大人が読む児童書「みつばちマーヤの冒険」 3 とんぼのシュヌックの魅力
大人が読む児童書。
「再読★児童書編」です。
この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
ワルデマル・ボンゼルス原作の「みつばちマーヤの冒険」の完訳&新訳です。生まれたばかりのミツバチのマーヤは、最初に巣を飛び立つと、そのままこの美しい世界の冒険に出ます。そしていろいろな虫たちに出会い、さまざまな経験を重ねてゆきます。
大人が読む児童書「みつばちマーヤの冒険」 1 エーミールを訳された高橋健二さん
大人が読む児童書「みつばちマーヤの冒険」 2 マミられてしまったきんばえ。世界の美しさと残酷さ。
わたし「妹子さん、本当に大丈夫?嫌だった?」
妹子「いやまあ、三国志の方がひどいから」
う、うん、まあ、確かに。
妹子「三国志はさあ、ズバァ!グサッ!ドシューッ!だから」
わたし「……………」
これ以上突っ込むのはやめよう。
とりあえず、まどマギよりは比較対象がまだ許容範囲なもの(三国志)になりました。
妹子、次を読み進めています。
妹子が以前、読んだーと言っていたのは、ばらこがねの超序盤のあたりまでだけだったらしいです。
ここまでだけだったら、確かにイメージは「ほのぼの☆メルヘン☆虫の擬人化」で終わってたはずです。
妹子「こんなん読んだら二度と忘れないわ!」
何となく、児童書というものは、
「まんがよりもお上品で文学的で、意識高い系の啓発に満ちたもの」
という認識がありますが
それは幻想です。
内容は、鬼滅の刃であり、三国志であり、まどマギであり、メイドインアビスです。
(何かヤバそうなもの集めてみました)
異世界系なんてこっちが元祖です!
読んだら面白くてやめられなくなること間違いなしです。
◇
妹子「シュヌックっていうんだ。こいつ女なの!?」
わたし「うん、それもね魔性の女!自由で残酷な悪女的な…美人だと思うよ」
妹子「虫でしょ?」
その突っ込みはいらないんだな!
この、きんばえをマミったとんぼこそ、シュヌック。
「とんぼ」と言うだけで、残念ながら、オニヤンマかどうかは判断できませんが、私の中では、残酷さ以上に強烈な魅力をもって記憶に残っているキャラです。
シュヌック、隙あらばマーヤも食ってしまおうかというような、獰猛な気配を見せます。
(カマキリ先生のオニヤンマの回を見てしまうと、みつばちごとき、いくら抵抗しても一瞬で食ってしまいそうではあります)
とんぼはいじわるな目つきをしました。食事をおえて、こんどはすこし前かがみになってとまり、ねらいをつけるようにマーヤを見つめていました。まるで、まさに獲物におどりかかろうとする猛獣のように見えました。
何となく、野生のねこっぽいです。
しかし、マーヤが戦うために羽を震わせて威嚇を始めると、少し態度を変えました。
とんぼは、おびやかすように、ゆっくり言いました。
「とんぼはみつばち族とは、いたってなかよく暮らしているんですよ。」
「あなたもそうしたほうがとくよ。」と、マーヤはすかさず言いました。
「あんたは、わたしがあんたをこわがっている、とでも思ってるの?──わたしが、──あんたを?」と、とんぼはたずねました。とんぼはぐいとあしの茎をはなしました。茎はもとの位置にはねかえりました。
とんぼの飛ぶ様子があまりにも美しいので、マーヤはすっかり魅了されてしまいます。
とんぼは、きらめく羽をさあっとはばたきながら、水の表面のまぢかまでおりました。それが湖にうつっているのは、見るからに全くみごとでした。二匹のとんぼが見えるようでした。二匹がガラスのような羽をたいそう早く美しく動かすので、明かるい銀いろの光が、まわりに流れているようでした。あまりみごとな光景だったので、小さいマーヤは、かわいそうなハンス・クリストフのために腹をたてたことも、危険なことも、すっかり忘れてしまいました。彼女は手をたたいて、すっかり感激してさけびました。
「まあ、きれい!まあ、きれい!」
「わたしのことを言っているの?」と、とんぼはあきれてたずねましたが、すぐ付け加えて言いました。「そりゃ、わたしは見てもらうだけのことはあるのよ」
うちとけた二人(二匹)は、自己紹介をしてお話を始めます。
マーヤのこの、切り替わりの速さ、そして感動しやすく、きれいなものを見るとすぐに我を忘れてしまうのも、いかにも子供らしい純粋さです。
妹子「こいついきなり馴れ馴れしくしてきて、お友達を食べた奴とお友達になってんじゃねぇ~よ!」
わたし「いやまぁ」
妹子「バリボリ食べたくせに」
(引用はしませんでしたが、シュヌックがはえを食べる時には、擬音も出てきます)
シュヌックは、涙ながらにすすり泣きながら、マーヤに弟のとんぼの死を語ります。
妹子「うぇぇーぐろすぎる!」
わたし「こっから先、そんなぐろい所あったかな」
妹子「シュヌックの弟が、男の子に捕まってポケットに入れられた!」
わたし「普通だ」
「少年は、腹がへると、うちの弟とかえるを捨てたの。(略)
弟はわたしの首をだいて、別れのキスをしたの。そして、男らしく、泣き言なんか言わず、小さい英雄として死んでいったの。弟のもみくちゃになった羽のさいごのふるえがやんだ時、わたしはかしの葉を彼の上にのせてやり、花の咲いているちどめぐさをさがし、その青い花が彼の名誉を記念して、墓の上でしぼむようにしてやったの。(略)
静かな夕べのなかへ、二つの赤い太陽に向かって飛んだわ。太陽が、夕空と湖とに、二つ見えたの。あれほど悲しい、おごそかな気持ちになったものは、ありゃしないわ。」
とても、さっきまでマーヤのお友達をばりっぼりやったうえに、マーヤも襲おうかなと思っていた同じ人(?)のいうセリフとは思えません。
しかも、訳し方によるのかもしれませんが、何となくすごく……色っぽいです。
妹子「う~ん。人間の男子というのが最悪だというのが今わかった」
わたし「!?」
妹子「僕ヤバ(最近ハマっている漫画)とこれ読んで、人間の男子が気持ち悪くて大嫌いになった」
わたし「う、う~~ん……」
妹子「本当は知ってたけど、信じたくなかったんだと思う」
返事の仕様がない。
無数の明かるい色がぱっときらめきました。したたる水や、曇りのない宝石に見られるような、青白い、愛らしい色でした。シュヌックは、緑のあしの茎のあいだをぬけて、水の表面まで飛びだしました。彼女が朝日のなかで歌っているのが聞えました。マーヤはその美しい歌に耳をすましました。民謡の、うれいをおびたあまさがあって、小さいマーヤの胸を陽気に、そして同時に悲しい気分にしました。
シュヌックは、話したいだけ話すと、ぱっと飛び立って歌を歌います。
あたたかいもやと風と流れ、
翼にあたる熱い太陽。
心のなかの楽しさよ。
ああ、長くはつづかぬこのいのち、
かがやかしい夏よ、ありがとう。
きょうのこの日はかぐわしい。
妹子「シュヌック、マーヤとはまったく違うイメージだね」
わたし「そうでしょう」
妹子「短いスカート…上が派手な感じで金髪…光に反射して…」
わたし「ほう」
妹子「それでカラコンわざといれまちがえてピアスしてるJK」
どんなチャラ女子だよ!!!
しかもオッドアイ偽造かよ!!
コスプレイヤーみたいだよそれじゃあ!
もうちょっときれいめのお姉さんで想像してあげて。
わたし「続き読まないの?」
妹子「ちょっと落ち着かせて。衝撃的すぎた」
マーヤのほのぼのな旅は、シュヌックの登場で唐突に血まみれの弱肉強食展開になりました。
しかも、殺戮する捕食者でありながら、美しいというこの矛盾。
加えて、さっきまで話した虫を食べてしまったとんぼと仲良くお話をする。
そこでマーヤは、「人間→とんぼ→はえ」という、力関係を知りました。
わたし「矛盾が同時に存在しているのがにんげ…、キャラなんだよ。シュヌックは、こわいだけのひと…虫じゃないんだよ」
妹子「シュヌックの世界観では、とんぼが純粋無垢な優しい人。かえるがやくざで、(とんぼを捕まえた)男の子がそのやくざを動かしてる政界の悪い人」
どっから出てくるんだその発想。
もう無茶苦茶ですが、つづきます。
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フランスのファーブル愛好家から"プチ・ファーブル"と親しまれている細密画家、熊田千佳慕氏が馬の毛3本の絵筆を駆使して5年、ついにあのワルデマル・ボンゼルスの名作"みつばちマーヤ"を美しい絵本として完成させました。
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読み継がれる昆虫の叙事詩、待望の完訳版!虫の詩人・ファーブルが著した昆虫自然科学の古典がファーブルの第一人者・奥本大三郎の解りやすい翻訳でよみがえる。詳細な脚注、訳注、細密な昆虫イラスト、美しい写真口絵が充実。
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大自然の調和と不思議を描いた永遠の名作を生き生きとした文章と豊富な図版で子どもから大人まで楽しめるシリーズです。
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大好きな家族がいて、親友がいて、時には笑い、時には泣く、そんなどこにでもある日常。市立見滝原中学校に通う、普通の中学二年生・鹿目まどかも、そんな日常の中で暮らす一人。ある日、彼女に不思議な出会いが訪れる。この出会いは偶然なのか、必然なのか、彼女はまだ知らない。それは、彼女の運命を変えてしまうような出会い--それは、新たなる魔法少女物語の始まり-- ©Magica Quartet/Aniplex・Madoka Partners・MBS
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時は大正、日本。炭を売る心優しき少年・炭治郎は、ある日鬼に家族を皆殺しにされてしまう。さらに唯一生き残った妹の襧豆子は鬼に変貌してしまった。絶望的な現実に打ちのめされる炭治郎だったが、妹を人間に戻し、家族を殺した鬼を討つため、“鬼狩り”の道を進む決意をする。人と鬼とが織りなす哀しき兄妹の物語が、今、始まる--! ©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
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隅々まで探索されつくした世界に、唯一残された秘境の大穴『アビス』。どこまで続くとも知れない深く巨大なその縦穴には、奇妙奇怪な生物たちが生息し、今の人類では作りえない貴重な遺物が眠っている。「アビス」の不可思議に満ちた姿は人々を魅了し、冒険へと駆り立てた。そうして幾度も大穴に挑戦する冒険者たちは、次第に『探窟家』呼ばれるようになっていった。アビスの縁に築かれた街『オース』に暮らす孤児のリコは、いつか母のような偉大な探窟家になり、アビスの謎を解き明かすことを夢見ていた。 そんなある日、リコはアビスを探窟中に、少年の姿をしたロボットを拾い…?(C)2017 つくしあきひと・竹書房/メイドインアビス製作委員会
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学園カースト頂点の美少女・山田杏奈の殺害を妄想してはほくそ笑む、重度の中二病の陰キャ・市川京太郎。だが山田を観察する内に、京太郎が思う「底辺を見下す陽キャ」とは全然違うことに徐々に気づいていき…!? 陰キャ男子・京太郎の初めての恋、始まる。陽キャ美少女×陰キャ少年のニヤニヤ系青春格差ラブコメディ!!
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児童書のはずなのに、今日はアニメや漫画連発の紹介になってしまいました。
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子どもの本だな【広告】
ガリバーの冒険 | メアリー・アリス いまなんじ? | 王さまと九人のきょうだい |
こんとあき | 秘密の花園 | 若草物語 |
鉢かづき | ふしぎなオルガン | しんせつなともだち |
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