大人が読む児童書「青い月の石」 1 異世界へ行く資格とは
大人が読む児童書。
「積ん読・解消計画★児童書編」です。
この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
ヨーストはある暗い夜、家の外にあやしい黒い影を目にする。そして次の日、校庭の地面の下からぶきみな男が現れた。その名は地下世界の王、マホッヘルチェ! ヨーストは足あとを追っていくが……。それは月が青くなったときに始まった、少年と仲間のとくべつな冒険の物語。現実とおとぎ話が入り交じる、人気作家のファンタジー。
さて次に何を紹介しようか。
悩んでいると妹子がこれをすすめてきました。
しかも今日は怒っています。
「なんでこれ紹介しないの!?」
「まだ読んでないんだよ」
「早く読んで!早く紹介して!いい本なんだから」
この本は妹子が自分で選んだ本です。
本屋さんの岩波文庫の棚から自分で選びました。
いつも読め読めと言っている親を喜ばせるためのポーズなんじゃないだろうか。
途中で放り出すだろうな。
とかなんとか、ろくなことを考えていませんでした。
しかし、あっという間にというわけではありませんでしたが順調に読み終わり、それからずっとおすすめしてきます。
時間がなかったのもありますが、読むなら腰を据えてきちんと読みたいなと思っていました。
トンケ・ドラフト。オランダの作家さんです。
は、図書館でもよく見かけます。
◇
ぱらぱらっとめくった感じ、ちょっと薄気味悪く怖い冒頭です。
マホッフ・マホッフ・マホッヘルチェ
の文句が目に付きました。
主人公、ヨーストはヤンという子を筆頭にいじめられている様子。
心に苦しみを抱えた子が異世界へ行って冒険をするというのは、よくある内容なので、そういう感じなのかな?
というわけで、妹子のプレッシャーもあってしっかりと腰を据えて読み始めてみました。
普段、読め読めと言っている立場逆転です。
◇
最初のページに、作者の前書きがあります。
最初は何となく読み飛ばしていたのですが、あとでとても重要だったと思ったので、書き留めておきます。
ずっと昔、わたしは、なんともすてきな、わくわくするおとぎ話を読みました。そ の後、それに似たおとぎ話にたくさん出会いましたが、どれを読んでみても、あれほどとくべつなお話はありませんでした。そこで、わたしは、あのお話を自分で書きとめることにしました。書いているうちに、それは、現実が重要な役割を果たす、とても長い冒険物語となりました。
そしてまた、人びとがわすれさった、古い古い歌に出てくる謎の人物 あのマホ ッヘルチェとは、いったい何者だったのかについて、わたしの考えを書くことになったのです。
似たようなおとぎ話にはたくさんであったけれど、どれを読んでもあれほどとくべつなお話はない──。
わたしにとって、先日ご紹介したオーノワ夫人の「青い鳥」などは、これにあたるかもしれません。
また、レアンダーの「沼の中のハイノ」なども...。
◇
主人公は10歳の少年、ヨースト。
10歳というのは小学校4年生ぐらいでしょうか。
ただ無邪気に走り回って遊ぶ年令を抜けて、だんだん、クラスの中での人間関係は複雑になっていく頃です。
「すこし変わった子」ヨースト。
ヨーストには両親がいません。
おばあちゃんに育てられています。
このおばあちゃんは魔女ではないかと言われています。
ヨーストをいじめている子どもたちの筆頭はヤン。
それともうひとつ理由があり、ヨーストは「へんなやつ」「うそつき」「頭がおかしい」と言われています。
たくさんの不思議な話をするのです。
・自分の家の屋根に降り立った火の鳥、残っているその羽
・大きな森に住んでいる魔法使いのオルム
・不思議な呪文が刻まれたおばあちゃんのほうきの柄である棒
空想?おとぎ話?
でも、(このお話では)ヨーストは過去に実際に体験したということになっています。
これが、この本での、他のいじめられっ子たちが飛び込んでいくファンタジーとの大きな違いです。
いじめられている子…。
「はてしない物語」、などもそうですが、私には、もともとファンタジーというのは、「現実の残酷さに苦しんでいる子どもたちの居場所になるところだ」、という意識があります。
物語の主人公になるには、それなりの資格がいるのだと。
その資格は、ランダムにふられるサイコロの目や、宝くじのように、いきなり飛び込んでくるのではなくて、それなりの理由がある、という風に考えています。
苦しみが開く、内部世界への扉です。
その内部世界は、思っているよりもはるかに広く、深く、多彩で、魔法と冒険に満ち満ちている…。
そして、このような物語を読んだ子がたとえ、幸せな子だったとしても、人生の中では何度も何度も、とても苦しい時が訪れることがあるはずです。
そんなとき、この「資格」が発動する!
というとちょっと変ですけれども、この「苦しいときに開かれる扉」というものの存在、その意味を知っておくことが、世の中のどんな人にとっても、助けとなるのではないか、そんな風に思っています。
◇
過去にたくさんの冒険を重ねてきたヨースト。
しかし現実は残酷なので、ヨーストは苦しい学校生活を送っています。
たった一つの救いは、おさななじみで、一番の信頼をしている可愛い女の子、フリーチェです。
しかし一歳年下なのでクラスにはいません。
フリーチェの存在も、なんとなく、はてしない物語におけるバスチアンにおけるクリスタ的な位置づけを想像させます。
ヨーストが話している、うそと言われる話は、いじめっ子たちを恐れさせています。
ヤンたちは、ヨーストをいじめつづけた。だがじつは、ヤンたちも、心の奥底では、ヨーストの話がうそだと言いきれる自信がなかった。うそだと言いきれないでいるのは、不安だった!それで、ますますひどく、ヨーストをからかうようになった。
つらい毎日を送るうちに、次第に、自分自身の冒険さえ信じられなくなっていくヨースト。
次第に、夢なのか、おとぎ話なのか、空想なのか、それとも本当に起きたことだったのか…。
わからなくなっていきます。
おばあちゃんはなんと言ってたかな…?そうだ!「月が青くなったら、何かとくべつなことが起こる」って言ってた。
でも、しばらく青い月は現れていませんでした。
ヨーストは窓から祈ります。
「どうかもう一度、月を青くしてください!」
それがすべての始まりでした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
騎士になるための最後の試練の夜、16歳の見習い騎士ティウリは、見知らぬ男に重要な手紙を託された。思いがけない使命を与えられ、大山脈のかなたの隣国へと向かったティウリの行く手には、陰険なスパイやさまざまな陰謀が待っていた。(「BOOK」データベースより)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そっくりだけれど、性格はまったくちがうふたごのお話。盗難事件にまきこまれたり、同じお姫さまを好きになったり…。いつも二人は、うりふたつであることを利用して、大かつやく!ふたごの大冒険がはじまります。小学5・6年以上。(「BOOK」データベースより)
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