~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

大人が読む児童書「みつばちマーヤの冒険」 6 魔法のように美しい文章&感情移入しすぎる

大人が読む児童書。
「再読★児童書編」です。


この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

みつばちマーヤの冒険 (望林堂完訳文庫) Kindle版 ワルデマル・ボンゼルス (著), ホーマー・ボス (イラスト), 毛利孝夫 (翻訳)

ワルデマル・ボンゼルス原作の「みつばちマーヤの冒険」の完訳&新訳です。生まれたばかりのミツバチのマーヤは、最初に巣を飛び立つと、そのままこの美しい世界の冒険に出ます。そしていろいろな虫たちに出会い、さまざまな経験を重ねてゆきます。

 

 

「昆虫すごいぜ」から、「みつばちマーヤ」

大人が読む児童書「みつばちマーヤの冒険」 1 エーミールを訳された高橋健二さん

大人が読む児童書「みつばちマーヤの冒険」 2 マミられてしまったきんばえ。世界の美しさと残酷さ。

大人が読む児童書「みつばちマーヤの冒険」 3 とんぼのシュヌックの魅力

大人が読む児童書「みつばちマーヤの冒険」 4 人の恋路に口出すな ~こおろぎと甲虫の痴情のもつれ~

大人が読む児童書「みつばちマーヤの冒険」 5 死のねむりからさめる所が、いつも花のなかだとはかぎらない。

 

 

妹子「ほんとうに美しい文章だね。魔法みたい」

 

そんなことを言ってくれたら、無理やり読ませた方も読ませがいがあるというものです。

 

妹子「自然の描写がすっごくきれい。一つ一つに気を取られる。聞いて。『水はささやき、きらめき、うなだれたすいれんはねむっているようでした。』」
わたし「きれいだね」
妹子「全部書き留めたいぐらい。でも妖精の話よくわからなかった」
わたし「人間は愛し合う姿が一番美しいということだよね」

 

妹子「で、あの妖精って結局、男なの?女なの?」
わたし「『ぼく』って言ってたと思うが」
妹子「そうだっけ?それであの妖精はどうなったの?」
わたし「おまえちゃんと読んでるの!?」
妹子「読んでる、読んでるよ~!でもあんまりきれいな表現に目がいって、中身が頭に入ってこないんだよ!」

 

そんなことってあるのか。
いや、あるような気がするな…。

 

わたしはあらすじの方が気になるので、割と読み飛ばすことが多いけれど、妹子は一行一行かみ砕くように読んでいるので、全体的に俯瞰して読むことがまだできていないんだろうな。
と冷静さを保つために分析してみました。

 

 

というわけで、すずめばちの出てくるクライマックス直前が、この本屈指の美しいところなわけです。

 

妖精とマーヤのやりとり、愛し合う人間の姿の美しさ、は言うまでもないことなのですが、わたしがこの中でも一番好きなのは、蛾の話でした。

 

わたし「蛾の話がすごく好き。蛾のところもう一度読んでみて」

 

蛾は、この話では「夜のちょう」と表現されています。

 

彼らは高いポプラの枝にとまりました。そばでは、身がるな葉っぱが月の光のなかでささやいていました。月に照らされた静かな夜のけしきが、遠くまで見渡せました。ちょうは、月光をいっぱいに受けて、マーヤのまむかいにとまっていました。彼は、ひろげた羽をゆっくりあげたり、またそうっとさげたりしました。だれかにすずしい風をあおいでやろうとでもするようなかっこうでした。羽の上に、はすかいに、うすい美しい水いろの太いしまが走っているのが、マーヤに見えました。黒い頭は、黒っぽいビロードでおおわれているようでした。黒い一対の目のあかあかとかがやいている顔は、異様に神秘的な仮面をかぶってでもいるように見えました。夜の動物はなんとふしぎだったでしょう。

 

妖精は、マーヤに人間を見せてあげるために、蛾(夜のちょう)に道案内を頼みました。
マーヤは、夜のちょうの羽にすっかり心を奪われて、
「あなたはたいそうきれいね」
といいます。

 

妖精とマーヤと別れた後に、夜のちょうはひとりで考え込むのでした。

 

夜のちょうは、とまったまま、妖精の着ものの光がだんだん小さくなり、とうとう、青い遠景の奥に沈んでしまうまで、ふたりを見おくりました。それから、葉っぱの上で、ゆっくりすこしむきを変えると、頭をまわし、太い青いリボンのついた自分の大きな羽を見つめました。そして、すっかり考えこんでしまいました。
彼はこう思いました。自分は、灰いろでみにくい。自分の着ものは、昼のちょうのきらびやかな衣裳とは、くらべものにならない。そう言われるのを、ずいぶんたびたび聞いた。あの小さいみつばちは、この自分の美しいところだけを見たのだ。──それから、自分はやっぱり悲しいのじゃないかしら、と考えてみました。マーヤは、彼にそのことをたずねたのでした。「いや」と、彼はしまいに言いました。「ぼくはもう悲しくないぞ。それだけは、たしかだ。」

 

ここが大好きで、妖精の話以上にずっと心に残っていました。

 

たぶん、マーヤは、この夜のちょう(蛾)が昼のちょうに比べて美しくないから、よいところを探そう、としたのではなくて、純粋にきれいだと思ったからそう言ったまでなのだと思います。

マーヤの言葉が純粋にそう思っているから出た言葉だったから、蛾の心を打ったのでした。

 

妹子「うーんやっぱり表現のほうに目が行くな」
わたし「ここぞとばかりに、この作者(訳者も)最大限の力出してる感じするよね」

 

表現力、フルパワーかめはめ波という感じです。

 

妹子「『生まれてからいちばん奇妙な夢』って、お話の題名になりそうな気がする。そういう(切り取ってみても印象的なことば)が多い気がする。さっき、『誠実な知識欲と創作された見事なものに対する喜び』ってあったけど、それも本の題名になるなって思った」
わたし「なるほど」

 

そういうのを探す読書の楽しみというのもありそうです。

 

そして、どこを切り取っても文章が美しい、という本がそうなかなか巡り合えるものではないことも確かです。

 

本との巡り合いを大切にしたいものです。

 

そして、この紹介では、この本の一番美しい、妖精と人間の話をさっくりと省いてしまっているので、ぜひ!
ぜひ!
みつばちマーヤを(できれば高橋健二さん訳版を読んでみていただきたいです)

 

 

さて、すずめばち…。

 

第十三章「盗賊の城」

 

妹子「怖い!」
わたし「はやい」
妹子「いや、怖い、怖い!題名からして怖い!もう何が起きるの!?怖くて読めないんだけど!」
わたし「大丈夫大丈夫。ほら」
(次のページをぺらっ)

 

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妹子も怖がるので小さめに

 

妹子、絶叫。

 

妹子「怖い~~~!!!その絵むり!!絶対読めない~~~!!!」
わたし「ええー!ここまで読んで最後読まないの!?」
妹子「読まないのもむりー!」
わたし「じゃあ読めば」
妹子「お母さん音読して!!」

 

ええーー!

 

うーん……。
結構長いんだけど…。

 

仕方なく、ここからは音読してやることになりました。
読みながら見てみると、妹子「伏せ」みたいな状態になって目をふさいでいます。

 

わたし「鬼滅の刃は平気なのに、どうしてこれはむりなの?字だよ!?」
妹子「鬼滅は怖くない。マーヤは怖い!一行目から怖い!!きれいだから余計怖い!」
兄助「ガキがさあ~、怖い怖いって、うるさいんだよ!怖くねーよ!早く読めよ!」

 

とうとう、お兄ちゃんまで出てくる大騒ぎとなってしまいました。

 

 

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

みつばちマーヤの冒険
ワルデマル ボンゼルス (著), 熊田 千佳慕 (著)

フランスのファーブル愛好家から"プチ・ファーブル"と親しまれている細密画家、熊田千佳慕氏が馬の毛3本の絵筆を駆使して5年、ついにあのワルデマル・ボンゼルスの名作"みつばちマーヤ"を美しい絵本として完成させました。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

みつばちマーヤのぼうけん
中脇 初枝 (監修), 本田 久作 岡部 順 宮川 治雄 (著)

好奇心旺盛なみつばちの女の子マーヤは、外の世界へ飛び出します。フンコロガシやチョウなど、さまざまな虫たちと出会って……。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

みつばちマーヤの冒険
アイプランニング (著), 日本アニメーション株式会社 (著), ウァイデマル・ボンゼルス (著)

ミツバチの女の子マーヤは、ミツバチの王国を飛び出して、外の広くてすばらしい世界で、不思議なこと、うれしいこと、悲しいことなどをたくさん経験します。やがて、古巣の王国へ帰ってみると、仲間が破滅の危機に…。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ジュニア版ファーブル昆虫記 全8巻セット
ジャン・アンリ・ファーブル (著), 奥本 大三郎 (著), 見山 博 (著)

大自然の調和と不思議を描いた永遠の名作を生き生きとした文章と豊富な図版で子どもから大人まで楽しめるシリーズです。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

完訳 ファーブル昆虫記
ジャン=アンリ・ファーブル (著), 奥本 大三郎 (翻訳)

読み継がれる昆虫の叙事詩、待望の完訳版!虫の詩人・ファーブルが著した昆虫自然科学の古典がファーブルの第一人者・奥本大三郎の解りやすい翻訳でよみがえる。詳細な脚注、訳注、細密な昆虫イラスト、美しい写真口絵が充実。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492

 

プロジェクト・グーテンベルクについて
Wikiの説明ページ

プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館

 

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