~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

大人が読む児童書「白いりゅう黒いりゅう」 2 目にいっぱい涙をためた子犬(パワーワード)

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

白いりゅう黒いりゅう―中国のたのしいお話
賈 芝 (著), 孫 剣冰 (著), 赤羽 末吉 (イラスト), 君島 久子 (翻訳)

この本に収めた「くじゃくひめ」「天地のはじめ」「九人のきょうだい」など6編は,主に中国の少数民族が語りつたえた物語です.雄大で,ストーリーの変化に富み,西欧の民話とは趣きの異なる楽しさです。

 

 

もののけ姫」のもとになったお話、「犬になった王子」のつづきです。

 

洞窟に忍び込み、蛇の王からこくもつのタネを盗もうとする王子。
線香1本が燃え尽きるまでの時間という制限つき、ドキドキです。

 

1話目の「九人のきょうだい」のときに、きょうだいが戦った人間の王さまと違って、この蛇の王はとても恐ろしく、全然かなう気がしないです。

 

王子は命からがら逃げますが、ギリギリで犬にされてしまいます。

 

シュナの旅」では、この部分が人間性を失った』ことになって娘さんにかくまわれています。

 

しかし、もとになるお話のアチェ王子は、体は犬になりましたが、理性を失うことはなく、山の神リウダさまにもらった「風の玉」を飲んで、なんとか逃げ延びます。

 

 

後半です。
犬になった王子は、予言のとおり、自分を愛してもとにもどしてくれる娘を探します。

 

この金色のわんちゃんは、ロウル地方のゴマンというむすめに目をつけます。
(言い方、言い方!

 

王子さまは子犬になっているので、それを可愛がるゴマンとの描写がすんごく可愛いです。
ツァンパなどの単語が出てきて、チベット族のお話なのだなとはっきりわかります。

 

ゴマンは三人姉妹の末娘です。

 

三人姉妹も年頃になったので
「踊りを踊りながら、気に入った若者にくだものをなげておむこさんを選ぶ」
というイベントがはじまります。

 

とても、民族色がゆたかで興味深いです。

 

ゴマンのおねえちゃん二人は、それぞれ「となり村の村長のむすこ」「金持ちのむすこ」という、超・現実的な選択をしますが、ゴマンはなかなか決められません。 

 

そのとき…。

 

期待に満ちた周囲の人々の目の中で、金色の子犬が、目にいっぱいなみだをためて、じっとこっちを見ています。

 

「目にいっぱい涙をためて」だけでもパワーワードなのに、「子犬」

 

めちゃくちゃ、可愛いです。

 

思わず子犬の方に向かって踊っていったゴマンは、よろけた拍子にくだものを子犬の上に落としてしまいます…。
笑いものになり、面目を失ったと怒った父親に家を追い出されてしまったゴマン。

 

「やさしいむすめさん、泣かないでください」
ふいに子犬が、口をきいたのです。
「わたしは人間です。プラ国の王子です」

 

えっ!?
口がきけたの!?もしかしてずっと?

 

読んでる方も衝撃です。

 

いったい、「こくもつのタネ」がどうなったのか、めでたしめでたしになるまでは、ぜひ読んでみて頂きたいです。

 

最後まで何ともいえない愛らしさがあります。

 

 

天地のはじめ(プーラン族)─巨人グミヤーの話─

 

この「黒いりゅう白いりゅう」に入っているお話はどれも、非常に魅力的ですが、話の選び方や並べ方も、とてもすぐれていると思います。

 

「九人のきょうだい」がユーモラス。
「犬になった王子」は、前半の冒険は恐ろしいながらも、後半はかわいい。

 

そして、このプーラン族の「天地のはじめ」は、とてもスケールの大きい、雄大天地創造のお話です。

 

巨人グミヤー「さい」に似た動物から天と地をつくり、うみがめで地を支えます。

 

とても印象的なのは、後半の「九つの太陽と十の月」と、グミヤーとの戦いです。
大きな弓をとって、灼熱の大地に足を踏みしめ、次々に月と太陽を射落とすグミヤー。

 

赤羽末吉さんの絵もすばらしく、強烈に記憶に残っていました。

 

最後に残った一つの月と一つの太陽は命からがら逃げ出して、洞窟にこもってしまいます。
真っ暗になった大地のために、月と太陽を何とかして呼び戻す展開は、どことなく天岩戸伝説を思わせます。

 

こちらは月と太陽、セットで隠れており、連れ出すのはにわとりやいのししといった動物たちですが。

 

このお話、月が男で太陽が女です。(!)

 

このチベット族のお話だけでなく、山室静氏の「世界むかし話集」のどこかでも、月が兄で太陽が妹、など、太陽=女性、というのはいくつかありましたので、まさに「原始、女性は太陽であった」というのは、決して誇張ではなく、世界的にもある話なんだと思います。

 

太陽と月はどっちが昼と夜を受け持つか相談するのですが、

 

「わたし、夜はこわいからいや!」と、おくびょうな、太陽がいいました。
月は、男らしく、夜をひきうけました。
「ひるまでは、かおをみられて、はずかしいからいや!」と、わかい太陽は、また、すねました。

 

まあ、そもそも論だとか、どっちを受け持っても、太陽が担当した方が昼なのでは、とか、突っ込みどころは満載なのですが、昔話においてはスルースキルが大事です。
そして、そのわがままちゃんなすね方が何かみょうに可愛いです。

 

(結局、月にぬいばりをもらって、じろじろみる奴は目を突き刺してやる、ということになってます)

 

 

ねこ先生ととらのお話

 

ねこずきには必見です。
(とらは、悪いやつです)

 

このお話では、虎がネコっぽいのは、ねこに教えてもらったから、ということになっています。

 

そもそもネコ族とは。とか考えたらだめです。

 

全体的に、どうぶつがとにかく可愛くて、活躍をしていて、題名となっている「黒いりゅう白いりゅう」も、りゅうが何ともいとおしいです。

 

あと、このねこ先生、何とこねこです。

 

 

 

 

シュナの旅
宮崎 駿 (著)

チベットの民話「犬になった王子」をもとにした谷あいの貧しい小国の後継者シュナの物語。絵物語という形式で自らの夢を形にした、宮崎駿監督のもう一つの世界。1983年以来のロングセラー。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

チベットのものいう鳥
田 海燕 (編集), 太田 大八 (イラスト), 君島 久子 (翻訳)

 

 

 

 

 

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