~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

今日の一冊「天からふってきたお金」 2 さまざまな文化を子どもたちに伝えるために。

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

天からふってきたお金―トルコのホジャのたのしいお話
アリス・ケルジー (著), 和田 誠 (イラスト), 岡村 和子 (翻訳)

むかし、トルコにナスレッディン・ホジャという名前のとんちのうまいおじいさんがいました。このナスレッディン・ホジャの出てくる短いお話を600ほど集めたものが"ナスレッディン・ホジャ物語"で、トルコでは何回も出版されています。

 

 

このお話と、ナスレッディン・ホジャという名前に、わたしは何となく既視感がありました。

 

「ナスレッディン」
よくある名前なのかもしれませんが、山室静さんの昔話集で読んだ気がします。

 

本棚をかき回して探してみたら、ありました!

 

ナスレッディン!

 

山室静さんが編集された膨大な数の世界むかし話集の中の、「インド・中近東編」です。

 

「ナスル・エド・ディンの晴れ着」

 

この「天からふってきたお金」の中に収録されている一遍と、内容も同じです。
ビンゴ。

 

名前が「ナスル・エド・ディン」となっています。
ちぢめると、ナスルッディンになるのでしょうか。

 

ここで、不思議な符号がありました。

 

この昔話集の、「ロシア・西スラヴ(上)」にも、ナスルッディンの話があります。

 

「いたずら者のナスルッディン」

 

キルギスは、トルコの文化圏に近いです。

別ルートで伝わっていてもおかしくありませんし、話の内容的にも、たしかに同じナスルッディンっぽいです。

 

そもそも、わたしはこの「ナスルッディン」という響きが頭に残っていたのであって、どうやら覚えていたのはこちらの「ロシア・西スラヴ編」のようでした。

 

最初に、トルコの話だと書かれていたので調べてみると、「ナスル・エド・ディン」が出てきたというわけです。
昔話の中に、地域は別で二つ入っていたんだ。

 

山室静さんの訳された方のナスレッディンはこんな感じです。

 

むかし、ナスル・エド・ディンという人がいました。彼は貧しかったけれど、村では教師として、またお祈りの導師として、みなに尊敬されていました。でも、ときどき妙なことをやるので、笑われることもありました。それでも彼は気のいい男で、そんなことは気にかけず、お説教をしたり、子供たちを教えたり、お祈りの音頭をとる時のほかは、この世に何の悩みもないかのように、自分の小さなブドウ園で幸福そうに働いていました。

 

ムーミンの訳者で有名な山室静さんは、昔話といえど細部まで正確に、忠実に伝えようという意図を感じます。

 

かつてはローマ帝国の時代から有数の都市だったイスタンブールのあるトルコという土地を紹介するのに、こうしてナスレッディン・ホジャの話を読むことができるのが幸せと思います。

 

 

ここに描かれるトルコの人々の姿は、生き生きしています。
いたずらが大好きで、明るくゆかいな人々です。

 

山室静さんの昔話集で、まったく違うアラビア圏のお話のなかで(トルコではないですが)
「あまりにもダメなだんなさんを奥さんがぶんなぐって捨て、別の男を見つけて結婚する」
という話があります。

 

でもその別の男がさらにダメ男だったので、またその男を捨てて元サヤに戻るという話です。

 

このような昔話を、アラビア圏の子どもたちも聞いて育っているんだなあと思います。
男尊女卑のかけらもないです。

 

また、アラビア地方を渡り歩くかたのブログで、アラビア圏はおそろしく女性が強いと書かれているのもありました。

 

大陸特有の思考回路の違いや、政治情勢による変化はもちろんあるとは思いますが、アラビア圏のムスリムたちは、文化が違うだけのまったく同じ人間だと、むかしばなしからわかってもらえればなと思います。

 

 

アラビアン・ナイトをはじめ、このような昔話や神話から彩られる世界の歴史は、生き生きとしています。

このような物語を、子どもたちが知ることができる道筋を決して失ってはならないと思います。

 

つまり、
翻訳者さん・出版業社さん・本屋さん
の文化的担い手としての意義はとても大きいですし

 

そして、こどもの大多数は「字の多い本」を勝手に手に取り、ひとりでに読むようにはなりませんから、

 

「まとまった文字を追う訓練」とともに、
その業界と、現場(子ども)とをつなぐ「⇔」
つまり、
親、先生、わたしたち読み聞かせボランティアなど、
子どもを取り巻くおとなの責任はとても大きいです。

 

翻訳者さん、出版業界さん、本屋さんだけが頑張ってもどうしようもありませんし。

 

こどもを取り巻くおとなであるわたしたちが、こんなよい本があるんだよと、広めるしかありません。

 

それは、こどもにふれあう人だけではなくて、ネットを通じてなら、どんな人にだって、こどもとふれあう環境がない人でも、どんなアプローチだって、できるはずなんです。

 

最近はどの本屋でも、目にみえて児童書の棚が激減していて、危機感を覚えています。

 

本屋さんも、以前見ましたが、おとなの棚に井伏鱒二ドリトル先生を置いているのは本当によい試みだと思いました。

 

「児童書」と枠をつけず、大人の棚に混ぜて並べてもらえたらよいのにな、と思います。

 

こどもの手に渡るには、まず大人の手を経由しなければならないのが、この種類の本「児童書」ですから。

 

 

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新編 世界むかし話集(7)インド・中近東編
山室静 (編集) 形式: Kindle版

世界宗教といわれるものはすべてこの地域で発生し、砂漠あり氷河あり、人類の往きかよう十字路。おびただしくある説話から昔話のインド起源論が風靡したことさえあった。ともあれ、この地域が昔話の宝庫であることは間違いない。
<インド> 青い山犬 / 三人のいたずら者 / 他十二編 
<イラン> お百姓と三人のいたずら者 / アリ・ムハメッドのお母さん / 他五編 
<アラビア> ダマスクスの商人カシムの話 / 二人のごろつき / 他四編 
<トルコ> 笑いリンゴ泣きリンゴ / どろぼうの名人 / 他六編 
<イスラエル> 巡礼と彼のロバ / なまけ者の国 / 他五編

 

 

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新編 世界むかし話集(6)ロシア・西スラブ編(上)
山室静 (編集) 形式: Kindle版

ロシアはヨーロッパから別扱いされ、なおざりにされ続けてきた。しかし、ロシアの昔話によく出てくるばかのイワンが、利口者の兄をさしおいて美しいお姫様と結婚、王国を継承したように、近代に至ってロシアは、文学の巨人を輩出させて世界文学の王座をしめ始めた。
<ロシア> 火の鳥カマスの命令 / 他15編
<トルキスタン・シベリア> スイカの種 / 底ぬけに気前のいい男 / 他6編
<コーカサスアルメニア> 処女王 / 漁師の息子 / 他5編
<ポーランド> ヘビの王さまの冠 / オンドリと風 / 他6編
<チェコ> 十二の月 / 塩は黄金よりも尊し / 他6編

 

 

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