オーノワ夫人「青い鳥」1 バレエ「ブルー・バード」の元ネタ
バレエの観劇をする機会があったので見に行ってきました。
やはりコロナが猛威を振るっている中とあって、すごく気を使っていて、席も離していましたし、おしゃべりは禁止、スタッフの数も減らしたらしく、とても大変そうでした。
その中に、「ブルーバード」がありました。
私はバレエの漫画が大好きなのですが、その中で必ずと言っていいほど出てくる、超定番のバレエの演目です。
もう正直、またブルーバードかよ、と思うほど有名です。
きっと、バレエ漫画読まれたり、バレエにちらっと関わったりする方はみんな、ブルーバードはご存知のことと思います。
衣装も定番、男性は上から下まで青く、青いターバンを巻いて、額の所に鳥の羽が一枚、ついています。
けれど、このお話は何から来ているのか、ちゃんと調べたことがありませんでした。
漠然と、チルチルミチルの青い鳥かな?と思っていました。
パンフレットにはフロリナ王女と書いてあります。
チルチルミチルにそんな名前の王女さま出てきただろうか?
はじめてちゃんともとになっているお話を検索してみようとしました。
しかも、と言うのも何ですが、この一幕は、チャイコフスキーの大作バレエ音楽「眠りの森の美女」の中の一部にすぎないのです。
一部なので、あまり注目していませんでした。
そこでやっと分かりました。
オーノワ夫人の童話から取られていたのです!
しかも子供の頃、特別に大好きで、何十回となく読み返した記憶のある、一番思い入れのある話ではありませんか。
まさか、バレエの「ブルーバード」がこのオーノワ夫人のお話の「青い鳥」だったなんて…。
衝撃でした。
今までバレエ漫画を読みながら、ブルーバードと書いてあるのを見ながら、日産かよなんて思っていた自分を殴りたいです。
というわけで、今日はオーノワ夫人の「青い鳥」をご紹介したいと思います。
このお話も、常日頃から推している、世界少年少女文学全集の中の一編です。
これほどまでにバレエ界において、「ブルーバード」は有名なのに、バレエ物語などのお話に編纂されたりはしないものなのでしょうか?
この一冊は、この全集の中でも、特に思い入れが深い一冊です。
すごく面白い、ガルガンチュワが入っているのです。
ものすごくエッチな、「きつね物語」も入っています。
(こちらの子供版はエッチな所は削除されています。大人になって、完訳を読んでみて衝撃を受けました)
かつ、フォンテーヌの童話集も面白く、最後の方に乗っているそこそこ長い一編が「青い鳥」です。
この一冊は、ヘビロテでした。
この「青い鳥」のお話が大好きだったのはなぜか。
童話の中でもかなり、描写が詳細なのです。
その描写も、宝石やら宝物やら、服装やら髪型についてです。
オーノワ夫人の時代はルイ14世、太陽王のどまんなかです、
すごくロココなイメージなんだと思います。
フランソワ・ブーシェの絵とか、「ぶらんこ」とか、そういうイメージです。
ウィキによれば、オーノワ夫人の童話が書かれたのは、グリム兄弟がまとめるよりも135年も前。
語り聞かせる形式だと書かれているので、まさに口頭で話してきかせる、むかしがたりの世界により近いのだと思います。
◇
しかしこの本の悪役は実に強烈です。
基本は、シンデレラとあまり代わりがない、継母と継姉にいじめられるお話なのですけど、ライバル枠の継姉の名前がまた強烈です。
トリュイトンヌというのがその名前です。
フロリナ王女、というのは定着しているようですが、こちらの「少年少女文学全集」の 氏の訳では、フロリーヌになっていました。
フランス読みですね。
フロリーヌVSトリュイトンヌ。
そして、いかにこのトリュイトンヌがきもちわるいほど不細工か、という描写も、美しい宝石や服などの描写と同じぐらい詳細です。
このわかりやすいひきたて役は、子どもにはとても面白いです。
これほど有名な「ブルーバード」なのに、どうしてこんなに流通していないのか不思議に思っていましたが、読み返してみたところ、わからなくもないな、と思いました。
この「トリュイトンヌがいかに不細工か」というのを延々とあげつらっているのはちょっと親たちには微妙なのかもしれません。
容貌というのは、先天的な要素なわけですし…。
逆に、サムエル・マルシャークの「森は生きている」のままむすめなどは、すごく底意地が悪いだけで、容貌についてはそれほど書かれていません。
一応、擁護してみると、たぶん、昔話の中で不細工だというのは実際にお顔の問題とは意味が違うのではないでしょうか。
心の醜さと外見も醜さが直結するのが、昔話の世界なのだと思います。
この「青い鳥」が入っている本ですが、図書館にまだ残っている所もあると思いますので、探したい方のために、念のために書いておくと
創元社「世界少年少女文学全集」11巻 フランス編 1
です。
◇
冒頭は、愛する王妃さまを失って悲しみにくれている王さまからはじまります。
あまりにも嘆き悲しんでいるので、誰もなぐさめることができません。
その悲しみ方がすごいです。
まる一週間、部屋にとじこもったきり、悲しさのあまり身もだえしては、壁に頭をぶっつけかねないありさまなので、家来たちは、いのちをたつおつもりなのではないかと心配して、壁と壁かけのあいだに毛ぶとんをあて、ぶつかってもけがのないようにしました。
どんだけやねん。
しかし、愛が深いということなので、ここはおとなしく感動していたのですが、こういう愛の深い感動的な夫婦の話ではじまったにもかかわらず、妙な方向に話は展開していきます。
誰もなぐさめることができない王さまの前に、「黒のヴェールにすその長い喪服をつけ、黒のマントを着たひとりの女」が現れて、王さまの前でわっと泣き出しました。
王様「 ( ゚д゚ )!?」
その女の人の言い分「私はおなぐさめするために着たのではない。もっとお悲しみになるようにしてさしあげようと思った」
この女性の夫も死んだばかりなので、王さまの気持ちがよくわかるということなのです。
この二人は、お互いの亡き配偶者について、昼も夜もあけずに語り合うこととになりますが、その結果、この女性は誰よりも王さまの心をとらえることとなってしまいました。
この女性、「なかなかりこうもの」で、頃合いを見計らってヴェールを持ち上げます。
王さまも、いったいどんな顔なのだろうと気になっていました。
色つやのよい顔の、目のふちが黒くくぼんだ奥に、青い大きなひとみが、生き生きとかがやいているのを見て、心の晴れる思いがしました。
何やらあやしい雰囲気です。
王さまはだんだん亡くなった妻の話をすることが少なくなり、結果として、この女性と結婚することになりました。
この女性こそ、トリュイトンヌの母であり、フロリーヌ姫(フロリナ王女)をいじめまくることになる、継母の女王なのでした。
何とも不気味なはじまりです。この最初のエピソードは、がっちりと読み手の心をつかみます。
悲しみに対して悲しみという共感をもって接することで、相手を思うままにしてしまう。
共感が大事、とよく言われていますよね。
「論理的に解決法を探すのが、相手の求めていることじゃない」と。
まずは話を聞いてあげること。同じ経験をした人がいるんだ!と語り合うことが癒しになる。
寄り添うこの上なく優しい心の働きのようでありながら、すべてが演技であり、たくらまれたものであった(らしき)ことがなんとなく推測されます。
オーノワ夫人、強烈なひとことを、するっと差し挟んでいます。
たいていの場合、ひとの弱点を知るだけで、人の心をつかみ、その人を思いどおりにすることができるものです。
ところどころに、このような、世慣れた人の人生訓のようなものが入っているのが、このお話の魅力です。
ただのおとぎ話というよりも、よりいっそう一つの「創作」であり、「物語」であるという様相を呈しています。
つづきます。
…続くんかーい!!
さてこんな、中途半端な所ではありますが、
いつも読んで下さっている皆さまに感謝申し上げます。
コロナで大変な時ではありますが、
来年こそは落ち着くことを願って、
どうぞよい新年をお迎えください。
(年賀状みたいになっちゃいまいました)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「 青い鳥」はないのですが、オーノワ夫人の「美女と野獣」です。
美女と野獣 (ワンス・アポンナ・タイム・シリーズ)
ドーノワ夫人 (著), エティエンヌ・ドレセール (イラスト), 石川 康弘 (翻訳)
そまつな服を着て、このうえなくみじめなくらしをつづけながら、娘たちはいつも、むかしのぜいたくで楽しかった生活をなつかしんでいました。ただ末娘だけは、明るく、強く、生きようとしていました。彼女は、父親がはじめて不幸に見舞われたとき、だれよりもなぎけ悲しみました。けれども、もちまえの快活さを取りもどすと、つらい生活にたえて、仕事に取りかかって、父親や兄さんたちをできるだけなぐさめようとしたり、姉さんたちの気持ちが、歌やダンスでまぎれるようにつとめるのでした。ボローニャ・ブックフェア特別賞受賞のシリーズ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「1年後のこの時刻にこの世でいちばんかわいい犬を探して来た者にこの国を与える」 王の言葉に3人の王子は旅に出ます。17世紀フランスの、話ができる白い猫の繰り広げる、不思議で華麗な世界をのぞいてみて下さい。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
こちらのオーノワ夫人の「青い鳥」とはまったく関係のない、メーテルリンクの「青い鳥」ですが、せっかくなのでリンクを置いておくことにしました。
貧しいきこりの子どもチルチルとミチルは、「幸福」の象徴である「青い鳥」をさがして、思い出の国や夜の御殿、未来の国などを旅します.ノーベル賞作家による、有名な戯曲.新訳.
「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492
◆プロジェクト・グーテンベルクについて
☞Wikiの説明ページ
プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリカ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館。
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