大人が読む児童書「チポリーノの冒険」 4 おとなとして耳が痛い
今日、ご紹介するのは児童書です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
ここは野菜とくだものたちの暮らす国。玉ねぎ一家の長男坊チポリーノが、無実の罪で牢屋に入れられてしまった父チポローネを救いだそうと大活躍。仲間たちと力をあわせて、国をおさめているわがままなレモン大公やトマト騎士とたたかいます。語りの名手ロダーリの書いた明るくゆかいな冒険物語を、歯切れのよい新訳で。
大人が読む児童書「チポリーノの冒険」 1 えらそうにするのはあほだから
大人が読む児童書「チポリーノの冒険」 2 最悪の敵トマト騎士
大人が読む児童書「チポリーノの冒険」 3 軍師さくらん坊やに一顧の礼
何だかどうにも、今のままだと
イタリアの野菜たちの権力闘争
といった複雑な内容と政治のお話のようで、うまく面白さを伝えることができなくてもどかしいです。
確かに、三国志に例えるなら、最高権力者のレモン大公は董卓で、トマト騎士は曹操っぽいです。
まんまです。
…って、だから違う、そうじゃない、そうじゃないんだー!という所を伝えたいのですけど…。
読み返してみると、こどもの頃に夢中になって読んでいたよりも、はるかに耳が痛いです。
というのも、その董卓や曹操的な支配階級のやさいたちの言動。
ありえない行動に、ありえない思考回路。
実にユーモラスに、おもしろおかしいのですけど、ここが、おとなになってからだと、非常な皮肉をこめて描かれていることが、今更ながらにわかりました。
滑稽でありながらも、あきらめないし、執念深くて、残酷です。
毎日の生活の中でも、Twitterでも、ネットニュースでも、日々見聞きしているムカつくことを、やさい・どうぶつたちを通して、面白おかしく描く筆の冴えはすごいなと感嘆します。
◇
このお話は、くだもの・やさい・むし・どうぶつたちが登場していますが、ちょっとどういうキャラクター構成なのか、列挙してみようと思いました。
既得権益を持つ支配階級
レモン大公(董卓)およびレモン兵たち
ドーナツ閣下
サクランボ公爵夫人(大奥さま・若奥さまの二人)
トマト騎士(曹操。サクランボ公爵夫人宅の家令)
エンドウ豆弁護士(支配階級に媚びながらも、反政府軍に一時加わったりする、複雑な人物)
オレンジ男爵(大奧さまのいとこ)
ミカン小公爵(若奧さまのいとこ)
アメリカニンジン先生(家庭教師)
番犬マスチーノ
チポリーノ(タマネギ・総大将)
チポローネ(チポリーノの父で投獄の身・チポリーノの反政府運動の原動力)
うらなりカボチャのおじいさん(この人の家が革命運動のきっかけであり、火種)
ブドウ親方(靴屋)
ナシノ木ナシ男教授
ニラ山ニラ吉どん
モグラおばさん
インゲンおやじ
クモの郵便配達夫とその親戚、ナナツハン
支配階級側だが、反政府側
サクラン坊や
イチ子(サクランボ公爵夫人宅のメイド)
その他(敬称・名前略)
ムカデ、カボ子、インゲン、コケモモ、カブ子、ほしキノコ博士、アザミ博士、クリ博士、ネズミ大将と軍隊、ネコ、ニンジン探偵、トマト坊、ジャガ子、クマ、ゾウ、アザラシ、サルなどなど。
◇
お話は、
・チポリーノの父の逮捕
・トマト騎士とのガチンコ対決
・チポリーノの仲間の逮捕と脱獄
・サクラン坊やとチポリーノ、運命の出会い
・トマト騎士、エンドウ豆弁護士の投獄と顛末
・逮捕する側とされる側の逃走劇
・チポリーノたち、サクランボ伯爵夫人たちのお城を占領
・戦闘。反政府軍の敗北、チポリーノ投獄
・ザ・脱・獄・計・画!
・密書の配達にまつわるクモの冒険
・大脱走
・革命
・その後
という風に続いていきます。
こうしてみると、殺伐としたお話のようなのですが、全部がいちいち、ゆかいな描写で満ち満ちています。
中でも、残酷ながらも、レモン大公のあんぽんたん加減がかなりすごくて、いざと言う時によく、わりとあほな決断を下して、どちらかというとチポリーノたちの有利に働きます。
敵の愚かさはこちらに有利!
というわけです。
なので、ラスボスにも関わらず、何となくレモン大公は最後まで憎みきれないという不思議さです。
トマト騎士と違って…。
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