大人が読む児童書「町かどのジム」 2 ねことベーコン(のねこ)
大人が読む児童書。
「再読★児童書編」です。
この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。
デリーが物心ついてからというもの、ジムはいつでも街角のポストのそばに座っています。むかし船乗りだったジムは、デリーにいろんな場所の話をしてくれます…。1965年学研刊の名作をアーディゾーニの挿絵で。
大人が読む児童書「町かどのジム」 1 ねことベーコン(のベーコン)
昨日はベーコンに熱が入りすぎて書けなかったのですが、パイというのに憧れが芽生えたのもこの頃です。
それはそれはたくさんの小麦粉を無駄にしてきました。
昔、お菓子作りを今より熱心にしていた頃、「呪われたショートケーキ」は何十回焼いてもうまくは焼けませんでしたが、執念の甲斐あって、パイ生地だけは何とかうまく焼けるようになりました。
もくじ:
デリーとジム
男の子のパイ
みどり色の子ネコ
ありあまり島
ペンギンのフリップ
九ばんめの波
月を見はる星
大海ヘビ
チンマパンジーとポリマロイ
ジムのたんじょう日
妹子はペンギンの話が好きらしいです。
お友達は「月を見はる星」です。どちらもわたしも大好きです。
◇
「みどり色の子ネコ」
ジムとデリーは、お互いにお誕生日に何が欲しいかという話になります。
「おたんじょう日に、なにがいちばんほしい?」と、デリーがききました。
「海を見ることだよ。」と、ジムはこたえました。「ほかのなによりも、わしは海が見たい。青かみどり色の、いや、はい色でもいい。それに、あのにおいだ。あれをかぐことができたらなあ。」
ジムの海への想い、愛する気持ちがひとかたならぬものだと、伝わってきます。
デリーはジムに、子ねこをもらった話をするのですが、ジムはこれに対して聞いてきます。
「なに色の子猫だい?みどり色かい?」
実際は黒くて手が手と足の先だけ白い、いわゆる四つ白の子猫だったのですが(カワイイです…💖)、ジムはそこで、かつて海で見た、みどり色の子ねこの話をしてくれます。
ベーコンのお話の時は子どもだったジムですが、今回のお話では、船乗りになりたくて家を飛び出していました。
そこで、「ゆり木馬号」とポッツ船長に出会います。
ゆり木馬号。
船で木馬といえばホワイトベースです。
偶然とは思いますが、今回、こんな些細なことが気になってあれこれ調べてしまいました。
初版1965年、ガンダムの放映は1979年です。
(この話題は唐突ですがここで終わります。すいません。特に何の関係性も見出せなかったので…💦)
◇
ポッツ船長の率いるゆり木馬号に乗り込んだ時、ジムは浜辺の水たまりで網いっぱいにエビを捕まえました。
船長の夜ごはんです。
その中にちっちゃな塊が入っていました。
小ちゃなかたまりは、つるつるしたみどり色のせなかを弓のようにまるくし、つるつるしたみどり色のしっぽをふり、つるつるしたみどり色の耳をつきだし、つるつるしたみどり色のはなにしわをよせ、そしてペッとつばをはいた。
こいつはねこです!
と思ったら、コックの大きな手からとびおりて、つめをたてて、わしのかたまでのぼってきた。そして、そこにすわって、わしのほっぺたに、やわらかいみどり色の頭をこすりつけた。
その小ちゃいかたまりは、なんとサンゴのようなピンクの目をした、ちっぽけな、みどり色の子ネコだったんだよ。
サンゴのような目に、みどり色をした子ネコ!
すごく神秘的です。
手足の白い黒い子ネコはすぐに想像できますが、これはもはや、妖精てきな何かです。
このねこちゃんは、すぐに船になれて、船のアイドルになります。
ねずみを撮るためにも、ねこを船で飼うのは一般的であったようなので、船にネコはおかしくはありません。
しかし、奇妙なことに、このゆり木馬号、この航海ではとにかく災難にばかり合いまくりす。
なぎにあった時、ジムはふたたびエビを採りに海に潜るのですが、そこにはかんかんに腹を立てたナマズの女王さまが…。
ファージョンは本当に描写が実に美しいのですが、このときの海のそこの描写もとてもきれいです。
サンゴにしんじゅに、金のまさご。小さな木ほどもある、きれいな海草。赤と銀の宝石みたいなマンボウにマンダイ。ゆかに花をしきつめたようにみえるイソギンチャク。金や朱にぬられた、王宮のようなちんぼつ艦。見えないものといえば、イセエビだけだった。
ナマズの女王さまのことを、ジムは「おくさん」と言っては怒らせるという、ユーモアたっぷりのやりとりが交わされるのですが、ここで明かされるのは
みどり色の子ねこは、海の王女さまだった!
という、衝撃の事実です。
これは、なぜ海の女王さまがナマズでそのむすめがねこなのかというと、英語で「ナマズ=catfish」というしゃれのようです。
まあでも、このねこちゃんはとくに擬人化などすることもなく、さいごまでかわいらしい子ねこのままです。
さて、ナマズの女王さまはむすめを帰してほしいので、ジムを捕虜として、子ねこと人質交換する提案をポッツ船長にすることになります。
ジムは船長にお手紙を書くのですが、ここで考えます。
わしは、ポッツ船長が、わしをとりもどすよりは、子ネコをもっていたほうがいいと思いはしないかと、ちょっとしんぱいした。もし、わしが船長だったら、そうしたかもしれん。
そこでわしは、のこる一生を、海のそこでくらすかくごをした。
特にジムがこの子ねこを猫かわいがりしていた描写など何ひとつないのですけど、このひとことだけで、どんだけ可愛かったんかということがよくわかります。
ポッツ船長は子ねこにそこまでの思い入れはなかったようです。
あっさりと人質交換に応じてくれたので、無事にジムは船に帰れることになりました。
なまずの女王と子ネコがウミャオウミャオと嬉しそうにしている様子もとっても、とっても、とっても、可愛いです。
ほんの何気ないお話のようなのですが、海の底の宮殿、ナマズの女王さま(絵がとても素敵でいかにも女王さまです!ナマズですけど…)、海の王女さまである子ねこ、などなど…。
夢が広がってすごく好きなお話です。
ベーコンとどちらが好きかと言われて、答えられないぐらい好きです。
最後のことばがまた素敵でした。
「貝を耳にあてると海の音がする」
わたしが貝を見つけるたびに耳にあてはじめたのは、これを読み終わってからのことでした。
ほら、わしのポケットにあるものをごらん。これが、わしがてがみを入れたポストのカイなのさ。わしは、二、三日してから、こいつが甲板の上にころがっているのをみつけて、それいらいだいじにもっていたのさ。いいカイだろう。それに、きれいなカイだ。
きょうは、おまえのたんじょう日だっていうから、これをあげよう。ジムからのおくりものだ。
そいつを耳にあててごらん。そうすりゃ、海の音がきこえるよ。けど、子ネコの耳にあてるんじゃないぞ。子ネコがみどり色にかわらんともかぎらんからな。そうなったら、やっかいなことになるよ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
幼い日,本のぎっしりつまった古い小べやでひねもす読みふけった本の思い出―それはエリナー・ファージョンに幻想ゆたかな現代のおとぎ話を生みださせる母胎となりました.みずみずしい感性と空想力で紡ぎだされた,国際アンデルセン賞作家の美しい自選短篇集
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
気だてはいいが食いしんぼうの粉屋の娘ドルが、小鬼のたくらみで王さまの妃になりました。妹のポルが銀のシギの助けを借りて、姉の危機を救います。素材は昔話の「トム・ティット・トット」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
リンゴ畑のマーティン・ピピン
エリナー・ファージョン (著), リチャード・ケネディ (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)
恋人から引き離されてリンゴ畑の井戸屋形にとじこめられている少女ギリアンを,6人の娘たちが牢番として見張っています.陽気な旅の歌い手マーティン・ピピンは,美しく幻想的な6つの恋物語をくりひろげて娘たちの心を奪い,首尾よく牢屋のかぎを手に入れます.ファージョンが作家としての地位を確立した傑作
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ファージョン作品集5巻。
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