~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

大人が読む児童書「青い月の石」 2 天女の羽衣はカモ

大人が読む児童書。
積ん読・解消計画★児童書編」です。


この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

青い月の石
トンケ・ドラフト (著), 西村 由美 (翻訳)

ヨーストはある暗い夜、家の外にあやしい黒い影を目にする。そして次の日、校庭の地面の下からぶきみな男が現れた。その名は地下世界の王、マホッヘルチェ! ヨーストは足あとを追っていくが……。それは月が青くなったときに始まった、少年と仲間のとくべつな冒険の物語。現実とおとぎ話が入り交じる、人気作家のファンタジー

 

 

大人が読む児童書「青い月の石」 1 異世界へ行く資格とは

 

 

「月をもう一度青くしてほしい」
と望んだヨースト。

 

突然、ネコのペイルがフーッとうなり、ヨーストは不思議な人影が家の前に立っているのを見ます。

 

庭の垣根の格子戸のむこうに、だれかが立っていた。大きなぼうしをかぶり、コートを着た、ずんぐりした人だ。じっとつっ立ったまま、家を見ている。

 

その人は背中を向けて去ったのですが、また何かの気配がします。
そして、ヨーストの家のドアを叩く音…。

 

いつも訪問者を歓迎するおばあちゃんは「闇を中に入れないでおこう」と答えただけで、開きません。
(何かよくないものなの?わかるの?教えておじいさんおばあちゃーん!)

 

しかしまだ、ドアをたたく音はします。
おばあちゃんは様子を見にいきました。

 

ヨーストは、食卓にすわったままでいた。この家が黒い姿に囲まれてる、黒い影にとり囲まれてる…とつぜん、そんな気がした。気のせいか、舌足らずなささやき声が聞えるようにも思った。そして、玄関前の石段に、黒い影たちの指揮官が立っていそうな気もする…。

 

結局、ドアの外には誰もいませんでした。


このあたりは、ほん怖にもありそうな、すごくホラーな展開でした!
恐ろしいし、ドキドキするし、何か不吉な予感がします。

 

 


学校に行ったヨーストは、子どもたちが運動場で「マホッヘルチェ」で遊んでいるのを見ます。

この「マホッヘルチェ」は、要は「花いちもんめ」「かごめかごめ」のようなものです。
やはり、古い子どもたちの遊びのようです。

 

どこから来たの?
マホッフ、マホッフ、マホッヘルチェ
どこから来たの?マホッヘルチェ

 

あのたったひとりの心の救いである女の子、フリーチェがとても大きな役割を果たします。

最初になぜかヤンを指さしたフリーチェです。
そのあと、外から見ていたヨーストのことも誘ったので、仲間はずれだったヨーストはこの遊びに入ることができました。

 

どこから来たの? → 地面の下からやってきた

何を持ってきてくれた? → きらめく青い月の石だよ

そして、この遊びと、この歌声から、地下を支配する王が呼び出されるのを、ここで遊んでいた子どもたち全員が目撃することとなります。

 

 

このお話は、大きく分けて三部構成になっています。

 

第一部:マホッヘルチェ
第二部:地下世界の王
第三部:ワスレナグサ わたしを忘れないで

 

そして、前書きにも書かれていたように、「どこかで読んだことがある、おとぎ話」がベースになっています。

 

第一部は導入です。
地下の王、マホッヘルチェに出会い、魔法をかけられたイアン王子の冒険に付き合うまで。
何と、いじめっ子のヤンがバディになって冒険に付き合うことになります!

 

この導入がとても丁寧なので、お話に引きこまれていきます。

 

 

 

第二部は、地下世界の王にとらわれたイアン王子とヨーストが、王の末娘のヒヤシンタ姫の助けを借りて、マホッヘルチェ王の支配を抜けようとして奮闘する展開です。

 

イアン王子とヒヤシンタ姫の物語は、昔話にはよくあるパターンで、「課題婚」というのに分類されるやつです。

 

強力で邪悪な王に囚われますが、その娘と愛し合い、助けを借りて支配を抜けるお話です。

 

この「課題婚」

・お父さんの王が、明らかに殺す目的の無茶苦茶な無理難題を出す。

・娘がこっそりと解決方法やごまかし方を教える。

というのを、主に3回繰り返すのですが、女性の合意は絶対必要なんだろうな~、などと思います。

 

日本で言うなら、大国主のミコトと、スセリヒメのようなお話です。

芥川龍之介が「老いたる素戔嗚尊」(青空文庫)で、いい感じの短編を書いています。
(興味のある方はぜひ!)

 

 

イアン王子を助けるヨーストの活躍ですが、その裏で、バディのヤンが「魔法使いのオルム」とひたすら待っています。

 

「魔法使いのオルム」は、ヤンがうそつきと言ってヨーストをいじめていたときの、作り話に出てきた魔法使いです。

 

ヤンは物語に巻き込まれてしまい、もう信じるしかありません。
第二部と第三部のはじまりで、いったん二人はいつもの日常生活に戻りますが、ヨーストをいじめた連中をヤンはぶんなぐってやめさせます。

 

 

 

このお話の魅力は、何といってもヒヤシンタ姫です!

イアン王子との出会いは、「七夕のお話」の展開です。
つまり「天女の羽衣」です。

 

イアン王子は、魔法使いオルムの忠告にしたがって、末娘のヒヤシンタ姫の羽根の衣装を取るのですが...。
可愛らしいことに、このヒヤシンタ姫の羽衣、白鳥ではなくて、カモです。

 

カモの羽衣。
可愛い...♡

 

よちよち歩きのカモを想像しますけど、ヒヤシンタ姫はとても聡明で、美しくて、優しくて、とにかく非の打ち所がない女性です。

 

イアン王子はもうメロメロですが、読んでいる私もメロメロです。

何しろカモですし。

 

ヒヤシンタ姫は、イアン王子とヨーストがどうしたらいいのかを、実にことこまかに教えてくれます。

また、魔法も使えるので、このお話は読んでいるうちに、だんだん
父親の王の魔法と、娘の魔法の、化かし合い合戦の様相を呈してきます。

 

イアン王子はただの人間なので、正直力不足は否めません。
ここが、さっとレビューを一読した感じ、ちょっと情けない印象を与えるところもあるようでした。

わたしは気になりませんでしたが...。

 

ヨーストは、おばあちゃんの魔法や、過去の冒険から不思議なグッズを使うことができ、ヒヤシンタ姫と力を合わせてイアン王子を助けることができます。

 

芥川のスサノオは、乱暴者の中にもすずやかで健康的な精神を感じさせますが、この地下世界の王、マホッヘルチェはとにかく不気味です。

 

悪意に満ちていて、残酷で、力があり、そして非常にプライドが高いです。
それはそれは、威厳に満ちていて、支配を抜けるのは決して容易なことではありません。

 

バディのヤンは、ずっと地下世界の外で待ちぼうけなのですが、これが、なぜヤンがこのお話にいなければならなかったのかが第三部ではよくわかります。

 

必須人物です。

 

 

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

王への手紙
トンケ・ドラフト (著, イラスト), 西村 由美 (翻訳)

騎士になるための最後の試練の夜、16歳の見習い騎士ティウリは、見知らぬ男に重要な手紙を託された。思いがけない使命を与えられ、大山脈のかなたの隣国へと向かったティウリの行く手には、陰険なスパイやさまざまな陰謀が待っていた。(「BOOK」データベースより)

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ふたごの兄弟の物語
トンケ・ドラフト (著, イラスト),  西村 由美 (翻訳)

そっくりだけれど、性格はまったくちがうふたごのお話。盗難事件にまきこまれたり、同じお姫さまを好きになったり…。いつも二人は、うりふたつであることを利用して、大かつやく!ふたごの大冒険がはじまります。小学5・6年以上。(「BOOK」データベースより)

 

 

 

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