~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

オーノワ夫人「青い鳥」3 バレエ「ブルーバード」の衣装の羽

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

「青い鳥」の内容自体は、昨日ざっくり紹介したとおりなのですが、このあとは私の独断と偏見による面白かったささいな所を紹介していきたいと思います。

 

これで興味を持った方は、ぜひ図書館で探してみてください。
国立国会図書館に所蔵されているのは確認ずみです。

iss.ndl.go.jp

 

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オーノワ夫人「青い鳥」1 バレエ「ブルー・バード」の元ネタ

オーノワ夫人「青い鳥」2 フロリーヌ姫=フロリナ王女

 

 

 

王妃は、家来に命じてフロリーヌの悪口を言わせますが、
シャルマン「どうせねたみでしょ」
聞く耳を持ちません。

 

そこで、気の利いた家来が忖度してフロリーヌをちょっと褒めてみると、シャルマンは顔色が変わって嬉しそうになります。

 

ほんとうに、愛する気持というものは、いくらかくしてるかくしきれるものではありません。したいあう人のくちびるにも、まなざしにも、声色にもみんな愛の心があらわれます。だまっていても、話していても、喜ぶときも、悲しむときも、したいあう人の心というものは、かならず顔に出てしまうのです。

 

いかにもフランスらしい文章だなあ、と思います。

 

王妃がトリュイトンヌをすすめればすすめるほど、意地になってあからさまな無視をするシャルマン王。
シャルマン王が意地になればなるほど、後には引けない王妃は芸能事務所顔負けの超ゴリ押し作戦を展開します。

 

ここで面白かったことが二つ。
王妃が懐柔策で用意した、豪勢な贈り物と、シャルマン王の乗り物です。

 

豪勢な贈り物「愛の勲章」

 

金の心臓にまっかな七宝を焼きつけ、いくつかの矢でそのまわりをとりまき、そのうちの一本が、このハートをつらぬいていて、そのハートには、「ただ一矢、わが心をきずつけん」という文字がきざまれていました。王妃は、まえもって、シャルマン王のために、だちょうのたまごほどもある大粒のルビーでハートをつくらせておきましたし、矢の一本一本は長さが指ほどもあるダイヤ一個でつくらせておきました。このハートを首にかけるくさりは、真珠をつらねてつくってあり、その真珠は、いちばん小さいのでも、五百グラムはあろうという重さのものでした。

 

そもそもの「金の心臓にまっかな七宝を焼きつけ」たものは、王妃が結婚するときに王さまにお願いして作らせたものなんだそうです。

シャルマン王への賄賂は、心臓をルビーで作っているので、七宝を焼き付けたものよりもさらに価値がありそうです。

 

勲章にそえて、宝石をちりばめた金の表紙の、子牛皮を紙のかわりにしたすばらしいにしき絵のはいった本が一さつとどけられました。その本には、「愛の勲章」をつける者の守らなければならないことが、美しい文章で書いてありました。

 

細かいです。

 

シャルマン王は、この勲章を見て、しばらくお礼のことばも出ないほどおどろいてしまいました。 

  

まあ、そうでしょうね。

 

今、気がついたのですけど、このシャルマン、王子さまではなくて王さまでした。

てっきりフロリーヌからだと思い込んだシャルマン王、トリュイトンヌからだと聞いた途端に態度を180度転換、おそろしく冷たく突っ返します。

 

フロリーヌは王妃によって幽閉されてしまいますが、ここでうらみごとを言うときに「なまじ、ほんのすこし、きれいに生まれついたために、かえって、しあわせになるどころか、ひどいめにあわされるばかりなのだ」なんて言ってます。

 

本人も容姿には多少の(?)自信があるということか…。

 

シャルマン王は、幽閉されたフロリーヌと小窓の所で逢引する算段を立てますが、仲介者の召使は裏切って王妃に密告します。

 

王妃は、すぐさま、自分の娘を小窓のところへださせようと考えて、トリュイトンヌにそのむねを言いきかせました。トリュイトンヌは、生まれついての大ばかでしたが、このときばかりはぬけめがなかったのです。

 

いちいち、トリュイトンヌサゲ↓には余念がありません。
いかにも、口頭で話してきかせているような内容です。

 

シャルマンはトリュイトンヌをフロリーヌだと思いこんで勘違いの相談をするわけですが、いくら闇夜+ヴェールの二重用心をしていたとしても、何で間違えるかな?と思わなくもありません。

 

しかしそれよりも面白いのが、シャルマン王は、魔法の空とぶ乗り物を持っているのですが、これがつばさのはえたかえるが引いているという所です。

 

これは、「えっ!?」と思って、何度も読み返しました。

 

あれこれ昔話を読んできましたけど、つばさのはえたかえるというのはやはり非常にめずらしくて、すごく記憶に残っています。

 

古くは猿飛佐助、ちょっと前ならNARUTO、忍術で現れる大ガマというのはイメージとしてありますが。しかもこれ、「大がえる」なのです。

 

プリンス・チャーミングはかえるに乗って現れた。

 

 

すっかり勘違いのあまり、トリュイトンヌをフロリーヌと思い込んだ王は、自分の指輪まで与え、合流して逃避行をするのですが、トリュイトンヌは自分の名づけ親の魔女、スーシオの館に誘導します。

 

シャルマンの大がえるも、「友達の魔法使い」にもらっているので、魔女・魔法使いがそれぞれ後ろだてとして存在するようです。

 

大がえるどもは、世界じゅうの地図を心得ていましたから、またたくまに、シャルマン 王とトリュイトンヌを、スー シオの屋敷に案内しました。

 

どんだけかえるの所が好きなんだと思われるでしょうけど、私はドラえもんのどこでもドアより、この大がえるの乗り物が欲しかったです。

 

 

王が青い鳥に変えられてしまうことになるスーシオの館ですが、広間の壁は「すこしもくもりのないすきとおったダイヤ」でできています。
ガラスじゃありません。

ダイヤです。

 

スーシオによって足を動かなくされてしまった王は、「なだめたり、おどしたり、いろいろ有利な条件をもちだしたり」して説得されますが、聞く耳を持ちません。

 

「たたきころすなり、皮をはぐなり、どうとでもするがよい。わたしは、フロリーヌ姫とでなければ、だれとも結婚するものか」

 

これから、王はにくにくしげに二人をにらみつけたまま、いっさいしゃべらなくなってしまいました。
二十日の間、昼も夜も眠らずに、「食べもせず、ねむりもせず、すわりもしないで」頼み込みます。
いや死ぬだろ…。
これだけ言ってだめならあきらめそうなものです。

 

腹をたてたスーシオ、約束をして守らないのだから七年間罰を受けるのだと宣告します。
この罰が青い鳥だったわけですね。
しかしこの王さま、ただおとなしく鳥にされるだけじゃないのです。

 

それまで何を言われてもかたく口をつぐんでいたシャルマン王が、とつぜん大声で答えました。
「こんな、いやな女といっしょにならずにすむのなら、どんなめにあわされようと、そのほうが、よっぽどありがたい。」

 

この嫌いっぷりがまた、ものすごいです。

フロリーヌと結婚できても出来なくても、トリュイトンヌとだけはいやだ、という強い意志を感じます。

 

トリュイトンヌも言い返したりするのですが、冷笑とか皮肉の応酬です。
これだけ拒否されてもまだ結婚したいと考える人の気持ちがわからないです。

 

青い鳥に変えられた描写がとても綺麗です。 

 

からだは小さくなって、空色まじりの美しい長い羽で包まれ、目は星のようにきらきらかがやくまるい目となり、鼻はいつのまにかぞうげのように白いくちばしに変わり、頭の上には、王冠のような白い冠毛がはえ、美しい声でさえずり始めましたが、人間のように口をきくこともできるのでした。

 

頭の上には、王冠のような白い冠毛がはえのところが、バレエで有名なあの、「ブルーバード」の衣装の頭についている羽のことだと思います。

 

飛び回ってからも、愛や悲しみをあらわす花言葉を持つ木ばかりを選んで止まるとか、芸が細かいです。

 

てんにんか(花ことばは「愛」)
糸杉(花ことばは「死」または「悲しみ」)
とちゃんと注釈がついています。

 

止まって歌う歌も、ちゃんと57になっていて、語呂がよいです。

 

にくい王妃ににくらしい
トリュイトンヌの悪だくみ。
どこに姫君かくしたか。

 

という感じです。(割と長い歌ですが)一部抜粋です

 

 

 

 

つづきます。

 

 

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

  

「 青い鳥」はないのですが、オーノワ夫人の「美女と野獣」です。

 

美女と野獣 (ワンス・アポンナ・タイム・シリーズ)
ドーノワ夫人 (著), エティエンヌ・ドレセール (イラスト), 石川 康弘 (翻訳)

そまつな服を着て、このうえなくみじめなくらしをつづけながら、娘たちはいつも、むかしのぜいたくで楽しかった生活をなつかしんでいました。ただ末娘だけは、明るく、強く、生きようとしていました。彼女は、父親がはじめて不幸に見舞われたとき、だれよりもなぎけ悲しみました。けれども、もちまえの快活さを取りもどすと、つらい生活にたえて、仕事に取りかかって、父親や兄さんたちをできるだけなぐさめようとしたり、姉さんたちの気持ちが、歌やダンスでまぎれるようにつとめるのでした。ボローニャ・ブックフェア特別賞受賞のシリーズ。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

白いねこ
オーノワ夫人 (著), こみね ゆら (著)

「1年後のこの時刻にこの世でいちばんかわいい犬を探して来た者にこの国を与える」 王の言葉に3人の王子は旅に出ます。17世紀フランスの、話ができる白い猫の繰り広げる、不思議で華麗な世界をのぞいてみて下さい。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

こちらのオーノワ夫人の「青い鳥」とはまったく関係のないメーテルリンクの「青い鳥」ですが、せっかくなのでリンクを置いておくことにしました。

 

青い鳥
モーリス メーテルリンク (著), 大社 玲子 (イラスト), 末松 氷海子 (翻訳)

貧しいきこりの子どもチルチルとミチルは、「幸福」の象徴である「青い鳥」をさがして、思い出の国や夜の御殿、未来の国などを旅します.ノーベル賞作家による、有名な戯曲.新訳.

 

「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492

 

プロジェクト・グーテンベルクについて
Wikiの説明ページ

プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館

 

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