~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

大人が読む児童書「白いりゅう黒いりゅう」 3 読了 途切れることのない文化交流

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

白いりゅう黒いりゅう―中国のたのしいお話
賈 芝 (著), 孫 剣冰 (著), 赤羽 末吉 (イラスト), 君島 久子 (翻訳)

この本に収めた「くじゃくひめ」「天地のはじめ」「九人のきょうだい」など6編は,主に中国の少数民族が語りつたえた物語です.雄大で,ストーリーの変化に富み,西欧の民話とは趣きの異なる楽しさです。

 

あと入っているのは
タイ族の「くじゃくひめ」
パイ族の「白いりゅう黒いりゅう」
です。

 

「くじゃくひめ」は、羽衣伝説を取り入れた、とても美しいお話です。

 

羽衣伝説によって、王女さまを手に入れた王子さまですが、
自分の娘を嫁がせようとしていてあてが外れた大臣の悪意によって、王女は国に帰ってしまいます。

 

その大臣の悪だくみとは、お隣の仲が悪い国の王様に手紙を送ってそそのかすのですが…その台詞がこうです。

 

「天女のようにべっぴんの、ひめがおりまする。いくさをしかけて、うばいにこられるがよろしいでしょう。」

 

「天女のように」、はともかくとして、「べっぴんのひめ」

 

ここだけは、ちょっと時代を感じてしまいます。
しかし、こういう昔風のことばを面白がるのも、昔ながらの児童書を楽しむ醍醐味です。

 

冒険の数々は割愛するのですけど、ここですごく印象に残っていて、昔から忘れられないのが、道案内の猿くんの犠牲です。

猿くん…!!!

(読んでくださればわかることと思います。) 

 

 

「白いりゅう黒いりゅう」

この物語の中で、もっとも長く、やはり題名に冠されるだけあって、一度読むととても忘れられないお話です。

 

昔話の中でも、「縁起物」というジャンルに属する、「白竜廟」が出来たわけを物語るものです。

 

お話の中身よりも、ちょっと違う方向からご紹介しますと、あとがきによればこの一連の物語は「中国民間故事選」によるものだそうです。

 

中国民間故事選 (新華書店): 1958|書誌詳細|国立国会図書館サーチ

中国民間故事選2 (新華書店): 1962|書誌詳細|国立国会図書館サーチ

 

国立国会図書館サーチで「中国民間故事選」で検索すると、「白いりゅう黒いりゅう」もしっかり出てきます。

 

シャウトンとかくれんぼひめ
にしきのむら
銀のかんざし
チワンのにしき : 中国民話太陽のむすめ

などなど、他にも面白そうな昔話がたくさん出てきます。

 

あとがきにもありますが、おそらくこの「白いりゅう黒いりゅう」のお話は、白竜廟の縁日に語られたものではないかとのこと。

 

物語は、語り継いでいく人あってのもの。

 

また「くじゃくひめ」をつたえた、タイ族には、おはなしを語ってあるくことを、職業にしている、ザンハという人たちもおります。
このおはなし家(か)は、せんすをかた手に、いい声で、うたうようなちょうしをつけて、おはなしをはじめます。そばから、笛のばんそうもはいります。そのまわりには、あつまってきた村の人びとが、こしをおろして、まるく輪になって、おはなしにききいります。こうしてはじまるおはなしは、ながいものになると、ふた晩も、三晩もつづきます。ですから、おはなしのなかみも、こみいってきます。この本にのせた「くじゃくひめ」なども、かなりそういうところがみられます。

 

 

「犬になった王子」をつたえたチベットをはじめとする、草原いったいにも、弦楽器をかかえて、おはなしをしてあるく人たちがおります。
そのうえ、チベットは、北と前から、図と東から、さまざまな民話がつたえられて、まるで「民話のおくら」といってもいいほどです。

 

以前、アラビアン・ナイト」でも、語り部がいることを中野好夫さんが描かれていて、いまちょっと、各地の語り部のことを調べていたりもするのですが、何となく、このような「語り部」のことを知るたびに、「読みきかせボランティア」のママさんがたも、やっぱり、「語り部」に属するものなんではないかなあと思うことがあります。

 

 

「白いりゅう黒いりゅう」は、とても不思議な作品です。

王さま王子さまといった、華やかな人たちは出てこなくて、これはその土地に地に足をつけて住んでいる人たちの戦いの物語です。

 

黒いりゅうに悩まされて来た人々を助けるため、大工のヤン名人は、木彫りの白いりゅうを彫りはじめます。

 

黒いりゅうは、自然災害のモチーフかなとは思いますが、たまに人に化けて現れるのですが、その時の悪意がすごいです。
(ほん怖の恐怖話に匹敵する不気味さです)

 

悪と善の戦いも何となく思わせながら、神秘的で、息を飲むスケールです。

 

淵のなかから、かみなりがとどろき、ふたすじの雲がわきあがったかとおもうと、みるまに、空のなかばをおおってしまいました。かたほうが白い雲。かたほうが黒い雲。

 

二ひきのりゅうは、空中でとっくみあい、もんどりをうち、上にのぼるかとみれば、下にくだり、北のはてから、南のはてまで、あばれまわります。海はかべのような波をおしたて、山はうなり、谷はなりひびきます。

 

大人版の翻訳を読んでみたいと思わせるすばらしい描写です。

 

 

このお話「中国民間故事選」についても、あとがきに書かれていました。

 

あたらしい中国が、文化の回で、まっさきに力をいれたしことが、地方につたわる民話を、あつめるということでした。
それは、なん百年、なん千年というながいあいだ、人びとのロからロへったえられ、そだてられてきた、とうとい文化遺産だからなのです。

 

 

 固有の文化を尊重するのは、とても大切なことと思います。
そして近い国である中国と日本は、長い長い歴史があり、文化的交流は途切れることなく続いてきました。

 

spc.jst.go.jp

 

四書五経をはじめとして、中国の書籍は教養として日本の知識人にとっては欠かせないものでした。

交流が中断しても、書籍の交流は絶えることはなかったというのが、すごいなと思いました。

 

そして以前、日本の絵本も、中国で数多く出版されているというニュースを読んだのを思い出しました。

 

toyokeizai.net

 

物語は、語り継いでいく人あってのもの。

そして、子どもたちにとって、世界へのとびらとなるものだと思いました。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

チベットのものいう鳥
田 海燕 (編集), 太田 大八 (イラスト), 君島 久子 (翻訳)

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

シュナの旅
宮崎 駿 (著)

チベットの民話「犬になった王子」をもとにした谷あいの貧しい小国の後継者シュナの物語。絵物語という形式で自らの夢を形にした、宮崎駿監督のもう一つの世界。1983年以来のロングセラー。

 

 

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