~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

大人が読む児童書「みつばちマーヤの冒険」 7 敵同士の恋。やっと戻ってきた「昆虫すごいぜ」

大人が読む児童書。
「再読★児童書編」です。


この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

みつばちマーヤの冒険
ワルデマル・ボンゼルス (著), ホーマー・ボス (イラスト), 毛利孝夫 (翻訳)

ワルデマル・ボンゼルス原作の「みつばちマーヤの冒険」の完訳&新訳です。生まれたばかりのミツバチのマーヤは、最初に巣を飛び立つと、そのままこの美しい世界の冒険に出ます。そしていろいろな虫たちに出会い、さまざまな経験を重ねてゆきます。

 

 

「昆虫すごいぜ」から、「みつばちマーヤ」

1 エーミールを訳された高橋健二さん

2 マミられてしまったきんばえ。世界の美しさと残酷さ。

3 とんぼのシュヌックの魅力

4 人の恋路に口出すな ~こおろぎと甲虫の痴情のもつれ~

5 死のねむりからさめる所が、いつも花のなかだとはかぎらない。

6 魔法のように美しい文章&感情移入しすぎる

 

 

 

気を取り直して、みつばちマーヤ最大の盛り上がり、すずめばちターンを音読をはじめました。

 

そもそもが「昆虫すごいぜ」がきっかけで読み返そうと思ったのではなかっただろうか。
そして、その「昆虫すごいぜ」で、すずめばちとオニヤンマが、宿命のライバルという所がきっかけだったはず。

 

そのすずめばちとオニヤンマターンを、まさか音読させられる羽目になるとは。

 

さて、マーヤは、すずめばちにつかまってしまいました。
そして、盗賊の城に連れていかれてしまいます。

 

わたし「妹子さん、怖いなら無理しなくてよいのでは」
妹子「(伏せのポーズで)いいから早く読んで!!!」

 

鬼滅の刃は怖くないのに、みつばちマーヤは怖い。
でも続きは読みたい。

 

確かに、この緻密で美しい表現力が、かえって怖さを増大させている感はあります。

 

 

すずめばちの牢屋には、そこらじゅうに死体が散らばっています。
これまでの話の中で、親しく交流してきたたくさんの虫たちのかけらです。
みつばちの羽や殻も転がっています。

 

生態系のトップに君臨している感がすごいです。

 

マーヤがつかまって牢屋に入れられたのは
「女王ばちが、生きたみつばちを好んでお食べになるから」
でした。

 

牢屋のすきまから、マーヤは、すずめばちの宮殿の玉座の間をのぞきこみます。

 

驚きふるえながら、彼女は、金色さんぜんたるよろいを見ました。それは全身、下までみごとな黒いしまでかざられていたので、それを見るものは、はじめてとらを見た子どもが受けるような印象を受けました。

 

そこでマーヤが聞いたのは、翌日の明け方にすずめばちたちが、みつばちの巣を急襲し、巣ばこを略奪しようというたくらみでした。

 

妹子「おわった」
わたし「いやいやいや。お話なんだからって。大丈夫だって」
妹子「だって、そんな恐ろしいところから出られるわけないしー!!」
兄助「黙って聞けよ!」

 

おまえ(妹子の兄)、聞いているのかね…。

 

もう大きくなって、母と妹の読む読まないのたわむれなど知らないよ、という顔をしているのですが、こいつが割と話を知らないふりをして聞いていることを私は知っています。

妹子にはわからないような話もして聞かせるのは、半ば兄助に話しているようなところもあります。

 

 

第十四章 脱出

 

もはや、目次がネタバレです。

 

マーヤは、壁をかじってこっそりと外へ出ようとします。
しかし、あと一歩というところで、門のところに番兵がいるのに気づきました。

 

しかし、この番兵の様子は、どこかマーヤの心を打つものがありました。
どこか悲し気で、物思いにしずむ番兵の姿…。

 

番兵はすっかり考えこんで、月に照らされた夜景を見渡しているようすでした。あごを手でささえて、頭をすこしかしげていました。金のよろいが月の光でどんなにかがやいていたことでしょう!その姿勢には、何か小さいマーヤの心を動かすものがありました。ひどく悲しそうにしている。なんと美しいことだろう。あの姿勢はなんとけだかく、あのよろいはなんとりっぱにきらめいていることだろう。

 

小さいマーヤは、自分の目の前にいるのが敵だということを、すっかり忘れてしまいました。ああ、マーヤは、やさしい心ねと、美しいものを喜ぶたちのために、すべての危険を忘れるようになったことが、どんなにたびたびあったことでしょう。

 

番兵に見つかってしまったマーヤですが、不思議なことに番兵は、静かな調子でマーヤとおしゃべりを始めるのでした。

 

ここで、
「善と悪、敵と味方を分けるものとは何か?」
などと深く考えさせられる会話が続くのですが、このすずめばちはどこか上の空で、何かが心にかかっている様子です。

 

「あなたは悲しんでいるような気が、わたしはしましたの。悲しんでいるものは、いじわるにはなりえない、とわたしはいつも思っていました。」
(略)
「うらぎりがどんなにひとを悲しませるかを、ぼくは経験して、あまりにもつらい思いをしたよ。シュヌックがぼくを捨てた時にね……。」

 

妹子「マ?」

 

「ぼくは、自分の命よりいじょうにシュヌックを愛しているんだ。どこにいったら、また彼女に会えるか、言っておくれ!」

 

妹子「マ?」
わたし「その今風の言い方するのやめて」
妹子「え?マ?うそ。まじで?えっ?くまばち(すずめばち)と、シュヌックが…?え?」

 

「恐怖!戦慄のすずめばち城」から飛び出した突然のラブロマンスに、頭がついていけない妹子、混乱中。

 

シュヌックの居場所を教えることを条件に、マーヤは自由になりました。
そして、仲間のみつばちたちに危険を知らせるために、マーヤは飛ぶのでした…。

 

ここでやっと、「昆虫すごいぜ」を見たときに、「うわあああ」となった所にもどってきました。

 

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ここから、検証に入りました。

 

妹子は、「伏せ」の状態からもとに戻りました。

 

兄助「だから怖くないっつってんのに、騒ぐから、こいつ…!」

 

妹子「でもさあ、シュヌックはオニヤンマじゃないと思うよ?オニヤンマってすごいんだよ?はっきりいってもうとんぼじゃないから。見た目からしてもうグロいから。すごいシマシマで、それこそすずめばちみたいな色してるんだよ?たぶん、シュヌックはギンヤンマだと思う。ギンヤンマ、すごくきれいだもん!」

 

突然、ものすごくしゃべりはじめた。

 

わたし「いやあ、お母さんもオニヤンマではないかなと思った。でも、オニヤンマって日本のトンボみたいだから、きっとドイツのとんぼはオニヤンマじゃないんだろうね…」

 

「昆虫すごいぜ」のオニヤンマ回を見るまで、とんぼがすずめばちを食べることがあるなんて思いもしていなませんでした。

 

とんぼって、すごいんだ…!

彼らの恋には、リアリティがあったんだ!

 

でも、そういえば、シュヌックはマーヤが戦う姿勢を見せたときも、たいして怖がりもしなかったな。

 

全編を通して、牧歌的な(痴情のもつれはともかく)雰囲気が漂っているなかで、血の気が引くような残酷さをさいしょに見せたのはシュヌックだったな、とか。

 

自由で美しいけど、力のあるシュヌックなら、すずめばちとも対等かもしれないな、とか…。

 

これは、敵同士の恋っ!
物語的に、最高に、萌えるところ!

 

 

しかし、おとなになったからあれこれ考えてしまいます。

 

シュヌックは、どうして彼を捨てたのかな?
何となく、シュヌックはこの若いすずめばちの番兵ほど、彼を愛してはいないような気がします。

(番兵はもう、シュヌックのためなら何を捨ててもいいというほどの情熱です)

 

シュヌックは、死んだ弟の方をずっと愛しているような気がする。

 

しかも、たぶんシュヌックは縛られるのが嫌いなので(たぶん)、すずめばちの彼の愛が重くなったのかもしれません。

 

結局、彼はシュヌックには会えたのだろうか。

会いに行って、いったいどうなるんだろうか。
これからおきる、みつばちVSすずめばち大戦争に、彼は参加したのだろうか…。

 

でも、わたしはこの若いすずめばちの兵士が好きになったので、シュヌックも何となくほだされて、久しぶり、なつかしいわ!なんて言って、恋もうまくいくといいな…なんて、想像しています。

 

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NHK「香川照之の昆虫すごいぜ!」図鑑 vol.1
カマキリ先生 (著), NHK「昆虫すごいぜ!」制作班 (著)

NHK香川照之の昆虫すごいぜ!」、待望の出版化。俳優、香川照之さんが扮する「カマキリ先生」が、黄緑の衣装に身をつつみ、昆虫の魅力を伝える。取り上げる昆虫は、カマキリ先生が「子どもたちに見てほしい、知ってほしい」という昆虫たち。番組のなかでは伝えきれなかった昆虫の生態を迫力満点のビジュアルとともに紹介する。

 

 

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ジュニア版ファーブル昆虫記 全8巻セット
ジャン・アンリ・ファーブル (著), 奥本 大三郎 (著), 見山 博 (著)

大自然の調和と不思議を描いた永遠の名作を生き生きとした文章と豊富な図版で子どもから大人まで楽しめるシリーズです。

 

 

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完訳 ファーブル昆虫記
ジャン=アンリ・ファーブル (著), 奥本 大三郎 (翻訳)

読み継がれる昆虫の叙事詩、待望の完訳版!虫の詩人・ファーブルが著した昆虫自然科学の古典がファーブルの第一人者・奥本大三郎の解りやすい翻訳でよみがえる。詳細な脚注、訳注、細密な昆虫イラスト、美しい写真口絵が充実。

 

 

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