統芸能の一覧みたいなのを、リストアップしてみたいと思います。
◇
🎀夕一郎がお栄ちゃんに来て欲しいという心をこめて声を張り上げた狂言の演目「居杭」
🎀師匠に斎藤十郎兵衛のことを聞きたくてがんばる演目、狂言「金津」
🎀斎藤十郎兵衛は、お栄ちゃんと夕一郎が動いている姿を描いてみたいという。ただ動いているのではつまらないと、夕一郎はお栄ちゃんにも簡単な稽古をつける。狂言「くさびら」
ここの、「くさびら」できのこの精となった二人を描く写楽の絵の描写がすごいです。
機会があればぜひ読んでみて欲しいです。
🎀「くさびら」を描いた絵から、斎藤十郎兵衛はじめての絵の注文を受ける。切能「雷電」、脇能「賀茂」、鳥羽僧正の絵(鳥獣戯画)、狂言「神鳴」
🎀お栄ちゃんを呼び出したくて(またか)声を張り上げる。狂言「髭櫓」
この「髭櫓(ひげやぐら)」、わたしが「附子」以外ではじめて見た狂言なのですが、すごく面白くてとても印象に残っています。
でっかい毛抜きで男性の髭を引っ張ります。
🎀斎藤十郎兵衛、夕一郎、お栄ちゃん三人で会食。(伝統芸能ではないですが)山芋のたたき、汲みあげ湯葉のすまし汁、鮎の背ごし、若竹蒸し、すずきの塩焼き、あなご豆腐。
めっちゃ美味しそう。
🎀勝川春章、鈴木春信、鳥居清長への言及あり。
🎀少しだけお酒をもらって酔ってしまった お栄ちゃんを起こすのに、歌で謎かけする斎藤十郎兵衛、何て風流な…。狂言「水汲み」
この後で、夕一郎とお栄ちゃんは、謎の四人組に襲われます。
斎藤十郎兵衛は絵の修行で江戸へ。
🎀絵に悩む斎藤十郎兵衛が、写楽と名乗るようになる。狂言「菓爭(このみあらそい)」を思い出す。
🎀襲われた夕一郎は、敵の眼をくらますために寺住まいへ。狂言「花折」
🎀お栄ちゃんも危険回避のため江戸へ。寄席で噺家に扇子を貸したのを期に、蔦谷重三郎と知り合い、蔦谷は写楽の絵に目を止める。歌麿の浮世絵をもらう。
🎀お栄ちゃんは蔦谷重三郎に舟遊びに招かれる。蜀山人や十返舎一九(東海道中膝栗毛の作者)が乗っている。
🎀江戸で夕一郎を恋しがるお栄ちゃん、狂言「柿山伏」
🎀寺で再び襲われた夕一郎(すんごい怖いです)、御高祖頭巾で女装して江戸へ。船の中で北斎に出会う。
北斎が、べらんめえなきっぷのいい絵師で、めっちゃカッコいいいです。
また、この男子になってしまった女子が女装するという、誰も思いつかなさそうな逆転シチュも見逃せません。
夕一郎、ここでうとうとしたときに、一瞬、夕子であった自分を取り戻しそうになります。
🎀十郎兵衛、役者絵を描いて描いて描きまくる。
三代目市川高麗蔵の志賀大七
中山富三郎の宮城野
市川鰕蔵の竹村定之進
三世大谷鬼次の江戸兵衛(たぶん一番有名なやつです)
谷村虎蔵の鷲塚八平次
どれも最高傑作ばかりです。
🎀写楽を探し回る蔦谷の受難。山東京伝「仕懸文庫」・ 「青楼昼之世界錦之裏」 ・「手段逼物娼妓絹篩」の発禁処分で賭けを張る絵師を探している。
この絢爛豪華な文化芸術が、ミステリーな事件と、追われる子供たちの話のところどころにはさまれていて、まるで絵巻物を見ているかのようです。
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江戸を代表する浮世絵師の1人、東洲斎写楽の役者絵を集めたコレクションです。
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役者絵で名高い浮世絵師・写楽は、その生涯がまったく謎につつまれ、今日まで多種多様の人物像が描かれてきたが、その決着はついていない。本書は、美術に造詣の深い、日本文学界の巨匠である著者が、その鋭い分析と大胆な推理に基づいて、日本美術の点と線を明かす、興味深いひとつの試論である。
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なぜ「能」と「狂言」はセットになることが多いの?初心者はどこに注目すれば楽しめる?難しそうだけど理解できる?眠くなったらどうしよう…。名曲「野宮」を一曲丸ごと解説しながら、能の番組の見どころや衣装、作り物の鑑賞ポイントを紹介します。
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隣の山に、どこより早く見事に桜が咲いているのを見つけたタチバナは、一族を引き連れ花見の宴を始めます。それを見た山の住人、栗は面白くありません。文句を言いに押しかける栗とタチバナ一族の駆け引きが笑いを誘います。しかし多勢に無勢、栗はやり込められ逃げ帰ります。が、今度は栗が山の木の実仲間をひきつれ乗り込み、桜の下での合戦の大団円。さて、その勝敗やいかに?果物を主人公とする珍しいこの物語は、狂言「木の実争い」を下敷きにして、華やかでチャーミングな絵を得て、見事な絵本になりました。
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