大人が読む児童書「水の子」 4 語彙力の暴力
今日、ご紹介するのは児童書です。
かなり間が空いてしまいましたが、それというのも、この「水の子」。
妹子が持って行ってはあっちに放置、こっちに放置するので、行方不明になっていたのです!!
今日、やっとのことで山のような宿題の中から見つけ出しました。
なぜかわかりませんが、中から
「学研まんが 藤原道長」
「学研まんが 天智天皇」
「学研まんが 淀君」
も一緒に出てきました。
何だか微妙なラインナップ。
なぜそれを選んだ。
というようなものですが、とりあえず妹子は藤原道長と淀君が大好きです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
煙突そうじの少年トムは,仕事中お屋敷のおじょうさんの部屋に入ってしまい,どろぼうとまちがわれてにげるうちに,川に落ちて「水の子」となります.ファンタジーの古典
これまでのレビュー
大人が読む児童書「水の子」 1 レビューするのが難しすぎる。
大人が読む児童書「水の子」 2 そもそも論。水の子とは何ぞ?
大人が読む児童書「水の子」 3 「報いのおばさん」という妖精
「水の子」の構成をもいちどおさらいです。
1.煙突そうじのトム少年の不遇な一日パート。
2.美少女エリさんとの出会い(一瞬)と水の子になるまで
3.水の子とはどういうものか。水の子になったトムのゆかいな生活
4.水の子コミュニティー・報いのおばさんと親切のおばさん・エリさんと再会
5.助けたくもない親方を助ける贖罪の旅。
6.親方グライムズと再会
ええと、4の所まで読み進めたところだった。
「報いのおばさん」は、子どもたちを虐待したり、過剰な体罰をしているおとなたちに報いを与えるのがお仕事です。
ケストナーにも確か、こんな感じの描写があったなあ。
確か、「五月三十五日」だったと記憶しています。
◇
ここで、「親切のおばさん」登場です!
これはまさに、美しく理想化された、ラファエロの聖母子像のようなおばさんです。
あの人(報いのおばさん)のように体が節だらけで、こわばって、ざらざらして、骨っぽくはない。とても美しくて、やわらかで、肉づきがよく、ほんとにだいてもらったり、なでてもらったりしたくてたまらないようなおばさんだった。
何か、、、
すごく、、、
色っぽいですね…。
ところが、こんな幸せな境遇のはずなのに...。
水の子になったトム、そろそろやんちゃをやらかします。
さてトムは、こんなによい身分になって、何でもほしいものはもらえるのだから、ほんとにりっぱな行儀になれそうなものだった。ところが、実際はそうではなかった。幸せな身になるというのはいいことだが、幸せな人はきっとよい人になれるというわけではない。時とすると、あまり幸せだと、かえって行儀が悪くなるものだ。
幸せな身になるというのはいいことだが、幸せな人はきっとよい人になれるというわけではない。
なんだか、含蓄の深い言葉です。
要は、トムは
ゲームをしたいので隠し場所を探し回ったり(うちの子のことです)
パスワードを探すため手帳を盗み見してみたり(うちの子の…略)
わたしの携帯を操作してこっそり解除してみたり(うち…略)
というような思考回路に陥って、報いのおばさんたちが置いてあるお菓子箱を探し出して盗み食いしてしまいます。
おしまいにはトムは、おばさんは、どこにおいしいものをしまっているかさがしてやろうという気になった。かくれてみたり、こそこそと逃げてみたり、おばさんのあとをつけまわしてみたり、そっと横目を使ったり、ほかのものをさがしているような顔っきをしたりして、最後にはとうとうおばさんが菓子をしまっているところを発見してしまった。
・かくれてみる
・こそこそと逃げてみる
・おばさんのあとをつけまわす
・そっと横目を使う
・ほかのものを探しているような顔つきをする。
表現がとにかく、多彩です。
そして、ほんとうにこども!
こどもそのものです!
◇
盗んだり、嘘をついたりした結果、トムの体にはそこらじゅうにエヴァで言う所のヤマアラシのジレンマのようなトゲが生えてしまいました。
(原作には、ウニのようなとげだと書かれています)
ちなみに、美しくやさしい「親切のおばさん」は、割と一瞬しか出てきません。
ほぼ、このお話の軸となっているのは、醜いし骨ばっていて、怖いことをする「報いのおばさん」ばかりです。
しかし読んでいると、トムもですが、読み手の方もだんだん、この報いのおばさんが大好きになってきます。
いけないことはいけないと言い、きちんと向き合ってくれる人。
そして、叱られた後に、どうすればいいかもちゃんと教えてくれる人。
その深い愛情に触れているうちに、トムは「親切のおばさん」よりもずっと、「報いのおばさん」に親しんでいきます。
◇
エリさん再登場!
妖精に連れ去られたまま、いったいどうなっていたのかわからない美少女、エリさんでした。
いったい何がどうなってそうなったのかは省略しますが、とにかくトムは、エリさんに行儀作法を習うことになりました。
何となく、死んだのではないか、または植物人間にという描写にされていたエリさんは「水の子」になっていたわけではなさそうです。
トムの背中のヤマアラシのジレンマとげが取れるまで、エリさんとトムは一緒におべんきょうをするのですが、それは実際いにこの本を読んでもらうとして…。
トムは、本当にやらなければならないこと、いやだと思っていても、するべきこと、を見出すことになります。
それは、トムのことをあれほど虐待していた、煙突掃除の親方、グライムズを探し出して、もう一度対峙することでした。
◇
このあたりは、もう話はあっちにとんだりこっちに飛んだり、教訓話があるかと思えば、作者のひとりごとらしきものが混じったりです。
何が何だかわからないうちに、不思議な夢を見ているように、どんどん話が進んでいきます。
その一つ一つの教訓も、ものすごい語彙・語彙・語彙で、言葉の雨あられ、嵐に巻き込まれていくようです。
わたしは、意味をわからないならわからないなりに、流し読みもしていくタイプなのですが、妹子さんはひとつひとつ聞いてきます!
読み飛ばすことができないんだそうです。
「わたしはじっくり読むタイプなの!」とか言ってます。
ハクチョウ、コクガン、シノリガモ、ケワタガモ、ウミガモ、シマアジ、ミコアイサ、カワアイサ、アビ、カイツブリ、ウミスズメ、ハシビロウミガラス、カツオドリ、ウミツバメ、トウゾクカモメ、アジサシ、それからいろいろの種類のカモメ、そんなものが砂浜に集まって、水を浴びたり、洗ったり、はねたり、羽なみをそろえたりした。海岸は羽毛でまっ白になってしまった。それからキャッキャッ、クサック フッ、クックッ、ペチャペチャ、キーキー、フーフー鳴きさわぎながら、みんなでいろんな相談をして、この夏にはどこへいって卵を生んだらいいかということをきめた。
というところなのですが、、「シノリガモってなに?」から始まって、わたしは最終的に、ウミガモとミコアイサと、カイツブリとウミスズメとアジサシをGoogle先生で調べるはめになってしまいました。
これはたまらん。
無理。
◇
結果、我が家ではスマートスピーカーを購入することになりました。
Googleの声アクティブアシスタントを体験! Google アシスタントに知りたいことを尋ねて、レシピ、地元の企業、スポーツなどに関する視覚的な答えを得ることができます。
(私が購入したのはこれですが、たぶん、今はもっといい製品が出ていると思います)
ちなみに、「おーけー。ぐーぐる」と言わなくても
「ねぇ、グーグル」
で、反応してくれます。
「水の子」原文は、フリーで公開されています。
「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492
◆プロジェクト・グーテンベルクについて
☞Wikiの説明ページ
プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリカ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
妹子が読んでいたのは、こちらの古い学研まんがの「淀君」です。
昭和の少女まんが風の絵で、わたしもこの人は大好きです!
「紫式部」も大好きでした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
戦国大名・浅井長政の姫に生まれながら、父母を討った敵将・豊臣秀吉の妻となった淀殿。最期まで誇り高く生きた姿を描く。美麗なまんがとパノラマ画面のシーンは必見。
こちらは今出ている版の淀君ですが、とても評判が良かったです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
中大兄皇子は中臣鎌足とともに大化の改新をおこない、天皇中心の国をつくろうとした。新しい国づくりのための政策をつぎつぎと出し、のちに即位して天智天皇となった。まんがで楽しく学べる一冊。
これで、額田王のことを覚えてくれました。
(額田王が出るのは超・一瞬です)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
藤原道長は、中臣鎌足の子孫で、有力貴族だったが、むすめを天皇の后にして皇室との関係を深め、摂政太政大臣となって他の貴族をおしのけ、藤原氏の全盛期をきずいた。まんがで楽しく学べる一冊。
なぜか妹子が大好きな藤原道長。
割と史実に正確で、浮気もしまくるし、権力者としてひどいし、 いったい何がツボなのかよくわからないのですが、この道長はとにかく、あかるいです。
ポジティブで行動的。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ナンセンスなことばかり起きる、世にも不思議な作品です。
黒と白のごばんじまの混血少女など、昨今の世の中ではアウトな表現なのではないでしょうか。
しかし、まったく差別の意図は感じられません。
このごばんじまの少女は、お友達です。
とても面白いので、ぜひ一度読んでみていただきたいものです。
【e-hon】 ─ ネットで予約、本屋さんで受け取れる e-hon サービスで本屋さんを応援しよう📚️
子どもの本だな【広告】
里見八犬伝 | 森は生きている | あおくんときいろちゃん |
おにたのぼうし | ねむいねむいねずみ | そんなとき どうする? (日本語) 単行本 - 2016/8/5 セシル・ジョスリン (著), モーリス・センダック (イラスト), こみや ゆう (翻訳) |
クマのプーさん Anniversary Edition | とぶ船 | 安寿姫と厨子王丸 |
児童文学ランキング |